MONOQLO (モノクロ) 2022年 12月号

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MONOQLO (モノクロ) 2023年 02月号

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仮想通貨革命

供給スケジュール設計は経済学者の仕事

  • 経済学者は、ビットコインの供給が一定のスケジュールにしたがって機械的に行なわれており、最終的には一定の値になることを批判している。ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマンも、そうした観点から批判している。シラーの反対も含めて、経済学者の反対は、ほぼ供給スケジュールの問題に集中している。
  • アンドリーセンなどのコンピュータ・サイエンティストは、ブロックチェーンプルーフ・オブ・ワーク(第2章の3参照)に関心があるので、供給スケジュールはあまり重視していない。だが、この問題は、決してなおざりにしてよいものではない。これは経済学者が担当すべき分野である。 マネーの供給スケジュールは、昔から経済学者が議論してきたものだ。これは、金融政策や財政政策をどう運営すべきかという問題の中核にあるものだ。
  • 一方の極には、金本位制が最も望ましいという意見がある。 ビットコインの現在の仕組みは、これに近い。 シラーがビットコインを「中世への逆戻り」と批判したのは、このためだろう。他方の極には、経済情勢に合わせて、裁量的な調整を行なうべきだとの意見がある。多くの経済学者の意見は、これだ。
  • ミルトン・フリードマンの「kパーセント・ルール」は、その中間と考えることができる。中央銀行による管理通貨制度を認めるが、裁量的な政策は認めず、貨幣供給を一定のルールによって縛ろうというものだ。

三者のいないエスクローを実現

  • スマートコントラクトの一つの例として、ビットコインを用いたエスクローがある。
  • エスクローは、不動産取引に関連してアメリカで以前からあったが、eコマースが普及するにつれて、新たな重要性が認識されるようになった。
  • eコマースでの一つの問題は、つぎのようなことだ。売り手から見ると、商品を発送したのに入金されない危険がある。買い手から見ると、送金したのに商品が届かない危険がある。あるいは、届いた商品が不良品や欠陥品である危険がある。通信販売では、つねにこの種の問題がつきまとう。
  • この問題に対処する一つの方法は、補論の4で説明する認証システムによって、売り手の信頼性を保証することだ。ただし、これは中央集権的な仕組みなので、運営にはコストがかかる。また、買い手が送金しないリスクには対処できない。
  • そこで、信頼できる第三者を間に立て、購入代金を預託することが考えられる。預託がなされれば、売り手は商品を発送する。買い手が商品を受け取って問題がなければ、れれば、売り手は商品を発送する。買い手が商品を受け取って問題がなければ、第三者は預託されていた代金を売り手に送る。これがエスクローだ。
  • こうすれば、売り手としては、商品が欠陥品でない限り、確実に販売代金を回収できる。また、買い手としては、購入代金を預託すれば、必ず望みどおりの商品を手にすることができる。
  • ただし、このシステムでは、信頼できる第三者が必要だ。そのため、コストがかかる。 また、第三者が破産してしまうと、預託金が取り戻せなくなってしまう。
  • ビットコインを用いると、エスクローと同じ結果を実現する取引を行なうことができるのである。売り手と買い手の紛争が複雑な問題でなければ、自動的に実行できるだろう。そうすれば、信頼できる第三者は必要なくなり、コストが下がる。第三者の破綻という問題もない。つまり、エスクローが簡単に実現できるわけで、これによってeコマースの安全性が向上するだろう。
  • なお、クレジットカードでは、「チャージバック」 (charge back) が従来から面倒な問題として意識されていた。これは、クレジットカード発行会社が、加盟店に対してカード売上の取り消しを要求することだ。加盟店が限度額以上の購入を認めてしまったり、無効カードに対して売上を実行してしまった場合などにこれが生じうる。チャージバックがあると、店舗側の負担が大きくなる。ビットコインを用いたエスクローは、こうした問題にも対処できる。

 

スマート・プロパティ

  • ビットコイン取引対象拡張の第二の方向は、「スマート・プロパティ」と呼ばれるものだ。これは、自動車や電機製品などの耐久消費財や不動産などの所有権移転をビットコインのシステムで行なおうとするものだ。
  • スマート・プロパティの基となる技術は、すでに存在している。自動車のイモビライザーがそれだ。鍵が暗号技術で作動するようになっているので、合鍵を作っても、ドアは開くがエンジンはかからない。
  • ただし、現在の形のものは、スマート・プロパティではない。所有権を簡単に移動できないからだ。そこで、イモビライザーの暗号をビットコインと同じく公開鍵暗号方式にし、ビットコインシステムの取引対象をコインでなく自動車にして、ブロックチェーンを用いて取引できるようにする。スマートフォンダッシュボードにかざせば、正当な所有者と認められてエンジンがかかる。したがって、正当な保有者でないと車を使えないわけだ。このシステムが使われるようになれば、所有権の移転のために、現在のような煩雑な書類作業は必要なくなる。
  • もちろん、このためには、自動車がそうした構造に変わらなければならないし、自動車登録の仕組みもいまとはまったく異質なものになる必要がある。だから、簡単にはできない。 しかし、技術的には実現可能である。
  • これが実現すれば、レンタカーも簡単になる。 一定の時間だけ所有権が移るような契約にすればよいからだ。期限が来たら、自動的に所有権が戻り、車のエンジンが動かなくなる(ただし、道路運転中に突然切れる等の問題が発生しないようにする)。
  • エアコンやテレビや冷蔵庫にも適用できる。これらを遠隔で操作するIoT(Internet of Things) と呼ばれるものが技術的に可能になっているので、所有権移転をビットコインのシステムで行ないうる。
  • 不動産の賃貸もこれで処理できるだろう。家賃を支払わない場合、鍵が作動しないようにする。
  • スマート・プロパティが一般化すれば、現在は存在しない取引も可能になる。例えば、個人保有の耐久財を担保にして、借入ができるようになる。これによって低所得者向けの貸付が容易になる。
  • 現在の消費者金融では、個人の信用履歴が必要だ。信用履歴がよくないと借りられない。あるいは、きわめて高い金利になる。したがって、低所得の人々は、貧困の悪循環に落ち込んでしまう。これはアメリカ社会では大きな問題だ。
  • 日本でも、サラ金問題として、同じことが社会問題化した。信用履歴が悪いときわめて高利の借入しか利用できず、返済ができないため、借入が膨らんで悪循環に陥る。この問題は、一定以上の高利を禁止することによって表面化しなくなったが、これで問題の本質が解決されたわけではない。なぜなら、借入需要は存在しているからだ。担保権を容易に実行できるようになれば、もっと低い金利での貸付が可能になるはずである。

