ハーバード×脳科学でわかった究極の思考法

ハーバード×脳科学でわかった究極の思考法

ハーバード×脳科学でわかった究極の思考法

 
  • アインシュタインピカソは互いに会ったこともなかったが、ふたりとも数学者、物理学者、哲学者のアンリ・ポアンカレの影響を強く受け、アインシュタインは自身の研究グループ、ピカソは前衛的な文学者仲間たちとポアンカレの理論について議論を交わした。アインシュタインポアンカレの見事な数学理論や科学理論を発展させ、独自の相対性理論を思いついた。ピカソも、すべてのものを同時に見ることができるポアンカレの4次元のアイデアについて聞くと、刺激を受けた。彼の絵画作品『アヴィニョンの娘たち』は、ひとつの顔をふたつの視点(正面と横)から同時に描いている。まさに4次元だ!
  • 創造力を発揮しようとするとき、一般的に脳は未知のものへの不安、不確実性に対する抵抗、問題の規模に対する恐怖、問題自体の難しさという4つの要素と戦う。この4つの要素は目に見えることもあれば見えないことも、意識されることもあればされないこともある。

「しくじり体験」をオープンにすれば学びはどんどん豊かになる

  • 「ファックアップ・ナイト」は、2012年にメキシコで始まったイベントだ。
    ある晩、友人どうしが数人集まって、テキーラを飲みながらお互いのビジネスについて語りあった。それまで、彼らは自分たちの失敗についてじっくりと話しあったことがなかったが、話しあってみると意外と面白くてタメになると気づいた。そこで彼らは、失敗についてみんなで議論し、他者の成功ではなく失敗から教訓を学ぶ月例のイベントを開始。毎回3,4人の起業家がひとり7分、画像10枚以内でみずからの失敗談を手短に語っていく。
  • 失敗談がこれほどオープンに語られるばかりか、楽しく語られるというのは、ふつうでは考えにくい。なんといっても失敗を認めるのは難しいし、恥ずかしい。それも、失敗は珍しくない。・・・新興企業の30-95パーセントは失敗する。
  • 失敗したのは自分ひとりではないと知れば安心するし、他者の失敗から学ぶことはタメになる。これこそ「動的学習」の意外な特長のひとつだ。ありもしない正攻法に従うのではなく、ミスを認め、話しあい、教訓を学び取り、間違いを修正していく。世の中には成功マニュアルなるものがあふれているが、どれも一握りの人々にしか通用しないものばかりだ。さらには、正しい、学習方法を説く専門家までいるが、人間の脳はひとつとして同じではない。「ファックアップ·ナイト」はそうした専門家のウソを暴くのに一役買っている。
  • 失敗はすべてを放り出してあきらめよというサインではなく、学習のチャンスであるというのが昨今の考え方だ。早めに失敗し、失敗を糧にし、完璧を目指すよりもまず行動することが大事だと理解している限り、心の停滞を避け、失敗の恐怖に打ち克つことができる。

 

