悪いヤツほど出世する

2012年ライトマネジメント仕事満足度調査・・・ 全世界で約3万人の被用者を調査した結果、国によってばらつきはあるが、28~56%が今の仕事を辞めたいと答えたという。・・・ギャラップ2012年調査・・・アメリカでは仕事に意欲的な被用者は全体の30%にすぎないという。それどころか、20%は仕事を怠け、職場の雰囲気を悪くし、会社の評判を落としている。また142カ国で行った調査によれば、アメリカ以外の状況はもっと悪い。仕事に意欲的な労働者はわずか13%で、24%が怠けている。・・・経済のあり方はがらりと変わったにも関わらず、やる気のある社員の比率はほとんど変わっていないという。・・・部下が上司に不満をいだいていることだ。・・・2012年夏にパレード誌・・・アメリカ企業の被用者の35%が、直属の上司の解雇と引き換えなら昇給を諦めてもいいと答えている。

ビル・ジェントリー「リーダーやマネジャーの二人に一人は現時点での職務を十分に果たせていない。すなわち無能力か、不適任か、完全な失敗である」・・・別の報告も「組織の種類を問わず、管理者が無能力である比率は極めて高い」・・・2014年の人材開発調査・・・回答企業の66%がリーダー育成は不十分であり、しかもこの傾向は年々悪化していると認めた。

リーダーの行動と職場の結果の間には強い因果関係があるとの前提に立っているにもかかわらず、実際にリーダーは教わったことを実行しているのか、ほとんど実態調査は行われていないことだ。・・・リーダーシップ教育産業は怠慢・・・大量のプログラムやセミナーを提供して助言をするだけで、実践されたかどうか、事態が改善されたかどうか、改善されていないとすればそれはなぜか、といったことを突き止める努力もしていない。

リーダーをめぐる状況が改善されないもう一つの重大な理由は、リーダーシップを教えるのに知識も経験も資格も必要ないことだ。つまりリーダーシップ教育産業には参入障壁が全くない。・・・現在リーダー向けにコンサルティングサービスを提供している人の多くは、一度もリーダーの地位に就いたことがないか、就いたことがあっても不評または失敗した人間だという。・・・リーダーシップ教育産業に参入する連中の多くは、知識も経験もない上に、どうも興味もないようにみえる。付け焼き刃でも本を読むとか勉強をするいう気もないらしい。・・・ある会議でリーダーシップに関する講師を探していた企画担当者は、適任者を見つけたと嬉しそうに話してくれた。だが実は彼が講師を選んだ理由は、なんとイケメンだったことらしい。

<日本の経済学教育も似たような状況にある。リーダーシップと違って、経済学にはちゃんと博士号があるのだが・・・。

リーダーシップに限らず、何事もクオリティを高める原則の一つは、点検し計測することである。・・・リーダーシップ関連プログラムの評価方法として最も多用されているのは、参加者による満足度評価・・・最近行われた分析では、学生による評価と学習効果との間には統計的に有意な相関性は見られない。・・・学習効果の計測が客観的であるほど、学生による評価との相関性は薄れる。・・・学生による教員ランキングと学習効果の間には有意な相関性はない。・・・ウォートン・スクールのスコット・アームストロング「学習というものは変化を要求する。そしてこれは、辛いことだ。重要な振る舞いや態度の変化に関わる場合には、なおのことである。」・・・学生による評価はマイナス面が多い。学生が授業や教員を評価するとなれば、教員の方は多少手加減して評価を高めようとする。すると教育の効果は薄れてしまう。アームストロングが「教育評価は学生に不利益をもたらす」と断言する理由の一つは、ここにある。・・・間違ったものを計測するのは、何も計測しないより悪いことが多い。なぜなら、計測したものに囚われるようになるからだ。

多くの進化心理学の研究で明らかにされているように、自己欺瞞には利点がある。・・・自己欺瞞は、進化にとって有利に働く。自分自身を騙すことができれば、自身を持って容易に他の個体をだませるからだ。・・・トリヴァースとヒッペル「人間の近くにバイアスがかかっているという事実は、様々な方法で自己欺瞞が行われており、場合によって真実の無意識の近くさえできなくなる可能性があることを示唆する。」と指摘する。となればリーダーが語るストーリーは、もっと言えば誰が語っても、当人の自覚なしに事実と異なる可能性がある、ということだ。・・・こうした認知バイアスの存在が学問的にも確かめられているにも関わらず、私たちはリーダーシップ神話を受け入れやすい。・・・「世の中はうまく出来ている」と考えたがる私達の傾向・・・「世界は公正であり、善は報われ悪は罰される」・・・「公正世界仮説」・・・この誤謬に囚われると、「成功した人には成功するだけの理由があるのだ」ということになる。だからサクセスストーリーは無条件に支持される。

