シドニー旅行覚書

仕事でシドニーに旅行に行ったので覚書。

  • ETASは公式から申し込むべき、と言いたいところだけど、オーストラリアに関しては代行業者を通したほうが安く済むことがある(細かい説明は割愛)とのことで、実績のあるビューグランドさんに頼みました。僕は問題なかったけど、ご利用の際は自己責任でどうぞ。
  • www.lalalaaustralia.com

  • 11月は初夏、雨は滞在中に2度遭遇したので折りたたみ傘はあったほうがいい。ただすぐに止むので、なくてもそこまで困らない。
  • 日本のパスポートはeパスポートの入国列を使える、と覚えておこう。慣れていれば、入国審査は5分以内で終わる。
  • シドニー国際空港から市内まではエアポートリンクで大体15分なのだが17ドルとやや高額。そこでBanksiaという空港近くの田舎駅を経由して市内に向かうことでコストを4分の1にしようというハックを活用。バスのタイミングが悪いと1時間以上かかる可能性もあるが、試す価値はある。帰りのバス停は駅から少し左に歩いた民家の前なので注意。Googleマップでは絶対にサジェストされない経路。

pianotohikouki.com

  • 事前にOpalカードを買いましょう、というのがこれまでのお約束だったが、近年はタッチ決済可能なクレジットカード(AMEX・VISA・MC)をそのまま公共交通機関で使えるぜっていうのが世界的な流行。シンガポールなんかがそうだし、シドニーもこれに対応しているので、もはやOpalカードを買う必要はない。ただし、日本のカードはタッチ決済に対応していないものも少なくない(日本は後進国)ので、事前に使えるかの確認は必須。市内のお店もほとんどがタッチ決済前提です。

www.asahi.com

  • 僕は単純に世界中のICカードを集めているので、Opalカードを買いました。デポジットはないですが、ミニマムで35ドルの購入が必要。ムーブとしては、地下鉄の駅まで行ってOpalカードを買い、地上からバス停に行くのが最速になる。
  • 宿泊したのはシエスタシドニーコスパ重視なので割り切りが必要だけど、玄人受けする宿だなと思った。カップルや旅慣れしていない人には間違ってもおすすめできない笑。 部屋にはトイレもシャワーもありません、全部共用です。しかもぶっちゃけぼろいです。しかし立地は抜群でタウンホールやオペラハウスは徒歩圏内。各種ツアーに参加する場合は、グレースホテルやヒルトンといったホテルが集合場所として指定されるけど、シエスタからはすべて徒歩圏内(グレースは5分、ヒルトンは10分くらい)。また共用キッチンに一通りの機材が揃っているので食費を浮かせることも可能。ベッドのグレードがいいのは嬉しいポイント。荷物は9時から20時まで無料で預かってくれるのも痒いところに手が届く。ということで、省くべきところをばっさりと省いてコスパに優れた、分かる人には分かるし、それでいいホテルと言えるでしょう。

www.booking.com

  • オペラハウスのツアーは英語だと1時間、日本語だと30分で料金は同じ。タイミングもよかったので英語に参加。基本的にビジュアル付きなので、英語が苦手な人でも楽しめると思う。オペラハウスにはマリーナベイサンズにもあったオリジナルのモノポリーが売っている。ツアー参加者は10%の食事・買い物のディスカウントが受けられる。

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  • 今回は利用しなかったが、Flexi Passを利用する人は、初日に手に入れておくのが効率的なムーブでしょう。いつもはこの手のパスを使うんですが、コスパ的にはそれほど美味しくないな、と思ったので、今回は自由度を優先しました。3箇所で105ドルなんですが、最大化したければOZ JET Boating ($61.39)+オペラハウス($30)+タロンガ($33)の組み合わせでしょうか。クジラツアーが使える時期(~10月)なら$60相当くらいなので、OZ+クジラ+オペラかタロンガでまあまあのコスパになると思います。パスのくせに、使うと損になる(平均$33に対して、それ以下の金額の施設が含まれている)可能性があるのは設計的にあり得ないです。全力でコスパ追求なら3日間のアンリミテッド($245)ですが、これもそこまで満足度高いとは思えない。

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  • 世界遺産であるブルーマウンテンズとジェノランケーブに行く際は必ず事前にツアーを申し込んでおこう。解説には専門用語が多くなりがちなので、さすがにこれは母語ツアーがおすすめだと思う(鍾乳洞の英語なんて一般人はわからん)。ブルーマウンテンズだけであれば自力でも電車を乗り継いでいけば辿り着けるが、徒歩ではあまり効率的に回れない。さらにジェノランケーブは車がないと辿り着けない。また、仮に辿り着いたとしても、現地でツアーに申し込まないと鍾乳洞の中には入れない。さらにさらに先着順でツアーが埋まっていく(ジェノランケーブの中にはいくつか鍾乳洞があり、ツアーごとに行く場所が異なる)ので、希望の鍾乳洞に入ろうと思ったら、朝一でツアーに申し込まないといけない=一泊が前提、という事情があるから。

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  • Veltraで検索するとIECのツアーとジャックさんのツアーがヒットするはず。大体同じところを回るので大差ないと思うが(実際にジャックさんのバスと道中で2、3回遭遇した;カンガルー探しとかエコーポイントとか・・・)、ジェノランケーブツアーの充実度とコスパを考慮すると、IECのほうがいいと思う(ので、僕はこちらに参加した)。

www.veltra.com

  • シドニー魚市場は7時から空いているので、朝一からバリバリ観光したい人におすすめ。屋外で食べれば、魚を狙う鳥たちとの負けられない戦いを体験できる。

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  • シドニーでアウトレットといえばドラモインにあるバーケンヘッド・ポイント・ショッピング・センター、高級ブランドはあまりないが、アウトドアブランドやスポーツブランドは揃っている。
  • オペラハウスとハーバーブリッジを一枚の写真に収めるためには東側から撮影する必要がある。一つは後述するフェリーからの撮影、もう一つはミセスマクアリーの椅子付近から撮影する方法だ。アクセスするにはロイヤル植物園を抜けていくとよいが、日光を遮るものがないので、夕方~に行くことをお勧めする。オペラハウスのサンセット写真を撮る絶好のチャンス。ロイヤル植物園はかなり充実度の高い植物園なので、訪問する価値あり。

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  • ボンダイビーチを訪れる人で、(今年であれば)10/24-11/10に訪問すると、Sculpture by the Seaというイベントに遭遇できる。これは海岸線沿いにアーティストが独創的な作品を飾るアートイベント。海はもちろん美しいのだが、海岸線をだらだらと歩いていると飽きてしまう。しかし、このイベントがあると、次は何かな?という期待感とともに散歩ができるので、タイミングが合えば行くべき。ただしジモティにも人気なので、それなりに混んではいる。

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  • 同じく限定イベントだと土曜の夜はチャイニーズマーケットで夜市をやっている。夜のライトアップは平日と休日でやや異なる(平日のほうが豪華)あたりも知っておくといいかもしれない小ネタ。サーキュラーキーとダーリングハーバーの夜景は定番。
  • 先ほど書いたフェリー、私営フェリーに乗りたい人は勝手に乗るとして、公営フェリーに関して、日曜はAUD2.6で乗り放題というシステムを最大限生かしましょう。これに関して、どこまで乗っても一回あたり2.6ドルなのか、何回乗っても2.6ドル以上請求されないのかよくわかりませんでしたが、結論としてはどこまで何回乗っても、日曜に請求される金額は2.6ドルだけです。2回目以降の乗船では0ドルと表示されて無料になる、と覚えておきましょう。オペラハウスの後ろはフェリーからしか撮れませんのでシャッターチャンスです。

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  • フェリー乗り放題でどこに行くか、まず第一感はF1のManlyとF4のワトソンズベイです。どちらもシドニーっ子が遊びに行く行楽地的な位置づけ。ワトソンズベイにはGapという自殺の名所、もとい絶景スポットがあります。さらに北に歩くと撮影スポットのホーンビーライトハウスがありますが、遠い・帰りのフェリーの時間を逃したくない(逃すとぶっちゃけ何もないワトソンズベイで時間を潰さないといけない)といった理由から行きませんでした。

