炭水化物が人類を滅ぼす 糖質制限からみた生命の科学

肉や魚などのタンパク質は、胃酸ですみやかに消化されて小腸に送られるため、異滞留時間は数十分間程度である。逆に、ご飯や麺類は胃酸では消化されず、いつまでも胃の中に留まっている。 

糖質とは、「血糖値を上げる栄養素(食品)」・・・血糖が増えると人体に害があるため、体はそれを筋肉細胞などに取り込むことによって減らすことになる・・・糖尿病の人の場合には血糖を減らす機能のスイッチとなるインスリンが上手く働かないため、高血糖状態が続き、眼の網膜や腎臓に障害が起こることになる。

血糖を最も効率的に上げるものがブドウ糖グルコース)・・・糖質制限においてはブドウ糖そのものが含まれる食品はなるべく避けるべき・・・食物繊維のように、人体が分解も吸収も出来ないものであれば食べても問題はない。果物に含まれる果糖(フルクトース)は、血糖値を上げないが、直ちに中性脂肪に変化して太る原因・・・アボカドのような一部の例外(糖質が少なく脂質が多い果物)果物も食べないほうがいい。乳糖(ラクトース)は摂取してもいいようだ。また人工甘味料の多くは、強烈な甘味を持っていても血糖を上げる作用は少ないため、血糖を上げる糖質には入らない。・・・問題は血糖値の上昇だけなので、血糖値と関係のない食品(タンパク質、脂肪)は摂取を制限する必要はないし、摂取カロリー数を計算する必要もないわけだ。

  • 米、小麦(うどん、パスタ、パン)、蕎麦:食べてはいけない。玄米も避ける。
  • 砂糖が含まれているもの。食べてはいけない
  • 肉、魚、卵:いくら食べても大丈夫
  • 大豆製品:いくら食べても大丈夫
  • 野菜:いくら食べても大丈夫、ただし根菜類(芋、人参、レンコン)は糖質が多く、食べないほうが良い。
  • キノコ、海藻:いくら食べても大丈夫。
  • 果物:アボカド以外は肥満の原因になるので摂取を避ける。
  • 乳製品:チーズはいくら食べても大丈夫。ヨーグルト、牛乳はよほど大量でなければOK
  • ナッツ類:コーン、ジャイアントコーンを除きいくらでもOK
  • お菓子、スナック:NG
  • 油、マヨネーズ、バター:大丈夫
  • 揚げ物:いくらでも大丈夫、天麩羅の衣には、結構糖質が含まれているので、食べ過ぎない。
  • ジュースその他:無糖以外はNG
  • 酒類醸造酒(日本酒、ビール、マッコリ)はNG。蒸留酒(焼酎、ウイスキー、ウォッカ、テキーラ)はOK。

このような「ご飯とおかず」という食べ方の様式が日本に生まれたのは、平安時代であり、その成立には、「米は神が授けてくれた神聖な食べ物」という、コメ進行ともいうべき意識が働いていたようだ。・・・「ご飯とおかず」という食事の概念は、人類普遍のものではなく、かなり特殊なのである。実際、英語やフランス語などのヨーロッパ系言語には、日本語の主食に相当する単語がない・・・

 『Sugar Stacks』というサイトがある。アメリカで普通に売られている食品に含まれる糖分をまとめたサイトである。・・・秀逸なところは、それぞれの食品に含まれる糖分を、角砂糖に換算して、角砂糖の量として糖分量を視覚化している点にある。

Sugar Stacks - How Much Sugar Is in That?

素うどん一玉=角砂糖14個・・・角砂糖14個はとても食べられるものではないが、うどん1玉なら一気に食べられる・・・ 砂糖は大量に食べられないが、同じ量の糖質を含んでいるデンプンなら、いとも簡単に食べられるのだ。デンプンをよく噛めば、唾液のアミラーゼがそれを分解してブドウ糖に変化させ、ほんのり甘くなるが、・・・甘みのない食べ物の部類だろう。・・・ほとんど甘くないのは口の中でだけであり、消化管を通過していく過程で分解されることで、デンプンはブドウ糖に変化して吸収され、甘い食べ物に変身する。口の中では甘くないが、体内で甘い糖分に豹変し、血糖を急上昇させるのだ。

現在の栄養学の教科書・・・「糖質(炭水化物)、タンパク質、脂質が三大栄養素」であり、「生活習慣病を予防するためには、脂質の比率を25~30%いかに抑えるべき」「炭水化物は60%前後と、最も多く必要」「炭水化物:タンパク質:脂質の比率は3:1:1が望ましい」・・・人間の生存に欠くことが出来ない必須脂肪酸必須アミノ酸に関しては、食事で外部から取り入れるしか方法がないが、炭水化物に関しては、アミノ酸を材料にブドウ糖を合成する「糖新生」というシステムが人間には備わっていて、タンパク質さえあれば自分で作り出せるからだ。・・・必須栄養素としての炭水化物を大前提に理論体系が組み立てられている栄養学というが学問体系自体が、砂上の楼閣なのである。

