Airbnb Story 大胆なアイデアを生み、困難を乗り越え、超人気サービスをつくる方法

 共有経済の大きな特徴は、アイデア自体は目新しくないこと(スンドララジャン)

サンフランシスコに住んでいた二人のデザイン学校卒業生が、失業して家賃の支払いに困っていた。2007年10月、地元のホテルがデザイン博で満杯になるタイミングを狙って、自宅の余ったスペースにエアマットを敷いて貸し出すことにした。

チェスキーは、・・・工業デザイン会社の3DIDで働きはじめた。・・・仕事はつまらない作業の繰り返しだった。「くだらないとは思わなかった。でも大学で夢見たこととは全然違ってた」・・・「なんか、僕の人生はこうして終わっていくんだ、って思った。大学で教わってたことと違うんだって」

コンセプトは磨いていた。国中で開かれる大規模な会議の期間中に止まる場所を探すためのサービスにしよう。・・・SXSW

投資家への売り込みは、すぐに拒絶にぶつかった。サイベルが紹介してくれた7人の投資家のほとんどは返事もよこさなかった。・・・ふたりは企業価値を150万ドルと見積もって・・・その時15万ドルを投資していたら、今では数十億ドルになっているはずだ。

ホストにただの朝食を送りつけ、それをゲストに渡してもらうという作戦だ。・・・送りつけるのはシリアルに決めた。・・・民主党大会の後、・・・1万個作って一箱2ドルで売れば、会社は生き延びられる。エンジェルから金をもらうのと同じじゃないかとチェスキーは自分を納得させた。この時点で、彼らはもう野球カードのバインダーが一杯になるくらいクレジットカードを作りまくり、一人2万ドルの借金があった。・・・シリアルの箱・・・バカでかい折り紙を折ってるみたいだった。・・・マーク・ザッカーバーグは糊付け作業なんてやってないし、手をやけどしながらシリアルの箱を組み立てたりしないよな、と心のなかでつぶやいた。・・・借金は返せたものの、シリアルと関係のないサイトには誰も集まらず、どうやってトラフィックを集めたらいいのか皆目検討もつかなかった。・・・チェスキーは母親から電話で、「え、ちょっと待って・・・シリアル外車になっちゃったの?」と聞かれた。・・・シリアルで2万ドルから3万ドルは儲けたのに、本業の売上はわずか5000ドルだった。・・・今は苦しいけど、そのうちいい苦労話になるから(チェスキー)

Yコンの受験は厳しいことで有名だ。・・・「お前アホか。シリアルは持っていくなよ」・・・ゲビアは、パートナーたちと話しているグレアムのところに近づいていき、シリアルを手渡した。グレアムはぎこちなくありがとうと言った。・・・おみやげじゃなくて、これ自分たちで作って売ったんです。それで会社の資金にしたんです。・・・「君たちゴキブリみたいだな。絶対に死なない。」・・・のちにグレアムは、例のシリアルが決め手だったと言っていた。「4ドルのシリアルを40ドルで売れるなら、他人のエアベッドで寝るようにみんなを説得できるだろうと思ったんだ。たぶんね」

 「みんなが欲しがるものをつくろう」というYコンのモットーは、Gメールの生みの親で今はYコンのパートナーになったポール・ブチェットの言葉だ。伝統的なMBAの考えの逆を行くYコンビネーターの基本理念のひとつが、このモットーに現れている。

ベンチャー・キャピタリストのフレッド・ウィルソン「今の床にエアマットをおいたらホテル代わりになるなんていう発想に行き着かなかった。だからこの話を追いかけなかった」

グレアム「一番熱心な人間が誰よりも成功するということだ。いかにも優秀なタイプが成功するわけじゃない。成功するのはたいて、ダメなやつらだ」

これまで売り込んだ投資家にはことごとく相手にされず鼻であしらわれてきたのに、VC界で名門の誉れ高いセコイアが興味を持ってくれるなんて、信じられなかった。・・・伝統的な貸別荘業界の思考回路とは全く違っていたが、ホストとゲストを大規模に結びつけるという難問の少なくとも一部を彼らが解決していたのは明らかだった。・・・スタートアップの一番の敵は己の地震と決意なんだ。長い間、僕達は最悪だと言われ続けた。その後で、最高だって言われたんだ。(セコイアにとっても命運を分ける投資だった。あの58万5000ドルは、現時点でおよそ45億ドルと推定される)。

起業したいっていう人は多いけど、実際にやる人はそれほど多くない。彼らはやったんだ。・・・グズグズと頭のなかで想像をこねくり回してばかりじゃなかった。ローンチしたんだ。

グレイロック・パートナーズを運営するリード・ホフマン「アホなやつが下手にアイデアを売り込んだら、額面通り受け取るな。信頼できる売り込みが来るまで待て」「ビジネスによって創業者に求められる強みは違う。マーケットプレイスの創業者は枠にはまらない考え方ができて、とりとめのない方がいい」

ポール・グレアム「エアビーアンドビーとウィムドゥ(Wimdu、エアビーのパクリサイト)の違いは、エアビーアンドビーの創業者は伝道師で、ウィムドゥの創業者はカネで動く傭兵だということ。たいていは伝道師が勝つ。」・・・サムわ~兄弟はおそらく長期に会社を経営するつもりはない。彼らのビジネスモデルは長期経営でなく、事業売却を前提に成り立っていた。

グレイロックパートナーズのエリサ・シュライバー「ウーバーはただの取引。エアビーアンドビーは人との触れ合い」

基本的に、このモデルはホテルや自動車レンタル会社やタクシー協会ほどの安全を保証できない。人はいつもトレードオフを選択しているし、共有経済では別のトレードオフを選択し始めている。

ウィルソン(ホリデイ・イン創業)、マリオット、ヒルトンその他少数の起業家が、観光業界の最初の破壊者だった。彼らは新しい旅の姿を提案して業界を揺るがし、莫大な富を築き、現代の複合ホテルチェーンへの道を開いた。

僕達が勝っても、ホテルが負けるわけじゃない・・・掲載物件のおよそ4分の3は、大手ホテルの立っている場所の圏外だ。エアビーアンドビーは大人数で止まる場合が多い。テクノロジー業界的に言えば「ユースケース」が違う。

ベストウェスタンホテルズアンドリゾーツのデビッド・コングCEO「その時はニッチな商売だと答えた。おそらく共存できるし、それほど大きな影響はないと言ったんだ。あれ以来、急激に成長した。規模が年々倍になっている。」

ビル・マリオット「本物の破壊者だ」

 エアビーアンドビーはこれからも伝統的な宿泊業界を侵食するだろう(ムーディーズ

www.moodys.com

グローバルな不動産会社のCBREは2016年に発行した報告書でそう結論づけていた。・・・エアビーアンドビー競合指数を示して、ニューヨークとサンフランシスコで最もエアビーアンドビーの影響が大きいことを明らかにした。・・・稼働率は上がっても価格力を失ったのは、少なくとも部分的にはエアビーアンドビーが原因だと思われる。

www.cbrehotels.com

 