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  • そしてもう一つのおすすめがF5、サーキュラーキーからNeutral Bay、そしてサーキュラーキーに戻ってくる周遊コースです。実際、一度も船から降りずにフェリーを満喫する人が多かったので、そういう路線なんだと思います(とくに休日は)。乗り場の番号とコース番号はリンクしていないので、必ず現地で確認してください。
  • フェリーの時間調整にはシドニー現代美術館とカスタムズハウス図書館がいいと思います。カスタムズハウス図書館には日本の漫画が結構置いてあり、個人的にびっくりしました。とても現代的できれいな図書館です。シドニージオラマも美しいです。

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  • 定番ツアー2つ目はポートスティーブンスのイルカウォッチングクルーズです。個人的にイルカはそこまで興味がなかったけど、前から行きたかったレプタイルパークがツアーに組み込まれていたので参加。実は鍾乳洞と同じく、レプタイルパークも車がないと中々アクセスが難しいスポット。

www.veltra.com

  • さて、レプタイルパークだけど、アクセスの悪さが災いしてかあまり儲かっていない感じ。全体的に広さの割にはこじんまりとしており、予算不足感を強烈に感じる雰囲気。爬虫類だけじゃ人来ないから、とりあえず定番のコアラとカンガルーも飼っとけ、みたいな感じで雑。チープな感じで嫌いじゃなかったけど、普通の人はわざわざ行かなくてもいいかな(タロンガとか、ほかのところでいいかな)という感想でした。小さいワニは可愛かった(触らしてくれる)。

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  • その後はイルカに会えないイルカウォッチング、ストックトンビーチでサンドボーディングという定番の流れ。どれも面白かったけど、コスパ的にはやや微妙。普通の人はIECのやつとか他のツアーのほうが満足度高いと思います。
  • あとはセントメアリー大聖堂、これはステンドグラスが綺麗なので一見の価値ありです。理想的なムーブとしてはハイドパークバラックスとセットで回るんでしょうが、今はバラックスが工事中なので仕方ないですね。代わりにおすすめなのがニューサウスウェールズ州立図書館です。ここは広いし綺麗だし、ちょっとした美術館が併設しているし、ハリーポッター的な図書室もあるしで、本好きな人はとくにテンションが上がるスポットだと思います。シドニーは美術館や博物館が貧弱なので(歴史も浅いし仕方ないけど)、こういうスポットは貴重です。

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  • パワーハウスミュージアムスターウォーズの衣装が置いてあるらしいですが、下記のような特別なイベントが開催されていなかったので、今回は見送りました。

maas.museum

collection.maas.museum

  • あまり外食はしませんでしたが、牛ならアイムアンガス、魚ならシドニー魚市場、サーキュラーキーのシドニーコーブオイスターバーがいいとガイドのお姉さんが言ってました。あまりオーストラリア関係ないですが、Vapianoのランチはコスパよかったです。
  • シドニー空港にはプライオリティパス対応のラウンジはありませんが、AUD36まで食べさせてくれるレストランが4つあります。下記記事ではチェックイン前のeチケットでは無理だったって書いてますが、僕は普通にeチケットでMach2行けました(リゾット食べました)。

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nomad-english.com

C11 地球の歩き方 オーストラリア 2019~2020

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まっぷる オーストラリア (マップルマガジン 海外)

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エクストリーム・チームズ

  • 外部 の 目 には 見え にくい が、 企業 として の 成功 の 土台 には、 それ を 押し進め た チーム の 力 が ある。 特に 規模 が 大きく 構造 が 複雑 な 企業 の 場合、 どんなに リーダー が 有能 で カリスマ 性 が あっ た として も、 リーダー の 力 だけで 成功 する のは 不可能 だ。 先見 性 の ある リーダー の 影響力 を 軽 ん じ る わけ では ない が、 リーダー が 果たす べき 最大 の 役割 は、 会社 の 成長 に 必要 な チーム を そろえ、 サポート し て いく こと に ある。

  • 1992 年 公開 の アニメ『 トイ・ストーリー 2』 の 製作 途中 で、 その 事実 を 裏づける 出来事 が あっ た。『 2』 は ピクサー と ディズニー との 共同 製作 だっ た が、 明らか に 作品 として の でき が いまひとつ だっ た。 大々的 な 軌道 修正 が 必要 だ。 しかも 厳しい スケジュール の もと で 何とか し なく ては なら ない。 公開 日 に 間に合わ せ、 同時に ピクサー の 非常 に 高い クオリティ 水準 を 満たす ため、 現場 は 9 ヵ月 の タイム レース 状態 に なっ た。 関係者 の ほとんど が 連日 ほぼ 無休 で 働い た。

  • この 苛酷 な 期間 の ある 日 の こと、 一人 の 男性 アニメーター が 子ども を 車 に 置き去り に する という 事件 が 起き た。 彼 は いつも どおり 車 で 出勤 し た の だ が、 その 日 の 作業 で 頭 が いっぱい だっ た せい で、 途中 で 保育所 に 寄っ て 子ども を 預ける のを 忘れ た。 それどころか 子ども を 後部 座席 に 乗せ て い た こと さえ さっぱり 忘れ て しまっ た の だ。 3 時間 後 に 妻 から 電話 が あっ て 初めて 自分 の 失態 に 気づき、 駐車場 に 駆けつけ た。   幸い、 車内 に い た 子ども に 深刻 な 被害 は なかっ た が、 ピクサー は この 件 を 受け て―― 他 に、 長時間 労働 の ストレス に 起因 する 事故 が 増え て い た―― 大きく 認識 を 改める こと と なっ た。ピクサー の 製作 チーム は、 彼ら の 表現 に よれ ば「 世界中 の 人 の 心 を 動かす」 優れ た 作品 を 作る ため、 どんな こと でも する という 強い 意欲 に 満ち あふれ て いる。だ が、 そうした やる気 を 多少 なだめる 配慮 も 必要 だ、 と ピクサー 幹部 陣 は 気づい た。 ピクサー の 問題 は、 社員 に モチベーション が 欠け て い た こと では ない。 むしろ モチベーション が あり すぎ た こと が 問題 だっ た の だ。

 

  • 社内 の 緊密 な 人間関係 を 推奨 せ ず、 個人的 な つきあい や 感情的 な つながり を 持た ない 運営 を 好む 企業 も ある。 解雇 に かかわる 場面 では、 そうした 企業 の ほう が ピクサー よりも 遥か に 楽 だ。「 個人的 な 恨み では ない、 これ は ビジネス なの だ から」 と 割り切れる。 反対 に、 社内 の 緊密 な 人間関係 を 推奨 し て おき ながら、 トラブル 発生 時 に チーム や 企業 として 必要 な 対処 が でき ない、 あるいは 対処 が 遅れる 企業 も ある。 こちら は 人間関係 を 大事 に し すぎ て、 ビジネス として の 判断 が 滞っ て いる の だ。 ビジネス や プロジェクト の 進行 には しばしば 厳しい 判断 が 必要 と なる のに、 人 と 人 との 絆 が 決断 の 邪魔 に なっ て しまう。  

  • その 点 で ピクサー は ユニーク だ。 ラセター の「 ピクサー に いる 人 たち は、 みんな 私 の 親友 だ」 という 言葉 に 表れ て いる とおり、 一般的 な 企業 よりも 人間関係 に関して 相当 に ソフト で ある 一方 で、 最高 の 映画 を 作る ため に 必要 と 思え ば、 親友 の 映画監督 でも クビ に する ハード さも 兼ね備え て いる。 この ジレンマ について、 一人 の 社員 が こんなふうに 語っ て いる。  

  • ピクサー は、 正しい と 信じる 運営 の ため、 辛い 決断 を する こと も ある。 この 会社 は あらゆる こと に 協力 を 惜しま ない し、 思いやり が ある。 だが、 つねに 人 よりも 映画 の ストーリー が 優先 だ。 ピクサー が 掲げる 高い 水準 に 見合っ た 作品 が 作れ ない と、 その 監督 は 交代 に なる。 たいてい は 別 の プロジェクト か、 以前 に やっ て い た 業務 に 戻る こと を 提示 さ れる が、 ほとんど の 人 は 辞め て しまう。 能力 を 信じ て もらえ ず に 降ろさ れ た と あれ ば、 気持ち として は 辛 すぎる からね。 監督 で こう なる こと が 多い けれど、 下 の 階層 でも 同じ こと が 生じる 場合 が ある。