糖質摂取者の体内では、糖質摂取直後に「何か」が上昇して精神的満足を生み出し、その後にその「何か」が低下した時に、精神的飢餓感が発生しているはずだ・・・血糖だろう。糖質摂取直後に起こる血糖の急激な上昇が、食後の陶酔感と幸福感をもたらし、その後に血糖値が低下し始めると、体は「血糖切れ」状態となる。すると、喫煙者がニコチン切れでタバコを欲するように、糖質摂取者は血糖切れでイライラし始め、糖質を食べたくなる。

厚労省農水省が推奨する「食事バランスガイド」は、ようするに、「毎食必ず、角砂糖38個食べなさい」といっているようなものだ。・・・この「食事バランスガイド」は、国立健康栄養研究所が、日本人の平均的な食事を調査し、その平均値を算出したもの・・・科学とは全く無関係な、単なるアンケート結果にすぎない。

 生物・動物としてみると、「楽しみとしての食事」は、明らかに食という行為の本質から逸脱している。食は排泄や睡眠と同列の、生命維持に最低限必要な基本的行為である以上、食べることが楽しみで生きているというのは、排泄が楽しみで生きている、あるいは人生の一番の楽しみは眠ることと言っているようなものだからだ。

 19世紀のヨーロッパでは。砂糖を渇望して労働者が働き、コメを食べるために職人たちが働いた。まさに、嗜好品である砂糖にしか出来ないわざである。その後、さまざまな嗜好品が支配の道具として使われた。第2次大戦では、多くの国で兵士の恐怖感を和らげる目的でタバコを支給して喫煙を奨励したし、ベトナム戦争ではアメリカ軍が兵士にマリファナを配給したことは有名だ。

血糖値が低下すると、ただちにタンパク質の分解が始まり、ブドウ糖が作られる。これ
糖新生だ。もちろん、タンパク質は人体を構成する重要な物質でもあるが、すべての
タンパク質が生命維持に必要というわけではなく、不要不急のタンパク質が糖新生で消
費される。人体のブドウ糖源としては、もう一つ、肝臓や筋肉のグリコーゲンがあり、
これを分解するとブドウ糖が得られるが、グリコーゲンの場合は備蓄量が少ないので、「四六時中血糖値を一定に保つ」には不向きだ。グリコーゲンはあくまで緊急備蓄用である。

 糖質セイゲニストの場合には、・・・血糖の維持は全て糖新生で賄わなければいけない。・・・物質を分解するには、エネルギー(ATP)が必要だ。タンパク質を分解してブドウ糖を作るにはそれ相応のATPを調達しなければいけない。それは通常、脂肪細胞から遊離した脂肪酸で賄われている。脂肪酸がβ酸化されて細胞に入り、ミトコンドリアでエネルギーが生成され、そのATPを使って糖新生システムを動かしているのだ。・・・外部からのブドウ糖流入がないから、ブドウ糖不足が解消されるまで、脂肪とタンパク質が分解されることになる。これが糖質制限をすると痩せるメカニズムだ。・・・血液中のブドウ糖は生存に欠かせないものだが、多すぎると逆に毒になる(糖毒性)・・・余ったブドウ糖中性脂肪に変えて、脂肪細胞にストックするという方式。・・・だから、糖質を食べると脂肪細胞中の脂肪が増加し、その結果として体重が増え、ウエスト周りが肥大化してくるわけだ。

三大栄養素、つまり炭水化物、タンパク質、脂質のカロリー数について、多くの人が知っているはずだ。1gあたり、炭水化物とタンパク質が4キロカロリー、脂質が9キロカロリーだ。・・・カロリー数はどうやって測定されたのかを調べてみると、かなりインチキ臭い

  • 体温は最高でも、せいぜい40度であり、この温度では、脂肪も炭水化物も燃焼しない。
  • 細胞内の代謝と大気中の燃焼は全く別の現象
  • 各栄養素ごとの物理的燃焼熱は、小数点1~2桁の精度・・・エネルギー換算係数をかけて得られた熱量はどれも「キリのいい整数」・・・不自然で恣意的

植物を主な食料としている哺乳類はどれも、消化管の一部が著しく大きくなるという共通点を持っているが、人間の消化管にはそのような変化は見られないからである。・・・胃も結腸も盲腸も拡大している部分はなく、一般的に言えば完全ベジタリアン生活には適さない消化管構造といえる。逆に、同じ霊長類でも、マウンテンゴリラやオランウータンは基本的に草食である。

人間の糞便の重量の半分以上は腸内細菌・・・「食物の熱量=食物を空気中で燃やして発生した熱量ー同量の食物を食べて出た排泄物を燃やして発生した熱量」が、最初の前提からして間違っている・・・半分以上が腸内細菌なのだから、いくら精密に発生熱量を測定したところで、正確な値が得られるわけがない。