ボストン大学の研究

http://journals.ama.org/doi/abs/10.1509/jmr.15.0204

特に繁忙期の価格力が低下したことは大きなダメージ

>日本のAirbnb関連研究

『シェアリングエコノミーの定量分析~ライドシェアと民泊の事例を用いて~』

www.mof.go.jp

ホテルにとっては、ピークシーズンにどれだけ料金をあげられるかが利益に直結する。年間宿泊日数の10%から15%しかないこのシーズンが、売上の重要な源泉になる。ホテル経営陣がエアビーアンドビーを苦々しく思うのは、地域で大きなイベントがあると需要に応じて供給が伸びてしまうからだ。・・・限界費用をほとんどかけずに拡大し、ほぼ一晩にして新市場に参入でき、その影響はこれから高まるばかりなのだから。

www.tnooz.com

 エアビーアンドビーが現在及ぼしているリスクがどんなものであれ、このペースで成長が続けば来年にはその脅威が2倍になることは覚悟しておいたほうがいい、とバークレイズ証券の投資家向けレポート

 

1950年台にオランダとスイスの教員組合はお互いに自宅を貸し借りする慣例を作り、夏休みの間に教師がお金をかけずに旅行を楽しめるようにした。

 アコーホテルズCEOのセバスチャン・ベイジン「新しいコンセプトやサービスに対抗するのは馬鹿馬鹿しいし、無責任だ。共有経済に反対するのは、もちろんくだらない。世界はその方向に向かっている。こうした新しいサービスはどれも非常に勢いがあり、運用と実行も優れている。それを認めたほうがいい」

skift.com

ジョージ・バーナード・ショー成功とは、間違いを犯さないことではない。同じ間違いを繰り返さないことだ

 エアビーの社内でよく聞くガンジーの言葉「はじめに彼らは無視し、次に笑い、そして挑みかかるだろうーだが勝つのは我々だ」

バフェットのいちばん大切な教えは、雑音に惑わされるなということだ。

 チェスキーは学習マシーンだ。それが彼の一番の強みだとリード・ホフマンは言う。成功する起業家はみんなそうだ。『永遠の学習者』なんだ。彼はその究極のお手本だね。

 もちろん、ブライアンがプロダクトよりだということは間違いないし、優れた顧客価値を提供することにものすごく気を遣っていることも確かだ。でも、そういうタイプで規模拡大できないCEOは大勢いる。

マーク・アンドリーセン「ブライアンが、『どうしよう、大変だ』なんていうのを聞いたことが無い。いつも次の新しいことを見つけようとしている。」

『ヤツは学習の鬼だな』イーベイのドナヒュー

トーマス・フリードマン悲観主義者はだいたい正しい。だが世界を変えるのは楽観主義者だ」

TEAM OF TEAMS (チーム・オブ・チームズ)

ネルソンがつくりあげたものは、命令を単純に実行するのではなく、個人のイニシアチブと批判的思考を大切にする組織文化である。ニコルソンの説明によれば、「ネルソンは市場を作り上げたが、いったん市場が出来上がると、部下の積極性に任せた。こうして、配下の艦長たちは自分たちを戦争の企業家だと考えるようになった」

テイラー・・・銑鉄の扱いがもっとも上手い労働者は、その製造にまつわる科学的な内容を理解することが出来ない。・・・そんな労働者が成功するためには、より知的な人間によって、科学の法則に従って労働の習慣を身につけるよう教育されなくてはならない。

フレデリック・テイラー - Wikipedia

科学的管理法 - Wikipedia

ジェレミー・リフキン「テイラーはおそらく20世紀の人間の私的・公的な生活に対して、他のどんな人間よりも大きな影響を与えてきた」

予測不可能な状態はテクノロジーの進歩のせいで起きている・・・予想不可能な複雑さが、テイラー主義的な効率性に基づく組織にとっては妨げになるのである。この変化こそ、20世紀の尺度では「最高のマシン」だった特任部隊が失敗した原因であった。 

ローレンツ・・・目盛りには、すべての値について小数第六位まで記憶されていたのだが、ローレンツが入力に使ったプリントアウトの数列は、小数第三位までしか表示されていなかった。彼は、0.506127と0.506の違いは取るに足りないと考え、プリントしていた数字を丸めて入力していたのだが、それで問題が起きるとは全く予想していなかった。・・・バタフライ効果

複雑さと難解さは違う。・・・難解・・・突き詰めれば、一連のスッキリ整理された決定論的関係に分解できる。機会のある部分の動きや変更が何を引き起こすか、最終的にはかなり高い精度で予測可能だ。・・・物理的には単純なメカニズムにすぎないのに、それでも結果を予想することはほぼ不可能だ。・・・密度の高い相互作用のせいで、複雑系は非直線的な変化を示す。・・・人間の思考は線形関数に慣れている。反対に、非線形関数に対し、人間は不快感を覚える。・・・要素還元主義的な指示カードは、チェスには役に立たないだろう。相互作用のせいであまりに多くの可能性が生まれるからだ。

バタフライ効果という言葉はほとんど誤解されており、テコの原理と同じ意味で使われている。・・・複雑系の中の小さな事柄は全く影響を及ばさないかもしれない。あるいは反対に重大な影響を持つかもしれない。そして、それがどちらに転ぶかをすることが事実上不可能である、というのが正しい解釈だ。

全てを構成要素に分解し、あるいは個々の要素を最適化するという機械的で還元主義的な考え方は、ニュートンからテイラーにいたる思想家たちによって支持されてきた。しかし、それを用いて複雑系をコントロールしようという試みは、無意味であり、最悪の場合は破滅的な結果をもたらしかねない。

 フレデリック・テイラーのマネジメント方式は、明らかに複雑な問題よりも難解な問題のために生み出されたものだった。・・・どこかの機械にトラブルが起きても、それが他の機械に有機的な影響をおよぼすことはなかった。逆に、一つのイノベーションが「爆発的ヒット」を飛ばして工場主が一夜にして億万長者になることもなかった。・・・計画的な効率性は良きマネジメントの活力源となった。・・・環境が次第に多対多の複雑さを増していくに連れて、我々はますます複雑な解決策を設計していたた。才能のあるマネジャーは、あらゆる可能性をカバーするために入り組んだ手順と組織的ヒエラルキーを開発した。どんな問題も完全に理解可能だという基本的信念は、消えていないのである。20-30年も企業や役所で働いた人なら誰でも、規則と書類がまるで果てしなく増えていくような気がするという経験があるだろう。

 ヘンリー・ミンツバーグ「未知の海で予め決められたコースに身を委ねるのは、氷山に向かってまっしぐらに航行するための一番の方法だ。」

レジリエンス思考・・・強力で専門化された防壁を築く代わりに、パンチをかわし、あるいはパンチから利益さえも得ようとするシステムを構築する。レジリエントなシステムとは、予期できない脅威を前にして、必要なときに自己修復することができるようなシステムだ。