  • ピクサー の よう な 企業 は、 一般的 な 会社 と 比べ て、 より ソフト でも あり、 より ハード でも ある。 学術 的 には「 共同 関係」 と「 交換 関係」 という 言葉 で 研究 さ れ て いる 特徴 だ。

 

  • チーム と チームワーク に対する 新しい アプローチ を 積極的 に 実験 し て いく 企業 で ある こと だ。 この 7 社 は、 業務管理 の 一般的 な 手法 には 固執 せ ず、 つねに 運営 方法 の 改善 に 努め て いる。 たとえば 一般 の 企業 では 給与 情報 は 秘密 に する もの だ が、 ホールフーズ は その 逆 で、 全 社員 の 給料 額 を 社内 で オープン に し て いる。 透明 性 こそ が 大切 だ と 確信 し、 従来 ながら の 発想 に 背い て いる の だ。 

 

  • 一連の解雇が済んだあと、ネットフリックスのリーダー陣は、会社を成長させる取り組みはできなくなるのではないかと恐れた。残った80人で既存事業を回すことに集中しなければならないからだ。ところが驚いたことに、人数を減らしてからのほうが仕事の速度が上がり、質も高くなった。CEOのヘイスティングスが、当時のことをこう説明している。
  • 「理由を考えてみたら、あることに気づいた。少数精鋭になったことで
    『誰かの不手際をフォローする』ための雑務が必要なくなっていたのだ。全員の仕事が速くなり、すべてが適切に動いていた。
  • 解雇されずに残った人材にとって、職場はむしろ働きやすい環境になっていた。全員が優秀で、全員がすばらしい仕事をする、とお互いに信用し合えるからだ。優秀な人材だけで構成される会社で働くことを、彼らは喜んでいた。玉石混交の集団で得られる成功よりも、この働き方で感じる喜びのほうが大きかったのだ。こうした気づきを踏まえてネットフリックスは、卓越した人材だけが働き続け、進歩し続け、決して凡庸に陥らないアプローチを開発すべきだと考えた
  • ネットフリックスの考えでは、ほとんどの企業が、それと反対の落とし穴に落ちてしまう。会社として成長するにつれ、落とし穴は深くなる。会社が順調なら少しくらい凡庸な人材がいても支障はないし、財政的に余裕があるので、能力を発揮できない者を抱えていることもできてしまうからだ。小さなスタートアップでは一般的にそんな贅沢は言っていられないが、大企業なら大丈夫だ。卓越していない人材でも雇用し続けていられる。
  • だが企業が成長し、人材濃度が薄くなると、それを補うための雑多なプロセスが必要となってくる。たとえば大企業には毎年の業務計画が必要だし、定期的な業務レビューを実施して、多数のグループがちゃんと優先事項に集中しているかどうか確認しなければならない(少数精鋭なら、
    自発的にそのように働くと信頼することができる)。また、財務部や人事部などの業務部門がそれぞれの意図に沿った業務手順を定めるので、それが積み重なって、会社全体に役所的な息苦しさが生じる場合がある。

 

  • 人材に対するネットフリックス流アプローチは、CEOのヘイスティングスが頻繁に語るエピソードに象徴されている。彼はキャリアの初期に、エンジニアとして、あるテクノロジー系スタートアップで働いていた。長時間猛烈に働いていたが、たとえば使ったコーヒーカップを洗うといったような、オフィスで発生するささいな雑務は無視することが少なくなかった。彼が机にコーヒーカップを積み上げておくと、週の終わりに誰かが片づけ、洗って、元の位置に戻しておいてくれる。掃除係がやっているのだとヘイスティングスは思っていた。
  • これが1年ほど続いたある日、朝5時に出社すると、CEOが給湯室で彼のコーヒーカップを洗っている姿が目に入ってきた。ヘイスティングスは驚き、毎週洗っていたのはあなただったのですか、と尋ねた。CEOはうなずいた。ヘイスティングスが徹夜も辞さず必死に働いているのを知っていたので、少しでも助けになればと考えたのだという。ヘイスティングスはこの気配りに感動し、このCEOに世界の終わりの日までついていきたいと思った。そしてーこれがこの話のオチなのだがーCEOはまさに終焉へと会社を導いていった。
  • 社員への接し方はすばらしかったが、消費者が買いたがる商品を作っていく腕がなかったのだ。ヘイスティングスはここから教訓を学び取った。思いやりも大事だが、会社を成功させるための判断力がなければ意味がない。
  • 会社としての成長を後押しするためには何が必要か?前に進むためにはどんな決断が必要なのか? 

 

  • ネットフリックスが重視しているのは、「社員がこれまでどう貢献してきたか」ではなく、あくまで「これからどう貢献していけるか」なのだ。忠誠を捧げるべきは未来であって、過去ではない。たとえば、ネットフリックスのDVD事業を育てあげた人物が、ストリーミング事業を成長させるスキルを持たないかもしれない。ストリーミング事業を率いた人物が、
    オリジナル作品の製作を進めるスキルは持たないかもしれない。アメリカ国内事業の構築に尽力した人物が、国際事業の拡大に対応するスキルを持たないかもしれない。未来の成長を導くための素質が欠けているのなら、
    過去にどんなにすばらしい成果を出していたとしても、それを根拠に漫然と同じ役割に座り続けるべきではないのだ。
  • 過去の働きぶりにもとづいて給料を支払い続け、人材を維持していくのは、会社の業績に対してマイナスの作用だ。さらに、新たに入ってきた人材や若手社員に対しても、「なんだ、宣言したほどパフォーマンス重視じゃないじゃないか」という印象を与えかねない。
  • 多くの企業では、「よくやった」と過去の働きぶりを褒めてやる証として、そこから先の役職を与えるのが一般的だ。だがネットフリックスは違う。未来の会社の成長に貢献できないなら、過去にどれだけの功績を出していようと、解雇をためらわないのである。
  • 一般論として、上司として人の上に立つマネジャーは、会社の将来的ニーズにそぐわない人物を排除するという辛い作業をしたがらない。逃げ腰になる理由はいくらでも思いつくものだ。第1の理由として、人材の査定は簡単ではない。明らかに仕事ができていないならともかく、平均的なパフォーマンスの場合は、多様な要因が介在することを考えてー業務の難易度、リソースの有無、他部署の協力などー査定は難航する。
  • そして第2の理由として、チームメンバーの家族が受ける影響も心配になる。心苦しく感じて、職務から外すことに対して二の足を踏んでしまう。さらに第3の理由として、社員を解雇または降格した際に生じうる法的トラブルも、できれば避けておきたい。チームから外した理由を説明する正式な文書がない場合(もしくは、解雇をどうしても正当化したい場合)には、のちのち揉める可能性が高いからだ。それから第4の理由として、
    マネジャーという立場に就く者の多くが、部下を導いて伸ばしていけると信じている。たとえ前任の上司が育成に失敗している場合でも、「自分なら、能力を発揮していないメンバーを改善させる力がある」と思い込んでしまうのだ。

 

  • (社員の)尊厳は守られるべきだと思っている(……)たいていの会社では、
    誰かに辞めてもらいたいと思ったら、「あなたは不適格だ」と告げるのが人事管理者の仕事だ。ありとあらゆる書類を用意して、能力不足を理由にクビにする。それでは数カ月もかかってしまう。ネットフリックスのやり方では、人事部の仕事は、小切手を切ること。去ってもらうにあたり、きちんと解雇手当を払う。ネットフリックスという会社が偉大であるためには、この会社が次の就職先への良いステップになるようでなくてはいけない。

 

