HARD THINGS

 起業にしても、企業の中で取り組む新規事業にしても、大抵のことはうまくいかない。ゼロから何かを生み出そうと思ったら、予定通りに進まないのは当たり前だと思ったほうがいい。むしろ、うまく言ってないときのほうが普通である。・・・2つの能力が必要になる。一つは、現状を正しく把握する能力・・・二つ目は、困難の嵐がやってきたときに、次々と手を打つ能力だ。

ビル・ゲイツ・・・情報スーパーハイウェイがすべての企業と消費者を単一のネットワークで結びつけると予想し、インターネットに取って代わって、コミュニケーションの世界を制覇することは論理的な必然だと書いている。ゲイツはあとになって情報スーパーハイウェイをインターネットと書き直した。しかしオリジナル版ではそうではなかったのだ。

ビル・ゲイツ未来を語る

ビル・ゲイツ未来を語る

 

 情報スーパーハイウェイ構想と独自のコンピュータ・ネットワーク規格が、当時どれほど猛威を奮っていたか、いくら強調してもしすぎることはない。モザイクを開発した党のマーク・アンドリーセンと共同創業者のジム・クラークでさえ、ビデオ配信にはインターネットではなく独自規格のどれかを使わなくてはならないだろうと考えていたほどだ。

マーク・アンドリーセンと話したが、僕が会った中で最高に頭がいいと思った。

ネットスケープの上場を機に、ビジネスは新興経済と旧経済に二分されるようになった。

ベン、問題は金じゃない・・・並外れた金だ。

 

ネットスケープを初めて間もないころ、マイクロソフトの新しいWebサーバーは我が社のサーバーが保つ機能をすべて備え、かつ5倍も速く、無料で配布される予定だとわかった。・・・ビル・ターピン「ベン、君とマイクが探そうとしている特効薬は悪くないが、我々のウェブサーバーは5倍遅いんだ。それを直せる特効薬は存在しない。だから、我々は何にでも効く魔法の銀の弾丸ではなく、鉛の弾丸を大量に使うしかない」・・・6年後、私がオプスウェアのCEOだったとき、最大のライバルであるブレードロジックが、大きな商談をオプスウェアからことごとく奪い始めた。・・・顧客は製品を勝っていた。ただ、われわれの製品を買っていなかっただけだ。今は方針を変えるときではない。「この困難を乗り切るのに、何にでも効く銀の弾丸はない。あるのは鉛の弾丸だけだ。」・・・9ヶ月間に渡る必死の努力と驚くほど過酷な製品サイクルを経て、我々は再びこの製品でリードを奪い返し、最終的に時価総額16億ドルの会社をつくった。・・・実存する脅威に直面することほど、ビジネスで怖いものはないかもしれない。あまりの恐ろしさに、社員の多くは向かい合うことを避けるためならなんでもやるようになる。あらゆる代替案、あらゆる逃げ道、あらゆる言い訳を探して、一回の戦いに生死を賭けることを拒もうとする。

どの会社にも、命懸けで戦わなくてはならない時がある。戦うべきときに逃げていることに気づいたら、自分にこう問いかけるべきだ。「われわれの会社が勝つ実力がないのなら、そもそもこの会社が存在する必要などあるのだろうか?」

 世界は、平時に見たときと、日々命を賭けて戦わなくてはならないときとでは、まったく違って見える。平和な時代には、適合性、長期にわたる文化的影響、人の気持ちなどを気遣う時間がある。しかし、戦うときには、敵を倒し、部隊を安全に連れて帰ることがすべてだ。私は交戦中だったから、戦時の将軍が必要だった。

かつてネットスケープのCEOとして私のボスだったジム・バークスデール「我々は、人、製品、利益を大切にする。この順番に。」人を大切にすることは、自分の会社を働きやすい場所にするという意味だ。ほとんどの職場は、いい場所とはかけ離れている。組織が大きくなるにつれ、大切な仕事は見過ごされるようになり、熱心に仕事をする人々は、秀でた政治家たちに追い越されていき、官僚的プロセスは創造性の芽を摘み、あらゆる楽しみを奪う。

 採用する才、何人の候補者をふるいにかけ、何人を面接し、最終的に何人雇ったかというデータを念入りに記録しているスタートアップがよくある。いずれの数値も興味深いが、もっとも重要な統計データ・・・十分に生産的な社員を何人増やしたかというデータだ。本来のゴールに向けての進捗を測定していないため、彼らは教育の価値を見過ごしてしまう

マネジャーの候補者を面接・・・「あなたがクビにした社員は、自分は職務上何を期待されていたかを理解していたか?そしてその期待を自分が達成できていないと理解していた、とあなたは確信できるか?」 

大きな会社と小さな会社で最も大きく違うのは、経営している時間と、創造している時間の長さだ。もっと創造したいという意欲が、あなたの会社に入る正当な理由だ。

あなたが雇用しようとしているのは、架空の会社で働く概念上の幹部ではない。自分の会社の今この瞬間にとって、正しい人物を雇わなくてはならない。

完全な人間などいない。だから、弱みがないことではなく、強みが何かで人を選ぶことが絶対的に重要だ。誰にでも弱点はある。人によって見つけられやすさに違いがあるというだけだ。・・・・自分が必要としている強みを見つけ出し、その分野で世界レベルの人物を探すべきだ。

促進する対象には、定量化できるものと出来ないものがある。定量的な目標についてばかり報告して、定性的な目標を無視していれば、定性的な目標は達成できない・・・純水に数字だけによるマネジメントは、数字通りに色を塗る塗り絵キットのようなものーあれはアマチュア専用だ。

技術的負債・・・行き当たりばったりの汚いコードを書いて一時的に時間を借りることは出来ても、最終的には利子を付けて返済しなくてはならない。・・・経営的負債は、一時しのぎの短期的な経営判断が、高くつく長期的災いを招く。技術的負債と同じく、トレードオフは時として理にかなっているが、多くの場合そうではない。

 

 階層的組織において有能なメンバーは次第に昇進していく。しかし遅かれ早かれ、メンバーは自分の能力の及ばない地位に達してしまう。

ピーターの法則 創造的無能のすすめ

ピーターの法則 創造的無能のすすめ

 

 ある社員がどの階層で無能レベルに達するかを予め知る方法は存在しないから、ピーターの法則は不可避だ。

 ダメ社員の法則・・・大組織においては、どの職階においても社員の能力はその職階の最低の能力の社員の能力に収斂する。

アンドリーセン・・・肩書は段違いに安上がりだ。所詮タダだ。・・・ザッカーバーグ・・・意図的に低い肩書を採用している。・・・平等主義的な企業文化を社員に徹底・・・昇進や給与システムを他社との直接比較にさらさないという効果も。

並外れて頭のいい社員・・・会社を改善するために弱点を発見するのではなく、自分の理論を証明するために弱点を探す・・・この会社は愚か者が経営しており、将来に望みがないという理論だ。・・・そもそもこういった破壊的行動が取れるのは、非常に頭のいい人間だけだ。

  1. 無力感
  2. 性格が本質的に反乱者
  3. 未成熟で衝動的

ジョン・マッデン「一人がバスに遅れれば、チーム全員が待っていなければならない。うんと遅れれば、チームは試合に間に合わなくなってしまう。だからそんなやつは許しておくわけにはいかない。バスには出発しなければならない時刻がある。そうは言っても、時にはあまり役に立つので、バスを遅らせるのもやむを得ないような選手もいる。しかしそれはよほどの選手に限る。」・・・社会全体でもデニス・ロッドマンはめったにいないことを肝に銘じておくべきだ。

ベゾス「顧客に価値を届けることで収益を上げるべきであり、顧客から金を搾り取ることによって収益を上げるべきではない」

ザッカーバーグ「何を壊してもいいから全速力で進め」・・・「イノベーションを起こすことを最優先にして全速力で動けば、何かを壊すことになるのは避けられない」・・・これはブレークスルーになるかもしれないが、やるべきだろうか・・・間違いを恐れてイノベーションを後回しにするような人間は、フェイスブックには無用なのだ。

 英雄と臆病者の違いは何だと思う?・・・両者ともに感じることは同じだ。どちらも死んだり傷ついたりするのは怖い。しかし臆病者は、直面スべきことに直面しようとしない。英雄は自身をしっかり制御し、恐怖をはねのけてしなければならないことをする。しかし、英雄も臆病者も感じる恐怖は同じなのだ。ー伝説的ボクシング・トレーナーのカス・ダマト

平時のCEOは会社が現在持っている優位性を最も効果的に利用し、それをさらに拡大することが任務だ。そのため、平時のリーダーは部下からできる限り幅広く創造性を引き出し、多様な可能性を探ることが必要となる。しかし戦時のCEOの任務はこれと逆だ。会社にすでに弾丸が一発しか残っていない状況では、その一発に必中を期するしかない。戦時には社員が任務を死守し、厳格に遂行できるかどうかに会社の生き残りがかかることになる。