予測を通して、また予期される脅威から、全力で自分を守ろうとする・・・Caltechのジョン・ドイル「強固だが脆弱なシステム」

強固さはシステムの各部分を強化することによって達成される(例えばピラミッド)。これに対してレジリエンスは、変化や損傷に対応して各部分を再構成させ順応させる各要素を繋いでいくことの結果(例えばサンゴ礁

相互依存が進んだせいで、縦割り組織はもはや環境を正確に反映するものではなくなった。

問題は、「関係者以外極秘」の論理が、どの情報を誰が知り誰が知るべきでないかを、マネジャーなり何らかのアルゴリズムなり官僚なりが決定できるという仮定のもとに成り立っている点だ。・・・指揮官は確信を持って、「その知識は、チームが取ろうとしている行動や分析官が直面するかもしれない状況とは無関係である」と断言できなければならない。我々の経験では、そう断言できる事例はなかった。・・・有用な予測を立てることは非常に難しくなり、多くの場合不可能だ。何が誰にとってどんな意味を持つかを正確に把握し予見できるというのは錯覚であり、その前提のもとで組織が機能し続けるのは傲慢にほかならない。「関係者以外極秘」は安全に思えるかもしれないが、逆である。相互依存的な状況で安全に機能するには、全チームが、行動しているすべての部隊同士の関わり合いを総合的に理解することが必要だ。計画がうまくいくためには、全員が全体の流れに目を向けなければならない。

 根本的な原因は具体的な手順の欠如ではなく、予測不能な不整合をリアルタイムで修正する能力の欠如にある。

 医学部は教育で、応急処置は訓練だ。教育では、ほぼ無数の脅威を把握して対応するための基本的理解を学ぶ。一方、訓練で身につけるのは予想される問題にのみ有効な、単独の行動だ。言うならば、教育はレジリエントであり、訓練は強固である。

(この視点に立つと、先行研究をエミュレートして論文を書く能力を身につけるのは訓練であり、一から(もちろん文字通りの一からではないが)論文を書く能力を身につけるのは教育ということになるのだろうか)

物理的スペースをどうデザインするかは、人間の行動をどう捉えるかの反映であるが、一方、人間の行動はデザインされたスペースの副産物でもある。・・・イノベーションや創造性を高く評価する企業は、対話を促進する職場環境のあり方を、時間をかけて模索してきた。1941年にベル研究所は慣行を破り、交流を促進する空間づくりを目指した。施設の設計を請け負ったのは、アメリカ最大級の建築設計事務所であるスキッドモア・オーウィングス・アンド・メリル・・・1970年台には、お硬いIBMさえも初歩的なノンテリトリアル・オフィスを試行した。・・・ブルームバーグ「仕事の習慣を命令で変えようとするマネジメントのやり方には限界があると、ずっと思ってきました。命令すればやるでしょうが、目を離すと従業員はいつものやり方に後戻りしがちです。一方、物理的設備は影響がより長く続きます」

 優先すべきは、時機を逸する前に最善の選択をすることだ。私は、特別なことがない限り自分が介入してもさして意味はないことに気づき、やり方を変えた。・・・リッツはすべての従業員に対し、宿泊客に何か特別なことが必要な場合に本来の業務から離脱してもよいと教え、自らの権限を使うことを奨励している。・・・ノードストロームの新入社員に配られるカード・・・従業員マニュアルは非常にシンプルにしてあります。ルールは一つだけです。・・・各自、判断力を駆使して下さい。迷ったときは、臆せずに、いつでもどんなことでも、直属のマネジャーや店長、人事担当者に聞いて下さい。

1980年代、企業は「権限委譲(enpowerment)」を試みるようになった。・・・ケニス・W・トーマス、ベティー・A・ベルトースは、権限の分散で「仕事への自発的モチベーション」が生まれることを明らかにした。・・・権限と最良が十分にあると感じている労働者は20%にとどまり、大半が権利を奪われ、檻に入れられたような気分でいる。・・・物事の相互依存性が高まり、予測が難しくなっている中、部下に細かく口出しするマネジメント法にかかるコストは増している。HBSのロサベス・モス・カンターは、現場に権限を与えることが絶対に必要だという。・・・個々の従業員に裁量権を与えているかそうでないかということこそが、行き詰まる企業と道を切り開く企業とを見分ける一つのポイントである。・・・バーノフとシャドラー・・・「怒りのツイート一つでブランドを破壊できる世界で企業が反撃に出るには、従業員を制約から解き放たなければならない」

私がリーダーとして最も機能していたのは、個別の作戦の判断をしていたときではなく、機動性を損なう組織の壁と官僚主義を防ぐために、情報収集・分析から資源配分まで、一連の流れを監督しているときだった。

 

TEAM OF TEAMS (チーム・オブ・チームズ)

TEAM OF TEAMS (チーム・オブ・チームズ)

  • 作者: スタンリー・マクリスタル,タントゥム・コリンズ,デビッド・シルバーマン,クリス・ファッセル,吉川南,尼丁千津子,高取芳彦
  • 出版社/メーカー: 日経BP
  • 発売日: 2016/04/01
  • メディア: 単行本
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現代の名演奏家50 クラシック音楽の天才・奇才・異才

カルロス・クライバー 

父子とも大指揮者となると、エーリヒとカルロスのクライバー父子しかいない。・・・1934年になると、フルトヴェングラーナチス政権と対立し、ベルリンでの公職を辞任・・・クライバーだけでなく、ワルタークレンペラー、ブレッヒなど次々と名指揮者が出ていき、人材不足に陥った。そこへ水性のごとくベルリンに登場したのがヘルベルト・フォン・カラヤンだった。・・・デビュー公演でカルロス・クライバーは「カール・ケラー」という偽名で出演・・・父は「幸運を祈る、ケラー殿」と電報を打ち、息子を励ました。・・・カルロスは自分の実力だけで成功したのだ。

有名になるとクライバーはめったに出演しなくなった。カルロス・クライバーの才能を認めていたカラヤンは、「あいつは冷蔵庫がからになるまで仕事をしない」・・・日本のファンの間では「クライバーの家に空き巣に入り、冷蔵庫をカラにしてこい」

父エーリヒ「可哀想に、あいつには音楽の才能がある」

Various: Complete Orchestra Re

Various: Complete Orchestra Re

 

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アルトゥーロ・ベネディッティ・ミケランジェリ

20世紀後半最高のピアノ教師・・・ポリーニアルゲリッチという2人の現代最高のピアニストの師なのだ。

 ミケランジェリは、生涯に出た演奏会よりも、キャンセルした演奏会のほうが多い・・・キャンセル魔・・・彼は完璧主義者だったので、ピアノやホールが自分の考えている響きではないと判断すると、その瞬間にキャンセルを決断した。