ハーバード・ビジネス・スクールのエミー・エドモンソンは、「医療過誤のニュースを多く耳にする割には、失敗から体系的に学習するシステムを整えている医療機関はあまりに少ない」・・・経営学の論文「自然界においても実業界においても、失敗は最終的な成功につながると言ってよい。生態系では、老化した生命体が死ぬことによって、活発な成長がもたらされる。ビジネスの世界では、非効率な活動を排除することが富の創造につながる」と指摘されている。

レアケースからの学習の有効性には疑問符・・・卓越したリーダーのスキルとパフォーマンスの相関性は、多くの場合に極めて弱いという。これは、卓越したリーダーの業績は、幸運や偶発的な要素に左右される部分が大きいからだ。

人々の行動を変えるには様々な方法があるが、感動は有効な手段ではない。・・・長続きしない。高揚感はあっという間にしぼんでしまう。・・・プライミング効果・・・あらかじめ果物の話をしてから連想ゲームをすると赤からイチゴやリンゴを連想しやすいというふうに、先行する刺激(プライム)が後続する刺激に対する反応に影響をあたえることを指す。・・・一過性の感動はプライムにはならない。プライミング効果を踏まえると、刺激となる情報を目に見える形で与えることが、自己変革や自己成長に効果的だと考えられる。・・・倫理規定に署名させることはよからぬ行為を減らす効果・・・ウォーキングをして体重を減らしたい人は、歩数計を買って毎日歩いた距離を計測することだ・・・行動を変えるためのこうした方法の大半は、「動かぬ証拠を突きつける」という単純かつ強力な原理に基づいている。だから他人の行動を変えたいなら、計測可能な目標を設定し、目標を約束させ、毎日の行動を計測して頻繁にフィードバックし、必要に応じてインセンティブを設けることが効果的である。

社会心理学者のベノワ・モナンとデール・ミラーがモラル・ライセンシングという興味深い現象・・・一度とても良いことをすると、それどころか、良いことをしようと思っただけでも、「自分は良いことをしたのだから、次はちょっとぐらい悪いことをしてもいいだろう」・・・という気持ちになることを指す。・・・倫理的正当化やメンタルアカウンティングの帳尻合わせ・・・最初の機会に自分が差別をしない公平な人間であることを示した人は、次の機会には差別的な意見を表明しがちだという。・・・このような心理がリーダーシップ教育産業にとって意味するものは明白である。たくさんの公演を聞き、研修を受けるうちには、自分のリーダーシップを褒められるなどして、成果が上がったと感じるだろう。そして自分は多くを学んだ、良きリーダーに近づいたと信じ込むと、その後のリーダーとしての自分の振る舞いに十分な注意を払わなくなってしまうのである。このことは、言行不一致が起きる原因を説明するだけでなく、自分は優れたリーダーだと感じること自体が言行不一致を招くことを示している。・・・ミッション・ステートメント問題・・・多くの企業を調査したところ、ミッション・ステートメントを決定し、オフィスの壁に張り出したり、カードに印刷して配ったりすると、もうそれが実行されているように思い込んでしまうことが判明した。・・・何かを言うことと、それをすることとは別物である。リーダーシップ教育産業で著名な講師やコンサルタントたちも同じ錯覚に陥っている。・・・意地悪く言えば、行動が感心できない人ほど熱く語る。ちょうど公害企業が環境維持に取り組む姿勢をさかんに宣伝するように。

 人生にはトレードオフがつきものである。リーダーシップ教育産業もそうだ。彼らは神話やサクセスストーリーや英雄譚を提供することにかけてはすぐれている。だが職場をより良いところにしたり、リーダーの寿命を伸ばしたり、と言ったことには、少なくともこれまでのところさしたる成果を上げていない。・・・教育よりも感動を、有用なデータよりも高揚感を求めるお客にそれを与えるのは、当然の成り行きとも言える。