会社の社員は、全体として創造性があり、知的で、モチベーションが高いだろうか?それとも、部下たちは怠け者で、ずる賢く、就業時間になるのをずっと待っているタイプだろうか?もし後者であるなら、そのような会社には創造性は無用だし、決してイノベーションは起きないだろう。そんな会社は失敗を運命づけられている。

買収に関して正しい判断を下すためには、・・・ 市場の潜在的規模は現在より少なくとも一桁以上大きいか?そこでナンバーワンになれるか?もし答えが友イエスでないなら、買収に応じることを検討すべきだ。

ベンチャーキャピタル・・・ゼネラル・パートナーには一定の経験を求めることをモットーにしたい。実際に会社を起業し、経営した経験があるものだけが起業して会社を経営する人々に助言する資格がある

歴史的に見て、VCの利益のほとんどは大成功を収めたごく小数の投資先から上がっている。しかもそうした大成功を引き当てるのは、ごく少数の同じ顔ぶれのVCだ。VCは800社以上存在するが、巨額の利益を得ているのは6社くらいしかない。・・・最優秀の起業家は最優秀のVCはとしかしごとをしたがらないのだ。・・・われわれがVCを成功させたいなら、この悪循環を断ち切り、最優秀な起業家を惹きつけるブレイクスルーを生み出す必要があった。

自分がまず動き、決断しなければ何も始まらない

HARD THINGS

HARD THINGS

 

 

MAKERS 21世紀の産業革命が始まる

かつて、起業家になるのは大変なことだった。・・・ところが、今の僕らは、なんの苦もなくウェブの恩恵にあずかっている。 ・・・もちろん、失敗することもあるだろう。だがその大小は、クレジットカードの支払滞納くらいのもので、生涯にわたる汚名や貧困ではない。ウェブの凄さは、それが発明だけでなく生産の手段をも民主化したことだ。事業アイデアがあれば、ソフトウェアのコードを組むだけでそれを商品化できる。

デザインをいよいよ製品化するときには、大企業に頼み込んで自分の特許をライセンスして貰う必要はない。自分で製品を作れるからだ。・・・ここ20年間のオンラインの歴史は、過去に例のないイノベーションと起業の爆発的な増加の歴史だ。・・・オートメーションの流れはこれからも続くー大手製造業が先進国で創業していくには、そうするしかない・・・中小企業の役割は大きく変わるだろう。スタートアップ企業がテクノロジー業界におけるイノベーションの原動力であるように、・・・起業家や個人発明家のエネルギーと創造力は、製造業を再構築し、その過程で雇用を生み出すようになる。

スティーブ・ジョブズ「一見かなり複雑そうなことでも、探求と学習を通して理解できると知ったことは、大きな自信になった」

僕達がオンラインの世界に生きているという人もいるが、日常の出費や生活となると、それは誤りだ。僕らは物に囲まれたリアルワールドに生きていて、食べ物や服、車や家が欠かせない。・・・ビットの世界は刺激的だが、経済のほとんどはアトムでできている。

 ヴェンカテシュ・ラオ「蒸気機関の最大の功績は、新天地の植民地化を助けたことではなく、時間の植民地化を始めたことにある。・・・余ったエネルギーから生み出されたアイデアは、さらなる時間を生み、その一部が次のアイデアを生むために費やされることで、さらに時間を生む。そこに好循環が生まれるのだ。」

現代のメイカー的家内工業は、市場への販路を支配する工場に品物を納入するのではなく、自分のウェブサイトで、またはエッツィイーやイーベイといった市場を通して世界中の消費者に製品をオンラインで直接に販売する。19世紀の職人と違って、工場からの注文を待つこともなく、独自の製品を発明し、自分だけのマイクロブランドを築こうとする。安い労働力が優位となるコモディティ市場の中で価格を競うのではなく、イノベーションで競争する。独自のデザインを開発し、大量生産品を意識的に避けるような限られた顧客に向けて、プレミアム価格で販売することもできる。

ついこのあいだまで、世界最大規模のコンピューティング施設は政府や巨大企業や研究所のためのものだった。今、それが皆さんのために働いている。

3Dデザイン共有サイトのシンギバーズを訪れた。すると、そこはザ・シムズと同じ世界だった。・・・ありとあらゆる(ドールハウス用の)家具が揃っていて、ダウンロードし放題だった。・・・20分後には、それが手の中にあった。無料で、お手軽で、リアルな世界よりもはるかによりどりみどりで、アマゾンでさえこれにはかなわない。

weekly.ascii.jp

www.thingiverse.com

 10年か20年後の見らに時計を早送りしてみよう。3Dプリンタは、早くて静かになり、プラスチックから木材から食品まで、様々な種類の素材を使えるようになるだろう。・・・今ある最高の玩具工場よりも、なめらかな表面の製品を作ることができるだろう。

ブロックバスターによる独占は終わったのだ。マスマーケット文化は、ロングテールをもつマイクロマーケットに変わった。・・・人間は、20世紀の市場が思っていたよりもずっと多様だったのだ。僕らが若かった頃、店舗での品揃えが限られていたのは、当時の小売業の経済合理性によるもので、人間の嗜好に幅がなかったからではない。人はみな、異なる欲求とニーズをもつ、唯一無二の存在だ。インターネットには、物理的な市場にはない、僕達全員の居場所がある。

20世紀に特有の3つのボトルネック

  1. 大量生産に見合う
  2. 大量流通に見合う
  3. 消費者の目にとまる

オンラインでグローバル市場に販売すれば十分な需要が見込めるため、より多くのニッチ商品が製造されるようになってきた。・・・本当のウェブ革命は、豊富な品ぞろえ辛子なものが選べるようになったことではなく、僕達が自分のためにものを製造し、それを他の人達も利用できるようになったことにある。・・・企業の後ろ盾や学歴がなくても、才能と情熱があれば、聴衆を見つけられるようになったのだ。

ルーファス・グリスコム「これは、アマチュアルネッサンスなのだ」

製造業は、今やウェブのブラウザからアクセスできるクラウドサービスの一つとなり、誰でも必要なときに必要な分だけ、巨大な工業インフラのほんの一部を利用できるようになった。・・・エリック・リース「製造手段を所有しているかどうかは、問題ではない。製造手段の借り手であることが重要なのだ。」

リーン・スタートアップ

リーン・スタートアップ

 

 人間はある水準まで満ち足りると、高給でもやりがいのない仕事より、給料は劣っても(といっても生活が保証されれば)やりがいのある仕事を、むしろ積極的に選ぶ・・・エリック・ハーストの研究では、起業家の半数は、金儲けのためだけでなく幸福を追求するために起業するという。

消費者には、自分が創造に手を貸したと感じる製品をより高く評価する傾向・・・「イケア効果」・・・ダン・アリエリー・・・1950年台にインスタントケーキミックスが発売された当初は、拒否反応が起きた。ケーキミックスはお手軽すぎて、主婦の労働や技術が過小評価されると感じた人がいたからだ。その後、食品会社は、レシピを変え、ミックスに卵を加えるようにした。・・・手作業を加えることが成功のカギになったと思われる。

メイカーズ・プレミアム・・・コモディティ化に対する究極の対抗策

BMWでは、3万ドルの3シリーズから7万ドルの7シリーズまで、常に多くのデザイン・・・どの車種も全てBMWらしく見えなければならない。その反面、7シリーズは3シリーズの倍以上の値段に見合うだけの高級感がなければならない・・言葉では言い表せなくても、見ればすぐに分かるような、独特の外観があるはずだ。数十年前には、それを作る能力こそがデザインの匠の証しだったし、デザイナー個人の感性が会社の顔になるようなBMWやアップルといった企業では、今もそうだろう。しかし、今日の殆どの企業では、アルゴリズムがその役割を担っている。

アルゴリズム、ソフトウェア、ハードウェア、そしてデジタル工作機械は、現代のプロダクトデザインの新しいスタンダードだ。対象物に同じ型を押し当てる機械式の型押しと違い、アルゴリズムによる成形は表面や全体の外観を変化させ、一つ一つを別のものへと変形させる。

ニール・ガーシェンフェルド「デジタルファブリケーションを普及させるキラーアプリは、パーソナル・ファブリケーションだと気がついたのです。ウォルマートで買えるものを作るのではなくて、買えないものを作るために使われるのだと」

Fab ―パーソナルコンピュータからパーソナルファブリケーションへ (Make: Japan Books)

Fab ―パーソナルコンピュータからパーソナルファブリケーションへ (Make: Japan Books)