アルゲリッチ・・・レッスンを受けたのは一年半で4回だけ・・・教えたかったのは「静寂の音楽」だった・・・アルゲリッチもまたキャンセル魔となる。・・・これ以上支持しても意味が無いと判断して・・・ホロヴィッツの元へ・・・弟子入りを断った・・・色々あり65年のショパンコンクールで優勝・・・60年のポリーニに続き「ミケランジェリのでし」が二回連続して優勝・・・一人はミケランジェリのもとへ行く前に優勝し、ひとりは決別した後に優勝したわけで、ふたりとも彼の指導のおかげで栄冠を得たわけではない。

1955年はハラシェヴィチが優勝・・・審査員だったミケランジェリアシュケナージを強く推し、意見が通らないとわかると途中で帰った・・・80年のコンクールではアルゲリッチポゴレリチの演奏を、他の審査員が奇抜すぎると認めず第三次予選で落としたことに抗議して辞任し、彼は天才よと言い残してワルシャワを去った。この事件のおかげで、優勝したダン・タイ・ソンよりもポゴレリチのほうがスターになってしまった。

Maurizio Pollini Complete Recordings on Deutsche Grammophon

Maurizio Pollini Complete Recordings on Deutsche Grammophon

 
Various: Complete Recordings

Various: Complete Recordings

 
Arturo Benedetti Michelangeli -Complete Recordings On Deutsche Grammophon

Arturo Benedetti Michelangeli -Complete Recordings On Deutsche Grammophon

 

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イ・ムジチ

トスカニーニが絶賛、12人の若者の演奏を聞いた。彼らは素晴らしかった。音楽はまだ死んでいなかった。

 巨匠の絶賛・・・リストがベートーヴェンに絶賛されたのが伝説となったのに似ている。

ヴィヴァルディ:協奏曲集<四季>

ヴィヴァルディ:協奏曲集<四季>

 

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 エレーヌ・グリモー

 私は音楽が空間を支配し、空間そのものとなるのを感じた。

彼女はパリ音楽院でも自分の居場所を見つけられず、やめてしまう。・・・チャイコフスキーコンクールに挑戦するが、入賞できない。それなのに、当代一のピアニストになってしまうのだから、音楽院やコンクールは無意味だと言う説の正しさの一例となる。

バレンボイムとは、演奏の方法と曲目で激しく対立した。若きピアニストはマエストロの言いなりにならない。

クレーメルからは譜面上での知的な練習、アルゲリッチからは直感の生命力を教わった。彼女はそれを人生を決定する出会いと記す。

Helene Grimaud: The Warner Recordings

Helene Grimaud: The Warner Recordings

 

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アンネ=ゾフィー・ムター

カラヤンは妻エリエッチに、ムターについてこう語った。「才能があるなんてものじゃない。彼女は、真のヴァイオリンの天才だ」

カラヤンの死により、音楽界から帝王はいなくなった。そしていつの頃からか、ムターは女王と呼ばれている。

個人的に好きなのはヴァイオリン協奏曲第3番ト長調K.216(シュトラスブルグ協奏曲)

モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲全集

モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲全集

 

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エミール・ギレリス

 ギレリス少年がベートーヴェンの熱情ソナタを引き始めると、ルービンシュタインは最初の数小節を聞いただけで、天才だと見抜いた。・・・ソ連国内ではまだ無名に近い。同じオデッサに住むギレリスの一歳上のスヴァトスタフ・リヒテルは、さらに無名だった。なにしろリヒテルはこの時のルービンシュタインの演奏を聞いて啓示を受け、ピアニストになろうと決意したのだ。

第一回チャイコフスキー国際コンクール・・・アメリカからやって来たヴァン・クライバーンという青年が・・圧倒的な腕前だったのだ。・・・審査員の1人リヒテルが、二次選考に残った20名のうち、クライバーンには満点を投じ、15名には0点を投じた。・・・審査委員長のギレリスは当惑しつつ、点数の付け方を説明した。しかしリヒテルは平然と、「好きになれない演奏には点数をつけようがない」と言い放った。・・・当時の最高権力者であるフルシチョフ首相に面会を求め、「クライバーンというアメリカ人を優勝させたい」と伝えた。フルシチョフは、「そいつが、いちばんうまいのか。それなら、そいつにやれ」と許可した。

Beethoven Sonatas

Beethoven Sonatas

 
Van Cliburn Complete Album Collection

Van Cliburn Complete Album Collection

 

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 アルフレッド・ブレンデル

1960年代のウィーンで活躍していた3人の若手ピアニストは、日本では「三羽鴉(がらす)」と呼ばれた。グルダ、デームス、バドゥラ=スコダである。・・・3人と親しくしていながら、当時はあまり注目されていなかったのがブレンデル

「私にとってグールドはなってはいけない演奏家の典型でした。エキセントリックで、何が何でも作曲家の意図や作品の性格に反することをしようとする人でした」

一方のグールドは、「ブレンデルの弾く(モーツァルトの)協奏曲は、私が聞いた中では一番だと思います。熱と愛情がほどよく混じり合っている点で、あれ以上のものは全く想像できません」・・・もっとも、グールドはモーツァルトそのものに「彼の死は早すぎたというより遅すぎた」と語り、「感銘をうけたことはない」とまで言っているので、ブレンデルへの賛辞も皮肉かもしれない。だいたい、演奏そのものではなく、熱と愛情がほどよく混じり合っている点を評価しているのだ。・・・ブレンデル「彼はとても親切なことを書いてくれ、私のモーツァルトの録音を褒めてくれた」と語っているが、これもまた皮肉かもしれない。

一度だけだが会ったことがある。・・・ブレンデルはグールドの演奏について、「リズムを譜面通りに付点リズムで弾いていない」と指摘・・・次にバドゥラ=スコダがブレンデルが弾くベートーヴェンのハンマークラヴィーアの録音を聞かせると、グールドは「譜面にないオクターヴで弾いている」と指摘した。

ブレンデル「グールドはとても感じの良い格好のいい青年」だったと語るが、要するに、その音楽については褒めていない。・・・「あえて申し上げたい。譜面を正確に読むことは極めて難しい仕事です。」

シューベルト:ピアノ五重奏曲<ます>/モーァルト:ピアノ四重奏曲第1番

シューベルト:ピアノ五重奏曲<ます>/モーァルト:ピアノ四重奏曲第1番

 

 アンドレ・プレヴィン

 プレヴィンは作曲家でありピアニストであり、指揮者でもある。・・・現代のモーツァルトと讃えられてもおかしくはない。・・・20世紀のモーツァルトのような人が、すでにアメリカにはいた―レナード・バーンスタインである。・・・20世紀最大のピアニストであるホロヴィッツは、バーンスタインから何度も共演を持ちかけられたが、「君のほうが目立つから、いやだよ」と断り続けたというのだ。

