タイ・カンボジア旅行覚書

観光でタイ・カンボジアに旅行に行ったので覚書。

 

  • 8月は雨季だが基本的に蒸し暑い。折りたたみ傘は必携で耐水性のある服装が望ましい。靴もGORE-TEX素材の方がいいと思う。
  • 今回はLCCを使ったので、空港はドンムアン空港。ドンムアンから市内まではGrabで30分程度だけど、タイは交通渋滞で最大4倍程度所要時間に余裕をみておいたほうがいい(とくに市内)。雨が降ると、時間帯によっては本当に動かなくなるので、とくにフライトが絡むときは余裕をもっておきましょう。
  • 新興国なので、市内で買い物旅行オンリーでもない限り、現金はそれなりに必要。チップ文化もある。一人一日5000円くらいあれば不自由はないと思う。
  • クレジットカードは標準的なVISA・マスターカードのほか、積極的にキャンペーンを展開しているJCBがおすすめ。様々な場所で割引などの優待を受けることができる。

  • 今回はトラベロッジ スクンビット 11に宿泊、ナナ駅から徒歩で10分程度。新しく清潔なホテルだったが、シャワールームの壁が半分がら空きなので、シャワーを利用すると、トイレ部分がベチャベチャになるのが大きな欠点(他のホテルの写真にも同じような設計のものを見かけた(Ex. シタディーンスクンビット16)ので、タイのホテルはどこでもそうなのかもしれないが)。朝食も美味しいらしいが、早朝から遺跡や寺をめぐる修行ツアーを計画していたので、今回は食べていない。
  • 為替は定番のスーパーリッチタイランドへ。ただ、そこまで他の換金所とレートが異なるわけではなかったので、少額なら適当な場所で換えていいように思った(空港はさすがにレートが悪すぎるのでやめたほうがいいと思うけど)。
  • 有名なMake Me Mango、インスタ映えはするが、全体的にやや人工的な甘さを感じた。マンゴーの素の美味しさではMango Tangoの方が美味しいと思う。

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  • 初日はディナークルーズに参加。やや集合場所がわかりにくいのが難点だが、料理は美味しく、日本のせこいツアーのように料理が足りなくなることもない。生ライブも楽しいし、ラマ8世公園やワット・アルンのライトアップなども楽しめるなど、非常に満足感の高いクルーズだった。

www.veltra.com

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  • 翌日はやはりVeltraを利用してアユタヤツアーへ。ややお値段のするツアーだが、待ち無しでソンブーンのカニカレーが食べられるし、線路市場、水上マーケット、アユタヤといった市内中心部以外のスポットを1日で効率的に回ることができるので、満足度が高いツアーだった。

www.veltra.com

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  • 3日目は夜にカンボジアへのフライトがあったので、下記のツアーを参考に、自力で3大寺院を観光。ワット・アルン→フェリーに乗って対岸へ(ワット・アルンすぐのフェリー乗り場はボッタクリなので、少し北側に歩く)→ワット・ポー→王宮・エメラルド寺院
  • 正直なところ、ワット・ポーはいまいちだったので、時間がないならスキップしていいように思った。ワット・ポーから王宮へは少し距離があるのでGrabを使ってもいいと思う。歩く場合は、右回りでも左回りでもいいと教えてもらったが、明らかに右回りで歩いた方が近いと思う。
  • その後はバーンパッタイで食事、最後にやや離れたワットパクナムへ行った。ほぼ完全にツアーを再現できることがわかったので、ガイドが必要なければ、寺院ツアーに関しては、参加する必要が無いと思う。

www.veltra.com

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  • ドンムアン空港ではプライオリティ・パスを利用してコーラルランジを利用、一人しか利用できないはずだが、おそらく係員の勘違いで二人無料で入れてくれた。

johnny-thai.net

  • 海外旅行に行くなら、プライオリティパスは必携レベルなので、楽天プレミアムカードを発行しておくとよい。

  • カンボジアシェムリアップ国際空港へ到着。事前にe-visaを発行しておくのを忘れずに(偽サイトに注意しましょう)。
  • 中国人はチップを入国審査に要求されるそうだが、日本人は心配なし。
  • 日本人は英語を喋れないことが知れ渡っているらしく、日本語で喋りかけてくれるカンボジア人が多い(英語で喋っていたら、お前は日本人なのに珍しいな、と驚かれる)。

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  • ホテルは空港から30分程度のところにあるダムレイアンコールホテルをチョイス、バランスが取れていてよいホテルでした。朝食も美味しかった。シャトルサービスもやっており、行きは無料。帰りは10ドル。Grabでも10ドル程度なので、シャトルを利用したほうが無難だと思う。
  • カンボジアはUSD決済が中心なので、ソニー銀行やSBIのデビットカードを持っていくと捗る。
  • 初日は自力で再現するのが難しいベンメリア・コーケー・プレアヴィヒアのVeltraツアーへ参加。残念ながら曇っていて絶景は見れなかったが、ツアー自体はよい構成だと思う。ただ、ガイドは残念だった。

www.veltra.com

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  • アンコールワットは自力で観光、雨季で曇っていたのが幸いし、直射日光に悩まされずに観光できた。朝焼けや夕焼けを楽しみにしているなら雨季はよろしくないが、フラフラにならずに観光するなら、観光客も比較的少ないだろうし、悪くないシーズンだと思った。
  • アンコールワット遺跡群に入るには、まずチケットを購入する必要がある。こちらはアンコールエンタープライズという場所で購入、遺跡本体とはやや離れたところにあるので、自力で行く人は間違えないように。5時から空いている。
  •  早朝は比較的観光客が少ない、特に某国のツアー客が少ないので、静かに観光を楽しむことができる。8時以降は騒がしくなるので、早め早めの行動がおすすめ。少なくともアンコールワットだけは8時までにクリアしておきたい。
  • 遺跡の中に入ると交通手段が利用できなくなるので、Grab Rentで8時間チャーターするのがおすすめ。ただし、ホテルに戻った時点で、残り時間はすべてキャンセルされてしまうので、計画的に利用したい。今回は朝食を食べずに出撃したので、ワット→トムで一時退散し、ホテルで朝食を食べたあと小休止し、その後Rentを再契約してタ・プローム寺院とバンテアイ・クデイ、スラ・スランに行った。
  • 正直なところ、途中で石の塊に飽きたので、プリヤ・カーンやタケウは行かなかった。乾季の場合は、飽きに体力の減少が加わるので、たまったものではない。意地でも全部回りたい(&朝焼けや夕焼けを楽しみたい)のであれば、たしかに3日券を買ったほうがいいと思う。各遺跡にはぼったくりガイドが出現するので、注意しよう。

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  • シェムリアップは朝の6時前に到着したのだが(フライトが朝の8時35だった)、7時になるまでまったく受付が始まらなかった。早朝フライトの人は頑張りすぎなくていいと思う。空港は狭くてあまり買うものはない。ラウンジは定番のプラザプレミアム、僕だけしか利用者がいなかった。

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MONOQLO 201910

バズったもの特集

こすらないお風呂洗剤は買いとのこと。ストックが切れたら試し買いしてみたいと思いました。

割れないグラスも面白いですね、アウトドアによさそうです。

知人に紹介したら、すぐに買ってました。

ニコンから乗り換えたい

安くて良い家電50

体組成計は1台あるといいですね。

洗濯洗剤TEST THE BEST

今回の個人的な目玉企画、予想通り性能では粉末>液体>ジェルボールでアタックがとにかく強いという結果に。コスパではマツモトキヨシの粉末もよいとのこと。

粉末最強

液体最強

ジェルボール最強

世にも美しき数学者たちの日常

まぁ、こんな感じになるんだろうね、という予想通りの出来。決して面白くないわけではないけれど、全体的に踏み込みが中途半端だな、という感想(できないのも分かってるけど)。構成的に、数学好きの一般人を紹介するくらいなら、応用数学者(物理学や経済学者など;渕野さんからヒント貰ってるんだし)を紹介したほうがいいってことすら分からないんだろうな、というある種の諦念も。一般人(小中学生)向け書籍って感じですね。

加藤文元

  • 「共同研究も、その人と共同生活をすることなんですね、問題と一緒に。食事に行くときも、旅行中も、遊びに行っても、その問題について話ができる状態にする」
  • 「数学では『共鳴箱』という表現をすることがありまして、いい共鳴箱を持つことは重要なんですね」
  • 共鳴箱自体は音を出さない。しかしオルゴール単体では聞こえづらい演奏の音色を大きく、鮮やかにすることができる。
  • 「聞き手に向かって話すことで、自分のアイデアが育っていくことがあります。二人の共同研究でも、片方がどんどんアイデアを出して、片方はひたすら共鳴するというスタイルもあるでしょう」

 

  • 「そうです。数式は音楽家が使う音符と同じものであって。誰かに伝える時に音符があると便利だけど、でも音符を読めなくても音楽は楽しめるじゃないですか。本質は楽譜じゃなくて、奏でることにある。数学イコール数式というのは、
    全然違うんですよ。数学を味わうのに、必ずしも数字や数式は必要ではない」