  • 私たちは固定的な成績(Aプラス、Bマイナス、可/不可など)、職業上のアイデンティティの狭い定義(「私は消費者製品のマーケティング担当責任者」)、そして何より過剰な専門化(「私は健康・美容系の消費者製品のマーケティング担当責任者」)に別れを告げるべきだ。そして、教室のなかだけでなく毎日が学習だという考え方を受け入れるべきだ。あなた自身、他者、物事への理解を深めようとしているときは、常に学習していることを忘れてはならない。
  • 従来の学習スタイルを、特定の情報だけを狙って突き刺すフォークと考えてみよう。フォークの機能は「集中」型、つまり明確で直線的だ。もちろん食卓には欠かせない。しかし、動的学習ではスプーンも使う。スプーンがなければ、お椀の底に残ったうま味のある汁や細かい具はすくえない。どちらもはっきりとした形はないが料理にとっては重要な成分だ。
  • 直接フォークで突き刺せないものはすべてスプーン(非集中)の仕事だ。たとえば、問題をクリエイティブに解決したり(水平思考)、関連づけを通じて類推を行ったり、未来を予測したり、軌道修正をしたりするのが非集中の得意分野だ。そう考えると、DMN(デフォルト・モード・ネットワーク)が脳内の代謝エネルギーを特に多く消費するのも不思議ではない。
  • あるやり方が普及する前には、必ずそのやり方を発明した人がいる。あなたがもういちど人生に呼び戻さなければならないのは、この発明家というペルソナ、
    つまり何かを最初にやってみる人物だ。「コンピューター・プログラミング」が学校の科目になるずっと前、初めてプログラミングを行った人物や、ボイスレッスンが発明される前に歌を歌っていた歌手を想像してほしい。彼らの才能は学校で教わる知識によってつくられたわけではない。そもそもそんな知自体がなかったのだから。彼らに必要だったのは自分の頭で考えることであり、教育で失われてしまうのは私たちのそういう部分だ。
  • 私たちは生まれつき創意工夫で世界を変える力を持っているが、学校で教わる知識のせいで、いつの間にかその創意工夫の能力を失ってしまう。この「知識」が私たちの思考を乗っ取り、何かを理解しようとするときの唯一の道具になる。もちろん知識は役に立つものだが、創意工夫がなければその価値は一気に薄れてしまう。教育は、創意工夫を抑えつけるのではなく解き放ったときにこそ、最高の力を発揮するのだ。
  • ワックスマンはかつてこう述べたことがある。「音楽と料理には深い関係がある。どちらにもコツコツとした練習が必要だ。ひたすら叩いてみたり、切ってみたり、さばいてみたりしないと、本物にはたどり着けない」この2種類の芸術を楽しむ彼の心の根底には「いじくり回し」があった。
  • 2010年、グーグルの共同創設者のひとりのセルゲイ・ブリンは、「私たちはグーグルを右脳、左脳に続く第三の脳半球にしたい」と述べた。・・・彼は脳に大量の情報を格納するストレスを和らげるためにグーグルを活用してほしいと言いたかったわけだ。グーグルのサイトに情報の記憶を肩代わりさせることで、私たち自身の思考装置(つまり脳)のスペースを他の物事のために空けてはどうかと提案したのだ。つまり、新たに空いた脳のスペースを使って、脳のバネをもっと有効活用したり、あなたの心の重心や創意工夫の声に耳を傾けたりしてみてはどうだろう。ぜひあなた自身と機械との関係を積極的に形づくってみてほしい。自動化できる部分はないか?機械とチームがつくれないか?テクノロジーや機械に任せられる物事はないか?過度に依存しているテクノロジーはないか?機械を使って時間をもっと効率的に管理できないか?

「感情的なふてくされ」を脱し、自分自身に正直でありつづける

  • 可能性マインドセットを持つうえで重要な要素のひとつは、自分自身に正直になることだ。もちろんがんばりつづけることは大切だが、がんばっていればいつか報われると信じて、がんばること自体を目的にしてしまうのは、偽物の楽観主義と同じくらい無意味だ。
  • 家でも職場でも、目標をアピールするのではなく本音を語れば、まわりの人々は本当のあなたに寄り添ってくれる。このちがいは微妙だが重要だ。あなたが説得しようとしている相手(配偶者や職場の同僚)を意識すれば、相手がいちばん興味を持ってくれそうな形であなたのメッセージを伝えることはできるだろう。しかし、そもそもそれが本心から出た正真正銘のメッセージでなければ、あなたが行き着く先はせいぜいあなたにそぐわない場所、あなたが望まない場所にしかならないだろう。
  • とりわけ不満を抱えていると、誰か別の人の言葉に頼りたくなる。ひどくすれば、「私にはもっとすばらしい人生がお似合いなはず」「いつまでもこんな状況に我慢する必要なんてない」というお決まりの自己暗示にすがろう、としてしまう。しかし、こうした言葉はむしろ私たちの力を奪い取る。私はこれを「感情的なふてくされ」と呼んでいる。真の自尊心から出る言葉ではない。
  • 2010年、心理学者のチャールズ・S・カーヴァーらは、マイアミ大学の学生たち
    に、自尊心、挫折、自制心に関するいくつかのアンケートに答えてもらった。この調査では、2種類の自尊心が測定された。正真正銘の達成感や何かに対する心からの欲求を抱く「真の自尊心」と、傲慢さや自信過剰から生じる「思い上がりの自尊心」のふたつだ
  • 真の自尊心が強い被験者ほど、目標を達成したときにエネルギーや幸福を感じられると回答した。また、彼らのほうが自分自身の注意を制鎯する能力や自制心が高いことも判明した。一方、思い上がりの自尊心が強い人々は、怒りっぽく直情的だった。