レナード・バーンスタインがサンフランシスコに来て、サンフランシスコ交響楽団を指揮した。それを見学したブレヴィンはすっかり影響されてしまい、その数日後に、モントゥーのレッスンで指揮を始めると、「バーンスタイン君を見たね」と見破られてしまった。手取り足取り教えたわけでもないのに影響を与えたバーンスタインも、見て聞いていただけでそっくりの指揮が出来たプレヴィンも、そして瞬時に見破ったモントゥーも、いずれも天才である。

Tchaikovsky: Swan Lake/Sleepin

Tchaikovsky: Swan Lake/Sleepin

 
Trio Jazz: King Size

Trio Jazz: King Size

 

 ジョン・エリオット・ガーディナー

カラヤンの晩年のコンサートを聞いて、彼が力を行使するやり方にはどこか邪悪なところがあり、それが音楽を損なっているという印象を受けました。そこには何の驚きも、喜びの瞬間もありませんでした。型どおりとしか感じられなかった。全てが自己中心的で、全てが彼を中心に回っていたのです。

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

 ニューイヤーコンサート・・・指揮者が毎年交代するようになるのは1987年のカラヤンからで、それ以前は、1980年から86年まではロリン・マゼール、その前は1955年から79年まで25年間に渡り、ウィリー・ボスコフスキーがずっと指揮していた。さらにその前はクレメンス・クラウスが1939年から指揮していた。

ピエール・ブーレーズ

「このままでは音楽が死んでしまいます。一体誰が、音楽がはまり込んでいる問題から解放させるのですか!」

 メシアンは即答した。「もちろん、ブーレーズ、君さ!」

ブーレーズは自分が何をするために音楽を学んでいるのかも、よく理解していなかったのだろう。だが、何かをやらなければならないことだけは分かっており、メシアンもまた、この若者が音楽史に残るであろう天才だとも分かっていたのだ。

パリ音楽院時代・・・ランパルによるとブーレーズは「好きな作曲家はまったくなかった」「彼は反抗的で、彼を楽しませる音楽はほとんどなかった」

The Complete Columbia Album Collection [67CD Boxset]

The Complete Columbia Album Collection [67CD Boxset]

 

 ダニエル・バレンボイム

イスラエルがドイツ音楽を受け入れるには様々なプロセスがあり、その多くに、バレンボイムが関わっている。

 イスラエルはドイツ音楽とドイツの音楽家を徐々に受け容れていったが、例外がナチス党員であったカラヤンヒトラーが心酔し「ナチスの音楽」のイメージが強いワーグナーだった。・・・ワーグナーヒトラーが生まれる前に死んでおり、ホロコーストに対する直接の責任はない。

 ミシェル・ペロフ

同業のカップルがうまくいかなくなるのは、どちらかが才能の差を見せつけられることに、耐えられなくなるケースが多い。 二人(アルゲリッチとペロフ)の場合、ペロフがピアノを弾けなくなるという形で現れた。

アルゲリッチが対して練習もしないのに、強大でパワフルで、しかも美しい演奏を、苦もなくしていることに、ペロフが焦ってしまい、さらに自分がアルゲリッチの真似をしてしまうことを恐れるようになった(ベラミーによるアルゲリッチの伝記)

アルゲリッチについては「偉大なピアニストです。彼女には独自のインスピレーションと音楽性があり、あの超絶技巧は、誰もが称賛せざるを得ません」と今も絶賛している。 

ドビュッシー:ピアノ作品全集

ドビュッシー:ピアノ作品全集

 

 マルタ・アルゲリッチ

 ホロヴィッツの終演後、アルゲリッチが楽屋を尋ねると、彼女に気づいたホロヴィッツが「あなたこそ、最高だ」と叫んだので、彼女が「それはあなたのことです」と言い返したという逸話がある。

コラール「ホロヴィッツは、アルゲリッチが自分と同じように弾ける唯一のピアニストであることを認めていた」「ふたりとも自由な心の持ち主で、ピアノを思いのままに操り、一瞬にして聞く人を征服する恐るべき能力を持ったピアニストである」と評している。

 

Martha Argerich: Complete Recordings On Deutsche Gramophon

Martha Argerich: Complete Recordings On Deutsche Gramophon

 

 レナード・バーンスタイン

「さっき、アメリカでもっとも偉大なユダヤ人の作曲家、ジョージ・ガーシュウィンがなくなりました。これからガーシュウィンの曲を弾きますが、終わっても拍手はしないで下さい」

彼はガーシュウィンのプレリュード第二番を弾いた。子どもたちは静かにその音楽を聴いた。

「重苦しい静けさだった。その時初めて、音楽の力を感じた。演奏を終えた後、その場を去りながら、自分がガーシュウィンになったような気がした。その曲を自分が作曲したような気になった」

音楽の力を感じたい青年は、やがてガーシュウィンの次に「アメリカでもっとも偉大なユダヤ人の音楽家」となり、多くの若者に直接・間接に影響を与えた。

The Complete Mahler Symphonies

The Complete Mahler Symphonies

 

 

 

 

漫画201707

 今夜は月が綺麗ですが、とりあえず死ね

7月に5巻が発売と聞いたので、その前に積読を消化。「恋心が殺意に変化する病気」というワンアイデアとキャッチーなタイトルが新鮮。こういうインパクト勝負+プロットは月並み(とりあえず変な組織出しとけみたいな)な漫画は3巻くらいで華麗にフィニッシュ決めたほうがみんな満足だと思うんだけど・・・。

 結婚指輪物語

サトウのハーレムっぷりに苛つきつつ、ヒメちゃんを愛でる漫画。アンバルちゃんは髪型がすごい。良くも悪くも普通のファンタジー、ちょいアダルト。

 喧嘩稼業

 読んだと思ったら読んでなかった。十兵衛VS佐川のクライマックス。喧嘩商売ほどの胸熱感はもうないけど(慣れちゃった?)、安定して面白い。巻末漫画はひどすぎる。

 あさひなぐ

 乃木坂で実写化するとのことだったので、ちと敬遠してたけど一気読み。なるほど、食わず嫌いはやっぱり良くないわ、面白い。コツコツ強くなっていく感じがベイビーステップの丸尾君みたいで感情移入しやすい。強くなる理由が「才能とか努力とか、はたまた超能力とか」に帰するんじゃなくて、「そもそも競技人口が少ないから」って勝手に納得できるし、やっぱりマイナー競技スポーツ漫画はいい市場だわ。

設定やキャラはテンプレライクであまり奇抜なところはないけど、だからこそ王道の青春⇒感動!が体験できるし、真春ちゃんと薙ちゃんは可愛いし、茨城の汚れくノ一(福留やす子)はいいキャラだ。映画にやす子が登場しないのが一番のがっかりポイント。深田恭子とかにやってほしかった。

 ボールルームへようこそ

 休載していたのですっかり存在を忘れていたが、アニメ化ニュースで存在を再認識し、いつのまにやら新刊が(2017/1に連載再開してたのか・・・)。こちらもマイナースポーツの社交ダンス漫画。若干のご都合展開は気になるが、どうなるか先が読めないので楽しい。

 きのう何食べた?