 

  •  「いや、文字通り不可能なんですよ。表現できない。でね、じゃあ数値的には計算できると思いますよね。曖昧さは何もないはっきりとした方程式だから、数値計算すればいいはず。ところが数値の誤差が少しでも入ると、エラーがものすごく大きく広がっていくという性質があるんです。だからその解がどうなっていくのか、ほとんど予想がつかないんですよ」
  • 「数字の計算で、エラーが起きるものですか?」
  • 「本来なら無限の精度でやらなきゃいけないところを、有限精度でやるからですね。計算の中で小数点以下何桁、とかで切っちゃうでしょ。計算機で計算するとしても、プログラムの中で何桁目を四捨五入するとか、切り捨てとか、決まっているわけです。結果に大きな影響が出ないのならそれでいいんですが、カオスの場合はそのちょっとした誤差がとてつもなく大きな影響を及ぼして、エラーだらけにしてしまうんです。何が本当の解だったのか、全くわからなくなってしまう」
  • 数学というのはとても論理的で、それが透徹していないとならないけど、意味のない論理展開をしてもしょうがないんです。一つ一つ数学として意味があることをやって、その結果今まで見えていなかったようなことがワーツと見えてくるような、そういうのがいい証明なんです」
  • 「そういえば渕野さんは日記に、数学は才能が占める部分が大きく、努力で補える部分は少ない、と書かれていましたが……」
  • 「そうですね。僕は大学院生の指導もするわけですが、学生のレベルと研究者のレベルとの間にはやはりハードルがあって、それを超えるだけの能力がない人はいるわけなんです。いかに数学に興味を持っていて、数学者になりたいと思っていても」
  • 「それはもう、はっきりわかってしまうものなんですか」
  • 「『この人はこのぐらいのレベルだな』というのは、少し数学的な議論をすればすぐにわかってしまいます。学生とでもそうだし、数学者同士でもそう。だから怖い世界ですよね。他の世界ならもっといろいろな要素があるから、努力でカバーできる部分もあるでしょう。でも数学は閃き、センスみたいなものが占める部分がかなり大きいので、ダメな時は本当にダメ。で、そういう人をどう扱ったらいいかというのは、本当に難しい問題なんです」

 

  • 「江戸時代の数学は他の学問、たとえば物理学や社会科学と影響し合って発展する、という道を取らなかったんですね」神戸大学は数学研究室の談話スペース。ソファに腰かけた渕野さんが言うと、後ろでまとめた長髪が軽く揺れた。
  • 「特に物理と繋がっていなかった。ヨーロッパでは、数学は物理学とか天文学とかと繋がって大きく発展してきているんですよ。一方の日本は、純粋に数学、パズルを解くことを通じて、精神性、人間性を高めるとか、そういった要素が強かった。そういう体質が現代にも一部、引き継がれてしまっているんじゃないかと思います」いろんな人がいるので全員に当てはまるわけではないけれど、と渕野さんは前置きして続ける。
  • 「そういう遊芸としての数学とか、いい点を取って大学に入るための数学、すなわち受験数学が、日本では一人歩きしちゃつているところがあるのかと。点をできるだけ取って、ちょっとでもいい大学に入ろうとする人たちには、問題は解けてもその奥の意味を知る余裕がないんですよね。だから学ぶモチベーションが消えてしまう。せっかく大学に入ってもそのまま、いい点を取るにはどうすればいいのか、という気持ちのまま数学をしてしまうんじゃないか。数学の考え方を踏み台にして何かをより深く理解する、ということを目指すと、違ってくるとは思うんですが・・・」
  • 数学は点を取るだけのものだと思っている人と、宇宙を知るための道具の一つだと思っている人。確かにこの違いは深刻だ。僕は今のところ前者のタイプだが、
    もし後者のタイプだったとしたらどうだろう。
  • 数学が社会で何の役に立つのかと聞かれても、「うーん、そこからか・・・」と頭を抱えてしまいそうだ。全ての基盤になる部分を研究しているつもりなのに、役に立たないことに血道を上げる変人のように見なされてしまうかもしれない。素晴らしさをわかってもらうには、実際にやってもらうのが早いのだが「数学は恐ろしくて、難しい」と言われてしまう。そんなに怖がらなくても、やってみれば意外と簡単だし、楽しいのに・・・。

 

  • 「僕、たぶん今生きている人類の中で一番頭のいい人の助手を、半年間ほどやったことがあるんですよ。シェラハ先生っていうんですけど」サハロン・シェラハ。イスラエルの数学者である。
  • 「その人の論文は2千本くらいにまでなったのかな。ゆうに千は超えているはず。共著者がたくさんいるんですけど、中にはシェラハに問題を持ち込んで、教えてもらった結果をほとんどそのまま論文の形にすることしかできない『共著者』もいます。つまり、本当にすごい先生です。僕が彼の助手になった時にね、助手を長らくやっていた方に言われたんですよ。『サハロンを人間だと思ってはいけない、宇宙人みたいなものだと思わないと、やっていけないよ』と。宇宙人なら何でもありでしょ?それくらいの人なんですよ。彼に比べればもう、他の人は全部同じ、どんぐりの背比べみたいなもので」
  • 「そんなに普通の人と違うんですね」「うん、違う。違いすぎるので、もう比較してもしょうがない」「その先生の助手というのは、どんな仕事をするんですか」「いろいろあるんだけどね、研究のアイデアを聞いて細かいところを埋めるとか。シェラハはかなり細かくノートを書いてくれるんだけど、それを普通の人が読んでも全然わからないんですよ。普通の人が読めるような論文の形に、ノートを解読して落とし込まないとならないんです。だから助手と言っても、普通の人にはできない仕事です。僕がその助手をやっていたというのは、まあちょっと威張れることかもしれない」
  • 「渕野さん。ちなみに今言った『普通の人』というのは・・・」「ん、ああ。だから普通の、専門家。普通の数学者ですね」

 

  •  「一つ象徴的なのが、『岡・カルタンの理論』です。岡先生が作った多変数関数論という数学の分野があります。これはフランスの数学者のアンリ・カルタンと互いに刺激し合うような形で、作り上げられていきました。このカルタンという人は、アンドレ・ヴェイユと共に現代数学を作った人なんですね。ある時フランス数学会の機関誌に、岡先生の連作『多変数解析関数について』の七番目の論文が載ることになります。1950年。巻頭論文でした。で、その次に載っている論文がカルタンの論文なんですけれど、これは岡先生の論文を1年ほどかけて全面的に書き直したものなんです」「え? 同じ論文なんですか?」「論理的には同じですね、でもものすごく大きな乖離がある。岡先生の論文はさっきのたとえで言う鶴亀算で、カルタンの論文は連立方程式なんです。つまり「岡の言っているのはこういうことである』と、カルタンたちが作っていた新しい数学の形に、抽象化して組み込んだわけです。こうしてできたのが岡・カルタンの理論。ホモロジ
    ー代数……層係数コホモロジーという新しい代数です」つまり昔の数学と、今の数学がすれ違った瞬間の一つということなのか。
  • ホモロジー代数は大成功を収めました。多変数関数論だけでなく、様々な分野に応用が利いたんですよ。数学の世界に非常に大きな土台を作りまして、その上に代数幾何学なんかもできた。難問だったフェルマー予想を解くことにも繋がっていったんです。これで岡先生は一挙に有名になった。業績を絶賛された。でもね」高瀬先生は声のトーンを落とした。「岡先生はそのカルタンの論文が、非常に嫌いでした。教科書にはカルタンの論文の方が載って、岡先生の論文は読まれなくなって。有名になった岡先生のもとに、学生たちが訪ねてきたりするわけですよ。カルタンの理論を教科書で読んだ学生がね。でも『あんなのは私の理論じゃない』と。怒られた方はなんで起こられたのかよくわからない、尊敬しているのにね

天才数学者、ラスベガスとウォール街を制す

「お金持ちになる方法」はあるだろうか?標準的な経済学に従えば、大きく3つあるのだろう。1つ目はインサイダー取引を行うこと、2つ目はねずみ講を組成するなど、詐欺を働くこと。言うまでもないことだが、確実に儲かるがゆえに、これら2つは法律で規制されている。合法的にお金持ちになる唯一の方法である3つ目は、裁定機会を見つけてくることだ。本書はこの「お金持ちになる」方法を実践してきた投資家の自伝である。

上巻

  • 私は怒り狂い、2学期には化学の授業を取らず、専攻は物理学に変えた。おかげで私は有機化学の授業は取らなかった。これは生き物すべてにとって主要な構成要素である炭素化合物を研究する分野だ。つまり生物学の土台である。
  • このとき早まったせいで、私は学校も専攻も変えることになり、おかげで人生の道筋がまるごと変わってしまった。振り返ってみると、変わってよかった。私の興味も私の将来も、物理と数学のほうにあったからだ。何十年もあと、人間が健康にもっと長生きするためのアイディアを追求していて有機化学の知見が必要になったときには、必要な分だけ自分で学んだ。 

