ゲーテ格言集

  • 太陽が照れば塵も輝く。
  • 考える人間の最も美しい幸福は、極め得るものを極めてしまい、極め得ないものを静かに崇めることである。
  • 鉄の忍耐、石の辛抱。
  • いつも変わらなくてこそ、ほんとの愛だ。一切を与えられても、一切を拒まれても、変わらなくてこそ。
  • 愛人の欠点を美徳と思わないほどのものは、愛しているとは言えない。
  • 何をそんなに考えていらっしゃるんでしょう。人間は決して考えてはなりません。考えると年をとるばかりです。・・人間は一つのことに執着してはなりません。そんなことをすると、気が変になります。我々は色々なことを雑然と頭の中に持っていなければなりません。
  • 人間がほんとに悪くなると、人を傷つけて喜ぶこと以外に興味を持たなくなる。
  • 全ての階級を通じて、一段と気高い人はだれか。どんな長所を持っていても、常に心の平衡を失わぬ人。
  • 誤りを認めるのは、真理を見出すのよりはるかに容易である。誤りは表面にあるので、片づけやすい。真理は深いところにおさまっているので、それをさぐるのは、誰にでもできることではない。
  • もし賢い人が間違いをしないとしたら、愚か者は絶望するほかないだろう。
  • 友達の欠点をあげつらう人々がある。それによって何の得るところもない。私は常に敵の功績に注意を払い、それによって利益を得た。
  • 才能は静けさの中で作られ、性格は世の激流の中で作られる。
  • およそ能力というものは、どんなささいなものでも、われわれに生まれついているものであって、予め定められていない能力などというものはない。ただ我々の曖昧で散漫な教育が人間をあやふやにする。そんな教育は本能を活気づけ、ほんとの素質を助長する代わりに、常に求めてやまない本性とは一致しないような事柄に、努力を向けさせる。自分自身の道を歩いて迷っている子供や青年のほうが、他人の道を正しく歩いている人々より、私には好ましい。前者は自分の力か、あるいは他人の指導によって、自分の性質にかなった正しい道を見出すと、決してその道を離れることがない。これに反し、後者は他から加えられたくびきを振り落として、無制限な自由に身を任せる危険に絶えずさらされている。
  • 大学は生活に充分生き生きと働きかけないと言って人々は不平を言う。しかし、それは大学に関係したことではなく、学問の取り扱い方全体に関係することである。
  • よく見ると、およそ哲学というものは、常識を分かりにくい言葉で表したものにすぎない。
  • 古人が既に持っていた不充分な真理を探し出して、それをより以上に進めることは、学問において、極めて功多いものである。
  • 真理より偉大なものはありません。最小の真理でさえ偉大です。私は近ごろ次のような考えに思い当りました。たとい有害な真理でも、有害なのはほんの一時であって、やがては、常に有用な、しかも大いに有用な他の真理に達するのです。その逆に、有用な誤りは、有用なのはほんの一時であって、いっそう有害な他の誤りに人を釣りこむものですから、有害です。
  • 若い時は興味が散漫なため忘れっぽく、歳をとると、興味の欠乏のため忘れっぽい。
  • あらゆることにおいて公平であるということは愚かしいことである。それは自我を破壊するというものである。人間はその狭い本性の中に、愛と憎しみという二重の感情を必要とする。人間は昼と同様、夜を必要としないだろうか。
  • 仕事の圧迫は心にとって極めて有難いものだ。その重荷から解放されると、心は一段と自由に遊び、生活を楽しむ。仕事をせずにのんびりしている人間ほどみじめなものはない。そんな人はどんなに美しい天分もいとわしく感じる。
  • 仕事は仲間を作る。