夏バテで食欲が無いので、なっとうアボカド丼を作るために再読(笑

きのう何食べた?(12) (モーニング KC)

きのう何食べた?(12) (モーニング KC)

 

 IT'S MY LIFE 

 8巻出る前に消化。予想はしてたけど日常編終わりか・・・まぁそうだよな、日常漫画にするつもりなら、IT'S MY HOMEって名前にするもんな。今後が不安。

IT’S MY LIFE(7) (裏少年サンデーコミックス)

IT’S MY LIFE(7) (裏少年サンデーコミックス)

 

 響~小説家になる方法

 8月に7巻が出るらしいので、その前に復習で一気読み。響ちゃんのエキセントリックな性格と奇行、そしていちいち本質をズバリとついてくる発言が魅力。周りの生徒達の心理描写も丁寧に扱ってくれると、さらに深みが増しそう。

恋愛ハーレムゲーム終了のお知らせがくる頃に 

 本屋で見つけて気になっていたが、購入時期を逸し続けていたら密林のオススメに表示されたので能動的にワンクリック詐欺に。1巻はインストラクション的な位置づけで今後どういう展開になるのか気になる(デスノート的な感じになりそう?)。

 ぐらんぶる

 夏なので再読、安定のダイビング(=裸と飲酒)漫画。現行で最強クラスのギャグ漫画なので、頭を空っぽにして笑いたい人は必読。読んでも何も残らないが・・・。

 かぐや様は告らせたい

 作者も認めているように、副題の「天才たちの恋愛頭脳戦?」は完全にミスリーディング。作者のIQが低すぎて、まったく頭脳戦を見ることが出来ない。設定は良かったけど、力量不足でプロットはスカスカ、今や藤原書記を眺めるだけの漫画に。

 orange

 本屋で見かけて、「あれ、完結してなかったっけ?」とスルーした思い出。あぁ、こういうアプローチでの続刊ね;ファンには嬉しい続刊。

 ベイビーステップ

 鉄板の王道スポーツ漫画。意味不明なスポ根に走らず、ちゃんと合理的な説明がされていて納得感もある。ちゃんとテニスやっていて、「滅びよ」とか言わないし、ネットが燃えたり、選手が分身したりしない。

 甘々と稲妻

安定の日常系。並行して読んでいた「高杉さん家のお弁当」が2015年に完結して以降、われわれの運命はつむぎちゃんと小鳥ちゃんに託されている。

 ドラゴン、家を買う。

 奇をてらったアイデアとタイトルはよかったが、内容は薄くて拍子抜け。IT'S MY LIFEの後を託すには心もとない。

 ソードオラトリア

もはやどれが外伝なのか、誰が主人公なのか分からないダンまちファミリーの一つ。王道バトルファンタジーで安心して読める。アイズは可愛いが出来すぎた娘なので、個人的にはフィンが一番好き。

 かくしごと

 今一番続きが気になって仕方がない漫画の一つ、もう一つはワールドトリガー(ジャンルが違いすぎる笑)。結局のところ、主人公と背景が違うだけで、久米田節で扱われる時事ネタ・ヲタクネタ・漫画家ネタ(成分多め)のショートショートを読んで笑うという構造は毎度のことだが、冒頭・巻末の意味ありげな姫ちゃんストーリーのせいで全体に調和と深みが与えらていて、なんかズルい(巧い)。

 くーねるまるた

 いつの間にやら12巻、日常系なので変わらず続いてくれればええんやで。

監獄学園

読んでも何も残らない漫画。男囚人編がピークで、その後は惰性で読み続けているだけ(みつ子の登場は笑ったけど)。

プラチナエンド 

このコンビだからこその期待値の高さ、ゆえにどうも盛り上がりに欠ける展開。このままフェードアウトかなぁ・・・。

プラチナエンド 6 (ジャンプコミックス)

 

LIFE SHIFT

 70歳、80歳、100歳になった自分が今の自分をどう見るかを考えてほしい。今あなたが下そうとしている決断は、未来の自分の厳しい評価に耐えられるだろうか?・・・人生が短く、人々が人生で多くの遺構を経験しなかった頃は、取り立てて深く考えなくても『私は何者か?』と言うと位の答えは自ずと見えてきた。しかし、人生が長くなり、多くの移行を経験する時代には、人生全体を貫く要素が何かを意識的に問わなくてはならない。

生涯を通じてより多くの変化を経験し、より多くの不確実性に直面する・・・柔軟性をもって、将来に方向転換と再投資を行う覚悟を持っておくこと・・・ポール・オースター「あらゆる自体に備えていないということは、全く備えがないのと同じだ。」

ハーバード大学の経済学者クローディア・ゴールディンとローレンス・カッツによれば、教育とテクノロジーは抜きつ抜かれつの競争を続けてきた。テクノロジーが進歩して、それを使いこなせる高スキル労働者への需要が増加するペースに、教育によって高スキル労働者が供給されるペースが追いつかなければ、高度なスキルの持ち主に支払われる賃金は上昇する。一方、スキルを持たない低学歴層の賃金は下がり、所得格差が広がる。しかし、このように教育の投資利益率が高くなれば、大学に進む人の割合が上昇する。

19世紀は産業革命の時代で、物的資本が経済の原動力・・・20世紀は、教育と人的資本が大きな価値・・・21世紀には、他人が複製したり購入したり出来るようないアイデアイノベーションを創出することを通じて、経済的な価値が生み出される時代になる。

ワトソンは、詳細な癌診断ができる。しかし、これはむしろ、診断に人工知能の力を借りられるようになり、医療従事者に求められるスキルの中身が変わると見たほうがいい。上方を取り出すスキルではなく、高度な直感的判断、対人関係、チームのモチベーションの向上、そして意思決定に関わるスキルが重要になるのだ。・・・長く生産的な人生を送るためには、思考の柔軟性と敏捷性など、どの分野でも役に立つ汎用スキルが一層必要とされるようになる。その結果、汎用スキルへのニーズと専門技能へのニーズの間で緊張関係が生じる。・・・どのような専門技能もいずれ時代遅れになる可能性が高い。

新しい人的ネットワークを築けば、古い友だちの一部と疎遠になることは避けられない。・・・あなたのことを最もよく知っている人は、あなたの変身を助けるのではなく、妨げる可能性が最も高い・・・あなたが今まで通りで変わらないことに最も多くの投資をしている人間だからだ。

大規模で多様性に飛んだ人的ネットワークを重要な無形の資産の一つと位置づけたのは、それが長期にわたり価値を生むものだからだ。・・・グラノヴェター・・・重要なのは人的ネットワーク・・・何を知っているかではなく、誰を知っているかが大切だというのだ。

