30〜40代におすすめのビジネス腕時計(制約あり)

はじめに

知り合いからビジネス用に腕時計を探しているので適当なものを見繕って欲しいという要望があったので、久しぶりに時計関連の記事を書くことにしました。過去に書いた記事は以下の通りで予算は低めに設定しています。今回は30~40代をターゲットに、予算を高めに設定した記事となります。 

yamanatan.hatenablog.com

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具体的な要望

知り合いから出された具体的な要望として、

  1. ビジネス用途で、スーツに合い、ちゃんとした印象を与えることができる
  2. 少々手荒に扱っても壊れない
  3. メンテナンスが楽(手巻きは嫌)
  4. 革ベルトは嫌(金属ベルト)
  5. 貴金属や宝石でキラキラしている時計は嫌
  6. ROLEXのように、いかにもな時計は避けたい
  7. セカンダリーである程度評価してくれるモデルがいい。投資ではないので、値上がりは期待しない。

というものが挙げられました。時計に詳しい人間からすると、

  • ビジネス用途ならドレスウォッチが最強だけど、手荒に扱われたら、すぐに壊れる。
  • メンテナンスの手間なら、自動巻きや手巻きは不利、クオーツ最強
  • パワーリザーブは長いほうがよさそう
  • ちゃんとした印象を与えられるのは革ベルト
  • 宝石に関しては避けるべきなので、ここはまぁOK
  • セカンダリーで評価されるのはROLEXや各ブランドのメジャーライン(いわゆるいかにも)なので、6と7の両立は厳しい。値上がるのはROLEXのプロやパテックフィリップ(PP)、オーデマ・ピゲ(AP)など一部ブランドの一部モデルだけ。また、基本的にセカンダリーで評価されるのは機械式、クオーツは評価されない。

という感想で、全部を満たす時計なんかないよ、と思いました。矛盾する要望が含まれているので、AIに聞いたら間違いなく解なしとなりそうです。

具体的な提案

大前提として、セカンダリーで評価されるモデルは、程度の差こそあれ、買いたいときに買えるとは限らないことを伝えておきました。また、「セカンダリーでの評価の高さ」を読み替えると、買値と売値の差が小さいほどよいということになります。そういう意味では、並行差別が無いブランドは特に、並行輸入品を買うという選択肢もあるのかな、と思いました。セカンダリーの評価については、下記リンクも参考にしました。

www.kaitori-ginza.com

非ドレスウォッチで硬めのビジネス用途、さらに丈夫で金属ベルトの時計となると、ラグジュアリースポーツ(ラグスポ)を提案するのが王道でしょう。ただラグスポは近年最も人気のカテゴリーなので、入手難易度は輪をかけて高いことになります。聞いた感じ、すぐに買う必要はなさそうなので、ここはあまり気にしない(ほぼ不可能なものは除)ことにしましたが、買うモデルが決まったあとは予約やマラソン、百貨店の外商などあらゆる手段を使ってほしいと思っています。

複数の絞り込み要素がある場合、もっとも小さな集合から始めることが、アルゴリズムとしては効率的ですが、各要素の重み(本人にとっての重要度)が不明ですし、矛盾した要素を含んでいることから、機械的に絞り込むと解なしになります。必ずしもすべての要望には応えられないが、比較的要望を満たしていそうなモデルを選び、評価をつけることにしました。

提案1:グランドセイコー(クオーツ)

  • フォーマル:B
  • メンテナンス・耐久性:A
  • セカンダリー:B~C

メンテナンス性や耐久性を気にするなら、クオーツしかないでしょ、ということで、第一にグランドセイコー(クオーツ)を選定しました。グランドセイコーは、日本製の時計では例外的にセカンダリー評価が高いですが、その中でもメカニカルハイビート36000とスプリングドライブは別格です。ただ、どちらもメンテナンス・耐久性がC評価なので、今回は選定外としました。なお、セカンダリーの評価を高めたいのであれば、マスターショップ限定モデルや〇〇周年数量限定モデルを選ぶ戦略が有効です。

高級クオーツの双璧といえば、シチズンのザ・シチズンです。こちらも素晴らしい時計なのですが、残念なことにセカンダリーでの評価は、グランドセイコーと比較するとかなり落ちるため、今回は選定外としました。

citizen.jp

www.grand-seiko.com

提案2:ROLEX(デイトジャスト36)