 

  • 教授は高名な物理学者の息子だったが彼自身は凡庸だった。いつもビクビクしていた。学生から質問されるのが怖いので、講義はカードの束に書いたことを黒板に写すだけだった。学生がものを言いにくいようにずっと背中を向けている。で、私たち学生は板書を自分のノートに写す。彼はもう何年もそんなやり方をしていて、講義の内容は毎年ほとんど変わらない。バカかと思った。先にカードのコピーを配ってくれたら講義の前に読めるから、興味深い質問もできるのに。もちろん彼は、誰かに何か尋ねられて自分が答えられないのが怖いのだ。
  • 退屈した私は、講義中にUCLAの学生紙『デイリー・ブルーイン』を読み始めた。これで教授の自尊心が傷ついた。執念深い敵を作りたくなければそういうのは絶対に避けないといけない。私がそう知ったのはずっとあとになってからだ。とても怒った彼は、私が完全に新聞に没頭していそうなときを狙って、カードを黒板に写すのを何度も急に止め、質問を私に投げつけた。そのたびに私は正しい答えを言ってまた新聞に戻った。
  • 今から思うと、私はいつも、ケチで凝り固まった凡人を見るとイライラしていた。ずっとあとになって、そういう連中と角を突き合わせたってしょうがないのを学んだ。そういう連中は、できるものなら避けて、できないものなら適当にあしらってやるのがいい。
 
  • CBOEが開所する数カ月前、私はオプション評価の公式を使って取引する準備ができていた。この公式のことはほかに誰も知らない、私はそう思っていた。PNPの独壇場だな。そんな矢先、聞いたことない名前の人から手紙が来て、発表前の論文のコピーが入っていた。ブラックという人だ。手紙はこう言っていた。私はあなたの研究に感服している、自分とショールズで『市場をやっつけろ』の核心であるデルタ· ヘッジのアイディアを拝借して1歩進め、オプション評価の公式を導出した。論文を流し読んでみると、私が使っているのとまったく同じ公式が出てきた。グッドニュースは、彼らが厳密な導出をやってくれたおかげで私が直観に頼ってたどり着いた公式が正しいのが証明されたことだ。バッドニュースは、これで公式は広く一般に知れ渡ったことだ。みんなこの公式を使うに違いない。運よく、そうなるにはしばらく時間がかかった。CBOEが開所し、取引が始まってみると、取引に公式を使っているのは私たちだけのようだった。 

 

  • 大きな組織につきまとう1つの問題は、構成員の大部分が他人の邪魔はしないのがいいと決め込んでしまうことだ。そうして道理が通らなくなるのである。私は親しい友だちに副学科長になって私を助けてくれと頼んだ。私が数学科で職を得るのを手伝ってくれた人だった。その頃にはもう終身の正教授になっていたのだけれど、彼は私の申し出を断った。言い分はこうだ。「オレはこのサルどもと一緒のオリで暮らしていかないといかんのだよ」。彼の言うことはよくわかる。対する私はと言うと、そんなオリに縛りつけられてはいない。私にはPNPがある。こんなことを思った。なんで私がここをなんとかしてやらないといけない?誰も私の味方をしてさえくれないのに?私は入りたくて数学科に入ったのだ。入らないといけないから入ったのではない。もういい頃合いだろう。

 

  • 人生最大の望みはカリフォルニア大学で終身教授になることだと誰かが言うのを何度も聞いた。私にとってもそれは夢だった。長い歳月のあいだに、私はUCIの学生や元職員を何人も雇ってきたが、教授陣でこの挑戦に乗って私の会社に加わってくれたのは1人だけで、終身教授ではなかった。ほかの人たちにとってそんなのは考えるだけでも恐ろしかったのだ。
    まあもちろん、そんなほかの人たちには、あとになって後悔した人もけっこういたけれど。
  • 常勤での講義の仕事はだんだん減らしていき、最終的にUCIの正教授を辞任したのは1982年のことだった。教えるのも研究するのも大好きだったから、一生楽しくやっていくんだろうと思っていた仕事を手放して大きな喪失感を味わった。でも結局、そうしてよかった。私は好きなものをちゃんと持って出たのだ。友だちもそのままだったし、共同研究も続けられた。思うがままに好きなことをやれるわけだから子どもの頃の夢がかなった。自分の研究を学会で発表し続けたし、数学や金融、それにギャンブルの学会誌に論文も載せ続けることができた。そうして私は、学界からウォール街へと押し寄せていた数学者に物理学者、金融経済学者との競争にいっそう力を注ぐようになった。

下巻

  • 政府は、当時とそれ以前の両方にわたるメイドフの顧客のリストを公表している。顧客の数は1万3000件を超えていて、大金持ちとは言いがたいフロリダのご隠居さんから、セレブに億万長者、慈善団体や大学といった非営利組織までさまざまだ。この(あるいはほかの)詐欺であれだけの数の投資家が簡単に、それも多くの場合何十年にもわたって騙されるなら、市場は「効率的」だなんて言う学界の理論はどうなんだろう?投資家は素早く合理的にすべての公開情報をポートフォリオ選択に反映させるとかっていう仮説はなんなのだろう?
  • 多数決という・・・やり方は、場合によってはものすごくうまくいく。樽の中に豆がいくつ入っているかとか、かぼちゃの重さとかを当てるなんて場合がそうだ。たくさんの人の当て推量全部の平均は、だいたい個人それぞれの当て推量の大部分より、ずっといい推定になる。この現象は群衆の叡智と呼ばれている。でも、だいたいの単純な話と同じように、この話にも裏がある。メイドフの事件でいうと、答えはたった2つしかない。イカサマ師か投資の天才かのどちらかだ。群衆は投資の天才のほうに手を挙げ、それは間違いだった。この群衆の叡智の裏を、私はレミングの錯乱と呼んでいる。

 

  • たいしたことない価格の変化に説明をつけるのは金融マスコミが四六時中やらかしている間違いだ。記者には目の前の変動が統計的によくあることなのかめったにないことなのかがわからない。でも考えてみると、人はなんにもないところにパターンを見たり説明を思いついたりなんて誤りをよく犯す。ギャンブルの戦略の歴史、役にも立たないのにやたらとある、パターンに基づく取引手法、それにマスコミの記事を本気にした投資法の大部分を見れば、それがよくわかる。

「大きすぎてつぶせない」なら

  • 個別に見ると、金融業界の重鎮の中には、個人として、あるいは会社として、ひどい傷を負ったケースもあった。でも、政治業界にコネのあるお金持ちは世間一般の人の財布から1兆ドルも奪い取り、「大きすぎてつぶせない」会社を救済させた。一部の利益団体にはたっぷりお金をばら撒いて懐柔し、また報いた。スクラップ直前の車を引き渡して別車を買うと4500ドルもらえる「ポンコツ買い替え補助金」なるものができた。環境にやさしい政策なんてネコをかぶっているけれど、新しい車を買うと車の種類によってはガソリン3.7リットルでほんの1.6キ
    ロから6.4キロ余計に走るだけで補助金がもらえた。燃費が気持ちだけよくなっても、新しい車を作ることで排出される追加の公害のほうがずっと大きい。でも車のディーラーたちは買い替えを後押ししてもらい、売り上げは伸びるわ車庫にたまった在庫がはけるわで大喜びだった。
  • 正社員でもパートタイムでも失業率は上がり続けていた。失業手当の給付期間は何度も延長された。必要だという意味ではこれはいいことなのだけれど、手当てを払うより手の空いている人たちをできるだけたくさん雇い、有意義な事業に携わってもらうほうがみんなのためになると思うのだ。公共事業促進局(WPA、Works Progress Administration)や資源保全市民部隊(CCC、Civilian Conservation Corps)なんかの事業が頭に浮かぶ。子どもの頃、1930年代のそうした事業で道路や橋、公共施設ができた。あのときに改善されたインフラは、それから何十年も私たちに恩恵をもたらした。

漫画201908

9巻のカロンが前半の山場、10巻はアラライ変態王子の大虐殺、主人公が出てきたと思ったらまたしても女運に恵まれず(ある意味恵まれてるけど環境に恵まれず)・・・。刊行スピードも相まって、面白いけれど、面白いがゆえに読者をヤキモキさせる作品。

11巻は話が進むのかと思いきや、大西ライオン(勝手に命名)がメインで、またしても主人公は脇役。本編ストーリーはこれといって進まず、生きている間にクオリティを保ちつつ、ちゃんと話を終わらせてほしいと切に願うお祈りモードに突入しました。4点

今流行のスピンオフ作品ですが、原作の資産をうまく活かしきれておらず、あまりおもしろくありませんでした。2点

本編はいよいよ全面対決。正直エマにうんざりしてきた読者も多いのでは笑。20巻くらいで綺麗に着地してほしいところです。個人的には敢えて綺麗に終わらせず、含みをもたせて気持ち悪い終わらせ方をしてほしい作品です。3点