  • 喫煙は頭を悪くします。考えたり、創作したりすることを不可能にします。それは怠け者や退屈している人々だけのすることです。彼らは人生の三分の一を寝て過ごし、三分の一を飲食その他、必要な、あるいは無駄なことでむなしく過ごし、そうしておいて、人生は短いと口癖に言いながら、残りの三分の一をどうすべきか知らないのです。そうした怠け者にとっては、パイプに親しむこと、空中に吐く煙を眺めることは時間つぶしになるので、利口な楽しみです。喫煙にはビールもつきものです。それで、熱くなった口腔が冷まされるのです。
  • 義務の重荷から我々を開放することのできるのは、良心的な実行だけである。
  • 中途半端にやる習慣を脱し、全体の中に、善きものの中に、美しきものの中に、決然と生くることを心せんかな。
  • 芽生えつつある才能にとっては、シェイクスピアを読むことは危険である。シェイクスピアは否応なしに彼らをして自分を模索させる。それで彼らは自分の創作をしたつもりでいる。
  • 外国語を知らないものは、自分の国語について何も知らない。-
  • 気のいい人たちは、読むことを学ぶのにどのくらい時間と骨折りがいるものか、知らない。私はそれに八十年を費やしたが、今でもまだ目指すところに達したとは言えない。
  • 本の中には、それを読んで我々が学ぶためでなく、著者が何かを知っていたということを我々に知らせるために書かれたと思われるような本がある。
  • 孤独は良いものです。自分自身と平和のうちに生き、何かなすべきしっかりしたことがあれば。
  • 個人は何者かに達するためには、自己をあきらめなければならないということを、誰も理解しない。
  • 人はめいめい自分の流儀に従って考えねばならない。何故なら、人は自分のやり方によって常に真理、あるいは一生を通じて役に立つ一種の真理を見出すのであるから、ただ放逸に流れてはならない。自制しなければならない。単なる赤裸々な本能は人間にふさわしくない。
  • 無制限な活動は、どんな種類のものであろうと、結局破産する。
  • 有能な人は、常に学ぶ人である。
  • 支配したり服従したりしないて、それでいて何者かであり得る人だけが、ほんとに幸福であり、偉大なのだ。
  • 最善をなそうと思ったら自分自身に安住していないで、名人の心に従え、名人とともに迷うのは得るところがある。
  • 真の弟子は、知られたものから知られざるものを発展させることを学び、かくして師に近づく。
  • なんでも知らないことが必要なので、知ってることは役に立たない。
  • 真剣さなくしては、この世で何事も成し遂げることができない。教養のある人と呼ばれる人たちの間に、真剣さはほとんど見出されない実情である。
  • 経験したことは理解した、と思いこんでいる人がたくさんいる。
  • 理解していないものは、所有しているとは言えない。
  • ある大きな集会からある時、静かな学者が帰宅した。「いかがでした?」と尋ねると、「あれが本だったら、わしは読まないだろう」と彼は答えた。
  • 私たちが読んだ善い思想、私たちが聞いた顕著なことを、私たちは日記に書きつける。しかし同時に、友達の手紙から独特な言説、独自な見解、ちょっとした才気のある言葉などを書きつける骨折りをしたならば、私たちは非常に豊富になるだろうに。人は手紙を片付けて二度と読まない。人は慎重さから最後に手紙を破棄する。こうして最も美しい最も直接な命の息吹が自他にとって取り戻しようもなく消えて行く。私はこの怠慢を償おうと企てる。
  • 愚か者と賢い人は同様に害がない。半分愚かなものと半分賢いものとだけが、最も危険である。
  • 子供はどんな種類の活動にでも手を出したがる。それは、巧みになされたことは何でもやさしく見えるからである。何でも初めは難しい。それはある意味ではほんとかも知れない。だが、もっと一般的にはこういうことが出来る。何でも初めはやさしい。最後の段階をよじ登るのこそ最も困難で、それをやり遂げることは、きわめてまれであると。
  • 役に立たぬ人とは誰か。命令することも、服従することもできぬ者。
ゲーテ格言集 (新潮文庫)

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