 

 3D印刷は、ものづくりの経済を、大量生産から、3Dプリンタを使った小さなデザインショップによる職人モデルへと回帰させる可能性を秘めている。言い換えると、ものづくり、リアルなものづくりが、資本集約型の産業から、芸術とソフトウェアのようなものへと移行するかもしれないということだ。リッチ・カールガード(Forbes)

僕は、ただ楽しむために何かをすることができない。目的がないと面白くないのだ。だから、つい「趣味を仕事に」してしまったあげく、結局楽しめなくなるという悲しい結果に終わる。

 サン・マイクロシステムズの共同創業者ビル・ジョイ・・・コース理論(企業は、時間や手間や面倒や間違いなどの取引コストを最小にするために存在する)の欠陥を就いていた。「一番優秀な奴らはたいていよそにいる」・・・ビル・ジョイの法則・・・取引コストの最小化を優先すると、もっとも優秀な人材とは一緒に仕事ができない・・・会社が雇える人材としか一緒に働けない。・・・ハイエクは社会における知識の利用・・・知識が人々の間で不均質に分散している・・・統制され計画的に協調された組織は分散した知識に手をのばすことが出来ない

スティーブ・ジョブズ自身は大学をドロップ・アウトした天才だが、アップルにはジョブズのような社員はほとんどいない。Think Differentのキャッチフレーズとは裏腹に、今では他の優良企業と同じように経歴が重視される。・・・オープンなコミュニティではなく、企業の形態を取る限りアップルでさえビル・ジョイの法則に縛られる。

企業に比べてコミュニティでは自由と平等が保たれやすい。企業と違って法的責任とリスクがないからでもある。・・・女医が指摘したのは、労働市場が変化しつつあるということだった。インターネットのおかげで、たまたま隣りに座っている人に仕事を頼まなくてもよくなった。

人材のロングテール・・・ウェブのおかげで、人は教育や経歴にかかわらず、能力を証明することができる。また、グループを作り、本業かどうかに関係なく、企業の外で協力することが可能になる。・・・地理的な制約がほとんどない。才能ある人材はどこにいてもいいし、組織のために引っ越す必要もない。

コース理論に基づいて企業を経営しない僕らは、より多くの志納ある人材を引き入れることが出来ている。ひとところに集まることによってではなく、テクノロジーによって取引コストを最小にしているのだ。

 伝統的な大企業は、オンラインのプロジェクトよりも取引コストがしばしば高くつく。グローバルな人材市場からやってくるオンラインコミュニティの参加者に簡単に頼ることが出来るなら、たまたま隣りにいるだけの、この仕事に向いているかどうかもわからない同僚に頼る必要はない。

企業は、官僚主義や手続きや承認プロセスに満ちている。組織のあり方を守るためにそれは仕方がないことだ。・・・新しい製造モデルには、これまでにない製造企業が必要になる。・・・ウェブ企業のスキルを多く取り入れて、製品周りにコミュニティをつくり育てることで、新製品をより速く、より安く、よりうまくデザインできる企業。・・・不透明な環境に対応するために、組織の一部はより階層化が進むでしょう。ですが、高い機動性とオープン性と変化が常に必要な部分もあるのです。

 企業への投資は、個人投資家保護という名目のもとで、証券取引委員会(SEC)によって厳しく規制・・・近隣の中小企業への個人投資やコミュニティの利益から生まれたガレージ起業への個人投資を阻んでいる。・・・事業との個人的なつながりは、どこかのオフィスでまことしやかに作られたSECの申請書類よりも、よほど適切にリスクを評価する基準になるはずだ。投資業界は今、投資家保護の名目で、富裕層以外の投資資産を独占している。

 ナイキの元クリエイティブディレクター、スコット・ウィルソン・・・しち面倒な企業の製品開発プロセスを回避できた。何層にも重ねられた企業の承認プロセスは、真のイノベーションよりも過去の実績を重視するように出来ている。

画期的なネズミ捕り機を作れば、世界中から注文が殺到するはずだ。それが、アメリカの発明家が何世代にも渡っていたいてきた夢物語だろう。だが現実はちょっと違う。画期的なネズミ捕り機を作ったとしよう、ものすごく運が良ければ、どこかの企業がそれに目をつけ、様々な部署に諮り、安く製造できるようデザインを変え、利益を出せる価格を設定できるかマーケティング部門に決めさせる。完成品が店の店に並ぶ頃には、オリジナルのデザインとは似ても似つかない、まったくの別物になっている。 

 ユーザーの応募した商品アイデアのうちどれを生産するかをコミュニティの参加によって決めた後にも、製品開発のプロ集団がものづくりを助け、ややこしい製造の問題を解決してくれるとしたらどうだろう?それがまさにクァーキー(Quirky)のモデルだ。

Quirky: The Invention Platform

 ロングテールが示すように、新しい時代とは、ブロックバスター(大ヒット作)がなくなる時代ではなく、大ヒット作による独占が終わる時代なのだ。ものづくりにも同じことがいえる。ただ、よりオックなるというだけなのだ。より多くの人が、より多くの場所で、より多くの小さなニッチに注目し、より多くのイノベーションを起こす。

MAKERS 21世紀の産業革命が始まる

MAKERS 21世紀の産業革命が始まる

 

 

よくわかる人工知能

 間引きなんて、畳込みニューラルネットワークを使って認識さえできれば、十分に実現できるはずなのに、間引きを自動化しようって言うことはこれまでほとんど考えられてこなかった。

そもそもネット企業はすでに機械学習を活用しており、広告の最適かも含めて色々やってるんですよね。そこにディープラーニングで劇的に効率化できるところは実は結構少ない。

ディープラーニングだと、やっぱりある程度、背景となる数学が分かる必要があって、理系を出て、線形代数がわかるぐらいの学力は必要です。プログラムが出来て、GPUを触るぐらいの技量が必要なので、誰でも彼でもという話にはなかなかならないんですよ。

研究者は多くの場合、やり続けることが競争力なので、トレンドを読むのは得意でない場合も多い。

画像認識のコンテストでは1300万枚のデータを学習する必要・・・グーグルの発表したコンテストのトップ5正解率96.54%のInception-V3は、1300万枚の画像を学習するのにNVIDIA社のTITAN Xを使って49日間かかったそうです。

中身はブラックボックスでいいって人は多いですね。一見するとユーザーフレンドリーなのはTensorFlowなのは確か。

ディープラーニングの処理はどのような処理でも精度を落として計算可能だという誤解をしている方もいて、そういった誤解が生まれるのは嫌だなと思ってはいます。問題によって、単精度で計算スべきものもあれば、半精度で十分なものもあるんです。扱う問題によって変わってきます。

コンピュータ・グラフィックスの基礎理論は、光が平面に当たったときにどのくらいのエネルギーを受け取るか、ということで表されます。光がある平面に当たったときにその平面がどれくらいのエネルギーを受け取るかということについて、平面から高原に伸びるベクトルLと、平面と垂直なベクトル(法線)Nの内積によって求めます。・・・驚くべきことに、この計算の根拠は特にありません。なんとなく見た目がOKならOK、というアバウトなところが、まさしくこのコンピュータ・グラフィックスという、核もいい加減な世界なのです。

こうすれば計算を省略できる、こうすれば真面目に計算したときの1/1000の労力ですんで、なおかつ見た見た目にはほとんどバレない、これがCGという学問の真髄です。

CGが人間の認知を誤魔化そうと一生懸命研究されてきたのに対し、AIは人間の認知そのものを解明しようとする試みです。・・・この2つの学問分野は急激に接近・・・計算が非常に似ている・・・どちらも認知というものを最大限追求する学問

もともと何らか機械学習を使っていた部分に対して、単純に精度が上がるのでディープラーニングに置き換えていくところです。で、たぶん次に来るのは、対話であったり画像と言語の融合であったり、よりAIっぽい、世の中で言う人工知能のイメージに近いと思います。

特に海外勢は、ディープラーニングの研究成果を、惜しげも無く、どんどんGithubとかに公開する風潮じゃないですか。・・・おっぽうで国内だと、まだそういうことをやってる会社は非常に少なくて、特に大きい会社は、ほぼ皆無という状況なんです。・・・

諸々の権利をクリアして、堂々と出せる部類のものが、まだあんまりないというだけだと思います。

下手すると、追っかけているだけで、なんにも自分は作れないまま、インプットだけで終わっちゃうっていう怖さはありますね。

AlphaGoっていうのは、便宜上の名前であって、実際、あれは学校みたいなものなんですよ。要するにAlphaGoの中に、たくさん別々の教育を受けた人工知能があって、それがみんなで対戦して、その中で勝ったやつだけが出てきているんですよ。それが多数決で決まっていて、更に、多数決のほうが、それぞれ1個ずつが計算するよりも正しいっていうことも分かってます。