  • ニューヨーク・タイムズ』の記事は、アマゾンの第3の欠点として、駆け引きや根回しが横行する社風についても指摘している。社員同士が業務と評価を競い合うので、ときには、自分に利するために同僚を陥れる社員もいるほどだ。もちろん、社員の行動に駆け引きがかかわってくるのは、
    アマゾンに限ったことではない。旧態依然とした役所体質の企業では社内政治がはびこっていることが多い。だがアマゾンの文化は、もはや弱肉強食というか、全体主義の監視社会に近いという意見もある。たとえば同僚の長所と短所について意見を言えるフィードバック・システムがあるのだが、同紙の取材では、これが実際には競争相手の足を引っ張るために利
    用されることも少なくないとわかった。

 

  • 仕事に対するジョブズの批判はいささか厳しすぎると受け取られかねない、と僕は説明した。この仕事に僕たちは心血を注いでいる。もっと穏やかな言い方のほうがいいんじゃないか、と言うと、彼は「どうして」と問い返した。僕が「チームのことが心配なんだ」と言ったら、容赦ない指摘を浴びせられたよ。「違うな。きみはただ自分がかわいいだけだ」「きみは自分が好かれたいだけだ。正直言って驚きだよ。きみはプロダクトの完成度を重視する人だと思っていたのに。人からどう思われるかじゃなく」。僕はひどく腹が立った。彼の言ったことは正しかったからだ。

 

  • エアビーアンドビーの社員が、こんな発言をしている。我が社にはコミュニティ文化があります。「みんなで一緒にやっていこう」という雰囲気があるのです。とてもユニークでパワフルです。私はテクノロジー業界で長年働いてきましたが、エアビーアンドビーほど、人間中心主義の会社を知りません。けれど、この文化の問題点として、能力のない者でも会社に居座り続けてしまいます。別の部署に異動になったり、あまり責任の重くない業務になったり。マネジャーが、「社員を解雇する人間」だと見られたくなくて、そうなるのです。能力不足の者がいるとどうなるかわかっていながら、行動を起こしません。これは一生懸命働いて結果を出している社員のやる気を損ないます。

  • ネットフリックスのような企業は、これとは反対だ。成果を出さない者に対して迅速に厳しい判断を下す。市場の競争に勝つために必要な基準を下回る人材がいるのに、その現実に向き合わずにいると、会社に停滞または失敗を招くと確信しているからだ。

  • だとすれば、人材には断固として対応するのが最善のアプローチなのかというと、実は、ピクサーはそうは考えていない。拙速に行動すると職場に不毛な不安感が広がってしまう。「次は自分がクビだろうか」と、誰もが心配に思うからだ。不安で気が散るし、何より創造力の妨げになる。業績不振の者がたとえチームリーダーであったとしても、その人物を排除すべきとチーム全員が認識するまで待つべきだとピクサーは考えている。作品を担当する監督を交代させるときは、すでに「交代すべき」という結論がチームで固まっている場合が多い。そうなっていれば、交代を実行しても、無用な不安を引き起こさずに賛同が得られる。

  • だとすれば、能力不足の人材を取り除くのはできる限り待ったほうがいいのかーというと、これもそうとは限らない。ベストなタイミングはさまざまな要因に左右されるし、どんなやり方にもリスクは伴う。リーダーの対応が速すぎて残りのメンバーに不安を抱かせることもあるだろうし、遅すぎてチームに負担をかけることもあるだろう。リーダーはそれぞれの状況を検討し、とるべき対応やチームの性質を鑑みながら、適切なタイミングとアプローチで必要な変革を起こすしかない。 

 

  • 先鋭的企業に見られるパラドックスなのだが、彼らは儲けを重要視せず、
    しかし、それが理由で儲けが入っている。一般的企業のように四半期業績だけに主眼を置くことはしない。先鋭的企業の多くは業界内で最も急速な成長を遂げているにもかかわらず、彼ら自身は成長にこだわってもいない。たとえばピクサーは数々の大ヒット映画を生み出し、数十億ドル以上を稼いできた。作品の商業的成功を誇らしく思っているし、成功に応じて社員にはボーナスを出す。だが、収益はピクサーの成功を決める究極的な指標ではない。第一の目標は、人の心に触れる作品を生み出すことなのだ。理想主義的で青臭いと感じられるかもしれないが、ピクサーは堂々とその目標を掲げている。
  • ファインディング・ニモ』は水中を描くアニメーション技術がすばらしかったが、同作品が成功した理由は、過保護な父親が良い親になっていくという、とてもよく練られたストーリーにあった。興行収入を重視する映画スタジオだとしたら、このようなヒット作が出たら、普通はすぐに続編を作る。1作目を気に入ったファンが財布を開きやすいからだ。しかしピクサーは、商業的に適したタイミングで続編を作ろうとはしなかった。『2』に相当する『ファインディング·ドリー』が世に出たのは、なんと13年後ーピクサーの水準に見合うストーリーが完成するまで、それだけの年月をかけたのだ。 

 

  • 「突き抜けた(エクストリームな)成功」というのは、私が思うに、一般的に言われる「成功」とは違うのです。お金持ちになりたい、何かを成就したい、すばらしい生活を維持したいと思う程度なら(……)イーロンのようにならなくても、望みが叶う可能性は高いでしょう。でも、極端に振り切れている人間は、自分らしいやり方で生きていくしかないのです。それが幸せかどうかという問題ではありません。彼らはたいてい変わり者で社会不適合者ですから、かなり厳しい人生を強いられます。そのため、彼らは自分が生き延びるための戦略を立てます。年齢を重ねるうちに、その戦略を他のことにも応用していきます。そうして自分だけの強い武器を作っていくのです。彼らは一般の人のような考え方はしません。別の角度からものを見て、まったく新しいアイデアインサイトを引き出します。そして一般人は彼らのことを、「常軌を逸している」と見るのです。
  • 先見性のあるリーダーを「変わり者で社会不適合者」と呼ぶのは、言いすぎと感じられるかもしれない。だが、成功に対して無謀すぎるほど強い意欲を抱き、完全に没頭する様子は、確かにジャスティン·マスクが言うとおり一種異様なものだ。そうした異様な執着を示せば必ず成功すると言いたいわけではない。執拗で偏執的なだけで、才能やスキルを持たない人間も大勢いる。
  • 執着する性格で極端に突き抜けた成功を引き出すためには、リーダーとして課題を解決し、組織の試練に立ち向かう能力が不可欠だ。たとえば高度な分析能力が必要かもしれない。たとえば、協力関係を築いてチーム内の紛争を管理する能力が必要かもしれない。だが「逆もまた真なり」と言うように、こうした能力があるだけではだめだ。執着する強いこだわりを持たない人は、ある程度の成功は成し遂げるにせよ、突き抜けた成果を生み出すことはない。仮に突き抜けた成果を出す素質があったとしても、執着心がないと、その素質は開花しにくい。

 

  • だが、仕事に対して強いこだわりを持つことと、仕事に依存することはイコールではない。本書が言う意味での「執着心を持って働く人」は、仕事に意味を見出し、楽しんでいる。依存症患者はそうではない。彼らは不安や不快な気持ちを呼び起こす何か別なものから逃げたくて、仕事に没頭しているにすぎない。

 

  • スピーチが終わると、ある外国企業のCEOがそばにきて、私に「あなたは常軌を逸していると思う」と話しかけてきました。何年も中国に滞在していたとのことで、私が話したような経営方法がうまくいくとは信じられないと言うのです。そこで彼をアリババ本社に招きました。3日間にわたって見学した彼は、「なるほど、ようやくわかりました。ここにはあなたのように極端に振り切れた人が100人いるんですね」と言いました。その意見は正しいと私も認めました。お化け屋敷に住む人は、自分がお化けだとは思っていません。外にいるのがお化けだと信じています。だからこそ、アリババにいる人たちは強く結束しているのです。

 