 脳はケトン体(脂肪の分解により肝臓で作られる)も利用できるし、アミノ酸からの糖新生も行われているので、ブドウ糖が不足することはない・・・人体の様々な組織や細胞の中で、ブドウ糖を主に使っているのは、脳、眼の網膜、赤血球などであり、手足の筋肉や心臓の筋肉は、安静時や軽度の運動時には、脂肪酸をエネルギー源とし、激しい運動の時に限って、ブドウ糖を取り込んでいる。・・・なぜ脳の主な栄養はブドウ糖なのか、・・・エネルギー性成功率から考えると、ブドウ糖よりも脂肪酸のほうがはるかに効率がいい・・・1分子のブドウ糖からは38分子のATPが作られるのに対し、脂肪酸の一種であるステアリン酸1分子からは、その4倍近い146分子ものATPが作られるのだ。・・・脳は全身で最もエネルギー消費の高い機関であり、それこそ湯水のごとくエネルギーを使いまくっている(脳の重量は体重の2%程度だが、全身のエネルギー代謝の約20%を消費している)。

ブドウ糖とケトン体は水溶性物質、脂肪酸は脂溶性物質である。・・・言い換えれば、細胞膜(脂質二重膜)を自由に通れるか、通れないかの違いだ。・・・人間の脳には250億~350億個もの神経細胞が詰まっていて、それらはシナプスという接合部で相互に結合・・・そんな、情報伝達物質が飛び交う修羅場に、細胞膜を通過できる脂肪酸があったら、どうなるだろうか。・・・きちんとしたルールのもとで情報を伝え合っている情報伝達物質からすると、ルールを無視して動きまわる脂肪酸は邪魔者でしか無い。・・・脂肪酸の中には、情報撹乱物質として作用するものもある。・・・致命的なバグの原因になりかねない。・・・脳を降り膜血管に、blodd-brain-barrier(BBB,血液脳関門)という関所を作り、・・・脂肪酸は門前払いするというシステムを作り上げたわけだ。・・・脳や末梢神経にとって、脂肪酸は使いたくても使えないエネルギー源なのだ。・・・DHA(ドコサヘキサエン酸)はBBBを通れる。・・・EPA(エイコサペンタエン酸)のような、神経細胞の細胞膜に必須な、機能的な脂肪酸は、毛細血管の細胞膜からそれが接する神経細胞の細胞膜へと直接的に受け渡しされる形で脳に供給されているらしい。・・・神経細胞間のシナプスは頻繁に作り変えられているから(シナプス可塑性)・・・大量の脂肪酸を必要とするが、この脂肪酸は、このような細胞膜同士の直接的受け渡しで脳に持ち込まれているのだ。

ブドウ糖とケトン体は・・・水溶性物質であって、細胞膜を自由に通ることは出来ず、細胞膜を通るにはトランスポーター物質が必要・・・脳サイドから言えば制御しやすい・・・赤血球にはミトコンドリアがないため、脂肪酸を使おうにも使えない(脂肪酸ミトコンドリア内で、TCAサイクルで代謝されてATPとなるため、ミトコンドリアがないと脂肪酸を利用できない。)赤血球は、エネルギー産生を細胞質内の酵素で行っており、ブドウ糖を嫌気性代謝(=解糖系)することでATPを作っている。解糖系では、ブドウ糖1分子から2分子のATPしか作れないが、酸素と二酸化炭素の運搬役以外の機能を持たない赤血球は、大量のエネルギーを必要とせず、低エネルギー系の解糖系で充分なのだろう。

炭水化物は植物性食物からしか摂取できないが、タンパク質と脂質は、植物性食物からも動物性食物からも摂取できるという点だ。・・・現在の私たちは、大量の糖質(=デンプン+砂糖)を摂取しているが、デンプンの原料は穀物かイモ類、砂糖の原料はサトウキビか甜菜(サトウダイコン)である。すなわち、私達が食事から摂取する糖質は全て植物由来であり、それらは農耕作物だ。
穀物は空腹を満たすものとしては優れているが、食料として優れているわけではなかったからだ。人間本来の栄養成分ではない糖質を主成分としていて、体が必要とする蛋白質と脂質に乏しかったからだ

炭水化物が人類を滅ぼす 糖質制限からみた生命の科学 (光文社新書)

炭水化物が人類を滅ぼす 糖質制限からみた生命の科学 (光文社新書)

 
  • 「人体には本来、穀物に依存して生きるような遺伝的システムはないのです」そう語るのは、医師の宗田哲男である。
  • 糖質(炭水化物)の代表格であるブドウ糖は、通常カラダのエネルギー源だと広く認知されているが、生命活動に必要なのは、実は体内の脂肪の分解によって生まれる物質=ケトン体なのだと宗田は主張する。
  • 「お腹の中の赤ちゃんは、母親が糖質制限をしている、していないにかかわらず、血中のケトン体濃度がとても高い。これは、脂質を使った代謝こそが人類の本来の姿だという証だとわたしは捉えています。」