いつも面白いなと思うのは、結局、Aiって乱数から始まって、乱数で最適化していくんです。これ、もう完全に神様に任せてるのと一緒ですよ。・・・学習結果に常に従うと、そいつは、どこかで局所解に陥って、グルグル回るだけで(実質的に)死ぬんです。・・・20%なんですけど・・・ランダムな行動を取るようにすると、局所解に行かなくなります。

心ってすべては電気信号なんですよ。・・・ 腹側被蓋野(ふくそくひがいや)ってところがあるんですけど、そこに刺激を与えると、目の前の人が好きになることが知られています。・・・すごく悲しいときに、そういう電気信号なんだって思えば、全然なんともないじゃないですか。

僕に信号を送っているのがホルモンなんですよね。・・・化学物質です。・・・ホルモンは視床下部で作られているんですけど、その視床下部で、なぜできるのかっていうのがまだわからない。

AI研究者ってだんだんいらなくなってるでしょ・・・膨大なハイパーパラメータ探索みたいなところの重要性が高まってきている・・・原理はよくわかんないけど、作ったら、だんだん出来てきちゃったみたいな、そういう可能性も結構あるんです。もちろん、可能性の高い研究の方向性をディレクションするためには、深い知識や理論が必要であることも忘れてはなりませんし、大量のリソースも必要です。

AIの開発はもはや誰に求めることの出来ない世界的なブーム・・・仮にある国でAIの開発が規制されたとしても、研究者が他の国に移ってしまうだけです。

齊藤元章 - Wikipedia

基本的には複雑な系の中で、人間が見いだせるパターンなんて1体1の相関関係しか無いとも言えるぐらい、単純なものがほとんどです。1対NとかN対1とかN対Nの関係性に関しては、これはもう複雑すぎて、人間では特徴量が抽出できないし、仮説が立てられません。こういった人間では立案することが不可能な仮説を、高速な人工知能エンジンがあると作り出していける。

我々の頭の中には、1000億個もの神経細胞と、100兆個ものシナプス結合があるんですが、最も単純なコネクトームをもつ、一番単純な地球上の生物が線虫です。たった350個の神経細胞と7000個のシナプス結合なんです。でもこの線虫って・・・超早期の段階にあるガンを、わずか一滴の尿から95.8%もの精度、感度で見つけることが分かってきました。人間がこれまでに考えだしたどんな診断装置よりも、高い診断の感度と精度を持っていて、・・・我々のコネクトームには、決定的な物理的制約・・・頭蓋骨・・・1.3リットルの体積・・・この制約を取っ払ってしまって、さらに拡張できたとしたらどうなりますかね?

物質材料科学というのが、いかに人間が勘に頼って、運に頼って新物質などを見つけようとしてきたか、ってことにもつながります。こういう、人工知能エンジンを使った仮説・検証サイクルの回し方ができるようになったら、一瞬にして解決するんじゃないかなって。

wired.jp

  • 「まず最初に、エネルギーに関する問題が解決されるでしょう。スーパーコンピューターの圧倒的な計算能力によって熱核融合や人工光合成が実現し、世界は新しいエネルギーに満ち溢れます」
  • より高度な遺伝子組み換え技術と人類すべての食料を補って余りある生産技術が確立し、食料問題が解決します。労働は超高効率のロボットで代替され、最終的には衣食住のすべてがフリーになります。それによって現在のような消費のシステムもなくなり、人は生きるために働く必要のない『不労』の社会を手に入れます。やがて人体のメカニズムが革新的に解明されることで、人類は『不老』をも手にすることになるでしょう。これが未来学者、レイ・カーツワイルの提唱した『特異点(シンギュラリティ)』の前に起こる、『前特異点(プレ・シンギュラリティ)』によって生じる世界です。人類はあと5〜10年もしないうちに、このプレ・シンギュラリティを迎えることになるでしょう

  • 科学には、基本的には人間の中のことか外のことかの2つしかない』と子どものころから父親に言われ続けてきました」。齊藤は幼少時代をそう振り返る。「『人間の外のことを研究するのに免許はいらないけれど、人間の中の探究には医師免許というパスポートが必要だ。だから医師免許を取っておいて損はない。将来医者をやるかやらないかはお前の自由だが、免許をもっておけば選択に困らないよ』と。ずっとそう言われ続けて生きてきたのです
  • 心臓の3次元CT画像に、時間軸の変化を加えた4次元のリアルタイム画像を世界で初めて作成することに成功。1993年には、シカゴで行われた北米放射線学会でこの画像処理システムを発表し、医学界で大きな反響を呼ぶ
  • 「君のような変わったやつは、すぐにアメリカに来て起業すべきだ」。この超高速CT装置を開発したイマトロン社の社長ダグラス・P・ボイドは、齊藤の学会発表を見るとすぐにそう声をかけた。
  • 彼は震災を機に日本へ帰ることを決め、プロセッサー技術を開発するヴェンチャー企業PEZY Computingを立ち上げる。「PEZY」という名は、単位接頭語である「Peta(1015)」「Exa(1018)」「Zetta(1021)」「Yotta(1024)」の頭文字をとったものだ。

Airbnb Story 大胆なアイデアを生み、困難を乗り越え、超人気サービスをつくる方法

 共有経済の大きな特徴は、アイデア自体は目新しくないこと(スンドララジャン)

サンフランシスコに住んでいた二人のデザイン学校卒業生が、失業して家賃の支払いに困っていた。2007年10月、地元のホテルがデザイン博で満杯になるタイミングを狙って、自宅の余ったスペースにエアマットを敷いて貸し出すことにした。

チェスキーは、・・・工業デザイン会社の3DIDで働きはじめた。・・・仕事はつまらない作業の繰り返しだった。「くだらないとは思わなかった。でも大学で夢見たこととは全然違ってた」・・・「なんか、僕の人生はこうして終わっていくんだ、って思った。大学で教わってたことと違うんだって」

コンセプトは磨いていた。国中で開かれる大規模な会議の期間中に止まる場所を探すためのサービスにしよう。・・・SXSW

投資家への売り込みは、すぐに拒絶にぶつかった。サイベルが紹介してくれた7人の投資家のほとんどは返事もよこさなかった。・・・ふたりは企業価値を150万ドルと見積もって・・・その時15万ドルを投資していたら、今では数十億ドルになっているはずだ。

ホストにただの朝食を送りつけ、それをゲストに渡してもらうという作戦だ。・・・送りつけるのはシリアルに決めた。・・・民主党大会の後、・・・1万個作って一箱2ドルで売れば、会社は生き延びられる。エンジェルから金をもらうのと同じじゃないかとチェスキーは自分を納得させた。この時点で、彼らはもう野球カードのバインダーが一杯になるくらいクレジットカードを作りまくり、一人2万ドルの借金があった。・・・シリアルの箱・・・バカでかい折り紙を折ってるみたいだった。・・・マーク・ザッカーバーグは糊付け作業なんてやってないし、手をやけどしながらシリアルの箱を組み立てたりしないよな、と心のなかでつぶやいた。・・・借金は返せたものの、シリアルと関係のないサイトには誰も集まらず、どうやってトラフィックを集めたらいいのか皆目検討もつかなかった。・・・チェスキーは母親から電話で、「え、ちょっと待って・・・シリアル外車になっちゃったの?」と聞かれた。・・・シリアルで2万ドルから3万ドルは儲けたのに、本業の売上はわずか5000ドルだった。・・・今は苦しいけど、そのうちいい苦労話になるから(チェスキー)

Yコンの受験は厳しいことで有名だ。・・・「お前アホか。シリアルは持っていくなよ」・・・ゲビアは、パートナーたちと話しているグレアムのところに近づいていき、シリアルを手渡した。グレアムはぎこちなくありがとうと言った。・・・おみやげじゃなくて、これ自分たちで作って売ったんです。それで会社の資金にしたんです。・・・「君たちゴキブリみたいだな。絶対に死なない。」・・・のちにグレアムは、例のシリアルが決め手だったと言っていた。「4ドルのシリアルを40ドルで売れるなら、他人のエアベッドで寝るようにみんなを説得できるだろうと思ったんだ。たぶんね」

 「みんなが欲しがるものをつくろう」というYコンのモットーは、Gメールの生みの親で今はYコンのパートナーになったポール・ブチェットの言葉だ。伝統的なMBAの考えの逆を行くYコンビネーターの基本理念のひとつが、このモットーに現れている。

ベンチャー・キャピタリストのフレッド・ウィルソン「今の床にエアマットをおいたらホテル代わりになるなんていう発想に行き着かなかった。だからこの話を追いかけなかった」