これもう無限に続けられるんじゃね?ただただ西片が羨ましい。5点
不満がありません。5点
いつもの緩いふらいんぐうぃっち、完成度が高い漫画です。フクロウ回最高だった。ふらいんぐうぃっちの真琴ちゃんと魔法科高校の深雪ちゃん、黒髪ロングストレート美少女の両雄が並び立つ。5点
ジャンヌちゃんが完全にニノさんなんですがそれは・・・4点

クライマックスに一歩ずつ、見守りモードです。並べて気づいたけど、遠目には日々人の髪型がブッダと同じですね笑。3点

なんかストーリーが散らかっている気がしますけど、最終盤なのでいいんじゃないでしょうか。2点

定期告知

漫画を大量に買うなら、豪邸に住んでいない限りkindle一択です。無印kindleは容量と解像度に問題があるので。Paperwhiteがおすすめです。

  

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勝間式食事ハック

  • 自分が食べている量の割に痩せない、あるいは太っていくと感じている人は、間違いなく加工食品あるいは非常に糖質や脂質が多い外食の虜になっているはずです。
  • さらに問題なのが 低脂肪や、低糖を謳った加工食品は、実際にはさほどヘルシーではないということです。これらは全てカラクリがありまして、低脂肪の場合は砂糖を増やして、低糖の場合は脂肪を増やしておいしくしたりして、味をごまかしています。まあ、それには理由があって、そうしないと消費者がおいしいと思わないので売れないのです。

 

  • プラントベース・ホールフードには、「プラントベース」「ホールフード」の2つの意味が含まれています。
  • プラントベースとは、食べるものは植物性食品を中心にするという意味です。・・・動物性食品の中に含まれる脂肪、すなわち、飽和脂肪酸が様々な病気の元になるからです。
  • 飽和脂肪酸の問題点は、常温で固体になっていることです。それに私たちは古来、飢餓防止のため、カロリーが高いものが大好きで、脂肪を心の底からおいしいと脳が感じてしまうため、脂肪が手に入るとそれを際限なく食べようとします。
  • ホールフードという概念は何かというと、「むやみやたらに食品を生成や抽出、すなわち、過度な加工をしない」という考え方です。

 

  • やりたいことは何かというと、例えばキャノーラ油や大豆油のように、食物から分離された油を積極的に摂らないということです。油を摂りたければ大豆を食べたり、ゴマを食べたりすればいいのです。
  • 砂糖も同様で、さとうきびから分離されていますから、野菜やお米がもともと持っている甘味を上手に引き出してやって、わざわざ砂糖を加えないのです。野菜や芋類

 

  • 適切に食材を調達する技術
  • 適切に食材を加工する技術

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  • それでは肉の代わりに何を食べればいいのでしょうか?答えは簡単でして、植物
    性食品をしっかり摂っていれば実はその中にタンパク質が結構含まれているので、玄米や全粒粉、青菜やキノコ、豆類などを食べていればタンパク質の量は十分です。
  • もし心配なら、ビタミン群のうち唯一、植物性食品ではなかなか摂りづらいビタミンB12サプリメントを2週間に1粒程度飲めば、不足分は解決できます。

 

  • 私たちが肥満に悩む理由もとても単純でして、カロリーが高くて量が少ない食べ物をお腹いっぱい食べたら必然的に過食になるからです。
  • 加工食品でない植物性の生鮮品、例えば野菜や、豆や、キノコや果物をお腹が膨れるほど食べたとしても大したカロリーにはなりません。
  • 私たちが太ってしまう理由は以下の3つです。
  1. 精製した穀物の摂りすぎ
  2. 精製した砂糖の摂りすぎ
  3. 肉を含む油の摂りすぎ
  • よくベジタリアンで不健康そうな人がいますが、それは単純に食べている量が足らなすぎるのです。野菜で十分にタンパク質を補おうと思えば、3食きっちり食べる必要があります。また前にも書きましたが、野菜だけでは足りないので穀物もしっかり摂りましょう。

 

  • スチームコンベクションオーブンの特徴は、人がそばに張りついていなくても、大量の食材を適温で調理できるということです。
  • このオープンは、効率的にたくさんの料理を均一に仕上げられるため、ホテルやレストラン、学校給食などでは欠かせない調理器となっています。そして、かつてコンピューターが企業などの独占になっていましたが、それがパソコンになったのと同様に、同じ機能で小型のものが今、家庭用に普及し始めています。業務用だと何十万円も何百万円もするものばかりですが、似た機能の家庭用のものが5~10万円ほどの価格で手に入るようになりました。具体的な機種名としてはヘルシオウォータオーブンが一番有名です。
  • せっかく様々な技術革新があるのですから、情報技術だけではなく調理技術も恩恵を受け、私たちのお財布の許す範囲で、徹底的にその技術の進歩を使った調理器具を使いこなすことをお勧めします。
  • 調理というとなぜか手作りを重んじる傾向がありますが、正直私は手作りというものは信じていません。「ばらつきが多いこと」の代名詞だからです。
  • もちろん人間国宝のようなクラスの人や三ツ星レストランのシェフが、自分の経験と勘に基づいて状況判断をしながら、様々なアレンジメントを加えることについては全く反対しません。しかし、しょせん私たち素人が手作りをするのであれば、機械に作ってもらったほうがよほど正確です。
  • 私がオール電化でもIHレンジ台はあまり好きではないのは、明らかにそれはガス代の劣化コピーだからです。ガスであれば遠火の強火など、火加減ができますが、IHレンジですと、そもそも鍋やフライパンそのものを振動させて発熱をさせていますから、使い勝手が非常に悪いのです。
  • もし電気を使いたいのであれば、IH式でもヒーター式でも構いませんが、いずれ
    にしても閉鎖式で温度管理まで一体化しているものでないと、私は意味がないと思っています。
  • ほとんどの食材には熱を加える必要がありますが、熱の加え方として、
  1. 伝導熱
  2. 輻射熱
  3. 対流熱
  • などの方法があります。それぞれの調理器具はどのような熱の伝え方をしているのかということを考えると、食材に一番合った加熱方法を取ることができます。
  • 伝導熱というのはフライパンなどを通じて食材に直接熱が伝わる方法です。食の調理方法では、私は伝導熱は全くお勧めしていません。時間がかかる上にムラがあり、食材をまずくする方法のひとつだと思っています。
  • 伝導熱の最大の難点は、フライパンなどの鉄に直接触れる部分しか加熱されないことです。だからこそ人間がなんらかのかたちで、菜箸やターナーでかき混ぜないけないのです。しかも温度にばらつきがありますし、食材もいじりすぎなので、これでおいしい食事を作るのは至難の技です。
  • 輻射熱の代表はオーブンやグリルです。空気を温めて、その温かい空気が食材を囲むことで調理が行われます。輻射熱の料理の問題は何かというと、空気で温めるので、「食材が酸化しやすくなる」ということです。食材が酸化をするということは、錆びるということですから、基本的にはあまりおいしくなりません。オープンでおいしいのは、中の蒸されている部分であって表面の乾いた部分ではありません。表面に焦げ目ができるとおいしく感じる人も多いと思いますが、これは「メイラード反応」と言って、体に良くない老化物質であるAGE(終末糖化産物)ができあがっている証拠ですから、あまり好ましくありません。
  • 輻射熱で作ったものは酸化が進むので、それで温め直すと大しておいしくないのです。正直、伝導熱で作ったものも、輻射熱で作ったものも、できあがった直後はおいしいのですが、冷めるとおいしくなくなるのはそういう理由です。
  • ではどうするかというと私の食事ハックのお勧めは、「対流熱」を中心に調理を行うことです。滞留熱は主に水または水蒸気を使います。つまり水で煮るか、水蒸気で蒸すということです。
  • 蒸しを使う利点は、食品が酸化しづらく、水分が残り、AGEができにくいということです。しかも茹でたり焼いたりするよりも加熱が均一になり時間も早いのです。
  • 自宅のタオルをいちいちクリーニング屋さんに持って行く人はほとんどいないと思います。なぜかというと全自動洗濯機で自宅で洗ったほうがよほど簡単で早くて安いからです。全く同じような環境を自炊でも整えればいいだけなのです。洗濯乾燥機なら買えるけれども、自炊に対する器具を揃えないというのは頻度からいうと本末転倒です。なぜなら洗濯の回数よりも炊事の回数のほうが多いからです。
  • 私たちが食事を工業製品にしてしまったことで失われた最も大きなものは、「食物繊維と微量栄養素」でした。
  • いわゆるカロリーと、三大栄養素と言われているような、糖質、タンパク質、脂肪に関しては加工食品で十分取れるものの、食物繊維やビタミン、ミネラルが失われてしまいました。
  • なぜプロの料理が美味しくて、アマチュアの料理はばらつきが大きいかと言うと、加熱の部分が安定しないからです。
 