DAC:自動化された企業

  • 第三は、「DAC」 (Decentralized Autonomous Corporation : 分権化した自動企業)と呼ばれるものだ (Decentralizedでなく、 Distributed と言われることもある)。
    これは、組織の運営を、ビットコインの手法を用いて自動化しようとするものだ。これは、きわめて野心的な計画である。
  • DACは、中央集権的なトップの管理者がいなくても機能する組織である。「ビザンチン将軍問題」に対する解が提案されたということは、組織原理での大きな進歩なのだ。したがって、一般の組織までその応用範囲が広がっても、少しも不思議でない。
  • ビットコイン自体がDACだとの見方もある。それは、つぎのような解釈だ。
  • ビットコイン保有者は株主であり、マイナーは従業員である。マイナーは、ビットコインシステムを維持するサービス(マイニング)を提供し、報酬を得る。
    業務の方法は、ビットコインプロトコルに書かれてある。それは、二重支払いを認めない、マイナスの残高からは払えない、分岐したら長いチェーンをとる、等々のルールである。また、マイナーの報酬(マイニングで与えられる額、手数料)やプルーフ・オブ・ワークの難度も、そこに書かれてある。
  • 株主である利用者がビットコインを使わなければ、システムはすたれて駄目になる。だから、彼らがどれだけ買うか、どれだけ売るかが、基本的な意思決定だ。彼らが状況判断に基づく決定をしている。その決定によって、自分たちが持っているビットコインという株の価値が決まるのである。重要なのは、意思決定しているビットコイン保有者は、世界中に分散しているということだ。つまり、組織のトップが分散しているのである。
  • 組織管理者をコンピュータのプロトコルで置き換え、企業組織を自動化してしまうというのは、われわれの常識にあまりに反するので、なかなか実感が湧かない。しかし、ビットコインが機能し、すでに金融機関も無視しえない段階にまでなっているのである。DACを、「現実の経済活動には関係がない夢物語」と片付けるわけにはいかないだろう。なお、DACがもたらしうる影響については、本章の5と6で再び論じる。

野心的なイサリアムの計画

  • ビットコインに刺激されて生まれたプロジェクトのうち、「イサリアム」 (Ethereum)もDACとは別の意味で野心的だ。これまで述べたものは、個々の取引ごとにプロトコルを定義しようとする。それに対して、イサリアムは、これらすべてが動作しうるプラットフォームを提供することによって、これらを統合しようとする。つまり、個々の目的ごとに固有のシステムを作るのではなく、共通のプラットフォームを準備する。これは、任意のスマート契約または取引をブロックチェーンに記録するためのプロトコルだ。その上で利用者が具体的な応用をする。こうしておけば、さまざまな契約が簡単に書ける。
  • これが実現すれば、応用範囲は大きく広がる。例えば、個人が債券を発行することもできるし、契約の内容を個人が定義することもできる。
  • ここまで来ると、日本の現状とのあまりに大きな格差に、言葉を失う。 「アメリカでいま進展しつつあるのは、産業革命に次ぐ新しい社会革命だ」と言う人がいるが、それもあながち誇張ではない。