  • 企業文化に対する執着は、本書で紹介するすべての企業に見られる特徴だ。リーダーたちは自分の勤務時間の大半を、企業文化をあるべき姿にするために捧げている。「あるべき姿」の具体的な意味はそれぞれに異なるが、何を望み何を望まないか、リーダー自身の基準がはっきりしている点は各社ともに同じだ。エアビーアンドビーは、ある大物投資家のアドバイスがきっかけで、企業文化の重要性に気づいた。同社の成長計画について、スタートアップに関する経験が豊富な投資家から指導を受けようとしたときのことだ。CEOが、社員に向けて書いた文書で、この投資家との会合について語っている。
  • 会話の途中で私は、一番重要なアドバイスは何か、と尋ねた。彼の答えは、「企業文化を腐らせるな」。1億5000万ドルを投資する人物がそんなことを言うとは意外だったので、詳しい説明を求めた。すると彼は、エアビーアンドビーに投資をした理由の一つは企業文化だ、と答えた。そう言いつつも、「どんな会社でも、ある程度の規模になったら、企業文化が
    『腐ってくる』のは事実上避けられない」と、冷笑的な見解を持っていた。

 

  • 学歴や経歴など、すばらしいキャリアの持ち主でも、ザッポスの価値観を重視しない人物は採用しない。企業文化に合わないという理由で、能力の高い人材をはねるような採用方法では、ふさわしい人材が決まるまでひどく時間がかかってしまい、短期的には損失が出るー求人が埋まらないせいで直近の業績目標の達成が難しくなるーことは、ザッポスにとって承知の上だ。それでも、四半期目標の達成よりも、企業文化に適した人材の選択を重視するのである。
  • 就職希望者がフィットするかどうか判断する基準として、ザッポスの
    「10のコアバリュー」のそれぞれについて、最低一度は面接で質問をする。たとえば、「サービスを通じて驚嘆(WOW)を届けよう。」というコアバリューを叶える能力があるかどうか、その点に焦点を絞った一連の質問を繰り出す。「あなたがこれまでに仕事関連で受けた最大の賛辞はどんな言葉でしたか」「あなたが過去にした仕事の中で、他の人には知られていなくても、あなた自身が誇りに思っていることは何ですか。ザッポスは卓越した顧客サービスを絶対視しており、最初からそれを大事にする人材を雇いたいと思っているのである。
  • また、同じく10のコアバリューの中から「楽しいこと、ちょっと変わったことを生み出していこう。」という理念を満たすかどうか確認するために、就職希望者に自分自身の変人レベルを1から10で評価させ、最近やってみた珍行動を説明するよう求める。仕事は楽しくあるべきで、ちょっとくらい変人なほうが一緒にいて楽しい!というザッポスの信念を投影した質問というわけだ。就職希望者の変人レベルを評価する企業などそうそうあるとは思えないが、ザッポスは、楽しい職場環境作りを真剣にとらえている。
  • 他にもさまざまな観点から、就職希望者の適性が審査される。たとえば、
    初めて本社ビルに足を踏み入れたとき、周囲の人間にどのように接していたか。会社の価値観に合わない振る舞いをしていた候補者は不採用だ。
    空港から会社まで送迎した社用バスの運転手に無礼な態度をとったという理由で、きわめて能力の高い人材を不採用としたこともある。

 

  • エアビーアンドビーの面接でも、過去に達成した特別な成果を尋ねることにしている。同社CEOいわく、確認したいのは、夢を抱いてそれを実現しようとする人間かどうかという点だ。
  • それから「あなたの人生を3分で要約してください」と求める。その人を形成した決定的な判断や経験は何だったか知ろうとする。それがわかったら、次は「あなたが人生で成し遂げてきた、最も突出したものごとを二つか三つ挙げてください」と言う。それまでの人生で、何かしら突出したことを一度もしていないとしたら、今後できるとは思えないからだ。
  • 一方、人間関係の充実に貢献するかどうか見極めるには、多様な調べ方がある。投資ファンドCCMPキャピタル会長のグレッグ・ブレネマンは、
    「飛行機テスト」と呼ばれるテクニックを使う。面接が終わったあと、
    その就職希望者について、ブレネマン自身の胸の中でこう考えてみるのだという。この男性または女性と共に飛行機に乗るとして、太平洋を越えるあいだ、ずっと一緒にいたいと思うだろうか。隣にいて心地よくいられるだろうか。会社オーナー、役員、同僚、上司など、実際に共に働く人間とうまくかかわっていけないタイプは、能力も発揮できない。「あなたは何をするのが好きですか」「あなたの趣味は何ですか」と聞いてみれば、
    だいたいわかってくる。その人の周囲で働く人にいくつか質問をして評判を聞けば、だいたい察することができる。
  • これと似たような考え方として、「深夜残業テスト」というものがある。
    自分が遅くまで残業しているときに、その就職希望者と廊下ですれ違いたいかどうか、という想定で考えてみるのだ。こちらは疲労困憊で、面倒な相手とかかわっている時間もない。そんな状況で顔を合わせても大丈夫だと思える相手でなければ、難しい業務に取り組むときに一緒にやっていけるとは考えにくい。

 

  • たとえば一般的企業は社員の勤務時間を管理しているが、先鋭的企業では、たいてい働く時間に多大な融通を与えている(重要な会議があるときや、接客をするチームなどは、その限りではないが)。ピクサーにもそうした融通性があり、本社オフィスは24時間日365日開いている。9時から5時ではないほうが働きやすい社員もいるとわかったので、自分に合った時間帯で働くことを推奨しているのだ。パタゴニアは対照的で、毎日午後8時にはオフィスを閉じ、休日出勤もさせない。社員が職場を離れてエネルギーをチャージすることを望んでいるからだ。

 

  • ジャック・マーは、こんなふうに表現している。「ライバルから学習はすべきですが、まねをしてはなりません。まねをしたら終わりです」。

 

  • 大学で首席だった学生よりも、その一つか二つ下のレベルにいた人材を採用する傾向があったのも、トップに慣れた者は逆境に弱いと考えたからだ。中国のような苛酷な市場でビジネスをやっていこうとすれば、失敗はつきものなのだから、挫折や障害をはねのけていく強さ、レジリエンスが欠かせない。それに、立派な学歴や経歴を持つ者ほど、たいてい人間関係に難がある。過去の栄光のせいで他人に対して優越感を抱いているので、
    協力的に働くことができず、社内のチームワークを乱してしまうからだ。
    マーいわく、明確なビジョンを持って一つの大きな家族のように働く優れたチームなら、10倍の規模のライバルでも倒すことができるものなのである。

MONOQLO 201911

仕事の道具

リカバリーシューズのウーフォース(OOahh)、オフィスの定番になりつつあります。

トラックボールユーザーにはお勧めですが、初めての人はまず

M570を使って、身体に合うか試したほうがいいと思います。トラックボールは腱鞘炎の特効薬です。

5万円以下でオフィスチェア探しているなら参考になりそう。1位はサンワダイレクト 

direct.sanwa.co.jp

個人的にはメッシュ座面のほうが好きなので、2位のクエトGYが気になりました。

www.nitori-net.jp

ランバーサポートがない・弱いオフィスチェアを利用していて、後傾の環境を作りたい人にはよいです。蒸れもあまり感じません。

最新流行のゲルクッション、通気性がいいのでメッシュ座面との相性がいいです。メッシュ座面は硬いのでクッション性が弱いですが、ゲルクッションはそこをうまく補完してくれます。

履き心地の良いビジネスシューズはロックポート一択、革靴苦手な僕でも履けます。

防水スプレーの定番

(雑誌では紹介されてないけど)定番のラナパー

(雑誌では紹介されてないけど)シューキーパーも忘れずに。私はコスパのいいコロニルのアロマティックシダーシュートゥリーを愛用しています。

安心と信頼のトラスコ中山

今度の出張で使ってみます。耐久性に難があるよう

 

yamanatan.hatenablog.com

 

NEVER LOST AGAIN グーグルマップ誕生 (世界を変えた地図)

