PMSの悩みがスッキリ楽になる本

 
  • どんな症状があるのか:頭痛、摂食異常(過食・拒食気味) 、耳鳴り、のどの違和感、肩こり、味覚の変化、関節痛、おりもの、腰痛、下腹部痛、眠気、不眠、めまい、体重増加、便秘、下痢、疲れやすい、だるい、吐き気、嘔吐、むくみ、肌あれ、湿疹、のぼせ、ほてり、胸が張る、冷え性、多汗、にきび、脂性...など
  • 主な心理的トラブル:情緒不安定になり、涙もろくなる、無気力になる、理由もなく憂鬱になる、ちょっとしたことで死にたくなるほど落ち込む、イライラしやすくなる、否定的、悲観的になる、性欲が異常に増進・減退する、家族や友人、恋人とケンカをしやすくなる、子どもにきつくあたってしまう、感情的になりやすく、暴言をはきやすくなる、人付き合いが面倒くさくなる、集中力、判断力が低下する、無性に整理整頓がしたくなる、衝動買いをしやすくなる...など
  • PMSの中で、特に心理的症状が極度に強い場合は、PMDD (Premenstrual Dysphoric Disorder) 日本語で月経前不機嫌性障害と診断されることもあります。

 

  • PMSの症状は、生理の1週間ほど前から出始め、2、3日前から生理開始までの
    間に最も強く出る人が多いです。排卵直後から症状が現れ始める人もいます。そして、生理が始まってしばらくすると症状が消えていきます。
  • 生理終了後から10日間ほどの間は、気持ちが安定していて、ポジティブで明るくエネルギッシュに過ごせる時期です。肌や髪の調子もよく、ダイエットの成果も効果的に現れます。女性にとって1ヶ月のうちで最も幸せな気持ちで過ごせる時期です。

 

PMSの主な原因

 

  • ホルモンとは、大脳の直下にある脳下垂体や特定の臓器で合成、分泌される微量な化学物質です。脳下垂体から分泌されるホルモンは、視床下部でコントロールされており、視床下部から指令があると脳下垂体からホルモンが分泌され、血液にのって身体中をめぐっていきます。そして、対象とする臓器や組織に作用して特定の応答を引き起こし、その臓器や組織でまた違うホルモンが合成されて血液中に分泌されます。特に生命活動を保つ器官、生殖活動のための器官がちゃんと機能するように調整しています。したがって、毎月卵巣や卵管や子宮がちゃんと機能して妊娠するための準備が整えられるのは、このホルモンの連携のおかげなのです。
  • 生殖活動において特に重要な脳下垂体からのホルモンには、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体化ホルモン(LH)、乳汁分泌ホルモン(プロラクチン)の3種類があります。中でも、FSHとLHは、生理の周期に応じて卵巣を刺激します。卵巣の中にある卵胞は、FSH(左図1)によって成長してエストロゲンを分泌します(左図3)。そのエストロゲン量がピークになると、脳下垂体からLHが分泌され(左図1)、LHの刺激を受けて卵胞内から排卵します。排卵後、卵胞は細胞が変化して黄体という組織を形成します。そして、プロゲステロンエストロゲンを分泌し、子宮内膜を厚くして着床しやすくしたり、妊娠を持続させる作用をしたりします(左図6)。
  • 少し話がややこしくなりましたが、つまりホルモンとは、メールのようなものだと考えてください。視床下部からさまざまな器官に対してメールが出され、血液によって届けられます。そして、そのメールを受け取った器官は、メールの内容に応じて行動を起こしたり、また別のところへ新たなメールを出したりしているのです。
  • 排卵後は妊娠のためにエストロゲンプロゲステロンが増え続けて、妊娠の準備を整えます。
  • しかし、PMSは、このエストロゲンプロゲステロンの濃度が急激に増減することが原因で起きると考えられています。エストロゲンが減少すると、興奮を抑える働きを持ち、血管を収縮させるセロトニンが減少し、脳の血管が拡張して片頭痛を引き起こしたりします。プロゲステロンは、水分を体内にためる働きがあるため、増加するとむくみを生じさせます。腸のぜん動運動も低下させるので、お腹が張ったり、便秘にもなりやすくなります。乳腺の発育を促す働きもあるので胸が張ってきます。
  • もし妊娠が成立しなければ、子宮内の環境を整える必要がなくなり、次の受精着床のためのリセットが行われ、エストロゲンプロゲステロンの分泌量が低下します。このホルモン量が低下することで9ページにあるような一連のサイクルが崩れ、視床下部でのコントロールが難しくなります。そして、自律神経系の循環器系や消化器系、免疫中枢の要でもある視床下部がコントロールできなくなることで、それぞれの器官に影響が出ると考えられています。
  • 循環器系に影響すれば、頭痛や血行が悪くなることによる肩こりが起こります。他にも、身体がだるい、起き上がれないなどさまざまな体調不良が起こります。消化器系に影響すれば、ここでもまた腸のぜん動運動が不良になり、便秘や下痢などになってしまいます。免疫中枢に影響すれば、アレルギー反応を起こしやすくなります。
  • 視床下部そのものも、食欲、性欲、集団欲を司っているので、摂食障害を引き起こしたり、性欲が増進、減退したり、人と関わるのが面倒になったりします。嗅覚や味覚にも影響し、匂いに敏感になったり、濃い味を好むようになったりします。そして、視床下部は情動の脳、とも言われる器官のため、イライラしたり、わけもなく涙が出やすくなるなど情緒不安定になったりします。
  • その他にも、子宮内膜から出るホルモンのプロスタグランディン、副腎皮質から出るホルモンのアルドステロン、妊娠中や出産後に脳下垂体から出るホルモンのプロラクチンもPMSを起こす要因だとする説もあります。