共有地の悲劇」を避ける

  • ビットコインを拡張する第二の方向は、プルーフ・オブ・ワーク(POW)の改善だ。
    ビットコインのPOWに対しては、いくつかの批判がある。一つは、現実世界の資源(コンピュータの計算能力や電力)が費やされていることだ。これは、「浪費」としか言いようがないもので、この点が、多くの人にとって奇異に映る。
  • POWの本質は、「難しいこと(マイナーにとって負担となること)を行なった」という証物をマイナーが提出することだその証拠が正しいかどうかを、他の人が簡単に確かめられることも必要だ。
  • しかし、この目的のためには、現実世界の資源を浪費する必要はないのかもしれない。そうであれば、POWは改善の余地があるわけだ。
  • ビットコインの仕組みに対する第二の批判は、遠い将来までビットコインのシステムが維持できるどうかに関わるものだ。「共有地の悲劇」が起こるのではないか、との懸念があるのだ。
  • ここで「共有地の悲劇」とは、つぎのようなものだ。共有地には羊を放つことができる。利用は無料なので、人々はできるだけ多くの羊を放つ。すると、共有地の草は食べ尽くされてしまう。
  • ビットコインでなぜこれが起こるのか? 遠い将来、マイナーの報酬は手数料だけになる。多くの利用者に利用させようとして、手数料を低くすると、マイナーの報酬は減る。だから、マイナーは離れてしまう。 マイナーの数が減ると、計算の難易度が下がり、攻撃に弱くなる。システムに対する信頼が薄れ、放棄される。
  • この問題に対処するために、つぎのような方法が提案されている。
  • プルーフ・オブ・ステイク (POS)
  • プルーフ・オブ・ステイク (Proof of stake) では、 マイニングが成功する確率は、マイナーが保有するコインの量に依存することとされる。例えば、全体の一%のコインを持つマイナーが成功する確率は一%だ。
  • この方式は、攻撃に対してPOWより強いとされる。攻撃するには、ビットコインを多く持つ必要があるから、攻撃すれば、自分自身が最大の被害者になってしまうのだ。
  • 二〇一二年八月にリリースされたピアコイン (Peercoin) は、 POWとのハイブリッドになっている。時代が経つにつれて、POSに移行する。ネクストコイン (Nxtcoin) は、 POWを用いるのではなく、最初からPOSで運用しようとするものだ。
  • プルーフ・オブ・バーン(POB)
  • プルーフ・オブ・バーン (Proof of burn) では、マイナーがコインを燃やす。 「燃やす」とは、使えないアドレスに送ることだ。必要とされる量だけ燃やしたマイナーがブロックを代表する権利を得る。
  • POSやPOBは現実の資源を使わない方法だ。
  • ③コンセンサス
  • 第3章の2で紹介したリップル(Ripple) がこの方式を採用する。ただし、リップルは、特定の団体が運営しているから、「管理者なし」とは言えない。

 

2022年クリスマスケーキまとめ

そろそろクリスマスケーキの季節なので、検討した備忘録を兼ねてまとめていきます。主力のホテル・百貨店系は例年10月1日~なので、9月中にしっかりと比較考量して販売開始に臨みたいところです。クリスマスケーキはある程度まとまった数量が見込めることから、通常ラインに比べるとコスパはやや高めの傾向があります。年に1回の機会なので、しっかりと活かしましょう!

yamanatan.hatenablog.com

 

京王プラザホテル

同じタリーナで比較すると、5200円から6200円へとざっくり1000円の値上げ、原料価格高騰の影響をモロに受けてますね。

nlab.itmedia.co.jp

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コンラッド東京

https://www.fashion-headline.com/article/191394

 

椿山荘

https://www.fashion-headline.com/article/188591

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい

  • 実は、欧州などは飲食店の過当競争を避ける工夫をしています。厳格にライセンスビジネス制を敷くなどして行政が参入障壁"を作っているのです。ストリートごとにアルコールを提供できる店舗数を決める、その提供時間を「夜10時まで」などと制限するなど、さまざまな取り決めをしています。また、火を使っていい店舗、ダメな店舗もライセンスで決められます。
  • ロンドンやパリでは、営業権と呼ばれるこのライセンスの争奪戦が過熱しています。人が集まる繁華街で飲食店を開設しようとすると、数億円もの営業権買い取りの資金が必要になります。こうなると、個人で新規参入するのはほとんど不可能でしょう。「ちょっとやってみようかな」と安易な考えの人をあらかじめ除外し、過当競争を防ぐことにつながっています。
  • よりよい店ができるためには、健全な競争が必要です。その意味では善し悪し両面あると思います。 しかし、相応の体力と実力がなければ始められないということは、準備不足の開業による廃業や、過当競争による共倒れを減らす効果をもたらしているという点で、日本も参考にすべきところがあるともいえます。

 

購入する会社の中身を見極める

  • とはいえ、見も知らぬ会社を買収するというのは、リスクを伴います。会社を買う場合は、本当にその会社が営業している事業内容が申告している通りなのか、入念に調査し、しっかり見極めなくてはいけません。
    • 帳簿に書かれていない負債(簿外負債)はないか。
    • 保有資産は、実態価格を反映しているのか。
    • 回収できそうにない売掛金はないか。
    • 在庫はきちんと帳簿通り存在するのか、不良在庫ではないか。
    • 土地建物の権利関係、賃貸契約は、法的に担保されているのか。
    • 法令違反または不正な会計はしていないか。
    • 係争中の事案はないか。
    • クライアントとの関係は良好か。
    • 仕入れ先との関係は良好か。
    • 金融機関との関係は良好か。
    • 従業員との関係は良好か。
    • 従業員に残業代を含む給料をきちんと支払っているか。
    • 社会保障制度にはすべて加入しているか。
    • などなど、さまざまな側面から、一つひとつ確認していかなければいけません。
  • ここで気をつけなければいけないのは、中小企業は、大企業とは違うということです。すべてが完璧にクリーンで、法令に則して正しく運営できているという会社は珍しいのです。大企業でも、さまざまな不正や法令遵守違反が露呈している状況をみれば、肚落ちできるかと思います。
  • 中小企業の中には、社長しか知らない「ブラックボックス」の部分があることが普通です。だからこそ、きちんと調べ上げないといけません。
  • このような「ブラックボックス」の存在を会社を買う前に知っているのと知らないのとでは、雲泥の差です。これらを事前に知っていれば、自分が社長になってクリアできるかどうかを購入の判断基準にでき、また、そうした要素を活用し、逆に会社をより安く買うための価格交渉の材料に使うこともできます。
  • たとえば、財務諸表から試算し、2000万円で会社を売買する交渉をしていたとします。しかし調べてみると、この2年間で残業代を約500万円分、支払っていないことが発覚したとします。 この会社は、今から2年前に、「残業は最長で夜8時まで」と社内通達を発令したため、8時以降の残業代を支払っていなかったのです。実際は業務が終わらず、8時以降も残って働いている従業員がいて、タイムカードにその記録が残っていたとします。
  • 本来の目的は、労働時間を減らして労務を改善することだったのですが、逆に不当なサービス残業を生む結果となっていたのです。
  • そこで、この事実を社長に問いただすと、夜8時以降の残業は認識していたが、8時までに業務を終了するように社内通達を出していたので問題はない、というコメントが返ってきたとしましょう。
  • これは完全にNGです。
  • 労働基準法上、残業代の未払い分は、当然支払わなくてはなりません。従業員が労働基準監督署に通報すれば、金額の計算もしてくれ、支払いを要求されます。しかも法的には、この支払いは買掛金の未払いや銀行の借入金などの返済より優先されます。
  • この会社では、それまでこの程度のサービス残業は許容範囲内だった可能性もあるでしょう。しかし時代は変わっています。残業代をきちんと払うことは会社の当然の責務です。 ワタミ電通NHKの過労死問題が大きな社会問題となり、社会の目もかなり厳しくなっています。労働基準監督署も厳格化していますから、今後は必ず改めなくてはなりません。
  • そこで、こうした場合、買い手側は会社の評価額2000万円から未払いの残業代500万円を負債として差し引いて、1500万円で売ってもらうように交渉することができます。顕在化していないといえども、将来的に、あなたが社長になった後で従業員に500万円を支払わなければいけなくなる可能性が高いのですから、当然、売買交渉時に主張しておかなければいけない論点となります。
  • このように、売買が成立する前に、こうしたマイナス要素をすべてあぶり出すことは重要です。 一度結んでしまった契約を差し戻すことはできませんし、売買代金を支払ってしまえば、があっても取り返すのは著しく困難です。
  • これら企業の収益性やリスクなどを総合的かつ詳細に調査し、その価値を査定することも「デューデリジェンス」といいます。デューデリジェンスをいかに正確に詳細にすることができるかが、企業買収の肝といえます。