  • 営利目的の企業が次々と誕生した。彼らのビジネスは無料で使えるグーグルマップAPIに依存していた。グーグルは世界最高のベースマップを作るという重労働を肩代わりし、誰もが使えるようにした。そしてそれは、数千万ドル規模のビジネス(時には数十億ドル規模にもなる)が育つ土壌となった。こうしたビジネスをあなたも知っているだろう。毎日使っているサービスかもしれない。
  • イェルプ、ジロウ、トゥルーリア、ホテルズドットコム、ストラバや、後のウーバーやリフトなどもそうだ。2005年から2006年にかけ、ウェブ2.0時代を代表するロケーションベースのサービスが数多く誕生した。彼らはサービスの基盤にグーグルマップを使っている。地図がイノベーションの注目分野になり、ベンチャーキャピタルから出資を受けたスタートアップが次々と台頭したのだった。
  • ブレットとジムのグーグルマップAPIがあったからこそ、こうしたスタートアップのビジネスが成立した。グーグルマップAPIはエクイティを求めない巨大なテックインキュベーターであったともいえる。 エクイティどころか、利用料すら受け取っていない。そうすることはグーグルのDNAに反することだったのだ。
  • ただ最終的に、ローンチから数年後グーグルマップAPIは有料化する。これはロケーションベースサービスを提供する企業が求めたことでもあった。究極のベースマップを無料で使えるのは彼らにとっても嬉しいことだったが、一方でグーグルがいつでもサービス内容を変更し、彼らのマッシュアップサイトに広告を表示できる状態を彼らは問題視していた。例えば、アメリカン航空はグーグルマップを使ったフライトトラッカーをウェブサイトに表示しているが、グーグルがそのマッシュアップサイトの広告枠をユナイテッド航空に販売することだってできる。サービスが有料化するまで、グーグルがそうすることをアメリカン航空側が止めることはできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

予測マシンの世紀

補完財と代替財の「財」が材木の「材」になっている。経済学者が書いた本の翻訳でこれはさすがにひどい。ちゃんと出版社がチェックするべき。
  • ウィリアム・ノードハウスは、詳細な分析をもとに、こんにちと同じ量の光を確保するためのコストは1800年代はじめには400倍も高かったと結論づけている。もしも証明にそんな価格が設定されたら、コストに注目しないわけにはいかない。本を読むために人工照明を使うべきか、じっくり考えるだろう。その後、照明の価格が大きくて低下した結果、世界は明るくなった。・・・人工照明のコストがタダ同然にまで下がらなければ、今日のような生活はほとんど不可能だった。

 

  • 人間による予測は、たとえ経験豊かで有能な専門家であっても困難を伴う。それが最も如実に示されているのは、アメリカの裁判官が保釈許可に際して下す決断についての研究だろう。アメリカでは、毎年このような決断の数が1000万件にのぼる。保釈されるか否かは家族や仕事など個人的な問題にとって非常に重大であるし、政府が受刑者のために負担するコストへの影響は言うまでもない。裁判官が決断を下すときには、被告が保釈された場合の逃亡や再犯の可能性を基準に考えなければならない。最終的に有罪判決を受ける可能性は重視されない。決断の基準は明快で、定義もはっきりしている。
  • この研究では機械学習を使い、被告が保釈中に再犯や逃亡を犯す確率を予測するアルゴリズムが開発された。訓練データは広い範囲から集められた。2008年から2013年にかけてニューヨーク市で保釈された75万人に関してのデータで、逮捕歴、起訴内容、人口動態に関する情報などが含まれている。
  • 結論を言うと、機械の予測は人間の裁判官よりも優れていた。たとえば機械は、被告全体の1パーセントを最もリスクが高いグループに分類し、そのなかの62パーセントが保釈中に再犯すると予測した。ところが(機械による予測にアクセスできない)人間の裁判官は、このグループのほぼ半分の被告を保釈することを決断した。結局、機械による予測はかなり正確で、機械により高いリスクを確認された被告の63パーセントが実際に保釈中に再犯し、半分以上がつぎの公判期日に出頭しなかった。しかも、機械が高リスクと判断した被告の5パーセントは、保釈中にレイプか殺人を犯した。
  • 機械の勧めにしたがっていたら、裁判官は機械と同じように保釈する人数を決定し、保釈中の犯罪率を四分の一にまで減らしていたかもしれない。あるいは収監される被告の人数を50パーセント増やしていたら、犯罪率は据え置かれたかもしれない。
  • ここでは何が進行しているのだろう。なぜ裁判官の評価は予測マシンと大きく異なるのだろう。原因のひとつとして考えられるのは、被告の外見や法廷での態度など、アルゴリズムには入手できない情報を裁判官が利用することだ。このような情報は役に立つかもしれないが、判断を誤らせる恐れもある。実際。保釈中の犯罪率の高さを考えれば、判断を誤らせる可能性のほうが高いと結論してもおかしくない。裁判官の予測能力はかなりお粗末なのだ。
  • 人間にとってこのような状況での予測が難しいのは、犯罪率の説明には複数の要因が複雑に関わり合っているからだ。異なる指標のあいだの複雑な相互作用を考慮する能力に関して予測マシンは人間よりもはるかに優れている。過去に犯罪歴があれば被告が逃亡するリスクは高くなると人間は単純に信じたくなるが、機械であれば、それが正しいのは被告が特定の期間に無職だった場合にかぎることを発見するかもしれない。要するに、最も重要なのは相互作用の効果で、そこに関わる特徴の数が増えるほど、人間が正確な予測を行なう能力は低下していく。
  • こうしたバイアスが見られるのは、医療や野球や法律といった分野に限らない。専門職では絶えず観察される特徴だ。経済学者によれば、管理職であれ一般社員であれ予測する機会は多く、しかも結果がお粗末な事実に気づかないまま、自信満々に予測する。ミッチェル・ホフマン、リサ・カーン、ダニエル・リーは、専門技能をそれほど必要としないサービスを提供する企業15社の雇用への取り組みについて調査を行なった。その結果、通常の面接以外に客観的で検証可能なテストを実施するようになった企業は、面接だけで採用を決めていたときに比べて社員の在職期間が15パーセント高くなることがわかった。こうした取り組みを行なうにあたり、管理職は社員の在職期間を最大化するよう指示された。
  • 認知能力の診断や適職に関する指標など、テストは広範囲を網羅した。ただし、採用担当管理職の自由裁量を制約し、低い得点の応募者を勝手に採用できないようにすると、社員の在職期間はさらに長くなり、離職率が減少した。つまり、社員の在職期間を最大化するよう指示され、採用に関する経験が豊かで、機械が予測したかなり正確な情報を提供された人物であっても、自分勝手な判断を制約されないかぎり、上手に予測することはできなかったのである。

 

もはや知識は必要とされない

  • ロンドンのタクシー運転手が名物の黒塗りタクシーを運転するために義務付けられているフリッジ」というテストでは、細かな知識が問われる。ロンドン全体の何千もの地点や街路の所在地についての知識が試されるのはもちろん、もっと難しい知識も問われる。ふたつの地点を結ぶ最速のルートを、どの地点に関しても予測しなければならず、しかもテストでは1日のあらゆる時間帯が対象とされる。
  • ノリッジに合格するための学習に三年も投資したタクシー運転手は、予測マシンと競争する日が訪れるとは夢にも思わなかった。だから何年にもわたり、記憶のなかの地図をアップロードし、ルートを試し、わからない部分は常識で補ったものだ。ところが今日、ナビゲーションアプリはタクシー運転手とまったく同じ地図のデータにアクセスできる。しかも、予測に関して受けた訓練とアルゴリズ
    ムを結びつけ、リクエストされたらいつでも最善のルートを見つけられる。道路状況についてリアルタイムのデータを使うことなど、人間のタクシー運転手にはできない。
  • しかしロンドンのタクシー運転手の運命は、ノリッジで問われるような知識を予測するナビゲーションアプリの能力だけに左右されるわけではない。A地点とB地点を結ぶ最善のルートの決定には、ほかにも重要な要素が関わっている。まず、
    タクシー運転手は車両を制𨨶できる。つぎに、彼らには感覚器官が備わっており、なかでも特に目と耳は重要な役割を果たす。周囲の状況についてのデータを集めたら、知識としてうまく活用されるようにデータを脳に送り込む。ところがこの能力は、タクシー運転手にかぎらず人間なら誰でも持っている。ロンドンのタクシー運転手の状況が悪化したのは、ナビゲーションアプリのせいではない。彼ら以外の何百万人もの人たちが、はるかに優秀になったからだ。もはやタクシー運転手の知識は、不足商品ではない。ウーバーのようなライドシェアリング・プラットフォームが激しい競争を仕掛けている。