エクスプローラー・・・新しいものを発見する喜びを味わうために旅に出る冒険者・・・ オットー・シャイマー「システムの端に立ち、自分の思い込みや価値観に新しい光を当てる」・・・「るつぼ」の経験・・・高温で金属を溶かして新しい物質を生成するるつぼのように、その人の人間性を形作る経験が必要なのだ。・・・経験をするだけでなく、その経験について自問しなければ、世界に対する見方を変え、接した人達の人生のスト-リを自分のものにできない。問いを発し、注意深く観察し、熱心に耳を傾けることが必要だ。・・・長寿化時代には変身資産という新しいタイプの資産が重要になる。・・・重要なのは、本やウェブサイトを読むだけでなく、実際に人々と顔を合わせ、理屈抜きの感情レベルの経験をすることだ。

ポートフォリオワーカー・・・非効率性から逃れられない・・・様々な活動に同時並行で携わる人は、刺激と興奮を味わえる反面、その代償として「規模の経済」の恩恵に浴せない・・・重要なのは、互いに無関係のスキルと能力ではなく、互いに関連のあるスキルと能力が要求される活動を選ぶことだ。

 ハーバード大学のジョン・キャンベル教授がアメリカ金融学会で行った会長スピーチに寄れば、市民が犯しがちな過ちのパターンがいくつかある

  • 株式への投資が少なすぎること・・・株式投資をしていても、十分な分散投資をしていないケースが多い。
  • 局所バイアスの影響を受けやすい・・・なじみのある企業や近くにある企業の株式に投資する傾向が強い
  • 勤務先企業の株式を保有しすぎる・・・雇用と資産の療法を同時に危険に晒す
  • 値上がりしている資産を売却し、値下がりしている資産を保持し続ける傾向があること
  • 投資資産を放置しがちなこと・・・現状維持バイアス

Household Finance

マルチステージの人生では、引退後の所得減少だけでなく、人生の様々なステージを生きる間に経験する所得の変動に、とりわけ所得が大幅に減る移行期間に備えることも重要になる。

ACORNSという会社は、デビットカードやクレジットカードで買物をした時、端数を切り上げて精算し、実際の代金との差額を投資に回すアプリを開発した。引退後の生活資金を確保するには到底足りないが、貯蓄過小の状態を生むバイアスの影響を和らげることが出来る。(現在バイアス・双曲割引)

ウィリアム・フォークナー・・・一斉行進から脱落すれば、踏み殺されかねない

野生の棕櫚 (新潮文庫)

野生の棕櫚 (新潮文庫)

 

 しかし、柔軟な働き方を求める個人のニーズが高まれば、全員を同じスケジュールで長時間働かせたい企業のニーズとの間で激しい衝突が起きるだろう。既存の働き方への圧力が強まる結果、時間の構成に関する多様性が増すこと、高スキルの職に就く人達に特有の時間の構成の仕方が生まれること、そして、余暇時間がレクリエーション(娯楽)から自己のリ・クリエーション(再創造)の時間へ変わっていくことは間違いない。

経済学者のダニエル・カーネマンが指摘するように、私達は往々にして誤った楽観主義に流される。私たちが適切な準備や行動をしないのは、それがもたらす結果を恐れるからではなく、未来について愚かなほど楽観的な考えを持っているからなのだ。私達は誰しもマーガレット・ヘファーナンが言う「見て見ぬふり」に陥りやすいのである。長寿化時代の難しい点は、失敗を犯した場合、その悪影響を受ける期間が長くなる可能性があることだ(裏を返せば、窮地に追い込まれても少しずつ挽回できる時間的余裕もあるわけだが)。

テクノロジーのイノベーションと長寿化の信仰の影響により、教育という古い産業が大きな脅威にさらされていることは明らかだ。・・・クリステンセン教授・・・テクノロジーの進歩により、教育分野で「破壊的イノベーション」の機が熟しており、そのイノベーション生涯学習にも好ましい影響を及ぼすという。

社会で若者と高齢者の隔離が定着する過程で大きな役割を果たしたのでは、企業だった。企業が引退という制度を確立させたことの影響が大きかったのである。・・・年令による区別は、マルチステージの人生には適さない。この変化を理解し、受け入れなければ、企業は墓穴を掘ることになるだろう。・・・明示的な年齢差別はともかく、人材の採用、昇進、給与の決定における暗黙の年齢差別を取り除くのは、極めて手ごわい課題だ。それでも、年令による差別をなくし、年齢や年齢の影響を受ける同僚評価とは無関係の客観的な基準を導入する必要がある。・・・3ステージの人生では、年齢は経験を推し量る材料として有効であり、それが昇進と給与に直接反映されるのは合理的だったが、マルチステージの人生では、年齢と経験は比例しないからだ。

政府と企業のルールへのいらだちを強めた人々は、個人単位と集団単位で新しい働き方と生き方を実験したいと思い始めるだろう。それは、間違いなく好ましい材料だ。そのような実験のプロセスを通じて、多くの人が自分にとってまことに大切なものを探索するようになり、ひとりひとりの個性と多様性が奨励され、賞賛されるようになる。こうして、人々は多様な働き方と生き方を選べるようになり、それが100年ライフの果実を生むのだ。

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)

 

 

あやしい投資話に乗ってみた

題名とは対象的に、まっとうな投資対象だらけで肩透かしを食らう。筆者の経済学・金融に関する知識不足も相まってナンダカナー。

グリーンシート銘柄・・・なんとこの会社は、Javaを主としたシステム開発から撤退してしまったのです。 Java技術に強み・・・ということで期待して買ったのに、これはなんということでしょうか。そして気がつけば、なんと牡蠣のネット販売へと、完全に事業内容を変えてしまったのです。いや、私はカキフライは大好きですが、それとこれとは、話が違います。・・・そうこうしているうちに、なんと、この会社はグリーンシート銘柄の指定取り消しを受けたのです。

日本振興銀行・・・どう見ても普通の雑居ビルです。・・・この銀行には決済システムがないので、三菱東京UFJ銀行の専用口座に振り込んで下さい、と。・・・預入れは、定期預金専門・・・インターバンク市場に参加していません・・・貸付資金を調達するためには、預金獲得が必須・・・預金保険制度・・・預金保険機構保有する第二日本承継銀行に引き継がれる・・・破綻日から返金日までは、金利はつきません・・・実際には、破綻日から返金日まで半年近くもかかった・・・1000万円を超える部分については、なんと6割以上がカットされたのです。

 

あやしい投資話に乗ってみた

あやしい投資話に乗ってみた

 
あやしい投資話に乗ってみた

あやしい投資話に乗ってみた

 

自己教育とは(自己学習・独学とは)

有能な人は、常に学ぶ人である。

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  •  「偉大な起業家はみな、教育、特に自己教育の情熱を持っている。自己教育を始めるのに早すぎるということはない」
  • 従来の高等教育は人生で本当に重要なことを考えるのを妨げる脇道だティールは主張し、「人は(大学に入ると)本当の計画や目的を見失ってしまう」と付け加えた。