グレアム「一番熱心な人間が誰よりも成功するということだ。いかにも優秀なタイプが成功するわけじゃない。成功するのはたいて、ダメなやつらだ」

これまで売り込んだ投資家にはことごとく相手にされず鼻であしらわれてきたのに、VC界で名門の誉れ高いセコイアが興味を持ってくれるなんて、信じられなかった。・・・伝統的な貸別荘業界の思考回路とは全く違っていたが、ホストとゲストを大規模に結びつけるという難問の少なくとも一部を彼らが解決していたのは明らかだった。・・・スタートアップの一番の敵は己の地震と決意なんだ。長い間、僕達は最悪だと言われ続けた。その後で、最高だって言われたんだ。(セコイアにとっても命運を分ける投資だった。あの58万5000ドルは、現時点でおよそ45億ドルと推定される)。

起業したいっていう人は多いけど、実際にやる人はそれほど多くない。彼らはやったんだ。・・・グズグズと頭のなかで想像をこねくり回してばかりじゃなかった。ローンチしたんだ。

グレイロック・パートナーズを運営するリード・ホフマン「アホなやつが下手にアイデアを売り込んだら、額面通り受け取るな。信頼できる売り込みが来るまで待て」「ビジネスによって創業者に求められる強みは違う。マーケットプレイスの創業者は枠にはまらない考え方ができて、とりとめのない方がいい」

ポール・グレアム「エアビーアンドビーとウィムドゥ(Wimdu、エアビーのパクリサイト)の違いは、エアビーアンドビーの創業者は伝道師で、ウィムドゥの創業者はカネで動く傭兵だということ。たいていは伝道師が勝つ。」・・・サムわ~兄弟はおそらく長期に会社を経営するつもりはない。彼らのビジネスモデルは長期経営でなく、事業売却を前提に成り立っていた。

グレイロックパートナーズのエリサ・シュライバー「ウーバーはただの取引。エアビーアンドビーは人との触れ合い」

基本的に、このモデルはホテルや自動車レンタル会社やタクシー協会ほどの安全を保証できない。人はいつもトレードオフを選択しているし、共有経済では別のトレードオフを選択し始めている。

ウィルソン(ホリデイ・イン創業)、マリオット、ヒルトンその他少数の起業家が、観光業界の最初の破壊者だった。彼らは新しい旅の姿を提案して業界を揺るがし、莫大な富を築き、現代の複合ホテルチェーンへの道を開いた。

僕達が勝っても、ホテルが負けるわけじゃない・・・掲載物件のおよそ4分の3は、大手ホテルの立っている場所の圏外だ。エアビーアンドビーは大人数で止まる場合が多い。テクノロジー業界的に言えば「ユースケース」が違う。

ベストウェスタンホテルズアンドリゾーツのデビッド・コングCEO「その時はニッチな商売だと答えた。おそらく共存できるし、それほど大きな影響はないと言ったんだ。あれ以来、急激に成長した。規模が年々倍になっている。」

ビル・マリオット「本物の破壊者だ」

 エアビーアンドビーはこれからも伝統的な宿泊業界を侵食するだろう(ムーディーズ

www.moodys.com

グローバルな不動産会社のCBREは2016年に発行した報告書でそう結論づけていた。・・・エアビーアンドビー競合指数を示して、ニューヨークとサンフランシスコで最もエアビーアンドビーの影響が大きいことを明らかにした。・・・稼働率は上がっても価格力を失ったのは、少なくとも部分的にはエアビーアンドビーが原因だと思われる。

www.cbrehotels.com

 

ボストン大学の研究

http://journals.ama.org/doi/abs/10.1509/jmr.15.0204

特に繁忙期の価格力が低下したことは大きなダメージ

>日本のAirbnb関連研究

『シェアリングエコノミーの定量分析~ライドシェアと民泊の事例を用いて~』

www.mof.go.jp

ホテルにとっては、ピークシーズンにどれだけ料金をあげられるかが利益に直結する。年間宿泊日数の10%から15%しかないこのシーズンが、売上の重要な源泉になる。ホテル経営陣がエアビーアンドビーを苦々しく思うのは、地域で大きなイベントがあると需要に応じて供給が伸びてしまうからだ。・・・限界費用をほとんどかけずに拡大し、ほぼ一晩にして新市場に参入でき、その影響はこれから高まるばかりなのだから。

www.tnooz.com

 エアビーアンドビーが現在及ぼしているリスクがどんなものであれ、このペースで成長が続けば来年にはその脅威が2倍になることは覚悟しておいたほうがいい、とバークレイズ証券の投資家向けレポート

 

1950年台にオランダとスイスの教員組合はお互いに自宅を貸し借りする慣例を作り、夏休みの間に教師がお金をかけずに旅行を楽しめるようにした。

 アコーホテルズCEOのセバスチャン・ベイジン「新しいコンセプトやサービスに対抗するのは馬鹿馬鹿しいし、無責任だ。共有経済に反対するのは、もちろんくだらない。世界はその方向に向かっている。こうした新しいサービスはどれも非常に勢いがあり、運用と実行も優れている。それを認めたほうがいい」

skift.com

ジョージ・バーナード・ショー成功とは、間違いを犯さないことではない。同じ間違いを繰り返さないことだ

 エアビーの社内でよく聞くガンジーの言葉「はじめに彼らは無視し、次に笑い、そして挑みかかるだろうーだが勝つのは我々だ」

バフェットのいちばん大切な教えは、雑音に惑わされるなということだ。

 チェスキーは学習マシーンだ。それが彼の一番の強みだとリード・ホフマンは言う。成功する起業家はみんなそうだ。『永遠の学習者』なんだ。彼はその究極のお手本だね。

 もちろん、ブライアンがプロダクトよりだということは間違いないし、優れた顧客価値を提供することにものすごく気を遣っていることも確かだ。でも、そういうタイプで規模拡大できないCEOは大勢いる。

マーク・アンドリーセン「ブライアンが、『どうしよう、大変だ』なんていうのを聞いたことが無い。いつも次の新しいことを見つけようとしている。」

『ヤツは学習の鬼だな』イーベイのドナヒュー

トーマス・フリードマン悲観主義者はだいたい正しい。だが世界を変えるのは楽観主義者だ」

TEAM OF TEAMS (チーム・オブ・チームズ)

ネルソンがつくりあげたものは、命令を単純に実行するのではなく、個人のイニシアチブと批判的思考を大切にする組織文化である。ニコルソンの説明によれば、「ネルソンは市場を作り上げたが、いったん市場が出来上がると、部下の積極性に任せた。こうして、配下の艦長たちは自分たちを戦争の企業家だと考えるようになった」

テイラー・・・銑鉄の扱いがもっとも上手い労働者は、その製造にまつわる科学的な内容を理解することが出来ない。・・・そんな労働者が成功するためには、より知的な人間によって、科学の法則に従って労働の習慣を身につけるよう教育されなくてはならない。

フレデリック・テイラー - Wikipedia

科学的管理法 - Wikipedia

ジェレミー・リフキン「テイラーはおそらく20世紀の人間の私的・公的な生活に対して、他のどんな人間よりも大きな影響を与えてきた」

予測不可能な状態はテクノロジーの進歩のせいで起きている・・・予想不可能な複雑さが、テイラー主義的な効率性に基づく組織にとっては妨げになるのである。この変化こそ、20世紀の尺度では「最高のマシン」だった特任部隊が失敗した原因であった。 

ローレンツ・・・目盛りには、すべての値について小数第六位まで記憶されていたのだが、ローレンツが入力に使ったプリントアウトの数列は、小数第三位までしか表示されていなかった。彼は、0.506127と0.506の違いは取るに足りないと考え、プリントしていた数字を丸めて入力していたのだが、それで問題が起きるとは全く予想していなかった。・・・バタフライ効果

複雑さと難解さは違う。・・・難解・・・突き詰めれば、一連のスッキリ整理された決定論的関係に分解できる。機会のある部分の動きや変更が何を引き起こすか、最終的にはかなり高い精度で予測可能だ。・・・物理的には単純なメカニズムにすぎないのに、それでも結果を予想することはほぼ不可能だ。・・・密度の高い相互作用のせいで、複雑系は非直線的な変化を示す。・・・人間の思考は線形関数に慣れている。反対に、非線形関数に対し、人間は不快感を覚える。・・・要素還元主義的な指示カードは、チェスには役に立たないだろう。相互作用のせいであまりに多くの可能性が生まれるからだ。

バタフライ効果という言葉はほとんど誤解されており、テコの原理と同じ意味で使われている。・・・複雑系の中の小さな事柄は全く影響を及ばさないかもしれない。あるいは反対に重大な影響を持つかもしれない。そして、それがどちらに転ぶかをすることが事実上不可能である、というのが正しい解釈だ。