 卓越したリーダーと他のリーダを分ける最大の特徴は、謙虚さだという。謙虚な人間は信頼され、部下は一丸となって目標達成に取り組むというのである。・・・スポットライトを浴びたがる目立ちたがり屋ではない。謙虚な人間は自分の能力の限界をわきまえているし、自分の弱点も承知している。どれほど優秀な人間も完全ではないのだから、大勢の知恵を募るほうが一人の頭脳を上回ると考えている。こうした考えに基づいて多くの社員を意思決定に参加させ、謙虚に意見を聞き、フィードバックを求める。・・・しつこく自己宣伝をする人は、他人からの評価が芳しくないことがわかっている。そのイップで、自分の能力や実績を控えめに語る人は、好感度が高い。別の調査では、自慢の多い人間ほど能力が低いという笑えない結果・・・一番有能なのは、ホドホドに謙虚な人間・・・ジム・コリンズ・・・自己顕示欲が強く、のべつメディアに露出して熱心に自己宣伝をするような輩は、その貴重な時間を無駄遣いしている。企業の戦略立案に投じるべき時間が失われてしまうというわけだ。

謙虚であれという教えには重大な問題点がある。第一に、謙虚な人は少ないし、事リーダーに関する限り極めて少ない。・・・それはすでに高い地位に就いているリーダーが対象になっている・・・発展途上のリーダーにとって重要な資質・・・出世の階段を登るときに謙虚さが役に立つとは思えない。・・・慣例を打ち破り、既存製品や産業やビジネスモデルのあり方を変えるような先駆的なイノベーションをもたらす人間には、制約や既成概念に対する軽蔑、逆境や拒絶反応に立ち向かう意志の強さが欠かせないと指摘する。そしてこれらは、自己中心的なナルシストに特徴的な資質・・・確証バイアス(confirmation bias)が効力を発揮する。確証バイアスとは、自分の先入観や価値観や期待と一致する証拠のみを探す傾向・・・要するに人間には、見たいものだけを見て聞きたいものだけを聞く傾向があるということだ。・・・単純接触効果・・・人間は、見慣れているもの、よく知っているもの、記憶に残るものを選ぶものであり、これが広告効果を高めるイロハのイである。・・・自分を売り込むには、謙虚さをかなぐり捨てて、自分の能力や過去の業績や未来の計画に人々を注目させ、自分はその地位にもその報酬にも相応しい人間だと思わせなければならない。・・・カリフォルニア大学バークレー校のキャメロン・アンダーソンらが行った調査では、自信があるどころか自信過剰な人物でさえ、高い社会的地位、尊敬、影響力を勝ち得ていることが判明した。・・・こうしたわけだか、自己卑下や控えめな自己表現は、すでに地位を確立し、立派な評判を獲得している人にとっては魅力になっても、まだそこまで到達していない人にとっては、不安や無能力の表れと受け取られかねない。・・・187のメタ分析・・・リーダーの有効性と結び付けられる資質は7つある・・・内4つは、エネルギー支配力、自信、カリスマ性である。・・・ナルシシズムがリーダーの選択と密接な関係にあることがうかがえる。研究者の多くは、一般の人々と同じく自己顕示欲の強いナルシスト・タイプが大嫌いであることを考え合わせると、こうした研究結果はなおのこと興味深い。・・・ナルシスト型の人間は外交的で自信に満ちており、潜在的なリーダーシップ能力を備えているとみなされるため、リーダーに選びやすい。・・・ナルシスト型の人は自分を目立たせ、さらには際立たせる行動をとるうえ、自分にはリーダーの資格十分だと自惚れ、自分に対する期待値が高い。そういう人間は自分の主張を強く押し出し、自分の利益になるように行動するので、集団をやすやすと支配するようになる。・・・ある調査によると、ナルシシズムは実は一時的に人に好かれる可能性が高い・・・ナルシストが発散する華やかさや外向性に周囲の人は幻惑されるからだ。・・・ナルシシズムがリーダーの地位獲得に役立つ理由として、ナルシスト的性格の特徴と、人々が優れたリーダーの典型的な属性(権威、自信、支配力、自尊心など)と考えるものに共通点や重なり合う部分が多いことを挙げている。・・・ナルシスト型人間はリーダーに選ばれやすい。そもそもこのタイプの人は、リーダーの地位を求めている。

女性や、アジア系アメリカ人などのマイノリティは、典型的な白人男性に比べると、概ね謙虚で控えめであり、自己中心的でない・・・男女の役割分担や文化的期待・・・女性は男性と比べ、いわゆる印象マネジメントにあまり注意を払わないことで損をしている・・・アメリカの企業文化では、自己主張や個人主義的な考え方が重んじられる。これは、アジアの電灯とは真っ向から対立する価値観だ・・・多くのアジア文化では慎み深く控えめであることが良しとされているが、これは現代の職場環境には全くそぐわない・・・リーダーシップ本などでどれほど謙虚さが重視されようと、現実の世界でキャリアアップに役立つのは自己宣伝や自己主張