 

生理周期を確かめてPMSに備える

  • PMSの症状をやわらげるためには、基礎体温表をつけて自分の身体のリズムを知ることが大切です。基礎体温は避妊や妊娠のためにつけるものだと思っている人が多いですが、毎月の身体のサイクルを知り、子宮や卵巣の状態を知るために大切な情報です。自分で排卵日や生理日を予測できれば、PMSのリズムが分かり、その時期には、仕事の負荷が大きくないように調整したり、家族や周りの人との関係にも気を配ることができたり、自分の精神状態を客観的に捉えて対応することができます。
  • ちなみに、生理予定日の計算の仕方は、生理が始まった日を1日目と数えて、例えば8日目に次の生理が来たら、それは28日周期ということになります。つまり、次の生理も29日目前後に来ると予想がたてられます。周期には個人差がありますが一般的には25日~35日くらいが正常とされ、基礎体温が下がったら生理がきます。

 

  • また、これらの項目の中でも特に、嗜好品の摂取量が多い人にPMSの傾向が強いという結果が出ています。因果関係は解明されていませんが、お酒、タバコ、コーヒー、間食の回数・量が多い人は、控えてみると症状が改善するかもしれません。
  • もうひとつ突出した項目は、几帳面であるというものです。綺麗好き、神経質といった几帳面さのある人はPMSであることが多いようです。

 

  • 私のところに来る患者さんには、生理が近くて、PMSだと自分で分かるようだっ
    たら、そのときは一番大切な人には会わないようにしなさいと話しています。そういうときは、ひとりで自分の時間を楽しんでいたほうがいい。会えばケンカするかもしれないし、ありえないことを言ってしまうかもしれない。
  • PMSの期間は3日間ぐらいだけなんだから、ひとりでゆっくりお風呂に入ってリ
    ラックスしていればいい。ひとりでゆっくり本を読んでいればいい。わざわざそういうときに彼に会ってご飯を作ってあげたりしないほうがいいよという話をよくします。
  • そうですよね。ご飯とか作るとまたPMSのときって過剰に見返りを期待しちゃいますしね。
  • 後でごめんなさいって言ってすめばいいけど、言葉の暴力ってごめんなさいって
    言っても相手の心に傷として残ってしまうわけですよね。だったら会わないほうがいい。

 

  • アメリカの心理学博士が、女性には、セックスと関係ないノンセクシュアルなス
    キンシップが1日に8回から2回は絶対に必要だと言っています。肩に手をまわしてもらったり、手をつないでもらったり、ハグしてもらったりという、性の対象として以外に感じる彼の肌の温もりで心からの安心を得られるといいます。そして精神的に満たされるのです。でも僕のカウンセリングでの体感的には、それをできる日本人男性は、4割ですね。年齢は若年層しか無理です。40代、50代だと自分の母親が父親に対して何かもの申すということが少なくて、父親に黙ってついていくというスタイルでうまくいっていたのを見て育っているからです。
  • カウンセリングに来る女性もやはりそういうノンセクシュアルなスキンシップを求めていると言います。でも夫は、ハグをすれば必ずセックスをしようとする。日ごろはハグなんて全然してくれないのに触れ合ったらいきなりそっちに持って行こうとするから、それが耐え難い苦痛なんだと彼女たちは訴えます。

 

  • アメリカでは、PMSは高校生になったら性教育の中で教えていますよ。また、お母さんが家庭で、感情はコントロールできるものだと教え、子どもが泣いたら、「Control your emotions.(感情をコントロールしなさい)」と言ったりしているのをよく聞きましたね。このように、子どもが小さい頃から感情はコントロールできるものなのだと教えている子と、全くそんなことを聞かされたことがない子とでは、明らかに考え方に違いが生じるでしょうね。この知識の差は大きいです。
  • 男性の理解ばかり求めるのではなくて、女性も感情をコントロールする努力は必
    要だということですね。

 

  • 食事は、朝昼晩バランスよく食べることが大切。朝食べないで、お昼にいっきにドカ食いをしたり、いきなり高カロリーのお菓子を食べるなどすると、血糖値が急激に上がり、急激に下がるので、疲労や憂鬱感を招いたり、攻撃的な性格を生み出したりしやすくなります。仕事編ケース2の「ミスをしたり叱られると死にたいほど落ち込む」では、やけ食いも発散になるなら仕方ないとお話ししましたが、それをしょっちゅうやっていてはいけません。
  • カルシウム、ビタミンCを多く含む食材は、神経を落ち着かせる働きがあるので、たっぷりとるといいですね。外食が多い方はサプリで補うのでもいいと思います。
  • 運動は、ウォーキングや水泳、エアロビクスなどの全身運動がお薦めですね。でもあまり無理せず、1駅分歩くとか、仕事の合間に軽いストレッチをするだけでも気分がすっきりすると思いますよ。それから、ゆっくりお風呂に入ってリラックスし、早く寝るように心がけることも大切です。
  • そうですね。PMSは自分を見直すいい機会ですよね。