買収候補先企業の役員になろう!

  • はたして、素人にそんなことができるものかと不安に思うことでしょう。
  • 私たち投資ファンドでも、デューデリジェンスを行う際は、専門家を活用しています。財務的な部分は公認会計士に、法務的な部分は弁護士に依頼しているのです。事業規模の大きい企業の買収であれば、事業デューデリジェンスそのものを戦略コンサルに依頼することもあります。しかし、あなたがターゲットにするような中小企業に、デューデリジェンス費用を掛けるのはもったいないでしょう。
  • そこで私がおすすめするのは、ある程度の期間、買収候補先企業で役員として働くということです。
  • たとえば、現社長とのあいだで、2年後の買収を前提に取締役になるといった契約を交わし、専務取締役として入社します。その際、入社前に、会社の利益水準と連動した買収金額を決めておくことがとても重要です。また、「知らされていなかった重大な瑕疵が発見された場合には、無条件でこの約束を破棄することができる」などと、こちらへの法的拘束力がないことを書き入れておくことも重要です。
  • そして、その2年間でデューデリジェンスと、社長の引き継ぎを行うのです。従業員や取引先、銀行との関係性の構築、マネジメントの課題の洗い出し、それらの可視化を行います。 そこから事業計画を策定します。
  • 専務として2年間も働けば、会社のデューデリジェンスはほぼすべて行うことができるはずです。
  • この際の約束事として、会社の会計を見ている顧問税理士、顧問弁護士を自分が指名する人に代えてもらえば、より効果的です。社長と長年の付き合いがある顧問は、社長と運命共同体で顧問を務めてきていますから、社長が隠していること(ブラックボックス)を表には出しませんし、社長自体が把握していない財務や法務の問題があったりもします。
  • そして、新しい顧問税理士は、デューデリジェンスが専門で公認会計士のライセンスを持っている人にしましょう。弁護士も、デューデリジェンスを得意とする大手法律事務所から独立したような方が値段もリーズナブルでいいでしょう。
  • こうすれば、数百万円の持ち出しをすることなく、会社の必要経費としてデューデリジェンスを行うことができます。相手の社長の側も、会社を売ることを前提に考えているわけですから、新しい顧問を拒否する理由はありません。