全てを構成要素に分解し、あるいは個々の要素を最適化するという機械的で還元主義的な考え方は、ニュートンからテイラーにいたる思想家たちによって支持されてきた。しかし、それを用いて複雑系をコントロールしようという試みは、無意味であり、最悪の場合は破滅的な結果をもたらしかねない。

 フレデリック・テイラーのマネジメント方式は、明らかに複雑な問題よりも難解な問題のために生み出されたものだった。・・・どこかの機械にトラブルが起きても、それが他の機械に有機的な影響をおよぼすことはなかった。逆に、一つのイノベーションが「爆発的ヒット」を飛ばして工場主が一夜にして億万長者になることもなかった。・・・計画的な効率性は良きマネジメントの活力源となった。・・・環境が次第に多対多の複雑さを増していくに連れて、我々はますます複雑な解決策を設計していたた。才能のあるマネジャーは、あらゆる可能性をカバーするために入り組んだ手順と組織的ヒエラルキーを開発した。どんな問題も完全に理解可能だという基本的信念は、消えていないのである。20-30年も企業や役所で働いた人なら誰でも、規則と書類がまるで果てしなく増えていくような気がするという経験があるだろう。

 ヘンリー・ミンツバーグ「未知の海で予め決められたコースに身を委ねるのは、氷山に向かってまっしぐらに航行するための一番の方法だ。」

レジリエンス思考・・・強力で専門化された防壁を築く代わりに、パンチをかわし、あるいはパンチから利益さえも得ようとするシステムを構築する。レジリエントなシステムとは、予期できない脅威を前にして、必要なときに自己修復することができるようなシステムだ。

予測を通して、また予期される脅威から、全力で自分を守ろうとする・・・Caltechのジョン・ドイル「強固だが脆弱なシステム」

強固さはシステムの各部分を強化することによって達成される(例えばピラミッド)。これに対してレジリエンスは、変化や損傷に対応して各部分を再構成させ順応させる各要素を繋いでいくことの結果(例えばサンゴ礁

相互依存が進んだせいで、縦割り組織はもはや環境を正確に反映するものではなくなった。

問題は、「関係者以外極秘」の論理が、どの情報を誰が知り誰が知るべきでないかを、マネジャーなり何らかのアルゴリズムなり官僚なりが決定できるという仮定のもとに成り立っている点だ。・・・指揮官は確信を持って、「その知識は、チームが取ろうとしている行動や分析官が直面するかもしれない状況とは無関係である」と断言できなければならない。我々の経験では、そう断言できる事例はなかった。・・・有用な予測を立てることは非常に難しくなり、多くの場合不可能だ。何が誰にとってどんな意味を持つかを正確に把握し予見できるというのは錯覚であり、その前提のもとで組織が機能し続けるのは傲慢にほかならない。「関係者以外極秘」は安全に思えるかもしれないが、逆である。相互依存的な状況で安全に機能するには、全チームが、行動しているすべての部隊同士の関わり合いを総合的に理解することが必要だ。計画がうまくいくためには、全員が全体の流れに目を向けなければならない。

 根本的な原因は具体的な手順の欠如ではなく、予測不能な不整合をリアルタイムで修正する能力の欠如にある。

 医学部は教育で、応急処置は訓練だ。教育では、ほぼ無数の脅威を把握して対応するための基本的理解を学ぶ。一方、訓練で身につけるのは予想される問題にのみ有効な、単独の行動だ。言うならば、教育はレジリエントであり、訓練は強固である。

(この視点に立つと、先行研究をエミュレートして論文を書く能力を身につけるのは訓練であり、一から(もちろん文字通りの一からではないが)論文を書く能力を身につけるのは教育ということになるのだろうか)

物理的スペースをどうデザインするかは、人間の行動をどう捉えるかの反映であるが、一方、人間の行動はデザインされたスペースの副産物でもある。・・・イノベーションや創造性を高く評価する企業は、対話を促進する職場環境のあり方を、時間をかけて模索してきた。1941年にベル研究所は慣行を破り、交流を促進する空間づくりを目指した。施設の設計を請け負ったのは、アメリカ最大級の建築設計事務所であるスキッドモア・オーウィングス・アンド・メリル・・・1970年台には、お硬いIBMさえも初歩的なノンテリトリアル・オフィスを試行した。・・・ブルームバーグ「仕事の習慣を命令で変えようとするマネジメントのやり方には限界があると、ずっと思ってきました。命令すればやるでしょうが、目を離すと従業員はいつものやり方に後戻りしがちです。一方、物理的設備は影響がより長く続きます」

 優先すべきは、時機を逸する前に最善の選択をすることだ。私は、特別なことがない限り自分が介入してもさして意味はないことに気づき、やり方を変えた。・・・リッツはすべての従業員に対し、宿泊客に何か特別なことが必要な場合に本来の業務から離脱してもよいと教え、自らの権限を使うことを奨励している。・・・ノードストロームの新入社員に配られるカード・・・従業員マニュアルは非常にシンプルにしてあります。ルールは一つだけです。・・・各自、判断力を駆使して下さい。迷ったときは、臆せずに、いつでもどんなことでも、直属のマネジャーや店長、人事担当者に聞いて下さい。

1980年代、企業は「権限委譲(enpowerment)」を試みるようになった。・・・ケニス・W・トーマス、ベティー・A・ベルトースは、権限の分散で「仕事への自発的モチベーション」が生まれることを明らかにした。・・・権限と最良が十分にあると感じている労働者は20%にとどまり、大半が権利を奪われ、檻に入れられたような気分でいる。・・・物事の相互依存性が高まり、予測が難しくなっている中、部下に細かく口出しするマネジメント法にかかるコストは増している。HBSのロサベス・モス・カンターは、現場に権限を与えることが絶対に必要だという。・・・個々の従業員に裁量権を与えているかそうでないかということこそが、行き詰まる企業と道を切り開く企業とを見分ける一つのポイントである。・・・バーノフとシャドラー・・・「怒りのツイート一つでブランドを破壊できる世界で企業が反撃に出るには、従業員を制約から解き放たなければならない」

私がリーダーとして最も機能していたのは、個別の作戦の判断をしていたときではなく、機動性を損なう組織の壁と官僚主義を防ぐために、情報収集・分析から資源配分まで、一連の流れを監督しているときだった。

 

TEAM OF TEAMS (チーム・オブ・チームズ)

TEAM OF TEAMS (チーム・オブ・チームズ)

  • 作者: スタンリー・マクリスタル,タントゥム・コリンズ,デビッド・シルバーマン,クリス・ファッセル,吉川南,尼丁千津子,高取芳彦
  • 出版社/メーカー: 日経BP
  • 発売日: 2016/04/01
  • メディア: 単行本
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現代の名演奏家50 クラシック音楽の天才・奇才・異才

カルロス・クライバー 

父子とも大指揮者となると、エーリヒとカルロスのクライバー父子しかいない。・・・1934年になると、フルトヴェングラーナチス政権と対立し、ベルリンでの公職を辞任・・・クライバーだけでなく、ワルタークレンペラー、ブレッヒなど次々と名指揮者が出ていき、人材不足に陥った。そこへ水性のごとくベルリンに登場したのがヘルベルト・フォン・カラヤンだった。・・・デビュー公演でカルロス・クライバーは「カール・ケラー」という偽名で出演・・・父は「幸運を祈る、ケラー殿」と電報を打ち、息子を励ました。・・・カルロスは自分の実力だけで成功したのだ。

有名になるとクライバーはめったに出演しなくなった。カルロス・クライバーの才能を認めていたカラヤンは、「あいつは冷蔵庫がからになるまで仕事をしない」・・・日本のファンの間では「クライバーの家に空き巣に入り、冷蔵庫をカラにしてこい」

父エーリヒ「可哀想に、あいつには音楽の才能がある」

Various: Complete Orchestra Re

Various: Complete Orchestra Re

 

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アルトゥーロ・ベネディッティ・ミケランジェリ

20世紀後半最高のピアノ教師・・・ポリーニアルゲリッチという2人の現代最高のピアニストの師なのだ。

 ミケランジェリは、生涯に出た演奏会よりも、キャンセルした演奏会のほうが多い・・・キャンセル魔・・・彼は完璧主義者だったので、ピアノやホールが自分の考えている響きではないと判断すると、その瞬間にキャンセルを決断した。