「外的報酬」と「内的報酬」を使い分ける

  • 望むものが手に入ると、脳は報酬を感じ、報酬系の活動が高まる。しかし、この報酬系にはふたつの部分がある。自分自身の内側から生じる報酬、つまり「内的報酬」を感じる部分と、他者から得られる報酬、つまり「外的報酬」を感じる部分だ。真の自尊心を持つ人は内的報酬を得られる。外的な基準や他者の褒め言葉だけに着目するのをやめて、あなた自身の達成感や喜びを道しるべにできるようになる。外的報酬(褒め言葉、お金、昇進、プレゼント)への欲求は、脳の内的報酬系を傷つける可能性もある。内的報酬系の活動が低下し、外的報酬によって得られる快感は長続きしなくなる。
  • 目標に向けて一歩ずつ前進していく可能性マインドセットでは、大きな不確実性のもとで目の前の道を歩みつづける手段が必要になる。
  • そんなとき、脳のコンパス代わりとなるのが内的報酬系だ。内的報酬系は現状に満足し、自分自身に正直でありつづけるのに必要となる。だが、人間はずっと不確実な状況のなかにとどまりつづけることなどできない。昔からの行動習慣や心のクセへと舞い戻る瞬間は必ずやってくる。そんなときに大きな役割を果たすのが外的報酬だ。実際、褒め言葉や昇給を得るのはいい気分だし、メリットもある。しかし、いったん状況が不確実になると、褒め言葉や昇給は力を失い、内発的な動機づけをオフにしてしまう場合もある。よって、外的報酬に着目し、内的報酬を指針にするのがいいだろう。外的報酬と内的報酬を行ったり来たりするのは、認知のリズムの好例だ。

 

  • カン医師のような偉大な頭脳の持ち主は、当たり前に見えるものさえ疑い、みずからの直感をあれこれといじくり回してみる。必然とか当たり前という言葉を口にする人は、それを変えようとすることが面倒なだけなのかもしれない。偉大な人々はそれをわかっていて、たびたび立ち止まり、脳の集中を解き、物事を別の角度から見ようとする。

SEO

  • 検索エンジン最適化(Search Engine Optimization、SEO)」とは、ページランクでなるべく上位に来るようウェブサイトのコンテンツを構成する方法のひとつだ。SEOに力を入れれば入れるほど、関連する単語の検索で上位に表示されるので、多くの人々にサイトを訪問してもらえる(アマゾンがこれほど成功したのもSEOのおかげだろう)。
  • しかし、もうひとつ別の種類のS E Oとして、自尊心を高める「自尊心最適化(Self-Esteem Optimization、SEO)」がある。現状を維持することで自尊心を守る「自尊心維持(Self-Esteem Maintenance、SEM)」とは対照的に、SEOはあなたの人生を次の段階へと押し上げる。
  • たとえば、ジェフ・ベゾスがウォール·ストリートの仕事を辞めたとき、彼の自尊心は揺らいだだろう。彼が自尊心を守ろう、としていたら、自尊心維持のために道を引き返したかもしれない。代わりに、彼は自尊心の最適化を目指した。自分自身の欲求を認め、その欲求どおりに生きることを選んだのだ。自尊心をもっともうまく管理するには、SEMからSEOへとギアを切り替える必要がある
  • 時には、自分がSEMにはまりこんでいることに気づかないケースもある。たとえば、人生をシンプルにすれば大きな肩の荷が下り、人生を最適化している気分になるだろうが、実際にはハードルを下げてストレスをあまり感じなくてすむようにしているだけなのかもしれない。これは、セルフ・ハンディキャッピングにほかならない。だから、人生をシンプルにするかどうかで迷ったときは、むしろ「人生をもう一段階レベルアップできないだろうか?」と自問するべきだ。これこそ、SEOに必要な問いかけなのだ。ただし、脳の反発を覚悟しておかなければならない。
  • 私たちの業界では、多様な経験をしている人が少ない。だから、多くの人は結びつけるべき点を十分に持ちあわせておらず、幅広い視野に欠けた非常に直線的な問題の解決策しか思いつくことができない。人間的な経験に対する理解が幅広い人ほど、より優れたデザインをすることができるのだ。スティーブ・ジョブズ