前社長と二人三脚の企業改革を

  • このやり方には、ほかにも大きなメリットがあります。現社長が在職し、責任を取ってくれている間に、改革を断行できる点です。
  • 外から来た人間 (あなた)が、ある日突然、社長になると、社員はみな警戒心MAXになります。信頼関係のない状態でいきなり改革を断行し、従業員からの合意形成を得るのは相当ハードルが高いです。表面的には従ったとしても、本質的には動いてくれません。当然、改革は思うように進まない可能性があります。
  • 「この新社長はまったくわかっていない。ついていけない」と辞めてしまうリスクもあります。私たち投資ファンドは、企業買収を行った後、組織全体との信頼関係の構築を最優先に行います。これには半年や1年以上の時間がかかることもあります。 赤字企業の再生などは改革を受け入れざるを得ませんから、進めるスピードは速いといえます。しかし、それなりにちゃんと回っている会社であれば、信頼関係ができあがり、改革のポイントを従業員のみなさんに納得してもらった段階からそれぞれの改革を行っていかなければいけません。
  • あなたが会社を買って、最初から社長に就任する場合、こうした従業員との信頼関係の構築は、もっとも気をつけないといけない部分で、かつ難易度の高いものとなります。しかし、現社長が在職のままで、新しく外から連れてきた専務(あなた)の立場で改革を進めるのであればどうでしょう。従業員の印象はすこし変わります。
  • 外部から来た人間には、警戒心とともに期待も持つものです。しかも、社員たちが信頼する社長が見込んだ人なのです。 あなたがもし名の知れた大企業の社員だったとすれば、むしろ期待のほうが大きくなるかもしれません。
  • 仮に、専務としてあなたが行う改革に対して従業員が反発を感じることがあったとしても、それが「現社長の特命」ということであれば、あなたに不満が集中しません。改革に関して社員が現社長に文句を言ったとしても、そこで現社長が、「今、わが社は変わらないといけないんだ。専務(あなたのこと)に私から改革をお願いしている。今は辛抱して、専務を信じて頑張って欲しい」などとなだめてくれれば、従業員の気持ちも収まるはずです。そのように社長と話を〝握って"おくことも、非常に重要です。
  • そうして専務としての2年間で改革の成果が出てきて、あなたが社員たちからの信任を得ることができれば、あなたが新社長に就任する際には社員たちは喜んで迎えてくれることでしょう。
  • このとき、M&Aにおいてもっとも難しいとされる、PMI (Post Merger Integration : M&A後の統合作業)は、すでに終わったも同然です。
  • M&Aでは、企業文化の違う2社が合併したりして、社内で仕組みの統合がうまくいかなかったり、不和が生じたりすることで、想定していたような合併効果が得られないことがよくあります。そこで重要視されているのが、このPMIです。 個人による中小企業買収、すなわち個人M&Aにおいても、考え方は同じです。
  • 社員が新社長を拒絶して心理的に受け入れないことによって、改革が進まず、生産性が下がり、人が減ったりして、業績が低迷してしまうことはありえます。
  • そこで、まずは専務として現社長と二人三脚で協力しながら、デューデリジェンスと改革、業計画の策定、 PMIを終えてしまうことをおすすめします。そうすれば、最終的な個人M&Aはぐっと成功に近づきます。

「取引先を買う」という奥の手

  • ここまで読み進めた勘のいい人は、こんなふうに思ったのではないでしょうか。「ならば、上場企業である自分の会社と、ふだん取引があって気心の知れた関係にある会社を買うのがいちばんいいのではないか?」と。
  • その通りです。
  • さきほど私は、「売り案件」を見つける方法として、M&A仲介会社のM&Aマッチング情報サイトや、事業引継ぎ支援センターの紹介をしました。確かにそれを利用してもいいのですが、実際に会社を買ううえでベストなのはやはり、「自分が知っている会社の社長から会社を買うこと」だと思っています。
  • 自分の会社の下請け企業などの取引先であれば、その会社が業界でどのようなポジションにあって、どれほどの技術力を持ち、どんな社風で、経営状態はどうなのかといったことが、おおよそわかるはずです。内情をよく知っているなら、新しい会社に移った後の改革の計画も立てやすくなります。
  • 相手も、以前から素性をよく知る相手が社長に就任するならば不安感も少ないでしょう。むしろ万歳三唱、三顧の礼で迎え入れられる可能性もあります。
  • あなたの会社が大企業だったとしたら、すでに優良企業を顧客や取引先に持っていることがメリットとして明確です。個人M&Aを実行した後も、それらの企業はあなたの新しい会社の顧客や取引先候補になります。
  • 大企業の社員というポジションをうまく利用し、所属会社に対して利益相反がない範囲で、引先企業に利益誘導をしてから買うというやり方をすれば、有利な取引を実現できる可能性が上がります。
  • 一つの方法としておすすめなのが、大企業に勤務しているうちに、勤務先にもメリットがある形で買収対象となる会社を優遇し、業績をよくしてあげてからそこの社長になる、というやり方です。
  • たとえば、大手印刷会社Sの社員であるあなたは、Aという下請けの印刷会社の個人買収を検討しているとします。 そのときあなたの会社は、A、B、Cという3つの下請けの印刷会社を使っていて、Aに30%、Bに40%、Cに30%の仕事を分散して発注していたとします。
  • 印刷業界は全体的に仕事の量が減っているため、工場の稼働率は3社とも落ちていて、A社とC社は赤字に陥っており、B社はトントンだったとします。とくにA社とC社は稼働率が50%程度にまで落ち込み、機械と人が、〝遊んでいるという、製造業ではもっとも好まれざる状態になっています。
  • そこであなたは、発注元であるS社の担当者として発注先を見直し、C社の契約を打ち切り、C社の仕事をそっくりまるごとA社に回します。するとA社の稼働率が100%に近くなって一気に黒字転換します。その実績を手土産に、A社をあなたが個人買収すればいいのです。S社からA社に、社長として"天下り"するようなものです。そのことによってC社は倒産してしまうかもしれません。非情に思えるかもしれませんが、斜陽産業においては、それも仕方のないことです。このままいけば、A社もC社も倒産してしまったかもしれないのですから。
  • 民間企業は公共事業ではなく、営利事業です。経営状況に応じて外注先を整理するのは当たり前のことです。中途半端な温情をかけて、突然C社が倒産してしまえば、S社の業務に影響を及ぼすこともありえます。S社にも必要な発注先の見直しであり、個人的な買収の意向を事前にS社にも説明しておけば、なんら問題ありません。
  • そもそも、こうしたケースにおいて、かつて3社に分散して発注していたのは、印刷会社がどこもフル稼働している状況だったためであることが多いでしょう。需要が減ったため、発注先を整理して管理コストを減らすというのは、ビジネスにおいては当然のことです。さらには、そうした仕事の発注と引き換えに、稼働率の上がったA社において印刷費を多少なりともディスカウントすることができれば、発注元であるS社にとっても大きなメリットです。