謙虚なリーダーというものはめったにいない。・・・ナルシスト型の性格や自己宣伝、自己主張と言った行動は、リーダーの選抜や面接評価などで一貫して有利に働く・・・ナルシスト型のCEOは他の経営陣よりも報酬が高く、在任期間も長い。これはおそらく、ライバルを排除する意思があり、そのすべも心得ていることが一因だろう。・・・ビジョンやアイデアを売り込むのが巧いので、他人、とりわけ社外の他人からの支援を取り付けることに長けている。また、人々の注目を集めやすく、このタイプのリーダーがいるだけで物事が進むという面もある。

謙虚なリーダーを選びたいと考えるなら、それはむずかしくない。NPIテストはナルシスト度を計測する信頼の置ける方法・・・選抜時にこのテストを実施すればいい。・・・しかし多くの企業は、そうした選抜方式は採用していない。押し出しが良く、雄弁で、自己宣伝の巧いナルシスト型の人物を好んで採用している。これでは、望んでいることと正反対の結果になるのも当然と言えよう。

自分の気持ちに忠実に振る舞うことは、むしろリーダーが最もやってはならないことの一つである。リーダーは、その状況で求められる通りに、周囲の人が期待する通りに、振る舞わなければならない。

 あなたの実績や過去の貢献はまことにすばらしい。しかし年齢やキャリアを考えれば、あなたはすでに過去の人であって、未来の人ではない。どんな組織もそうだが、我々も未来の為に投資しなければならない。だから、限られた予算をそのために使う必要があるのだ。

日本の組織は・・・・・

自分は大いに会社に貢献した。だから会社は自分に感謝してしかるべきだと思っている人は、考えを改めたほうがよい。昇給をケチるのも、レイオフを繰り返すのも、あれこれt経費を節減するのも、企業が、いや企業だけでなく政府機関も非営利組織も、生き残ろいと将来の繁栄がかかっているからだ。つまり組織は自分の身を守り自己利益を追求している。

 自分の努力と勤勉は必ず認められ、評価され、報われると期待している人は、そろそろ自分で自分をだますのをやめなければならない。もし自分の功績と忠誠心に対して報酬や地位が約束されるという暗黙の契約が存在すると考えているなら、そういう暗黙の契約が存在すると考えているなら、そういう暗黙の契約は決して守られないと肝に銘じるべきだ。それどころか、雇用の約束すらおぼつかないのである。・・・回答者の55%が、採用面接やその後に会社がした暗黙の約束は守られなかったと答えている。・・・全米大学体育協会NCAA)・・・大学も企業と同じで、基調なリソースは、将来の成功に役立つ人間に使いたいのである。怪我をしてプレーできなくなった選手は、将来の役には立たないという冷徹な論理だ。・・・系統的なデータや大学、企業、プロスポーツなど様々な組織での事例を見れば、結論は明らかだ。組織の善意や寛容に期待するのは、端的に言って愚かなことである。

「持ちつ持たれつ」の原則は、他人から受けた親切や行為に対する道義的義務について述べたものである。・・・社会心理学者のロバート・チャルディーニ・・・雇用関係にそうした道義的異義務があるかどうかは、大いに疑問だ。なるほど、社員は会社のために熱心に働き、長い年月を会社の繁栄のために捧げるかもしれない。だが会社はそうした勤労と努力に対して報酬を払っている。となれば、会社としては社員に恩義を感じる謂れはなかろう。これはあくまで労働とお金の交換にすぎないことになる。

職場というのは計算高く、利益優先で、道義心とは無縁であり、さらに言えば通常の行動規範にさえ縛られない、ということである。要するに、あなたが将来役に立つともなされている間は、会社はあなたを厚遇する。だがこの先もうあまり役に立ちそうもないと判断した瞬間に、あなたの過去の貢献は無視されるのである。

社会では競争は一般に好ましいものとみなされているが、ここでもまた、企業の内部ではそうではない。そこでは互いに競争するよりも協力することを求められる。しかも、ここが重要だが、リーダーに協力することを求められるのである。より正確に言えば、リーダンーの利益を自主的に優先し、リーダーの命令にしたがうことを求められる。ッリーダーが部下の幸福を優先し、組織の繁栄のために尽くすのであれば、そのリーダーに協力することは大変結構だ。だが本書でさんざん見てきたように、リーダーは自分の利益を追求する。となれば、部下が同じことをせず、自分で自分の利益を守らないのは、全く理屈に合わない。