 

  •  予測の精度が向上すれば、決断するのが人間だろうと機械だろうと、決断の基準となる「イフ」や「ゼン」を増やすことができて、より良い結果が得られる。たとえば自動運転のケースに関して、本章では郵便配達ロボットの事例で説明した。これまで自動運転車は制御された環境でしか動かなかったが、予測マシンが導入されると制約から解放された。制約された環境とは、「イフ」(状態)の数が制限された環境である。自動運転車が街路のような非制御環境で動き回れるのは、予測マシンが可能性のある「イフ」をすべてコード化する必要がないからだ。その代わりに予測マシンは、特定の状況で人間ならどうするか予測できるように学習する。一方、空港ラウンジの事例からは、予測が改善されると「ゼン」を簡単に増やせることがわかる(たとえば、特定の日の特定の時間の空港までの所要時間の予測に応じて、出発時間がX、Y、Zのいずれかに決まる)。万が一に備えて常に早めに出発し、時間が余ったら空港のラウンジで待機する、という必要はなくな
    る。
  • 優れた予測に頼れないときは、しばしば「満足化」を行なう。すなわち、手に入る情報に基づいて、「この程度なら満足できる」と思える決断を下す。一例が、空港に行くときは常に早めに出発し、早く到着しすぎてフライトの時間まで待機するケースだ。最適の解決策ではないが、手に入る情報の範囲内では賢明な決断である。郵便配達ロボットや空港のラウンジは、満足化に応える形で考案された。しかし優れた予測マシンが登場すれば、満足化が必要とされる機会は減少する。そうなると、郵便配達ロボットシステムや空港ラウンジのような解決策への投資から得られる見返りも少なくなるだろう。
  • 私たちはビジネスでも社会生活でも満足化に慣れきっている。そのため、もっとたくさんの「イフ」や「ゼン」を扱うことができる予測マシンが登場し、いまよりも複雑な環境で複雑な決断を下すようになったら、どれだけ大きな変化が引き起こされるか、すぐには想像できない。空港ラウンジは当てにならない予測への解決策として生まれたもので、新しい時代に予測マシンが強力になればラウンジの価値は失われると言われても、なんだかピンとこない。もうひとつの事例が生検の利用で、これは画像診断による予測の弱点を補う形で存在している。今後、予測マシンの信頼性が高くなれば、生検に関わる仕事に大きな影響をおよぼすだろう。空港ラウンジと同じく、費用が高くて体に負担のかかる生検は、予測を全面的に信頼できないために考案された。空港ラウンジも生検も、リスク管理型の
    解決策である。優れた予測マシンが登場すれば、リスクをもっと上手に管理する新しい方法が提供されるだろう。

 

  •  AIやインクーネットが出現する以前、コンピューター革命が起きた。コンピューターは計算を正しく、しかも安上がりに行なった。特に、たくさんの項を足し合わせるのが得意だった。最初の人気アプリのひとつは、簿記の計算の負担を軽減した。
  • これを閃いたのは、コンピューター・エンジニアのダン・ブルックリンである。MBAの取得を目指していたとき、彼はハーバード・ビジネススクールのケースメソッドで様々なシナリオを評価するために計算を繰り返さなければならず、不満を募らせた。そこで計算を行なうコンピュータープログラムを書いてみたところ、非常に役に立ったので、その後はボブ・フランクストンと共に、アップル
    Tコンピューターに搭載されるヴィジカルクを開発した。ヴィジカルクはパソコン時代の最初の人気アプリとなり、多くの企業がこれを理由にオフィスへのコンピューター導入に踏み切った。ヴィジカルクは計算にかかる時間を従来の100分の1に短縮しただけではない。おかげで企業は、以前よりもずっと多くのシナリオを分析できるようになった。
  • 「当時、計算は簿記係の仕事だった。1970年代の終わりには、アメリカだけで40万人以上の簿記係が働いていた。ところが表計算ソフトは、彼らにとって最も時間のかかる作業、すなわち計算を取り除いてしまった。これで簿記係の職は失われたと思われるかもしれない。しかし、失業を嘆く簿記係の声は聞かれないし、反発を強めた彼らが表計算ソフトの普及を妨害したわけでもない。なぜ簿
    記係は、表計算ソフトを脅威と見なさなかったのだろう。
  • 「それは、ヴィジカルクという表計算ソフトのおかげで、実際のところ簿記係の価値は上昇したからだ。表計算ソフトが導入されると、計算は楽になった。どれくらいの利益を期待できるのか、仮定の部分をいろいろに変えると利益がどのように変化するのか、いまでは簡単に評価することができる。何度でも繰り返し計算できるので、ビジネスのスナップ写真ではなく、動画が手に入ると言ってもよ
    い。ひとつの投資が利益をもたらすかどうか確認するのではなく、予測条件をいろいろと変えながら複数の投資を比較したうえで、最善のものを選ぶことができる。ただし、どの投資を試すかについての判断は、人間が下さなければならない。表計算ソフトは計算の答えを簡単に出してくれるので、このプロセスでは質問することへの見返りが大きくなる。
  • 表計算ソフトが登場する以前に苦労して計算に取り組んでいた人たちは、コンピューター化された表計算ソフトに的確な質問をするのに最もふさわしい立場にいた。したがって職を奪われるどころか、大きな力を手に入れたのである。
  • このようなタイプのシナリオ、すなわち機械がすべてのタスクではなく、一部のタスクを引き受けて仕事が強化されるシナリオは、AIツールが導入されれば自然に普及していくだろう。今後、仕事を構成するタスクは変化する。なかには予測マシンによって不要になるタスクもあるだろう。空き時間のできた人たちが補充されるタスクもあるはずだ。そして多くのタスクでは、かつては必要不可欠だったメールが評価されなくなり、代わりに新しいスキルが注目される。

 

  • オックスフォード大学のカール・フレイとマイケル・オズボーンは仕事の遂行に必要なスキルのタイプについて調べたうえで、スクールバスの運転手(公共バスの運転手とは区別される)の仕事が今後10年から20年のうちに自動化される確率は、89パーセントに達すると結論づけた。
  • 「スクールバスの運転手」と呼ばれる人物が、子どもの自宅と学校を往復するバスの運転をしなくなったら、給料を支払う必要のなくなった自治体はそのぶんを別の支出にまわすべきなのだろうか。いや、そうはならない。バスが自動運転になったとしても、現在のスクールバスの運転手は運転のほかにもたくさんの役割を引き受けている。まず彼らには、大人として大勢の学童の集団を監督する責任
    があり、バスの外で発生する危険から子どもたちを守らなければならない。同じように重要な役割が、バスのなかの規律を維持することだ。子どもたちを管理して、お互いにトラブルを起こさないよう配慮するためには、人間の判断が未だに必要とされる。バスが自動的に動いても、こうした補足的なタスクが消滅するわけではない。むしろ、バスに同乗している大人はこれらのタスクにもっと集中できるようになる。
  • そうなるとおそらく、「スクールバスの運転手と称される立場の職員」のスキルセットは変化するだろう。今日よりも、教師のようにふるまう機会が増えるかもしれない。ここで肝心なのは、自動化は人間からタスクを奪っても、かならずしも仕事を奪うわけではないことである。雇用者から見れば、誰かに引き受けてもらいたい仕事は残される。そして雇われる立場から見れば、その誰かが自分以外
    の人間になるリスクが考えられる。
  • タスクが自動化されると、実際のところ仕事は何から構成されているのか、そこで人間は何を行なうのか、慎重に考えざるを得ない。たとえばスクールバスの運転手と同じく、長距離トラックの運転手も運転をするだけではない。アメリカでは、トラックの運転は最大の職種のひとつで、自動化の候補として検討される機会も多い。映画「LOGAN/ローガン」では、コンテナと車輪だけから成るトラックが道を走る近未来が描かれている。
  • しかし、無人トラックが大陸を横断して移動しているところなど、本当に目撃するようになるのだろうか。そこで、監督者となるべき人間が近くにいる時間がほとんどないと、トラックはどんな課題に直面するのか考えてみよう。まず、トラックも積荷もハイジャックや窃盗の対象になりやすい。人間が前方に立ちはだかればトラックは走行できないし、簡単に標的にされてしまう。
  • この場合、解決策ははっきりしている。人間がひとり、トラックに乗ればよいのだ。乗っているだけのタスクなら、運転するよりもずっとやさしい。しかもトラックは、何度も止まったり休憩したりせずに長距離を運転できる。自動運転ならば、ひとりの人間が超大型のトラックを、場合によっては何台も連ねて走らせることも不可能ではない。そのときは、列をなすトラックの少なくとも一台には
    人間用の座席があって、そこに乗り込んだ人間が車列を守り、目的地に到着するたびに物流管理や荷物の積み下ろしに関わる問題の処理に当たり、途中で突発事態が発生したら安全に誘導していく。これだけの仕事を現時点で取り除くことはできない。現在のトラック運転手は運転以外のこうしたタスクの経験が豊富で最も適任なので、運転手の役割が見直されても真っ先に採用されるだろう。