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  •  教授にとっての最大の関心事はいつも自分の研究なのです。もしそうでないとしたら、それはおそらく研究のレベルが低い教授です。・・大学というのは・・先生が何かを教えてくれるところではなく、自分で学ぶところです。自分で学ぶためにはどうすればいいかということを学ぶところです。・・自分で自分を教育していく自己教育の場です。・・教師から与えられた定型化された知識をいかに正しく覚えこんだかによって評価されるという人生をずっと歩んできたから、とつぜんそういうことをいわれると、戸惑う人が大部分でしょう。
  • 東大に入ったということは、ここで勉強する資格を得たというだけのことです。その資格を使って、これからどれだけ自己教育に努め、どれだけ自分を知的にビルドアップしていけるか。ここのところが一番大事なところです。

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  • 自分という「学習マシン」を最適化するためにそのようなアプローチをとっているに過ぎない。チュートリアルを自分でデザインするようなスタイルで学ぶのが好きらしい。「僕は、誰かの話を拝聴して学ぶなんてことはしない・・・文献を読み、人々と話、そのやり取りの中で学ぶんだ」・・・「抑えがたい好奇心がDNAレベルで組み込まれているのね。彼にとって、読書はあくまで学習手段なのです」

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  • 人生はポートフォリオじゃない・・・等しく可能性のあるキャリアをいくつも同時に進めて、人生を分散させることも出来ない。学校ではそれと反対のことを教えている。学校教育は画一的に一般教養を受け渡すだけだ。アメリカの教育制度を通過すると、べき乗則で考えることが出来なくなる。・・・重要なのは何をするかだ。自分の得意なことにあくまでも集中すべきだし、その前にそれが将来価値を持つかどうかを真剣に考えたほうがいい。
  • 結局は、自分のビジョンと戦略に沿って、意思決定しないといけない。

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  •  偉業を達成する人々は、「一つのことをひたすら考え続け、ありとあらゆるものを活用し、自分の内面に観察の目を向けるだけでなく、他の人々の精神生活も熱心に観察し、いたるところに見習うべき人物を見つけては奮起し、飽くなき探究心を持ってありとあらゆる手段を利用する」
  • 自分が本当に好きなことに打ち込むの。でも、好きになるだけじゃだめなのよ。愛し続けないとね
  • 小さな計画は立てないように、そういうものは人の魂を揺り動かすような魔力はないのだから。フランク・ロイド・ライト
  • よく考え抜いた結果、情熱に従って生きるために、険しい道のりを選んだのです。何をするにしても、自分のやっていることに情熱を持っていない限り、長続きはしないことがわかるでしょうジェフ・ベゾス
  • ほとんどの人は「これだ」と思うものが見つかるまでに何年もかかっており、その間、様々なことに興味を持って挑戦してきたことがわかった。今は寝ても覚めても、そのことばかり考えてしまうほど夢中になっていることも、最初から「これが自分の天職だ」と悟っていたわけではなかったのだ。

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  •  「何をやるかより、何をやらないかが大切だ」とよくいっている。一人の科学者の一生の研究時間なんてごく限られている。研究テーマなんてごまんとある。ちょっと面白いなという程度でテーマを選んでたら、本当に大切なことをやる暇がないうちに一生が終わってしまうんですよ。だから、これは自分はこれが本当に重要なことだと思う。これなら一生続けても悔いはないと思うことが見つかるまで研究を始めるなといってるんです。利根川進

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  • ピータードラッカーはこう言っている。「できる人は『ノー』と言う。『これは自分の仕事ではない』と言えるのだ」
  • 万物の大半はほとんど価値がなく、ほとんど成果を生まない。少数のものだけが非常に役立ち、大きな影響力を持つ。リチャード・コッチ(起業家・コンサルタント
  • 世界最高の料理人と言われるフェラン・アドリアは、「より少なく、しかしより良く」の実践者だ。伝統的な料理から余分なものを削ぎ落とし、純粋な本質だけを使って、誰も想像しなかった料理をつくり上げる
  • 多数の良いチャンスは、少数のものすごく良いチャンスに遠く及ばない。そのことを理解し、数かぎりないチャンスの中から「これだけは」というものを見つけなくてはならない。本当に重要なことにイエスと言うために、その他全てにノーというのだ。

  • エッセンシャル思考の人は、自らトレードオフを選びとる。誰かに決められる前に、自分で決める。経済学者のトーマス・ソイルはこう言った。「完璧な答えなど存在しない。あるのはトレードオフだけだ」

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  • これまでバフェットからゲイツが受けた最良のアドバイスの一つが次の言葉だという。「本当に重要な事だけを選んで、それ以外は上手に『ノー』と断ることも大切だよ

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 運命は勇者に微笑む 羽生善治

  •  ノーベル賞は偶然と必然の組み合わせだと言いましたが、日本人の中に本当に限界に挑戦するような研究者が少ないということではないでしょうか。
  • 自分が本当にやりたいことをやっている時には、疲れを感じない。もしやっているうちに疲れちゃった、もう嫌になっちゃったというのは、そのやっていることをほんとうに自分がやりたいことなのかどうかということを、もう一度検討して見直す必要があるのじゃないかと思います。本当にやりたいと思っていることだったら、嫌になるということはない。疲れちゃってもう嫌だというようなこともない。ただし、困難に出会うことはありますよ。じゃあ、困難に出会った時にどうするか。・・・もう、とことん考えます。どうしたらこの困難を乗り越えられるか。

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  •  チェスキーは学習マシーンだ。それが彼の一番の強みだとリード・ホフマンは言う。成功する起業家はみんなそうだ。『永遠の学習者』なんだ。彼はその究極のお手本だね。

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  •  20世紀になって大組織の時代になると、社会の条件が大きく変わったことは間違いありません。学歴社会が形成され、高学歴でないと組織に入って仕事をすることが難しくなりました。組織化、官僚化が進めば、独学だけで専門家集団のトップに立つのは、難しくなります。また、技術開発には多額の資金が必要となり、知の制度化が進むと、個人発明家の役割は限定的になります。

president.jp

  • 独学の真骨頂とは、「常識的な考えにとらわれている人ならやらないことを、試みる」ということなのです。ドイツの高名な数学者ゴットフリート・ライプニッツ(1646年-1716年)は、「独学のおかげで、空虚でどのみち忘れてしまうような、また根拠ではなく教師の栄誉を意味するような事柄から免れ、どの学問でも熱心に諸原理に至るまで探求することができた」と言っています。

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  • 私たちは固定的な成績(Aプラス、Bマイナス、可/不可など)、職業上のアイデンティティの狭い定義(「私は消費者製品のマーケティング担当責任者」)、そして何より過剰な専門化(「私は健康・美容系の消費者製品のマーケティング担当責任者」)に別れを告げるべきだ。そして、教室のなかだけでなく毎日が学習だという考え方を受け入れるべきだ。あなた自身、他者、物事への理解を深めようとしているときは、常に学習していることを忘れてはならない。

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