  • ビストロとヘルシオの大きな違いがわかりました。それは何かというと、「ビストロのような一般的なオーブンレンジは空気で調理をするが、ヘルシオのようなウォーターオーブンは水蒸気で調理をするので、食品が空気に触れづらく、酸化がしづらいため、よりおいしい」ということなのです。
 
  • 糖質制限については近年、一時期よりも旗色が悪くなってきています。糖質制限をすると確かに一時的にメタボ体型からすっきりするのですが、だからといって長生きはしないのです。
  • 結局動物性タンパク質や脂肪に頼った食生活になるため、コレステロールの量が多くなり、心臓や腎臓にも負担がかかります。
  • 際限なく砂糖やポテトチップを食べるぐらいであれば肉を食べたほうがまだマシということなのですが、初めからしっかりと野菜や玄米、全粒粉を食べることができれば、肥満とは無縁ですし、血糖値が上がることもありません。
天然酵母の全粒粉パン
  • パンの歴史を繙くと、イーストが出てきたのはつい最近であって、もともとは各地の天然酵母で小麦を発酵させて膨らませるのが基本でした。パンを発酵させる最大の目的は小麦の中に入っている栄養を引き出すためであって、膨らませるためではないのです。
  • なぜ今、天然酵母の茶色いパンがほぼ絶滅してしまったかというと、天然酵母を起こすのに24時間、発酵から焼き上がるまで7時間半かかるからですね。

 

なぜ揚げ物はおいしく感じるのか?
  • 高カロリーの加熱手法の最たるもののひとつに「油で揚げる」があります。私たちが満腹になるか否かはカロリーではなく、胃にどのくらいの食べ物が入ったかによって決まります。ある意味、質ではなく量なのです。
  • とにかく私たちはついついカロリーばかりに目が向いてしまいますが、一定の量、例えば1食当たり500~600グラムを食べるということを前提として、その中でどれだけ的確な栄養素を摂るのかということに着目すると、高カロリーで栄養が少ないものには手が伸びにくくなると思います。ではなぜ油で揚げたものはおいしいのでしょうか?答えは簡単で、「余計な空気に触れて酸化をしたり、あるいは水に茹でられてその旨味成分が水の中に逃げたりしていないから、味が凝縮している」
  • そうならば予め別の方法を使って、「旨味を閉じ込めたまま加熱をできないか」と考えたほうが早いです。つまり、茹でたりする場合、水の中に旨味を逃さずに、かつ油で揚げるような形で余計なカロリーを摂らない加熱方法を考えればいいのです。
  • ホットクックやヘルシオのウォーターオープンは水蒸気を使って旨味を閉じ込めたまよの調理を実現します。「水蒸気を使う」というと、どうしても減塩のイメージが強いのですが、実際には減塩よりは素材の旨味を逃さない加熱方法と考えたほうがわかりやすいと思います。
  • 同じようなコンセプトの調理器具はホットクックだけではなく、バーミキュラやストウブ、ル・クルーゼなどもあります。
  • ただバーミキュラやストウブ、ル・クルーゼなどは、ガスやIH台で使うのが基本
    なので火加減を自分で厳密にコントロールするのが大変なのです。またこうした無水や真空に近い状態にする鍋は、構造がしっかりしているため重いので、一度しまいこんでしまいますと次に使うときに出すのがなかなか大変です。
  • なぜ、これまで油で揚げるという方法が多かったかというと、それが、
  1. 大量に一度に調理ができる
  2. 複雑な調理器具を必要としない
  • というメリットがあったからです。
  • ホットクックは外壁で含めるととても大きくて、それだけ大きいものを用意して
    ようやく2.4リットルだけ鍋が使えるわけです。このような構造のものを業務用に
    全部用意をしたら大変です。
  • つまり玄米や全粒粉のパンなど、業務用では調理に時間がかかりすぎて実現できないような贅沢を自宅でできるようにしたり、油で揚げるといったような簡便な調理方法でなく、高級レストランでしか使えないような水蒸気を使うようにしたりと、贅沢な調理方法を可能にするのが自炊のメリットなのです。
  • そういう意味では、「無水または真空で作った料理はだいたいおいしい」と覚えておけば、加熱の仕方はバッチリです。
  • 皆さんは前に質問した通り、揚げ物がおいしいのは知っていますよね?それが低カロリーで同じぐらいか、もっと美味しかったら何の問題もないと思いませんか?
  • とにかくホットクックを使っても、ヘルシオウォーターオーブンを使ってもいいのですが、水蒸気で蒸すか、食材の水分で蒸し焼きにするという手法を使ってしまえば、誰でも料理の達人です。
 
  • 「体にいい塩は、海水と同じミネラル分の割合を持つ塩で、ナトリウム77.9%、塩化マグネシウム9.6%、硫酸マグネシウム6.1%、硫酸カルシウム4%の構成比で成り立っているが、工業的に作られた精製塩は、成分でいえば99.9%以上が塩化ナトリウムで、ミネラルバランスのいい塩を選ぶべき」
  • つまり、私たちが普段塩だと思ってるのは塩化ナトリウムであって、塩ではないのです。塩というのは塩化ナトリウムだけではなく、マグネシウムやカルシウムを含んでなければ塩とは言えません。そして、塩化ナトリウムばかり食べるから、減塩が必要になるという考え方です。
  • 醤油の塩分の含有量はだいたい16%、味噌はだいたい12%です。なので、0.6%という数字を、それぞれの値で割ってあげれば、食材などの総重量に対して適した醤油や味噌の比率を簡単にもとめることができます。実際に計算してみると、醤油は3.75%、味噌は5%になります。
  • つまり野菜が蒸し上がり、そこに味付けをしたいと思ったら、その野菜の重量に対して、塩だったら0.6%、醤油だったら3.75 %、味噌だったら5%を加えて和え
    ればできあがりです。
  • 水を使って煮物を作るときも同じで、水と入れた野菜や豆などの総量に対して、
    油だったら3.75 %、味噌だったら5%を加えてください。
  • 私の知り合いのミシュランで三ッ星のお寿司屋さんは米の水分量も調味料も、
    全て測るそうです。三ツ星のお寿司屋さんが測っているのに、私たち素人が測ら
    ずにうまくいくわけがありません。
 
  • もし丸ごと食べるのであれば、スムージーでいいのではないかという発想があります。単純な野菜ジュースや果物ジュースを飲むよりは、よほどスムージーのほうが私もマシだと思います。
  • しかし、スムージーの難点は何かというと、自分の口で噛み砕いていないので、まず唾液の中に入っているアミラーゼと食物がうまく混ざり合わないことと、口で食べるよりも大量の野菜や果物を摂りすぎてしまうため、食物繊維、特に不溶性の食物繊維が体に入りすぎて大腸に負担をかけてしまうのです。
  • 口で噛み砕いて食べることは「食べすぎ」のストッパーにもなります。満腹感が得られますし、適量でちゃんととまるのです。

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世界の一流企業は「ゲーム理論」で決めている――ビジネスパーソンのための戦略思考の教科書

  • コンサルティング会社マッキンゼーが1800人以上のビジネスリーダーを対象に行った調査では、重要な事業判断を下す際に2つ以上の選択肢を検討するリーダーはほぼ半数であることがわかった。競争相手の反応まで事前に検討するリーダーとなれば、さらに少ない。ゲーム理論をもっと有意義に取り入れていれば、それは当然、組織に優位性をもたらすはずだ。第2に、ゲーム理論は行動を起こすための洞察力をもたらす。私たちの周囲ではさまざまなゲームが繰り広げられているーその多くは私たち自身にはほぼ制御不能だが、ゲーム理論を通じて概要を把握していれば、他者を出し抜いて、その先の展開を理解・予測できる。戦略コンサルティング会社のリーディングカンパニー、モニター社の企業金融部門名誉会長トム・コープランドが指摘している。
  • 「寡占状態が赤字になりやすい理由も、生産能力過剰と供給過剰のサイクルも、最適な選択肢が現れる前に現実的な選択肢に走る傾向も、ゲーム理論で説明がつく」
  • 第3に、これがもっとも重要な点なのだが、ゲーム理論には組織文化を変容させる力がある。組織はゲームの「プレイヤー」となるだけでなく、組織自体が、そこでさまざまなゲームが展開される「ゲーム盤」でもあるのだ。部署間、部下・上司間、オーナーと経営陣、さらには株主や債権者においてもゲームが生じる。全員がともに伸びていける文化と構造を、その組織のリーダーがつくり出しているのなら、ゲーム理論はビジネスのポテンシャルを最大限に開花させる後押しになる。
  • もっと生産的なゲームをしていくために、企業はこれまでと異なるタイプのゲームプレイヤー(「柔軟で、知的厳密性を備え、不確実性に正面から対峙できる人材)を採用・育成し、さらには戦略策定プロセスに対する全員の有意な貢献を促す
    (「オープンで率直であると同時に、偏りのない徹底的な議論の追求を通じて、
    変動要素のすべてを真摯かつ政治的圧力なしに検証できる文化」をつくることによって)必要があるのだ。しかも、ゲーム理論が役立つのはビジネス戦略の策定においてだけではない。経営陣にゲーム認識力があれば、従業員の士気向上から、買い手やサプライヤーとの関係性構築まで、あらゆる面で変容を促していくことが可能となる。
  • ゲーム認識力がビジネスにどれだけの功績をもたらすか。そのポテンシャルをもっとも明白に示した人物といえば、おそらく、ゼネラルモーターズ(GM)の伝説的リーダーであったアルフレッド・スローンをおいてほかにいないだろう。現代のマネジメントの頂点にある者の中でも、スローンはゲーム認識力の使い手の鑑と言っていい。
  • 本人の筆による名著『GMとともに』にありありと浮かび上がっているとおり、
    自動車市場のゲームに対する彼の鋭い理解は、GMのみならず業界全体を大きく変容させた。たとえばスローンは、消費者における流行と憧れという要素の重要性を認識し、毎年新しいデザインの車種を発売して中古車から新車への乗り換えを奨励している。同様に、ディーラーにとって何がインセンティブとなるかを理解し、それまでの戦略の詰めの甘さを把握して、自動車メーカーとして初めて売れ残り在庫を買い戻す制度を導入した。統合型会計システムを採用したのもGMがバイオニア的存在だ。
  • 何より重要な点として、スローンは、部下同士の競争というゲームを理解していた。各部署のマネジャーには、自分の管轄の利益だけを追求したいインセンティブがある。スローンはこの競争心というゲームのゲームチェンジを図り、現代企業に見合った新たな組織構造を考案して、部署同士に同盟を組ませた。これはアメリカのビジネスに、今日にも継続する絶大な影響を与えている。