  • フォーマル:B
  • メンテナンス・耐久性:B
  • セカンダリー:A

ROLEXは面白いブランドで、初心者と上級者に好まれるブランドと言われます。圧倒的ネームバリューがあるため、時計に詳しくない人でもROLEXという名前は知っており、高級時計を買いたいのでとりあえず買う間違いのないブランドといえば、ROLEXになるわけです。しかし、時計に詳しくなるにつれて、ROLEXというのは面白くないブランドになっていきます。というのも、時計が好きな人間というのは、基本的に時計の機構に興味があるわけで、いくら実用性に優れていたとしても、ムーブメントが見えず、見て楽しめないROLEXは致命的だからです。その結果、ジャガールクルトやゼニス、IWCといったブランドに浮気していき、ややもすればアンチRolexになる中級者も少なくありません。

では、これで終わりかと言うとそうではないところが面白いところです。一通り時計専業メーカーの時計を勉強すると、ムーブメントのスペックを向上させるために、いかに各メーカーが努力しているかが分かるようになります。そしてある日、ROLEXのスペックを見て、「ROLEXってコスパやばくね?」と改めて気づく、これが上級者の入り口です。ムーブメントを見すぎたせいで、本来であれば見えてはいけない、見えないムーブメントが透けて見えるようになったからかもしれません(大嘘)。三大雲上であるPP、AP、VC、加えてランゲやブレゲといったメーカーの時計の良さを真の意味で理解できるようになるのも、この辺りからなのかな、と思います。

さて、本題です。セカンダリーではPPのノーチラス、APのロイヤルオークと並んでRolexのプロフェッショナルモデル(特にデイトナ)が最強ですが、いずれも一般人の入手難易度は限りなく不可能に近く、現実的ではありません。プロモデルの人気はスタンダードモデルにも波及しており、一昔前であれば比較的容易に買うことができたデイトジャストの入手も困難になっています。ただ、ブレスや文字盤の色、ベゼル形状にこだわらなければ、比較的容易に入手可能なことから、デイトジャストを選定しました。もっとも、ブルー文字盤・ジュビリーブレス・フルーテッドベゼルなど、特定の組み合わせで探すと、「プロモデルよりも入手難易度が高い」こともありますので、ある程度の妥協は覚悟する必要があります。

今回の要望に沿う組み合わせは以下の通りです。サイズは41でもいいのですが、よほど大柄でない限り、日本人のビジネス用途は36が無難です。

  • ブレスは強度を考慮して、オイスタープレス>ジュビリーブレス
  • 文字盤の色はフォーマル度重視で、白>黒・青
  • ジュビリー文字盤(コンピューター)は派手なのでNG
  • ベゼルは派手さを抑えめに、スムースベゼル>フルーテッドベゼル

www.rolex.com

詳しい人はオイスターパーペチュアルはどうなんだ?と思うことでしょう。これはまったくもって正しい疑問ですが、昨年にオイスターパーペチュアルが発売して以来、オイスターパーペチュアルはプロモデルと同様、ほとんど店頭で見かけることはありません。現在の入手難易度を考慮して、今回は選定しませんでした。

提案3:オメガ(シーマスターアクアテラ)

  • フォーマル:B
  • メンテナンス・耐久性:B
  • セカンダリー:B

セカンダリーで評価されるブランドは大きく分けると2通りで、需要が大きいグループ(ROLEXやグランドセイコー)と供給が小さいグループ(PP、AP、ブレゲジャガールクルト)とがあります。このうち供給が小さいグループは好事家向けの工芸品マーケットで、メンテナンス・耐久性がCなので選定できません。では、需要が大きい、誰でも知っているグループで他に何かないかと問われれば、次に出てくるブランドはオメガしかありません。

オメガのラインのうち、セカンダリーで評価されるのはスピードマスター(スピマス)とシーマスターです。スピードマスターは逸話に事欠かない、言わずとしれたオメガのフラッグシップですが、残念ながらクロノグラフはビジネス用途として不適切です。また、シーマスターのモデルのうち、ダイバー、プラネットオーシャン、ヘリテージはいずれもフォーマル度が一段落ちることから、今回はシーマスターアクアテラを選定しました。サイズは38mmと41mmがありますが、大柄な人でなければ38mmがおすすめです。

部品の耐久性、耐磁性、精度などどれをとっても一級品でセカンダリーの評価も上々です。さらに、オメガは並行差別がないので、並行輸入品を買うことで、買値と売値の差を小さくできる点も魅力だと思います。
www.omegawatches.jp

さいごに

もう少し、遊びのある楽しいラインナップにしたかったのですが、セカンダリー市場の評価を項目に入れられると、身動きが取れなくなりますね。新興のウブロも足元のセカンダリー評価は高いですが、中長期的に価値が維持されるかと問われると、そんなことは保証できないので勧めにくいですし、乱暴に扱われる前提だと、カルティエも嫁がせにくいです(パワーリザーブも短いし)。また、ショパールのアルパインイーグルは、セカンダリー評価が固まっていないので、こちらも勧められない。一般人向けの二次市場で評価されるものは、あなたが知っているものだけです、という当然の事実を再確認しただけでした。