アルゲリッチ・・・レッスンを受けたのは一年半で4回だけ・・・教えたかったのは「静寂の音楽」だった・・・アルゲリッチもまたキャンセル魔となる。・・・これ以上支持しても意味が無いと判断して・・・ホロヴィッツの元へ・・・弟子入りを断った・・・色々あり65年のショパンコンクールで優勝・・・60年のポリーニに続き「ミケランジェリのでし」が二回連続して優勝・・・一人はミケランジェリのもとへ行く前に優勝し、ひとりは決別した後に優勝したわけで、ふたりとも彼の指導のおかげで栄冠を得たわけではない。

1955年はハラシェヴィチが優勝・・・審査員だったミケランジェリアシュケナージを強く推し、意見が通らないとわかると途中で帰った・・・80年のコンクールではアルゲリッチポゴレリチの演奏を、他の審査員が奇抜すぎると認めず第三次予選で落としたことに抗議して辞任し、彼は天才よと言い残してワルシャワを去った。この事件のおかげで、優勝したダン・タイ・ソンよりもポゴレリチのほうがスターになってしまった。

Maurizio Pollini Complete Recordings on Deutsche Grammophon

Maurizio Pollini Complete Recordings on Deutsche Grammophon

 
Various: Complete Recordings

Various: Complete Recordings

 
Arturo Benedetti Michelangeli -Complete Recordings On Deutsche Grammophon

Arturo Benedetti Michelangeli -Complete Recordings On Deutsche Grammophon

 

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イ・ムジチ

トスカニーニが絶賛、12人の若者の演奏を聞いた。彼らは素晴らしかった。音楽はまだ死んでいなかった。

 巨匠の絶賛・・・リストがベートーヴェンに絶賛されたのが伝説となったのに似ている。

ヴィヴァルディ:協奏曲集<四季>

ヴィヴァルディ:協奏曲集<四季>

 

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 エレーヌ・グリモー

 私は音楽が空間を支配し、空間そのものとなるのを感じた。

彼女はパリ音楽院でも自分の居場所を見つけられず、やめてしまう。・・・チャイコフスキーコンクールに挑戦するが、入賞できない。それなのに、当代一のピアニストになってしまうのだから、音楽院やコンクールは無意味だと言う説の正しさの一例となる。

バレンボイムとは、演奏の方法と曲目で激しく対立した。若きピアニストはマエストロの言いなりにならない。

クレーメルからは譜面上での知的な練習、アルゲリッチからは直感の生命力を教わった。彼女はそれを人生を決定する出会いと記す。

Helene Grimaud: The Warner Recordings

Helene Grimaud: The Warner Recordings

 

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アンネ=ゾフィー・ムター

カラヤンは妻エリエッチに、ムターについてこう語った。「才能があるなんてものじゃない。彼女は、真のヴァイオリンの天才だ」

カラヤンの死により、音楽界から帝王はいなくなった。そしていつの頃からか、ムターは女王と呼ばれている。

個人的に好きなのはヴァイオリン協奏曲第3番ト長調K.216(シュトラスブルグ協奏曲)

モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲全集

モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲全集

 

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エミール・ギレリス

 ギレリス少年がベートーヴェンの熱情ソナタを引き始めると、ルービンシュタインは最初の数小節を聞いただけで、天才だと見抜いた。・・・ソ連国内ではまだ無名に近い。同じオデッサに住むギレリスの一歳上のスヴァトスタフ・リヒテルは、さらに無名だった。なにしろリヒテルはこの時のルービンシュタインの演奏を聞いて啓示を受け、ピアニストになろうと決意したのだ。

第一回チャイコフスキー国際コンクール・・・アメリカからやって来たヴァン・クライバーンという青年が・・圧倒的な腕前だったのだ。・・・審査員の1人リヒテルが、二次選考に残った20名のうち、クライバーンには満点を投じ、15名には0点を投じた。・・・審査委員長のギレリスは当惑しつつ、点数の付け方を説明した。しかしリヒテルは平然と、「好きになれない演奏には点数をつけようがない」と言い放った。・・・当時の最高権力者であるフルシチョフ首相に面会を求め、「クライバーンというアメリカ人を優勝させたい」と伝えた。フルシチョフは、「そいつが、いちばんうまいのか。それなら、そいつにやれ」と許可した。

Beethoven Sonatas

Beethoven Sonatas

 
Van Cliburn Complete Album Collection

Van Cliburn Complete Album Collection

 

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 アルフレッド・ブレンデル

1960年代のウィーンで活躍していた3人の若手ピアニストは、日本では「三羽鴉(がらす)」と呼ばれた。グルダ、デームス、バドゥラ=スコダである。・・・3人と親しくしていながら、当時はあまり注目されていなかったのがブレンデル

「私にとってグールドはなってはいけない演奏家の典型でした。エキセントリックで、何が何でも作曲家の意図や作品の性格に反することをしようとする人でした」

一方のグールドは、「ブレンデルの弾く(モーツァルトの)協奏曲は、私が聞いた中では一番だと思います。熱と愛情がほどよく混じり合っている点で、あれ以上のものは全く想像できません」・・・もっとも、グールドはモーツァルトそのものに「彼の死は早すぎたというより遅すぎた」と語り、「感銘をうけたことはない」とまで言っているので、ブレンデルへの賛辞も皮肉かもしれない。だいたい、演奏そのものではなく、熱と愛情がほどよく混じり合っている点を評価しているのだ。・・・ブレンデル「彼はとても親切なことを書いてくれ、私のモーツァルトの録音を褒めてくれた」と語っているが、これもまた皮肉かもしれない。

一度だけだが会ったことがある。・・・ブレンデルはグールドの演奏について、「リズムを譜面通りに付点リズムで弾いていない」と指摘・・・次にバドゥラ=スコダがブレンデルが弾くベートーヴェンのハンマークラヴィーアの録音を聞かせると、グールドは「譜面にないオクターヴで弾いている」と指摘した。

ブレンデル「グールドはとても感じの良い格好のいい青年」だったと語るが、要するに、その音楽については褒めていない。・・・「あえて申し上げたい。譜面を正確に読むことは極めて難しい仕事です。」

シューベルト:ピアノ五重奏曲<ます>/モーァルト:ピアノ四重奏曲第1番

シューベルト:ピアノ五重奏曲<ます>/モーァルト:ピアノ四重奏曲第1番

 

 アンドレ・プレヴィン

 プレヴィンは作曲家でありピアニストであり、指揮者でもある。・・・現代のモーツァルトと讃えられてもおかしくはない。・・・20世紀のモーツァルトのような人が、すでにアメリカにはいた―レナード・バーンスタインである。・・・20世紀最大のピアニストであるホロヴィッツは、バーンスタインから何度も共演を持ちかけられたが、「君のほうが目立つから、いやだよ」と断り続けたというのだ。

レナード・バーンスタインがサンフランシスコに来て、サンフランシスコ交響楽団を指揮した。それを見学したブレヴィンはすっかり影響されてしまい、その数日後に、モントゥーのレッスンで指揮を始めると、「バーンスタイン君を見たね」と見破られてしまった。手取り足取り教えたわけでもないのに影響を与えたバーンスタインも、見て聞いていただけでそっくりの指揮が出来たプレヴィンも、そして瞬時に見破ったモントゥーも、いずれも天才である。

Tchaikovsky: Swan Lake/Sleepin

Tchaikovsky: Swan Lake/Sleepin

 
Trio Jazz: King Size

Trio Jazz: King Size

 

 ジョン・エリオット・ガーディナー

カラヤンの晩年のコンサートを聞いて、彼が力を行使するやり方にはどこか邪悪なところがあり、それが音楽を損なっているという印象を受けました。そこには何の驚きも、喜びの瞬間もありませんでした。型どおりとしか感じられなかった。全てが自己中心的で、全てが彼を中心に回っていたのです。

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

 ニューイヤーコンサート・・・指揮者が毎年交代するようになるのは1987年のカラヤンからで、それ以前は、1980年から86年まではロリン・マゼール、その前は1955年から79年まで25年間に渡り、ウィリー・ボスコフスキーがずっと指揮していた。さらにその前はクレメンス・クラウスが1939年から指揮していた。

ピエール・ブーレーズ

「このままでは音楽が死んでしまいます。一体誰が、音楽がはまり込んでいる問題から解放させるのですか!」

 メシアンは即答した。「もちろん、ブーレーズ、君さ!」

ブーレーズは自分が何をするために音楽を学んでいるのかも、よく理解していなかったのだろう。だが、何かをやらなければならないことだけは分かっており、メシアンもまた、この若者が音楽史に残るであろう天才だとも分かっていたのだ。

パリ音楽院時代・・・ランパルによるとブーレーズは「好きな作曲家はまったくなかった」「彼は反抗的で、彼を楽しませる音楽はほとんどなかった」

The Complete Columbia Album Collection [67CD Boxset]

The Complete Columbia Album Collection [67CD Boxset]

 