以下に優れたリーダーでも、人間である以上、完全ではない。だから、優れたリーダーに付き従うよう奨励するのは、欠陥のある人間を全面的に信頼するよう奨励することにほかならない。これでは、本来なら一人前の人間を、ある意味で幼児化させるようなものではないだろうか。

もしいま読者が、互いに助け合う職場環境と部下思いのリーダーに恵まれているなら、その貴重な瞬間を存分に謳歌してほしい。だが、どこもそうだと思ってはいけないし、現在の状況がずっと続くと期待すべきでもない。世界は往々にして公正ではないのであり、そうわきまえることだ。そして、自分の身は自分で守り、自分の利益は自分で確保する方が良い。他人もそうするなら、なおよい。しっかりと自分のことは自分で考え、リーダーシップ神話に頼るのをやめたら、あなたはもっとずっとうまくやれるはずだ。同時に、信頼に値しない人間を信頼して裏切られたり、失望したり、キャリアを台無しにしたりする危険性も大幅に減るはずである。

ジム・コリンズ・・・「最後には必ず勝つという確信を失ってはいけないが、自分が置かれている厳しい現実を直視する規律も失ってはいけない」・・・ストックデールの逆説・・・生還できなかった捕虜仲間は楽観主義者だった・・・楽観主義者は、現実を直視しようとしない。現実逃避をしたがるダチョウのように、砂の中に頭を突っ込んで災難が通り過ぎていくのを待とうとする。このような自己欺瞞で一時的に楽にはなるかもしれないが、最後は嫌でも現実と向き合わなければならない。そうなったとき、現実はあまりに過酷でもはや耐えられないのである。

グーグルで、「著名なCEOの名前+イヤなやつ」のAND検索をかけたのである。すると、スティーブ・ジョブズが、2位のオラクルのラリー・エリソンを遥かに引き離して1位・・・会議の際にエリソンが大爆発することは有名だ。しかも罵詈雑言を浴びせるだけでなく、長井。ときには延々一時間も吠えているという。・・・ジェフ・ベゾス・・・癇癪と罵倒でつとに有名だ。「この問題に今から知性というものを供給してやろう」・・・ポール・アレンは、ゲイツと働くのは「生きた心地がしない」・・・今挙げたリーダーたちは、長期にわたって巨額の報酬を手にし、権力を振るったけれども、謙虚だとか、誠実だとか、部下思いだといった理想のリーダー像からはどう見てもほど遠い。しかもそうしたリーダーは日々増えている。・・・大方の人が、彼らは本当に成功したわけじゃない、と反論する。・・・スティーブ・ジョブズも、一時期は誕生パーティに誰も来てくれなかったらしい。・・・これらのリーダーが本当に成功者なのかどうかを論じるのは勝手だが、彼らには否定できない共通点が一つある。・・・何はともあれ高みにのぼり詰め、権力を手にし、それなりに長い間その地位を維持したという事実である。だから、現実を公正世界仮説に当てはめようとするのは止め、理想とかけ離れた人たちが、なぜどうやって高みに上り詰めたのかを理解するほうが役に立つだろう。この手のリーダーが量産される現状を変えるためには、この理解が欠かせないと私は考えている。

現状は、誠実で謙虚で信用できて部下思いなどなど、多くの人がリーダーの資質と考えるものを待ち合わせていないリーダーが大勢成功しているだけではない。実態はもっと悪い。・・・理想のリーダーだと言われている人たちは、実際そのように見えてしまうのである。これは、人々がリーダーの発する自信満々な雰囲気やオーラに見せられてしまい、彼らが実際に何をしているかをチェックしようとせず、彼らの部下になることがどういうことかを考えようともしないからだ。おとぎ話を信じたがっている人々は、真実から目を逸らし、自分の価値観を覆すような証拠は積極的に見まいとする。こうしたわけで人々は、ほとんどの企業にも政府機関にも存在しないようなリーダーの行動モデルをありがたく信じている。・・・人々が授けられる「キャリアで成功するためのヒント」と言った者は、多くの場合、実際のリーダーの行動とはまるで一致していない。なぜこんなおとぎ話がいつまでも生き残っているのだろうか。・・・「真実に耐えれれない」・・・データによると、多くの人は、悪い情報が目に入らないよう積極的に試みているという。不愉快な真実を避けようとする人たちは、悩ましい症状が出ても医者にかかろうとしない。診断を聞きたくないからだ。言うまでもなく、そのような行動は自体を悪化させるだけである。治療を受けずに放置するほど、症状は深刻化するものだ。多くの人はハッピーな映画を見たがる。少なくともハッピーエンドになる映画、つまり善が悪を倒し、知恵が力に勝ち、正義が不正を打ち負かす映画である。・・・よいニュースや感動的な物語だけを聞きたがり、権力者や組織を批判することを恐れ、多くの職場が抱える問題を直視しようとしない――こうした姿勢がリーダーシップ教育産業を繁盛させ、誠実で謙虚で深思いのリーダーのハッピーな物語が語られるのである。彼らは、理想像に一致しないリーダーのことは語ろうとしない。理想のリーダーとそうでないリーダーの比率といったものも示されないし、リーダーたちがキャリアの最後にどうなったかということも語られない。