 

  • 成功するビジネス戦略とは、単に見つけたゲームをプレイすることではない。プレイするゲームを主体的に形成していくことだ。ブランデンバーガー・ネイルバフ
  • ゲーム理論が最大の威力を発揮するのは、展開されているゲームを認識し、有利なゲームチェンジの方法を考えていくところにある。本書では、そこまで踏み込んで読者にゲーム理論を紹介するとともに、読者自身がゲームチェンジャーとなるための道を示したい。ビジネスでもプライベートでも、参戦するゲームを自分が主体的に形成していくことで、戦う前に勝利できるようにしたいのだ。

「未来の自分」との戦いをいかに制するか?ーダイエットの本当の敵

  • 敵ではなく、仇でもなく、おのれのやましい心が人を破滅させる。仏陀
  • 私を帆柱の中ほどに縛りつけろ。まっすぐに縛れ。私が逃げ出せないようにしっかりと。私がほどけと懇願したら、なおさらきつく縛れ。ホメロスオデュッセイア
  • 科学雑誌『アペタイト』が先日、パソコン作業中のチョコレート消費量に関する研究を掲載した。被験者の前には、チョコレートを盛ったボウルがでんと置かれる。被験者はパソコン作業の合間に好きなだけチョコレートをつまんでも構わない。ただし作業に入る前に、まず15分きびきびとウォーキングをするか、あるいは15分じっと座って考えごとをするか、どちらかのタスクをこなさなければならない。運動すればカロリーを消費するのはもちろんだが、それ以前に、運動は一般的に美徳とされる行為だ。ウォーキングをした被験者のほうが自分にちょっとしたご褒美を許し、余分にチョコレートをつまむと考えるのが自然である。ところが結果は反対だった。運動をした被験者のチョコレート消費量は平均15.6グラム、静かに考えごとをした被験者のチョコレート消費量は28.8グラム。運動をしたほうが食べる量は少なかったのだ。
  • なぜこうなるのか。先行する理論によれば、運動は脳内の化学物質の組み合わせに影響を与え、食欲を抑制して、チョコレートのような嗜好品への渇望を抑える。そう考えてみると、運動を選ぶというのは「未来の自分」とのゲームだ。運動をすることによって、チョコレートを食べたがる未来の自分の欲望を変えてしまうのである。
  • たとえば私の場合、ランニングの時間がとれるのは基本的に朝しかない。そしてスナック菓子をつまむチャンスは主に午後にやってくる。「朝のデービッド(私)」は別に走りたくなどないのだが、走っておくことによって「午後のデービッド」が頻繁につまみ食いをするのを防ぐというわけだ。ランニングをしたあとはスナック菓子をそれほど食べたがらないのであれば、つまみ食い問題は解決である。「走らなければ午後のデービッドがつまみ食いをする」と先読みして、「朝のデービッド」はランニングシューズに足を入れる。
  • 「未来の自分」が減量の努力をするようなインセンティブを、どうやって与えればいいだろうか。
  • 経済学者イアン・エアーズとバリー・ネイルバフは、2006年に『フォーブス』誌に掲載された論文で、この問題を奇抜な方法で解決する新ビジネスを提案している。その名も「減量債券」。ダイエットをしたい人は1000ドルを払って、エアーズとネイルバフから減量債券を買う。すると、あらかじめ設定した目標体重を維持している限り、一般的な相場を上回る率で配当が得られる。体重が増えるのは購入者側の不履行であり、これをするとエアーズとネイルバフの儲けが増える。
    ダイエットをしたい人にとっては、減量と維持のインセンティブが大きいので、これが助けになるというわけだ。減量債券は、「現在の自分」から「未来の自分」へ、ダイエット継続のインセンティブを与える手段だ。

コミットミントと「先行者になること」との関係

  • コミットメントは、相手の選択に影響を与えられるタイミングでなければ(そして、相手がはっきりとそのコミットメントを認識できなければ効果がない。ゆえに、コミットするなら「先行者」となる、つまり相手が決定する前にコミットしてみせる必要がある。・・・戦略的見地から先行者となることの真の意味・・・

エアビーアンドビーを独り勝ちさせたマーケットの欠陥

  • 個人または法人が所有する別荘や住宅を貸しに出し、個人がそれを予約して宿泊する「バケーション・レンタル・バイ・オーナー(VRBO)という制度がある。このVRBO仲介で市場を大きく押さえているのが、ホームアウェイという企業だ。ホームアウェイ・ドットコム、VRBOドットコム、バケーションレンタルズ・ドットコム、ベッド・アンド・ブレックファースト・ドットコムといった人気サイトを多く運営し、「(全体で)紹介している宿泊先は32.5万軒以上」と謳っている。これほど多くの選択肢があるのだから、すべての出品内容の正確性を把握するのは困難だ。当然と言えば当然ながら、貸し出す住宅について一部のオーナーが虚偽の記載をして、それが審査をすり抜けて掲載されてしまう場合がある。これを表現する「SNAD(significantly not as described 説明と著しく違う)」という用語まで生まれている。
  • viven25というハンドルネームでホームアウェイ・ドットコムを利用するユーザーが、ウェブサイトのコミュニティ掲示板で、SNADに遭遇した体験を萼ている。「書いてあったことは、何もかも、ひどい誇張でした。家からビーチまでは徒歩圏内ではなく(車でも、早くて15分)、大型のシチュー鍋もなく(14人で泊まれると書いてあったのに)、食器洗浄機は壊れているというありさま。まだまだ挙げだしたらきりがないです」
  • とはいえ、少なくともこのユーザーの場合は、泊まる場所が存在していた。消費者の権利を主張する活動家クリストファー·エリオットは、2011年11月に投稿したブログ記事「バケレン詐欺問題の深刻化」で、さらに不幸な目に遭ったタニア・リーベンという、ユーザーの話を紹介している。リーベンはVRBOドットコムを通じて、マウイのコンドミニアムを6週間借りる契約を交わし、オーナーに4,300ドルを送金した。ところが、オーナーのアカウントはハッキングされていて、代金は詐欺の犯人に奪われてしまったのだ。なお悪いことに、コンドミニアムのオーナーもVRBOドットコムも彼女の損失に対して何も責任を負わず、失ったお金、そして休暇も、戻ってはこなかった。
  • ゲーム理論の見地から言えば、これは「手番のタイミング」に問題がある。借り手は、宿泊先が説明どおりかどうか確認する前に、代金を払って予約しなければならない。そのため悪質なオーナーには虚偽の商品を出品するインセンティブがある。幸い、その後登場したエアビーアンドビードットコムというサイトは、抜本的に新しいビジネスモデルで、この問題を解決している。エアビーアンドビーのアプローチでは、支払い義務が発生するのは宿泊開始から24時間後。借り手(エアビーアンドビーではゲスト」と呼ぶ)は家の様子を確かめられるので、虚偽だった場合は支払いをしなくてよい。貸し手(「ホスト」)側はこれを予期して正確に説明しようというインセンティブを抱くし、アカウントをハッキングして詐欺を働いても利益が得られないことになる。
  • こうしたシステムなら、全員が勝者だ。借り手は詐欺やSNADの心配をする必要がない。唯一敗者となる可能性があるのはホームアウェイである。ホームアウェイのシステムではこれと同等の信用性を構築できないので、エアビーアンドビーのモデルが広がれば市場を奪われる可能性が高い。創業まもないエアビーアンドビーに2011年7月の時点で1億ドルの評価額がついたのも、そういう理由なのだろう。ホームアウェイCEOのブライアン・シャープルズは、『ウォールストリート・ジャーナル』紙の取材に対し、心配はしていないと語った(「向こうもなかなかいいサービスだが、うちほどではない」)が、それはおそらく悠長すぎる。心配したほうがいいし、むしろエアビーアンドビーの仕組みを学習したほうがいい。借り手が「先攻」とならないシステム、つまり宿泊先の品質を確認してから代金を払えるシステムをつくるべきだろう。

