フラッシュ・ボーイズ

あらゆる上場株を買えるダークプールと公設の取引所が、合計六十近くもあり、その大半がニュージャージーに存在しているのはなぜなのか?名前も聞いたことがなかったゲッコーという会社は、どうやって株式市場の出来高の10%も占める取引を行っているのか?

 

証券取引所が「高性能のアルゴリズムを駆使する超高速トレーダーに対して、他のトレーダーに先駆けて取引情報を入手することを許している。取引所に手数料を支払えば、売買注文の情報が『瞬時に送られ(フラッシュ)』、一般に公開されるより、ほんの少し早く情報を入手できるようになる」

 

一つの取引所に発注した時は、画面に本物の市場が現れるのに、一度にすべての取引所に発注すると、なぜ幻になってしまうのか?・・・取引所の数を増やすほど、成立する注文の割合が低下するのだ。つまり多くの場所から株を買おうとするほど、実際に買える株は減ってしまう。

 

注文が届くまでにかかる時間が取引所によって異なるという事実を利用して、市場から市場へとフロントランニング(先回り)をしているやつがいるのはわかった。それなら次はどうするか?

 

本当にかすかなレベルで起こるので、きちんと準備して解決しようとしてもできるものではありません。マイクロ秒なんて想像もできないから、いつのまにか不当に搾り取られていたんです。

 

ブラッドがある市場で株式を購入しようとしているのに気づき、高値で売りつけるため他の取引所で同じ株を購入していた輩がいたのだ。ブラッドはその容疑者を特定した。それが超高速トレーダーだ。

 

 ケーブルの長さを縮める手立てが尽きると、今度はケーブルの両端にある装置に注目が集まり始めた。たとえばデータ・スイッチ。速いデータスイッチと遅いスイッチの差は数マイクロ秒(百万分の1秒)だが、今やその数マイクロ秒が重要だった。「ある男は『遅れが一秒だろうと一マイクロ秒だろうと関係ない。どっちにしろ二番手になるんならな』と言っていた」とローナン。一回の取引にかかる切り替え時間は、百五十マイクロ秒から1.2マイクロ秒。「そのうちこう訊かれるようになった。『君のところはどんなガラス繊維を使ってる?』」。光ファイバーの作り方は、どれも同じというわけではない。中にはほかよりも効率よく信号を運ぶ種類がある。人類の歴史で、これほどわずかな速度の差にこれほど大騒ぎし、これほど多くの資金を注ぎ込んだのは、初めてなのではないかと、ローナンは思った。「取引所の中で、みんな1フィート単位で自社のケーブルの長さを測っていた。サーバーを買っては、六ヶ月ごとに交換していた。数マイクロ秒のためにね」

 

技術についての理解は、ゲームのプレーヤーによって大きく違うのは感じていた。超高速取引の最大手二社、シタデルとゲッコーは、物覚えが断然いい。プロップ・ショップの中にも、理解の早いところはある。大手投資銀行は、少なくともこの時点ではどこも鈍かった。

 

あなたがお金をやり取りする際の情報の価値は、全てブローカーと取引所によって競りにかけられ、超高速取引業者へ渡されているんです。彼らは、その情報を使ってあなたを食い物にしている。

 

 投資形が何より感じていたのは、株をひとまとめに大口で売買するのがますます難しくなっているということだった。投資家たちは公共の証券取引所で売買するのがますます難しくなっているということだった。投資家たちは公共の証券取引所へのいらだちを募らせ、それがきっかけで、ウォール街投資銀行は秘密の取引所、ダークプールを作るようになっていった。2011年には、株式市場の全取引の約30%が、公共の取引所の外で行われるようになり、そしてその場所はほとんどがダークプールだった。ダークプールの魅力は、大口の注文をさらしても、それを悪用されないかとビクビクせずにいられることだと、ウォール街投資銀行は言った。

 

仮にウォール街の銀行が、顧客ではなく自身の利益のために取引したいという誘惑は振り払えても、ダークプールの利用券を超高速トレーダーに売るという誘惑を振り払える可能性はほとんどゼロに等しい。 ウォール街の銀行は、どの超高速取引業者が彼らに金を払ってダークプールの特別利用権を得ているか、あるいはいくら払っているか、明かそうとしない。しかし利用権の販売は当たり前に行われている。

株式市場の注文は、ダークプール内のもののほうが、よく超えてうまみがあるからだ。注文はたいてい大口で、とくに動きが予測しやすい。

 

自分は超高速取引を使ったフロントランニングへの対抗策を見つけたわけだが、ウォール街投資銀行も、実は同じものへ行きあたっていたに違いない。そしてそれを使わない方を選んだのだ。理由は、フロントランニングが生む利益の分け前が、あまりに大きすぎるからだ。「なぜ内が最初にソーを発見したのか、その理由がものすごくはっきりしました。最初じゃなかったからです」

 

プログラムを書くには、子どもを生むようなものです。何かを生み出すこと、技術的なものなのに、芸術作品でもある。それほどの満足が得られるんです

 

ゴールドマン・サックスのビジネスモデルは、今すぐ稼げるチャンスがあるならそれをやる、というものです。長期的なものには、そこまで関心がなかった。

あの人達は、いつも目の前のことをやりたがりました。でも考えてみると、それは既存のシステムを絶えず修正しているに過ぎない。 既存のコードベースは、扱いにくい象になってしまうんです。

 

 

 

 

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