共有経済の大きな特徴は、アイデア自体は目新しくないこと(スンドララジャン)
サンフランシスコに住んでいた二人のデザイン学校卒業生が、失業して家賃の支払いに困っていた。2007年10月、地元のホテルがデザイン博で満杯になるタイミングを狙って、自宅の余ったスペースにエアマットを敷いて貸し出すことにした。
チェスキーは、・・・工業デザイン会社の3DIDで働きはじめた。・・・仕事はつまらない作業の繰り返しだった。「くだらないとは思わなかった。でも大学で夢見たこととは全然違ってた」・・・「なんか、僕の人生はこうして終わっていくんだ、って思った。大学で教わってたことと違うんだって」
コンセプトは磨いていた。国中で開かれる大規模な会議の期間中に止まる場所を探すためのサービスにしよう。・・・SXSW
投資家への売り込みは、すぐに拒絶にぶつかった。サイベルが紹介してくれた7人の投資家のほとんどは返事もよこさなかった。・・・ふたりは企業価値を150万ドルと見積もって・・・その時15万ドルを投資していたら、今では数十億ドルになっているはずだ。
ホストにただの朝食を送りつけ、それをゲストに渡してもらうという作戦だ。・・・送りつけるのはシリアルに決めた。・・・民主党大会の後、・・・1万個作って一箱2ドルで売れば、会社は生き延びられる。エンジェルから金をもらうのと同じじゃないかとチェスキーは自分を納得させた。この時点で、彼らはもう野球カードのバインダーが一杯になるくらいクレジットカードを作りまくり、一人2万ドルの借金があった。・・・シリアルの箱・・・バカでかい折り紙を折ってるみたいだった。・・・マーク・ザッカーバーグは糊付け作業なんてやってないし、手をやけどしながらシリアルの箱を組み立てたりしないよな、と心のなかでつぶやいた。・・・借金は返せたものの、シリアルと関係のないサイトには誰も集まらず、どうやってトラフィックを集めたらいいのか皆目検討もつかなかった。・・・チェスキーは母親から電話で、「え、ちょっと待って・・・シリアル外車になっちゃったの?」と聞かれた。・・・シリアルで2万ドルから3万ドルは儲けたのに、本業の売上はわずか5000ドルだった。・・・今は苦しいけど、そのうちいい苦労話になるから(チェスキー)
Yコンの受験は厳しいことで有名だ。・・・「お前アホか。シリアルは持っていくなよ」・・・ゲビアは、パートナーたちと話しているグレアムのところに近づいていき、シリアルを手渡した。グレアムはぎこちなくありがとうと言った。・・・おみやげじゃなくて、これ自分たちで作って売ったんです。それで会社の資金にしたんです。・・・「君たちゴキブリみたいだな。絶対に死なない。」・・・のちにグレアムは、例のシリアルが決め手だったと言っていた。「4ドルのシリアルを40ドルで売れるなら、他人のエアベッドで寝るようにみんなを説得できるだろうと思ったんだ。たぶんね」
「みんなが欲しがるものをつくろう」というYコンのモットーは、Gメールの生みの親で今はYコンのパートナーになったポール・ブチェットの言葉だ。伝統的なMBAの考えの逆を行くYコンビネーターの基本理念のひとつが、このモットーに現れている。
ベンチャー・キャピタリストのフレッド・ウィルソン「今の床にエアマットをおいたらホテル代わりになるなんていう発想に行き着かなかった。だからこの話を追いかけなかった」
グレアム「一番熱心な人間が誰よりも成功するということだ。いかにも優秀なタイプが成功するわけじゃない。成功するのはたいて、ダメなやつらだ」
これまで売り込んだ投資家にはことごとく相手にされず鼻であしらわれてきたのに、VC界で名門の誉れ高いセコイアが興味を持ってくれるなんて、信じられなかった。・・・伝統的な貸別荘業界の思考回路とは全く違っていたが、ホストとゲストを大規模に結びつけるという難問の少なくとも一部を彼らが解決していたのは明らかだった。・・・スタートアップの一番の敵は己の地震と決意なんだ。長い間、僕達は最悪だと言われ続けた。その後で、最高だって言われたんだ。(セコイアにとっても命運を分ける投資だった。あの58万5000ドルは、現時点でおよそ45億ドルと推定される)。
起業したいっていう人は多いけど、実際にやる人はそれほど多くない。彼らはやったんだ。・・・グズグズと頭のなかで想像をこねくり回してばかりじゃなかった。ローンチしたんだ。
グレイロック・パートナーズを運営するリード・ホフマン「アホなやつが下手にアイデアを売り込んだら、額面通り受け取るな。信頼できる売り込みが来るまで待て」「ビジネスによって創業者に求められる強みは違う。マーケットプレイスの創業者は枠にはまらない考え方ができて、とりとめのない方がいい」