 

  • 警察が2人の犯罪者を逮捕した。最大で懲役5年となる犯罪だ。だが、彼らはもっと悪い犯罪(武装強盗など)にも手を染めている可能性が高い。こちらは最大で懲役20年。そこで2人を別々の独房に入れ、こう告げる。
  • 「年貢の納め時だぞ。武装強盗の件も自白しろ。お前ら2人のうち、どっちが自白するか、それによってお前が刑務所で過ごす年数も変わってくる。もしお前だけが自白したら、そのまま無罪放免にしてやろう。警察に協力したということだからな。どっちも黙秘したら、両方とも5年間、臭い飯を食ってもらう。2人とも自白したら10年。お前が黙秘して、あっちだけが自白したら、お前は20年だ」

 

  • 現実世界を悩ませている重大なゲームの多くは、囚人のジレンマだ。ビジネスにおいては、競争それ自体が囚人のジレンマとなりうる。・・・競争のインセンティブを少なくする、あるいは撤廃する、信頼性の高い制度を作るなど、様々な方法でビジネス界はジレンマの解消を図っている。
  • 囚人のジレンマの最も重要な特徴は、このように、解決可能なゲームとして戦略的問題を整理できる点ではないだろうか。実際のところ、ゲーム理論は、囚人のジレンマからの「回避ルート」を5種類も提示している。
  1. 規制
  2. カルテル
  3. 報復
  4. 信頼
  5. 関係性
  • たとえば政治問題は「資本主義か、それとも社会主義か」という視点だけで切り取られることが多いが、ゲーム理論に対する深い理解があれば、個人の自由と責任、そして集合的行動といった要素を正しくとらえた実のある話し合いになるだろう。個人のインセンティブがより大きな公共善と衝突し、それゆえに全員が自己利益を追求すると全員が損をするシチュエーションは、まさにゲーム理論で考察すべき領域だ。

タバコ広告の禁止が招いた「真逆の結末」

  • 20世紀半ばのタバコメーカー各社は、膨れ上がる市場で少しでも多くのシェアを確保するべく、あの手この手を尽くして競いあった。マルボロマンなど、タバコブランドの象徴的キャラクターが誕生したのも、そうした手段の一つだ。
  • だが、喫煙がもたらす健康被害の真実が広く知られるようになってからは、公共保健にかかわる各種団体が、こうした広告の影響を懸念するようになる。広告が一般市民を喫煙習慣に誘い込んでいる、と考えたのだ。1967年には連邦通信委員会(FCC)が、タバコのコマーシャルを放送するテレビ局は喫煙の害を強調した公共広告も流さねばならぬ、と義務づけた。
  • 議会はさらに踏み込んで反応し、1970年に「公衆衛生紙巻きタバコ喫煙法」を制定。タバコのパッケージに警告文(「公衆衛生局長官は、喫煙は有害であると判断しています」)の記載を義務づけるとともに、アメリカのラジオおよびテレビ局で流すタバコ広告のいっさいを禁じた。そのかわりとして、禁煙を訴える公共広告も差し止めたほか、連邦裁判所に起こされる将来のタバコ関連訴訟に対し、タバコメーカーは責任を負わぬものとした。
  • この法律の制定は1つの分水嶺だった。だが、多くのアメリカ人が知らない事実がある。パッケージの警告表示を除き、その他の禁止令は基本的にタバコ業界からの提案で制定されたものだったのだ。もちろん、タバコ会社の幹部には今後の免責付与を望む気持ちがあった。訴訟になれば倒産や廃業の可能性があるし、投獄すらされかねない。だが、なぜわざわざテレビ広告とラジオ広告を禁止させたのだろうか。
  • 第一に、明白な理由としては、政府がこれ以上圧迫的な規制へ向かうのを押しとどめるという意図があった。第二の理由として、広告をあきらめればFCCの禁煙キャンペーンもやめさせられる。『ニューヨーク·タイムズ』紙が1970年の記事で指摘したとおりだ。
  • 「タバコ業界は、コマーシャルがビジネスにもたらす効果よりも、禁煙キャンペーンがビジネスにもたらす害のほうが大きいと理解し、それならば両方を捨てたほうが純益になると判断したのである」

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  • つまり、業界全体の広告を一律に禁止させることが、業界全体にとっての勝利の道だったのだ。
  • 特に「一律に」というのがゲームチェンジのカギだった。広告が禁止されるまで、それぞれのタバコ会社には自社商品の広告を出しつづけるインセンティブがあったのだ。この状況を理解するために、タバコ広告のゲームを定型化してペイオフ·マトリクスに整理している。
  • このゲームにおいては、自社ブランドを宣一伝するのが支配戦略だ。自社ブランドを宣伝すれば、市場シェアを獲得するというメリットがある。そのメリットは、広告を出せばもれなくついてくるFCCの禁煙メッセージによって市場全体が受けるダメージよりも優先される。だが、両社が広告を出しつづけていると、市場シェアを奪いあおうとする双方の試みがほぼ相殺され、FCCの禁煙キャンペーンによって双方が弱体化する。
  • 両社が「広告を出す」という支配戦略を選べば、両社が損を被るのだから、タバコ広告ゲームも囚人のジレンマの一例だ。
  • 広告を出さないほうが「純益になる」という発想を奇異に感じる読者もいるだろう。そこでもう少し掘り下げて考えてみたい。1970年のタバコ広告問題が囚人のジレンマであるとすれば、広告禁止という新しい規制によって、タバコ会社にとっての利得とインセンティブは変化した。ゲームが変わったのだ。もはや「広告を出す」ことは支配戦略にならない。むしろ、各社が法を破って広告を出しつづければ、それは最悪の帰結を招くと考えられる。各社とも「出さない」ほうが好ましい帰結になるというわけだ。しかも、広告を出すことによって生じるコストとリスクが消え、結果的に各社とも利益が増える。実際、まさにこのとおりの展開になった。
  • タバコ広告禁止の経緯は、社会科学者がイベント·スタディとして注目するユニークな事例である(イベント·スタディとは、企業活動に関する何らかの情報の発表が、その企業の市場価値にどのような影響を与えるか分析·研究すること)。タバコ業界が投じた広告費と、業界が得た利益の額を、禁止令施行前と施行直後で比べてみれば、明らかに禁止令が原因で生じた変化だけが見えてくる(より長期的なトレンドは多様な要因が組み合わさつている可能性がある)。経済学教授ジェームズ・L・ハミルトンが1972年に発表した論文「タバコ需要について広告、健康への不安、タバコ広告禁止」によれば、1970年と比べて1971年は「広告費が20-30 %減」。そして「1971年上半期の業界収益は前年同期比で30 %増」だった。
  • 免責を確保したうえに、収益が30 %も伸びたのだ。まさに一挙両得となった理由は、タバコ業界がタバコ広告をめぐる真のゲームを、規制当局よりもよく理解していたからだった。FCCの禁煙推進派は、タバコ広告が人々に喫煙を始めさせていると想定していた。そうでなければ、大手タバコ会社が巨額を投じて毎年広告を打つ理由はないだろう、と。しかし、「ビッグ·タバコ」というのは総称だ。そこには熾烈に戦う個々のタバコ会社がいる。彼らにしてみれば、お互いから既存の喫煙者を奪いあうのが広告の第一目的であって、新たに喫煙を始めさせるという狙いは二の次だった。
  • 規制当局が当初のタバコ会社同士のゲームを真に理解していたら、その囚人のジレンマに彼らを縛りながら業界全体を弱体化させていくことができたはずだ。実際のところ、広告禁止令が出るまで、タバコ業界は自分 たちのビジネスを殺す禁煙キャンペーンを金銭的な面で完全にーしかも「自主的」にー支える格好になっていた。

 