古巣を巻き込む上手な企業買収

  • とはいえ、S社とA社には何の資本関係もありません。あなたが将来、A社の社長になったとしても、S社はゆくゆくはA社に発注している仕事を引き上げ、B社に回す可能性もあります。あるいは、新たに取引のないD社に転注する可能性も考えられます。
  • それを防ぐにはどうしたらいいでしょう。
  • あなたがA社を買収する際に、S社に共同出資を持ち掛け、A社の資本の一部をS社に持ってもらうのです。 あなたとS社との関係が悪くなく、お互いにメリットになれば、話はスムーズに進むはずです。
  • この人材難の時代において、大企業といえども、能力がある人を失うのは痛手です。とくに、経験を重ね脂の乗り切ったマネジメント層は、転職市場でもヘッドハンティングが活発です。あなたの勤務する会社の事業に関係する会社であれば、あなたとの関係を重視し、人材流出を止める意味でも、出資してくれることは十分ありえます。
  • あなたがA社の筆頭株主になる分の株式を購入し、同時にS社にも株式を持ってもらうのですが、S社の株式持分が20%を超えれば、A社はS社の関連会社」となります。C社への発注をA社に回すことでA社が黒字化することが明確であれば、S社も株主として配当や株式価値の向上などでメリットが出ます。そうなれば、S社はA社への発注を簡単に切る理由がなくなってきます。
  • また、あなたがA社の株式を買収するための資金が、自己資金では足りないとしましょう。その際、もっとも標準的な方法としては銀行からの借り入れが考えられますが、その資金もS社に立て替えてもらうという手法があります。
  • 少しテクニカルな話をします。
  • 先ほどはA社が赤字だという前提で話をしていましたが、そうではなく、ここでは仮にA社が毎年、1億円の黒字を出している企業だとします。
  • そのA社の社長が会社を「5億円(営業利益1億円の5倍)で売却したい」と言ったとします。あなたは、その会社の業績も将来性も申し分ないため、5億円でも安いと感じ、買収したいと考えました。しかし自己資金では、5億円もの大金はとても用意できません。
  • そこでS社に、50:50で共同出資の買収話を持ち掛けます。普通であれば、2億5000万円ずつ出資するという話です。
  • しかしあなたは、個人では2億5000万円も用意できません。そこでS社に一度、5億円全額を出して100%株主になってもらい、報酬として毎年100%ずつ、5年間で50%の株式を譲ってもらうという契約を持ち掛けます。
  • さらに、あなたが社長になってから上積みされる分の利益は、S社とあなたで折半しようと持ち掛けます (S社に優先配当)。
  • これはいったい、どういうことでしょうか。
  • 前述したように、C社への発注をA社に回すことで、A社の利益は1億円アップされ、2億円になることが確実だとします。
  • その上積み分の1億円は、あなたが本件を仕掛けたことによって生み出された利益です。 その利益をしっかりと管理し、継続させていくことをS社にコミットすれば、あなたがA社をマネジメントすることは、A社の親会社となるS社にとって重要なこととなります。
  • そして、この1億円を「S社とA社(あなた)とで5年間、折半しませんか」と持ち掛けるのです。利益は全額、配当金に回すので、想定通りに毎年2億円の利益を出せたとすると、「そのうち5000万円を自分の報酬(株式の購入代金) として分配してくれ」という交渉をします。そして、5年の段階を経て、A社の株式の50%をシェアしていきます(計算が複雑になるので税金の計算は考慮していません)。
  • ずいぶんと自分に都合のいい、ありえない交渉のように感じられるかもしれません。そんな話をS社が受け入れるはずがないと感じませんか。
  • しかし、この試算が本当だとしたら、おそらくS社はこの提案を受け入れるでしょう。なぜなら、S社にとってこんなに「美味しい投資話」はないからです。
  • S社はA社に5億円出資することで、あなたに5000万円の報酬を払っても、毎年利益を配当として得て、5年間で6億円を手にします。4年目には投資額5億円をすべて回収している計算です。
  • そのうえで、5億円出資した株式のうち5年で半分の2億5000万円分の株式をあなたに譲渡しても、2億5000万円分の株式がS社の手元に残ります。これを他社に売却することで、S社はキャピタルゲインも得ることになります。
  • ところでこの試算には〝間違い”があります。
  • 通常、会社の営業利益が1億円から2億円に上がると、会社の株価は上がるからです。営業利益が1億円から2億円に、2倍に上がるのですから、単純計算で株価は2倍になると考えてよいでしょう。
  • そうなるとS社が5億円で買ったA社の株の総額は10億円(営業利益2億円の5倍)になり、S社はその半分をあなたに譲っても、残った株を5億円で売れることになります。つまり、S社はこの5年間で、配当が6億円、株式50%の売却が5億円の計1億円を得ます。
  • しかも、あなたが優秀であれば、S社は5億円を投資するだけで、経営はまるっきり任せておくことができます。
  • S社にとっては、何もしないで5億円が5年で2倍以上になるのですから、美味しい儲け話です。