 

  • AIの登場によって、社会は多くの選択肢を与えられるが、そのどれにもトレードオフがつきまとう。目下、このテクノロジーは未だに初期段階だが、社会レベルで三つの顕著なトレードオフが存在している。
  • 第一に、生産性と分配のトレードオフだ。AIによって私たちは貧しくなり、生活が悪くなると指摘する人たちは多いが、それは真実ではない。技術の進歩によって私たちは豊かになり、生産性が向上するー経済学者の意見はそのように一致している。AIは確実に生産性を向上させるだろう。問題は富の創造ではなく、富の分配だ。AIが所得不平等の問題を悪化させる理由はふたつ考えられる。まず、AIが一部のタスクを人間から奪えば、残されたタスクを巡って人間同士の競争が激化して、賃金が低下する。しかも、資本所有者の所得に比べ、労働者の所得は減少するだろう。つぎに、コンピューター関連のほかの技術と同様、予測マシンはスキル偏向型なので、AIツールが導入されると、高度なスキルの労働者の生産性が不相応なほど向上する。
  • 第二に、イノベーションと競争のトレードオフだ。ソフトウェア関連のほとんどの技術と同じく、AIでは規模の経済が働く。しかもAIツールは、しばしば見返りの増加を特徴とする。予測の精度が上がればユーザーが増え、ユーザーが増えればたくさんのデータが確保され、デークが増えれば予測の精度が上がるといった具合だ。大きな支配力が手に入るのであれば、企業には競うかのように予測マシンを構築しようとする誘因が働く。しかし規模の経済においては、独占状態が引き起こされる可能性も考えられる。急速なイノベーションは短期的には社会に利益をもたらすが、社会への長期的な影響に関しては最適とは言えないかもしれない
  • 第三に、性能とプライバシーのトレードオフだ。データが増えるほどAIの性能は改善される。特に、個人データへのアクセスが簡単になれば、個人向けの予測を立てる能力は向上するだろう。ただし個人データの提供は、しばしばプライバシーの侵害という犠牲を伴う。ヨーロッパなど一部の国では、国民のプライバシーを守る環境が整備されている。このような環境は国民に利益をもたらす可能性もある。個人情報を対象とするダイナミックな市場が生まれる条件が整い、個人データの取引や販売や贈与に関して個人が決断しやすくなるかもしれない。しかしその一方、データにアクセスしやすいAIが競争力を持っている市場では、ヨーロッパの企業や国民はオプトイン[企業などが個人情報を収集・利用しようとする場合、事前に本人の許可を必要とする仕組み]にコストがかかるため不利な立場に置かれ、摩擦が生じる可能性が考えられる。
  • 以上三つのトレードオフのすべてを考慮するなら、国家はトレードオフの両面を比較したうえで、全体的な戦略や民意に最も適した政策を考案していかなければならない。

世界的に有名な専門家で基礎知識すら持たない人間がこれほど多いのは、経済学の分野くらいではないか。

経済という複雑極まりないものを理解しようと真剣に努力している者にとってみれば、経常収支と資本収支を足せばゼロになるとか、付加価値額と出荷額は違うといった基本的な原理すら理解していない人々から、あれこれ言われるのはたまらない。世界的に有名な専門家で基礎知識すら持たない人間がこれほど多いのは、経済学の分野くらいではないか。

 ポール・クルーグマン(Paul Krugman)

経済学者や政治理論家の思想は、正しい場合にも間違っている場合にも、一般に考えているより、はるかに強力である。世界を支配しているのは、思想以外にないと言えるほどである。自分は現実的であって、どのような思想からも影響を受けていないと信じているものも、いまは亡き経済学者の奴隷であるのが普通だ。権力の座にあり、天の声を聴くと称する狂人も、それ以前に書かれた学者の悪文から、錯乱した思想を導き出している。

ケインズ

漫画201910

もはや完全に当初のコンセプトに飽きた感のあるプロット、作った世界観で悪ふざけ、もとい十分に楽しみながら終わりを目指してやろう、みたいな作者の意志を感じます。バイコーンの話とか最高に楽しいですね。4点

絵もうまい、独自性はないけどキャラも立ってる、しかしどうも乗り切れない。ヲチが一本調子なのがダメなのかな。2点

方向性がよくわからなくなってきた。一気に失速しちゃったけど、能力者を率いて戦う展開になれば、また面白くなるかも?2点

ここで決着付けるかわかりませんが、とりあえずはクライマックス。この作品は容赦ないなぁ、と再認識する1巻ですね(といってもアニメしか見てない人には、何が容赦ないのかわからないかもしれないが)。前回と違って思い入れがあるキャラだけに、なかなかダメージが大きい。何度も書いてますが、割とジャンプの王道バトル漫画路線をたどりながら、これだけオリジナリティを出せるのは素晴らしいことです。20巻で決着なら間延びもなく、名作のまま終わる気もしてきました。5点

丁寧な作品です。本編を読んでないので、わかった感はあまり感じませんが、作品単体で十分に面白いです。3点

ダブルセブンと来訪者が発売されたので、積読していた優等生と合わせて。売れている作品には理由があると感じる代表作。細部に納得感があり、安心して読める。

優等生、デザインはきれいなんだけど、絵柄ちょっと変わったのかな?本編の横浜編はファン的にいろいろとあり、優等生編にその補完を望んでいる人が多いだけに、この絵柄の変化はやや不吉なのかもしれませんね。4点

あんまりシリアスに振れすぎなくてもいいんだけどなぁ。もう少しギャグ成分残してください。3点

ドラマを見返したついでに積読していた15巻をいまさら。よしながさんはリアルを書くのがうまくて、というかうますぎるので、本来フィクションならオブラートに包んだほうがいいようなこともしっかりと書いてしまうんですよね。もうね、介護とか終活とか重たいのなんのって。SAN値チェックです。4点

なんかこうプロットが拙いんですよね、全体的に。オリジナリティもそれほどあるわけではない、しかしなんかこう奇跡的なバランスで読めてしまう不思議な漫画。他人に薦めるほどではないけど、先が気になる漫画です。後半はちょっと雑すぎるかなぁ。3点

路線変更面白かったけど、この展開は・・・。漫画家の完成度は高いけど、プロットがまた面白くなくなった。登場人物と読者を散々振り回してきて、最後に望むのがそれかよっていう脱力。3点

読むの忘れてた7巻と合わせて。奥様の秘密はあまり気にならないので、さっさと明らかにしてしまってもいい気がする。そんなことでナサ君は動揺しないだろうし。むしろ明らかになった後の日常を続けてほしい。4点

本編と関係ないけど、巻末で紹介されていた事件簿と犯人達の事件簿の合本版はいいですね。3点

いよいよ蛇神様か。4点

1巻に1キャラずつ増やして掘り下げていく野崎くん形式が合ってそうだな、と思いました。4点

アニメ化決定おめでとう。もう少し構成考えたほうが読みやすいんじゃね、と思いました。3点

定期告知

漫画を大量に買うなら、豪邸に住んでいない限りkindle一択です。無印kindleは容量と解像度に問題があるので。Paperwhiteがおすすめです。

  

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