  • 経済学も、人間が非最適行動をするという現実をかねて認め、それを意思決定モデルの一部として取り入れている。政治学者ハーバード·サイモンは、「限定合理性」に関する長期的な研究(その始まりは1940, 50年代にさかのぼる)を評価され、1978年にノーベル経済学賞を受賞した。サイモンの経済学的考察の基盤となっていたのは、人間は直面する選択に対してたいてい限定的な情報しかもたない、という見解だ。そして、その限定性ゆえに、発見的な問題解決法(ヒューリスティクス)、すなわち経験則によって「それで事足りる(グッド·イナフ)」の結果を得ていく傾向がある、という観察である。
  • では、何が「グッド·イナフ」か判断するにはどうしたらいいか。方法の1つは実験していくことだ。経済学では、ここで言う実験を「探索(サーチ)」と呼ぶ。探索理論(サーチ理論)は、もっとも重要な経済理論の一分野だ。
  • エドワード・コナード・・・配偶者をを見つける最高かつもっとも合理的な方法を説明している。
  • 「測定(calibration)」の時間をしばらくとること。可能な限り多くの相手とデートをして、結婚市場はどんなものであるか感覚をつかむ。それから選択フェーズに入る。このフェーズの目的は永続的な伴侶を選ぶことだ。測定フェーズで出会ったなかで最高の女性よりも、さらに相性のよい女性に最初にめぐりあったら、その女性が結婚すべき相手だ。

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ダイヤモンドは永遠の輝き

  • デビアスはビジネス競争の一般的な法則には従わない。同社は長らく、その理念のもとで経営を行ってきたのである。オッペンハイマーは、同じく1999年の基調講演で、こうも述べている。
  • 私が会長を務めるデビアスは、世界でもっとも有名で、もっとも長く経営が続いている独占事業である、と喜んで自称したい。シャーマン氏の戒律を破る(シャーマン法、つまり反トラスト法に違反するという意味)ことこそ、我々の方針の目指すところだ。ダイヤモンド市場を制圧し、供給を管理し、価格を制御し、ビジネスのパートナー企業と共同行為を行うつもりはございません、などとうそぶくつもりはない。・・・デビアスの試みはデビアスと、ダイヤモンド生産者のすべてに利するだけでなく、消費者の利益にもなると信じて疑わない。
  • デビアスの選択が「消費者のため」というのは疑わしく聞こえるかもしれない。だが実際には、ダイヤモンド市場に完璧な自由競争が存在しないほうが、消費者にとっては確かに得なのだオッペンハイマーの主張を今一度思い出してみよう。「投資をする(ダイヤモンドの婚約指輪を買う人は(デビアスカルテルを)支持している」という彼の言葉に偽りはない。ダイヤモンドの婚約指輪を所有する人にとっては、それができる限り価値をもったままであってほしい。ダイヤモンドに限らず、あらゆる耐久財にも当てはまることだ。不動産もしかり。住宅を所有している人は、当然ながら、住宅価格を高く維持する方針を支持するに決まっている。
  • 興味深いのは、オッペンハイマーの言葉の奥に暗黙的にこめられた主張のほうだ。デビアスカルテルによってすべての消費者が得をする、という表現には、
    まだダイヤモンドの婚約指輪を買っていない消費者も含まれている。結婚を控えた人たちは、本質的に約束を買うものだからだ。ダイヤモンドの値段は絶対に下がらない、ゆえに彼らの指輪は「永遠に」その象徴的価値を保つ、という約束を買っている。自由市場はそんな約束を守れないが、デビアスは守った。1世紀以上も。
  • しかし、デビアスが約束を守りつづける日々は終わりを迎えた。近年のダイヤモンド市場は、分裂と細分化を始めているからだ。1999年には高級ジュエリー·ブランドのティファニーが、カナダのダイヤモンド鉱山の株式買収を発表。将来的にはデビアスからのダイヤモンド調達を行わない旨を宣言した。2003年には、カナダの採掘グループ「エイバー・ダイヤモンド・コーポレーション」が高級宝石商ハリー・ウィンストンを買収し、アメリカ、日本、スイスに店舗を構えている。つまりは採掘業者が販売業者と手を組み、デビアスによる独占取引の必然性を回避するようになったのだ。
  • デビアス独占体制は崩壊した。もはや、高いコストをかけてまで価格を円滑かつ安定的に維持するインセンティブをもったプレイヤーはいなくなったという意味だ。2001年の『フォーチュン』誌の記事には、デビアス取締役のガイ・レイマリーの発言が掲載されている。
  • 「世界を覆い尽くしてすべてのダイヤモンドを買い押さえようという気はない。売値に近い、もしくは超える価格でダイヤモンドを買っても、我が社にとって何の得があるというのか。馬鹿げている。市場の60%を押さえる今の状態で完全に満足している」
  • 「世界を覆い尽くす」。そして、高い代償を払ってでも、すべてのダイヤモンドを確保する。それはこれまでのデビアスの事業戦略の原則だった。しかし競争のすべてを吸収するには多大なコストがかかる。そのコストを呑む意欲がなければ、独占的な権力、あるいは独占的な利益の維持などかなわない。デビアスが世界のダイヤモンド供給を一手に押さえようとは思わない、と認めたレイマリー氏の発言は、事実上、デビアスが独占体制の維持をあきらめたということを意味している。実際に2000年から2005年にかけて、世界のダイヤモンド供給におけるデビアスのシェアは65 %から45 %にまで縮小した。この市場に起きた潮目の変化を裏づける数字である。
  • デビアスがかつてのデビアスでなくなったのだとすれば、ダイヤモンドの価格は遠からず、かなり変動的になっていく可能性がある。自由競争が主流となっている一般的なコモディティと同じだ。ダイヤモンドの価格が変動すれば、上昇であれ下落であれ、そのたびごとに販売業者にとっては痛手になるーダイヤモンドの価値は「永久不滅」であるという消費者の信頼が損なわれ、永遠の愛のシンボルとしてふさわしいというステイタスを失っていくからだ。
  • こうした変化の波は一夜にして実感するものではない。数十年かかるかもしれないが、いずれダイヤモンドの婚約指輪が完全に地に堕ちるときが来たならば、それは雪崩のように一気に進むと考えられる。

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  • メキシカン・スタンドオフは、「相互確証破壊(MAD)」と言われるゲームの一例である。MADゲームの最大の特徴は、どちらかが激しい先制攻撃をして、相手を苦しめても、そのあとで相手が破壊的な反撃をする力をもっていることだ。このMADゲームのもっとも有名な例が、冷戦中のアメリカとソ連の関係だった。

 

  • (p154)たとえばコカインの売人のほうが、自分の評判を重視しているとしよう。一度の取引で長年の評判をつぶしたくはないので、つねに約束を守っている。つまり売人は信頼性のあるプレイヤーだ。この売人が「先にカネを払ってくれ。そしたらヤクを渡す」と約束してみせる(コミットする)。
  • 買い手はその約束について思案する。代金を払ったとしても、売人が約束を守らなければ、薬物は手に入らない。だが自分が代金を払わなければ、薬物は間違いなく手に入らない。「代金を払わない+薬物が手に入る」という帰結は、この場合成立しえない。売人の実績を考えると、評判を重視していることがわかるので、今回の約束も守ると信頼できる。

 

  • (p160)カーディーラーと自動車メーカーは、複数の理由から、中古車認証という第三者的なシステムを挟むことによって得をしている。第1の理由は、中古車購入者が買った車に満足すれば、同じメーカーで新車を買う可能性が高いこと。
    シカゴ自動車貿易協会(CATA)の元会長、ジェリー・シゼックがカーズ・ドットコムの記事で語っているとおりだ。
  • 「認定中古車を提供する理由の1つは、それが自動車メーカーにとって、購入者を囲い込む手段になるからだ。中古車で興味を引き、満足させることができたなら、その購入者は新車購入の際に同じブランドを選ぶと考えられる。その後さらに新車を購入する際もリピーターになると期待できる」
  • 第2の理由として、品質認定を受けることで、その中古車自体が高く売れるという利点がある。差額が800ドルから1300ドルほどもあれば、たいていは認定検査費用を相殺できる。ディーラーにとっては、ふつうに中古車を売るより認定中古車のほうが儲けが出るというわけだ。
  • しかし、だとすれば、買い手個人が自主的にメカニックを雇って検査をすればいいのではないか。中古車販売業者ADESAの副社長、トム・コントスが、カーズ・ドットコムで説明している。
  • 自分で入念に車を検査するか、メカニックを雇って検査させ、さらに延長保証サービスも加える。そこまでできるなら、擬似的な認定中古車となるだろう。・・・自分で検査する能力と時間がある人にとってはそのほうがいいだろうし、節約にもなる。

 

これは実に稀有な本だ。初めてゲーム理論を知る読者を専門用語なしで導きつつ、同時に、最高の戦略が往々にしてゲームチェンジを伴う様子を斬新な視点から描き出している。あらゆる場面で推薦したい1冊。

 ——アルヴィン・ロス 経済学者 2012年ノーベル経済学賞受賞

ビジネスの戦略を語るなら、多様な競争の状況にあてはめられる総括的な考察を提示しつつ、その考察を深く掘り下げて実用的な戦略形成を披露する具体例も提示することが望ましい。本書には、まさに分析と実践、その両方がふんだんに詰まっている。

 ——R・プレストン・マカフィー 元グーグル・チーフエコノミスト