個人でもできるMBOのすすめ

  • さて、約束通り5年後に株式の50%を手に入れたあなたの手元には、いくら残るのでしょうか。5000万円×5年分の株式2億5000万円分。 この金額は、社長の役員報酬1000万円とは別に、です。株価が2倍になったとすると、2.5億円の株式価値が5億円分の株式価値になりますから、潜在的には25億円の資産も生み出したことになります。
  • さらに続きがあります。5年後のこのタイミングで、「S社が保有する50%の株式を買いたい」と持ち掛けるのです。5年間もの経営実績があれば、銀行も企業買収のローンをつけてくれます(銀行のローンで買う話の詳細は後述します)。
  • これをMBO(Management Buyout: 経営者等による企業買収)といいます。
  • 自分が保有する5億円の株式と買い取る株式を担保に、銀行から5億円を借り入れ、S社の保有する5億円分の株式を買い取ってしまうのです。銀行借り入れ5億円は、将来の利益で返済すればいいのです。
  • これで買収は完結しました。あなたはいっさい自己資金を出さずに、10億円分の株式を手に入れることができました。
  • 会社の利益は毎年2億円出ているので、株を担保に借り入れたローンは、およそ3年で返済できてしまいます。4年目、つまり、あなたが会社経営を始めてから9年目から毎年、2億円の配当が受け取れるのです。まさに錬金術です。
  • 実際には、利益に対する法人税や、借り入れに対する銀行の金利や返済条件、与信枠、株式価値の変動やS社との取引内容の条件などがありますから、仮の数値計算がそのまま当てはまることはありません。しかし、今回はイメージしやすいようにあえて考慮しない計算にしただけであり、概念そのものは間違っていません。

LBOキャピタルゲインを狙う

  • 序章で、会社を買うことで「あちら側の人間(資本家)」を目指そう、とお伝えしました。「箱」を自分で保有することで、誰からも管理されることのないオーナー社長として、自分のやりたい経営を進め、報酬や経費は自由に決めることができ、配当収入を得られることが理解いただけたと思います。
  • そして、最大のメリットは「箱」自体を売却して得られる「キャピタルゲイン」 です。
  • あなたが会社の買収を完了し、報酬や配当をもらいながら経営する中で、会社の業績がさらに良くなれば、当然、その分、会社の価値も上がります。
  • 上場企業であれば、株式は毎日株式市場で売買され、業績のいい会社は日々、株価が上がっていきます。未上場企業でも、売買する際は同じことが起こります。財務状況が良い会社は当然、売却の際により高い価格で売れるのです。
  • 先に述べたように、大企業に勤めているあなたが、まともなマネジメントができていない中小企業を買収し、適切なマネジメントを導入すれば、それだけで経営は劇的に良くなる可能性が十分にあります。逆に、経営にテコを入れようがないぐらい優良経営の会社は、すでに会社の株式価値も高く、付加価値を生むことができないので、あまり食指が動かない会社です。
  • いちばん良いのは、事業内容や技術は優れているのに、経営のやり方が悪くて若干の赤字かトントンになっている会社に、まともなマネジメント手法を導入して黒字に変えることです。営業利益率2%の会社を8ポイント改善して利益率10%にするよりも、赤字で利益率マイナス3%の会社を8ポイント改善して利益率5%にするほうが、難易度が下がるうえに会社の価値向上に対するインパクトも大きくなります。
  • 赤字企業は「買いたい」と思う人がそもそも少ないですから、株式売却時の価格も上がりません(ということは、安価で買えるということでもあります)。一方で、黒字になった瞬間に、何十倍もの買い手が現れ、売却価格の目線が一気に上がります。
  • ここに、会社売却の一つの閾値が存在します。
  • 加えていうと、中小企業のM&A業界においては、営業利益1億円にもう一つの閾値が存在します。営業利益が1億円出るということは、企業継続という観点で相応の安定性を評価することができますから、「純資産+営業利益の3年分から5年分」という企業価値の評価軸が「5年以上」にシフトしていきます。
  • しかし、やはり赤字の会社は怖いものです。「できれば黒字の会社を買いたい」と考えるのが普通の感覚でしょう。
  • 安全性を重視するなら、営業利益率2%の会社を買って10年経営し、8%にすることができるだけでも、大きなキャピタルゲインを得られます。営業利益率8%の会社というのは、まぎれもなく優良企業です。買い手には困らないでしょう。
  • しかし黒字で、ある程度の規模の会社を買いたいと考えるならば、先ほどの印刷会社A社の事例のように、自己資金だけでは足りなくなるでしょう。
  • もしあなたが、純資産がゼロで売上高1億円、営業利益200万円(営業利益率2%) の会社を買収しようとすると、私たち投資ファンドが指標としている基準に照らせば、その適正価格は600万円から1000万円です。このくらいであればターゲットになりそうです。
  • 一方で、もし売上高200億円、営業利益4000万円(営業利益率2%)の会社を買収しようとすれば、1億2000万円から2億円が適正価格だと考えられます。
  • こうなると、個人にはちょっと厳しいですね。
  • そこで、先ほどのように他社に共同出資を持ち掛けるスキームを使わなくても、最初から銀行の融資を利用してそうした会社を買う投資方法があります。
  • じつは、一定の利益が出ている会社は、借り入れを組み合わせて購入することで、売買益がより大きくなります。なぜなら、毎年の利益から借り入れを返していけるからです。
  • わかりやすく、先ほどのA社の買収ケースに戻しましょう。A社はもともと、営業利益が1億円出ており、5億円が買収価格となりました。これを単純に、1億円を自己資金で、4億円を銀行から借り入れて購入したとします。この会社を4年間経営した後、売却したとしましょう。先ほどは営業利益が2倍になる前提でしたが、ここでは、業績が完全に横這いであるとしましょう。すると5年後の売却額は同じ、5億円です。
  • 銀行から借り入れた4億円は、負債として計上されるので、返済していかなくてはなりませんが、これを毎年の1億円の利益で返済していきます。すると、5年目には4億円の借り入れをすべて返せてしまいます。
  • つまりこの時点で、あなたは借り入れのない100%株主です。あなたが5年前に出した自己資金は1億円ですが、ここで会社を売却すると、5億円はすべて自分の懐に入ります。5年程度、横這いの経営をしていただけで、1億円が5億円に化けるのです。さらに、経営改善に成功し、5年後にもし営業利益を1.5倍の1億5000万円にすることができれば、株式価値は営業利益の5倍として、1億円の自己資金が株式価値で7.5億円になります。営業利益を2億円にできれば、株式価値で10億円に化けます。
  • これは投資ファンドが得意とする、LBO(レバレッジド・バイアウト)という手法です。前述のMBOも、このLBOの一つの形態です。
  • LBOは少し上級編の投資方法なので、概念を理解してもらえれば結構です。ただ、この概念をわかっていれば、話が早い。会社を買うための資金の出し手が、自分だけではなく、銀行などの金融機関や自分の勤務先、取引先や知人・友人など、 その事業を取り巻く人たちにもメリットをもたらすことができれば、なんらかの形で資金を捻出できることに気づくでしょう。