リーダーシップ教育産業は、未来のリーダーを育成することや現在リーダーの役割を果たしている人の一段の能力開発をすることが目的である。・・・この業界の多くの人にとっては、今のリーダーはこうだということよりもリーダはこうあるべきだということのほうが重要に・・・長年にわたってリーダーシップ教育が行われてきたにも関わらず悪いリーダーがこれほど多いのはなぜか、といった都合の悪い質問は巧みに回避される。・・・数十年に渡って、膨大な数の著者や講師やリーダーシップコーチが同じようなアドバイス・・・滅多にいないような実に立派なリーダーの研究ばかりが行われている・・・そうした例外的な人物を紹介すれば、他のリーダーも啓発ばかりが行われていることである。こうしたアプローチが成果を上げているという証拠は一つもない。そのことは、仕事満足度の低下、リーダーの在職期間の短縮、離職率の上昇、解雇されるリーダーの増加と言った客観的な数字が証明している。また、こうしたアプローチには理論的な裏付けもない。もちろん、信頼できて深思いの謙虚なリーダーは実在する。そうしたリーダーを私たちは尊敬し、賞賛すべきだ。だが同時に、そうしたリーダーがごく僅かであることも認めなければならない。さもないと、よきリーダーを目指すことの困難を過小評価することになる。

多くの人は、冷静かつ客観的にリーダーの行動に注意を払う代わりに、リーダーが自分の業績を語り、価値観を訴え、心地よい決まり文句を発するのを聞いて満足している。・・・賢いリーダーは、自分の行動が間近でつぶさに観察されないよう注意を払っているからだ。・・・たとえば、52人のマネジャーを対象に行われた3つの異なる調査で、マネジャーの成功と密接に関係する行動に挙げられたのは、人脈作りと政治的駆け引きだった。

良い結果を出すために良からぬことをせざるを得ない時もある。・・・決断する、実行する、改革する、競争環境で勝ち抜くと言ったことには、意志の力が必要であり、さらに、一部の人から反発されかねない行動をとり、反感を買いかねないような資質を発揮することが必要だ。・・・マキアヴェリの真実だ・・・偉大なことを成し遂げるためには、必要とあらばどんなことでもする意思を持たなければならない。困難な戦いを避けてはならないし、人気を失うことを恐れてもいけない。

アドバイスビジネスは、提供したアドバイスが実際に実行されるかどうかはあまり気にしていない。というのも彼らの利益はアドバイスを売った時点で得られるからだ。・・・良きリーダーになるためには、まずはその地位につくために、次に地位を維持するために、自分の置かれた環境で必要な能力や行動を示さなければならない。

勧善懲悪に代表されるように、白黒がはっきり・・・このような思考法は、複雑な現実をカドに単純化しがち・・・誤った確信が持てるので心地よいかもしれないが、何事も白黒をはっきりさせようとする姿勢で臨んでいたのでは、現実の複雑な世界の問題に取り組むのは一段と難しくなってしまう。:::高い地位の人間ほど複雑な思考法をすることが明らかにされたが、このことは、複雑な問題に取り組むときには高度な評価・分析手法が役に立つことを示唆している。・・・アレクサンドル・ソルジェニーツィン「何処かに悪い人間がいて悪事ばかり働いているなら、彼らを隔離して絶滅させれば良い。だが善と悪を得開ける境界線は、あらゆる人間の心の中にあるのだ。自分の心を隔離して破壊することを望む人間がいるだろうか。」

真実と早く向き合うほど、誰にとっても結果はよりよいものになる。 そのためには誰もが、そう、リーダーだけでなくすべての人が、頑張って続けなければならない。

悪いヤツほど出世する

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