 ダニエル・バレンボイム

イスラエルがドイツ音楽を受け入れるには様々なプロセスがあり、その多くに、バレンボイムが関わっている。

 イスラエルはドイツ音楽とドイツの音楽家を徐々に受け容れていったが、例外がナチス党員であったカラヤンヒトラーが心酔し「ナチスの音楽」のイメージが強いワーグナーだった。・・・ワーグナーヒトラーが生まれる前に死んでおり、ホロコーストに対する直接の責任はない。

 ミシェル・ペロフ

同業のカップルがうまくいかなくなるのは、どちらかが才能の差を見せつけられることに、耐えられなくなるケースが多い。 二人(アルゲリッチとペロフ)の場合、ペロフがピアノを弾けなくなるという形で現れた。

アルゲリッチが対して練習もしないのに、強大でパワフルで、しかも美しい演奏を、苦もなくしていることに、ペロフが焦ってしまい、さらに自分がアルゲリッチの真似をしてしまうことを恐れるようになった(ベラミーによるアルゲリッチの伝記)

アルゲリッチについては「偉大なピアニストです。彼女には独自のインスピレーションと音楽性があり、あの超絶技巧は、誰もが称賛せざるを得ません」と今も絶賛している。 

ドビュッシー:ピアノ作品全集

ドビュッシー:ピアノ作品全集

 

 マルタ・アルゲリッチ

 ホロヴィッツの終演後、アルゲリッチが楽屋を尋ねると、彼女に気づいたホロヴィッツが「あなたこそ、最高だ」と叫んだので、彼女が「それはあなたのことです」と言い返したという逸話がある。

コラール「ホロヴィッツは、アルゲリッチが自分と同じように弾ける唯一のピアニストであることを認めていた」「ふたりとも自由な心の持ち主で、ピアノを思いのままに操り、一瞬にして聞く人を征服する恐るべき能力を持ったピアニストである」と評している。

 

Martha Argerich: Complete Recordings On Deutsche Gramophon

Martha Argerich: Complete Recordings On Deutsche Gramophon

 

 レナード・バーンスタイン

「さっき、アメリカでもっとも偉大なユダヤ人の作曲家、ジョージ・ガーシュウィンがなくなりました。これからガーシュウィンの曲を弾きますが、終わっても拍手はしないで下さい」

彼はガーシュウィンのプレリュード第二番を弾いた。子どもたちは静かにその音楽を聴いた。

「重苦しい静けさだった。その時初めて、音楽の力を感じた。演奏を終えた後、その場を去りながら、自分がガーシュウィンになったような気がした。その曲を自分が作曲したような気になった」

音楽の力を感じたい青年は、やがてガーシュウィンの次に「アメリカでもっとも偉大なユダヤ人の音楽家」となり、多くの若者に直接・間接に影響を与えた。

The Complete Mahler Symphonies

The Complete Mahler Symphonies

 

 

 

 

漫画201707

 今夜は月が綺麗ですが、とりあえず死ね

7月に5巻が発売と聞いたので、その前に積読を消化。「恋心が殺意に変化する病気」というワンアイデアとキャッチーなタイトルが新鮮。こういうインパクト勝負+プロットは月並み(とりあえず変な組織出しとけみたいな)な漫画は3巻くらいで華麗にフィニッシュ決めたほうがみんな満足だと思うんだけど・・・。

 結婚指輪物語

サトウのハーレムっぷりに苛つきつつ、ヒメちゃんを愛でる漫画。アンバルちゃんは髪型がすごい。良くも悪くも普通のファンタジー、ちょいアダルト。

 喧嘩稼業

 読んだと思ったら読んでなかった。十兵衛VS佐川のクライマックス。喧嘩商売ほどの胸熱感はもうないけど(慣れちゃった?)、安定して面白い。巻末漫画はひどすぎる。

 あさひなぐ

 乃木坂で実写化するとのことだったので、ちと敬遠してたけど一気読み。なるほど、食わず嫌いはやっぱり良くないわ、面白い。コツコツ強くなっていく感じがベイビーステップの丸尾君みたいで感情移入しやすい。強くなる理由が「才能とか努力とか、はたまた超能力とか」に帰するんじゃなくて、「そもそも競技人口が少ないから」って勝手に納得できるし、やっぱりマイナー競技スポーツ漫画はいい市場だわ。

設定やキャラはテンプレライクであまり奇抜なところはないけど、だからこそ王道の青春⇒感動!が体験できるし、真春ちゃんと薙ちゃんは可愛いし、茨城の汚れくノ一(福留やす子)はいいキャラだ。映画にやす子が登場しないのが一番のがっかりポイント。深田恭子とかにやってほしかった。

 ボールルームへようこそ

 休載していたのですっかり存在を忘れていたが、アニメ化ニュースで存在を再認識し、いつのまにやら新刊が(2017/1に連載再開してたのか・・・)。こちらもマイナースポーツの社交ダンス漫画。若干のご都合展開は気になるが、どうなるか先が読めないので楽しい。

 きのう何食べた?

夏バテで食欲が無いので、なっとうアボカド丼を作るために再読(笑

きのう何食べた?(12) (モーニング KC)

きのう何食べた?(12) (モーニング KC)

 

 IT'S MY LIFE 

 8巻出る前に消化。予想はしてたけど日常編終わりか・・・まぁそうだよな、日常漫画にするつもりなら、IT'S MY HOMEって名前にするもんな。今後が不安。

IT’S MY LIFE(7) (裏少年サンデーコミックス)

IT’S MY LIFE(7) (裏少年サンデーコミックス)

 

 響~小説家になる方法

 8月に7巻が出るらしいので、その前に復習で一気読み。響ちゃんのエキセントリックな性格と奇行、そしていちいち本質をズバリとついてくる発言が魅力。周りの生徒達の心理描写も丁寧に扱ってくれると、さらに深みが増しそう。

恋愛ハーレムゲーム終了のお知らせがくる頃に 

 本屋で見つけて気になっていたが、購入時期を逸し続けていたら密林のオススメに表示されたので能動的にワンクリック詐欺に。1巻はインストラクション的な位置づけで今後どういう展開になるのか気になる(デスノート的な感じになりそう?)。

 ぐらんぶる

 夏なので再読、安定のダイビング(=裸と飲酒)漫画。現行で最強クラスのギャグ漫画なので、頭を空っぽにして笑いたい人は必読。読んでも何も残らないが・・・。

 かぐや様は告らせたい

 作者も認めているように、副題の「天才たちの恋愛頭脳戦?」は完全にミスリーディング。作者のIQが低すぎて、まったく頭脳戦を見ることが出来ない。設定は良かったけど、力量不足でプロットはスカスカ、今や藤原書記を眺めるだけの漫画に。

 orange

 本屋で見かけて、「あれ、完結してなかったっけ?」とスルーした思い出。あぁ、こういうアプローチでの続刊ね;ファンには嬉しい続刊。

 ベイビーステップ

 鉄板の王道スポーツ漫画。意味不明なスポ根に走らず、ちゃんと合理的な説明がされていて納得感もある。ちゃんとテニスやっていて、「滅びよ」とか言わないし、ネットが燃えたり、選手が分身したりしない。

 甘々と稲妻

安定の日常系。並行して読んでいた「高杉さん家のお弁当」が2015年に完結して以降、われわれの運命はつむぎちゃんと小鳥ちゃんに託されている。

 ドラゴン、家を買う。

 奇をてらったアイデアとタイトルはよかったが、内容は薄くて拍子抜け。IT'S MY LIFEの後を託すには心もとない。

 ソードオラトリア

もはやどれが外伝なのか、誰が主人公なのか分からないダンまちファミリーの一つ。王道バトルファンタジーで安心して読める。アイズは可愛いが出来すぎた娘なので、個人的にはフィンが一番好き。

 かくしごと

 今一番続きが気になって仕方がない漫画の一つ、もう一つはワールドトリガー(ジャンルが違いすぎる笑)。結局のところ、主人公と背景が違うだけで、久米田節で扱われる時事ネタ・ヲタクネタ・漫画家ネタ(成分多め)のショートショートを読んで笑うという構造は毎度のことだが、冒頭・巻末の意味ありげな姫ちゃんストーリーのせいで全体に調和と深みが与えらていて、なんかズルい(巧い)。

 くーねるまるた

 いつの間にやら12巻、日常系なので変わらず続いてくれればええんやで。

監獄学園

読んでも何も残らない漫画。男囚人編がピークで、その後は惰性で読み続けているだけ(みつ子の登場は笑ったけど)。

プラチナエンド 

このコンビだからこその期待値の高さ、ゆえにどうも盛り上がりに欠ける展開。このままフェードアウトかなぁ・・・。

プラチナエンド 6 (ジャンプコミックス)