ポール・グレアム「エアビーアンドビーとウィムドゥ(Wimdu、エアビーのパクリサイト)の違いは、エアビーアンドビーの創業者は伝道師で、ウィムドゥの創業者はカネで動く傭兵だということ。たいていは伝道師が勝つ。」・・・サムわ~兄弟はおそらく長期に会社を経営するつもりはない。彼らのビジネスモデルは長期経営でなく、事業売却を前提に成り立っていた。
グレイロックパートナーズのエリサ・シュライバー「ウーバーはただの取引。エアビーアンドビーは人との触れ合い」
基本的に、このモデルはホテルや自動車レンタル会社やタクシー協会ほどの安全を保証できない。人はいつもトレードオフを選択しているし、共有経済では別のトレードオフを選択し始めている。
ウィルソン(ホリデイ・イン創業)、マリオット、ヒルトンその他少数の起業家が、観光業界の最初の破壊者だった。彼らは新しい旅の姿を提案して業界を揺るがし、莫大な富を築き、現代の複合ホテルチェーンへの道を開いた。
僕達が勝っても、ホテルが負けるわけじゃない・・・掲載物件のおよそ4分の3は、大手ホテルの立っている場所の圏外だ。エアビーアンドビーは大人数で止まる場合が多い。テクノロジー業界的に言えば「ユースケース」が違う。
ベストウェスタンホテルズアンドリゾーツのデビッド・コングCEO「その時はニッチな商売だと答えた。おそらく共存できるし、それほど大きな影響はないと言ったんだ。あれ以来、急激に成長した。規模が年々倍になっている。」
ビル・マリオット「本物の破壊者だ」
エアビーアンドビーはこれからも伝統的な宿泊業界を侵食するだろう(ムーディーズ)
グローバルな不動産会社のCBREは2016年に発行した報告書でそう結論づけていた。・・・エアビーアンドビー競合指数を示して、ニューヨークとサンフランシスコで最もエアビーアンドビーの影響が大きいことを明らかにした。・・・稼働率は上がっても価格力を失ったのは、少なくとも部分的にはエアビーアンドビーが原因だと思われる。
ボストン大学の研究
http://journals.ama.org/doi/abs/10.1509/jmr.15.0204
特に繁忙期の価格力が低下したことは大きなダメージ
>日本のAirbnb関連研究
『シェアリングエコノミーの定量分析~ライドシェアと民泊の事例を用いて~』
ホテルにとっては、ピークシーズンにどれだけ料金をあげられるかが利益に直結する。年間宿泊日数の10%から15%しかないこのシーズンが、売上の重要な源泉になる。ホテル経営陣がエアビーアンドビーを苦々しく思うのは、地域で大きなイベントがあると需要に応じて供給が伸びてしまうからだ。・・・限界費用をほとんどかけずに拡大し、ほぼ一晩にして新市場に参入でき、その影響はこれから高まるばかりなのだから。
エアビーアンドビーが現在及ぼしているリスクがどんなものであれ、このペースで成長が続けば来年にはその脅威が2倍になることは覚悟しておいたほうがいい、とバークレイズ証券の投資家向けレポート
1950年台にオランダとスイスの教員組合はお互いに自宅を貸し借りする慣例を作り、夏休みの間に教師がお金をかけずに旅行を楽しめるようにした。
アコーホテルズCEOのセバスチャン・ベイジン「新しいコンセプトやサービスに対抗するのは馬鹿馬鹿しいし、無責任だ。共有経済に反対するのは、もちろんくだらない。世界はその方向に向かっている。こうした新しいサービスはどれも非常に勢いがあり、運用と実行も優れている。それを認めたほうがいい」
ジョージ・バーナード・ショー「成功とは、間違いを犯さないことではない。同じ間違いを繰り返さないことだ」
エアビーの社内でよく聞くガンジーの言葉「はじめに彼らは無視し、次に笑い、そして挑みかかるだろうーだが勝つのは我々だ」
バフェットのいちばん大切な教えは、雑音に惑わされるなということだ。
チェスキーは学習マシーンだ。それが彼の一番の強みだとリード・ホフマンは言う。成功する起業家はみんなそうだ。『永遠の学習者』なんだ。彼はその究極のお手本だね。
もちろん、ブライアンがプロダクトよりだということは間違いないし、優れた顧客価値を提供することにものすごく気を遣っていることも確かだ。でも、そういうタイプで規模拡大できないCEOは大勢いる。
マーク・アンドリーセン「ブライアンが、『どうしよう、大変だ』なんていうのを聞いたことが無い。いつも次の新しいことを見つけようとしている。」
『ヤツは学習の鬼だな』イーベイのドナヒュー
トーマス・フリードマン「悲観主義者はだいたい正しい。だが世界を変えるのは楽観主義者だ」