 

女性への10箇条

  1. 恋人・パートナーのNGワードを聞いておく。
  2. 好きなことをひとりで楽しむ時間にあてる。
  3. 恋人・パートナーに対して腹八分目で満足する。
  4. 無理して家事をしない。
  5. 無気力な自分を責めない。
  6. 子どもをコントロールする欲求は捨てる。
  7. ミスをしても自分を責めない。
  8. 重大な決断はしない。
  9. 男性上司・同僚に仕事の対応を相談する。
  10. 自分の感情をコントロールしようと意識する。

 

取り入れたい食材

納豆、豆乳、豆腐、きなこ、油揚げ、味噌など

わかめ、ひじき、いりゴマ、干し海老、チーズなど

  • イライラや頭痛、倦怠感を解消するビタミンB群(B1,B2,B6,B12)

マグロ、カツオ、牛レバー、鶏レバー、にんにく、貝類、玄米など

  • ストレスへの抵抗力を高め、貧血を改善するビタミンC

パセリ、ピーマン、ブロッコリーアセロラ、ゆずなど

  • 抗酸化作用があり、 血流の改善をするビタミンE

アーモンド、落花生、かぼちゃ、アボカド

  • 便秘を解消し、心身の調子を整える食物繊維

ひじき、わかめ、干し椎茸、おからなど

えごま油(しそ油)、くるみ、なたね油など

 

摂り過ぎに注意したい食材

  • 糖分:血糖値を急上昇急降下させPMSの症状を悪化させます
  • カフェイン:神経を過敏にし、PMSの症状を悪化させます
  • 塩分: むくみを悪化させます
  • 脂っこいもの:にきびや湿疹を誘発しやすくなります

 

  • 空腹時にいきなり高カロリーのおやつを食べると血糖値の変動を大きくするので、PMSの症状を悪化させる原因になります。おやつは食事の直後にする、甘いものがほしくなったらまずは飴をなめる、食べるときはヘルシーなものにする、少量を心がけるなどして、血糖値の変動をゆるやかにしましょう。

ヘルシーで栄養価の高いおやつ

  • ヨーグルト:カルシウム、ビタミンB6があり、精神を安定させる効果があります
  • バナナ:楽しく幸せな気持ちを生み出すホルモンのセロトニンを作るのに必要な炭水化物、トリプトファン、ビタミンB6が豊富です
  • ナッツ:精神を落ち着けてくれるビタミンB6やむくみを解消するカリウムが豊富です
  • ドライフルーツ:イライラやむくみを解消するカルシウムやマグネシウムが豊富です。ゆっくり消化されるため、血糖値が急激に上がりません

なるべく控えたい高カロリー・高糖分のおやつ

  • ケーキ、チョコレート、菓子パン、団子、大福、せんべい など

 

サプリメント

  • PMSの症状をやわらげるために必要な栄養素は、サプリメントを上手に利用して補うのもよいでしょう。イソフラボンマグネシウム、カルシウム、ビタミンB群(B1、B2、B6、B2)・C・E、αーリノレン酸などだけでなく、日常の食事では充分量が採れない栄養素もサプリメントなら補充できます。例えば、テアニンは、リラックス成分があり、感情を落ち着けてくれます。チェストツリーは、ホルモンバランスを整える手助けをしてくれます。亜鉛はホルモンの伝達に必要なミネラルです。ピクノジェノールは、不快感の緩和、鎮痛成分があります。

 

PMSに効くハーブ

  • ローマンカモミール:女性ホルモンのような働きがあります。痛み、情緒不安定、不眠、冷え性、にきび、むくみに効果があります。気分を鎮める甘い香り
  • ゼラニウム:ホルモンバランスを整える働きがあります。血行をよくして痛みやむくみを緩和したり、気持ちを落ち着かせてくれます。ローズとミントを合わせたような香り
  • クラリセージ:女性ホルモンのような働きがあります。不安や緊張をほぐしたり、痛みやこりの緩和にも効果があります。甘いナッツのような香ばしい香り
  • ローズ:ホルモンバランスを整える働きがあります。イライラや神経過敏、感情的になりがちな気持ちを鎮めてくれます。幸福感を高める甘い香り
  • レモンバーム:リラックスさせる効果があります。頭痛を鎮めたり、憂鬱な気分を払拭してくれます。レモンに似た爽やかな香り
  • マリーゴールド:女性ホルモンと似た働きがあります。利尿作用があり、むくみや痛みを緩和してくれます。香りはあまりなく、苦味があります
  • ラベンダー:鎮静作用があります。自律神経系を整えて心身の緊張を解きほぐしたり、癒してくれます。さわやかな甘い香り