もし経営に失敗してしまったら?

  • ここまで、会社売買の「いい話」ばかりしてきました。しかし、「もし経営に失敗してしまったら……」という恐怖心もあるはずです。
  • 会社というものは、いい経営をしていても、潰れるときには潰れます。会社が倒産した場合、投資した資金が戻ってこないのは仕方がないとしても、貯金や自宅などの財産がすべて没収されてしまうようであれば、生きていけません。そのようなリスクはとても負えないと考えるのが普通でしょう。
  • 中小企業が銀行から融資を受けるためには、社長が連帯保証人となり、会社が倒産したら社長に返済義務があると、みなさん思っているのではないでしょうか。また、会社を引き継ぐ際に、負債の個人保証を差し入れないといけないと思っているでしょう。
  • 事実、これまでの日本はそうでした。現在の中小企業の経営者の多くも融資に対して個人保証をしています。
  • しかし今なら、会社は「無担保無保証」で買えます。
  • 近年、国の要請のもと、日本商工会議所と一般社団法人全国銀行協会によって、「経営者保証に関するガイドライン」が策定され、「法人と個人が明確に分離されている場合などに、経営者の個人保証を求めないこと」と示されました。
  • これにより、新規の融資の際に個人保証をつけない方針が示されるとともに、事業承継時においては、経営者保証が解除されるように指導されることになったのです。そうでなければ親族外への事業承継は進まず、中小企業の倒産が増え続けるからです (諸条件や銀行によっては、まだそこまで徹底されていないという問題も存在はしていますが)。つまり、M&A(会社売買)のリスクは、基本的に「株式取得に必要な買収資金のみ」になったのです。
  • その買収資金についても、財務状況によっては社長の個人保証なしに法人(会社)が銀行から借りることが可能なため、さらにリスクを限定することができるようになりました。また、2016年4月には、中小企業の事業承継を促進するための「経営承継円滑化法」が施行されました。 政策金融公庫の融資や保証協会の特例措置などが受けやすくなり、親族以外の事業承継もしやすくなりました。
  • 制度の面からも、個人M&Aに追い風が吹いているといえるのです。

 

インターネットで探せる時代に

  • 時代の大きな変化と、インターネットが発達した結果、「売り案件」の情報は、昔ほど極秘のものではなくなりました。ネット上で売却を希望する会社の名称が公にされることはありませんが、匿名で多数公開されています。まさしく不動産情報のように、誰でも簡単に仕入れることができるようになりました。
  • そのため、今や売り案件情報は、インターネットで誰でも見ることができます。
    会社経営者の間では、こうした「ネットを通じた会社売買の情報流通」が浸透し始めてきており、個人が参加可能なものもあります。
  • ためしに、インターネットで「M&A案件」と検索してみてください。 M&A仲介会社等のサイトが多数、表示されるはずです。各社のサイトに行くと、まるで不動産情報サイトのように売り案件の一覧が載っているはずです。
  • たとえば、前出の「ストライク」が運営する「SMART」 というサイトには、M&A譲渡希望として、以下のような企業の一覧が載っています。

 

大廃業時代ならではのM&A仲介

  • これよりも詳しい情報も簡単に得られます。興味を持った会社があれば、サイトに個人情報を入力し、会員登録をすることでより詳しい情報を教えてもらえる仕組みになっているからです。
  • また、これらの仲介サイトには、ネット上には情報がオープンにされず、登録して初めて情報にアクセスできる会社もあります。
  • 興味を持ち、具体的に購入を検討したいとなれば、M&A仲介会社と契約を結びます。すると社名を教えてもらうことができ、相手社長との面談、「デューデリジェンス」 (Due diligence:買収監査=179頁以降参照)、M&Aの交渉に入るといった流れになります。
  • いずれも、20年前までは一般の人には入手困難で、金融機関と同業会社、資産家だけが持ち得る情報でした。それが今では誰でもこんなに簡単にアクセスできるのです。
  • また、「大廃業時代」を解決するために、経済産業省が管轄する独立行政法人中小企業基盤整備機構が母体となって、各都道府県も事業承継に力を入れています。公的支援として各都道府県に「事業引継ぎ支援センター」が設置されており、全国の商工会議所等と連携して、地場企業

www.jigyo-hikitsugi.jp

  • M&Aの相談とマッチング、サポートを行っています。インターネットでお住まいの都道府県名および「事業引継ぎ」と入力し検索をしてみてください。 事業引継ぎ支援センターのサイトが出てくるはずです。
  • 前出のM&A仲介会社は、手数料ビジネスとして仲介を行っていますから、それなりの手数料が見込める会社を中心に取り扱っています。具体的には、売上高数億円から100億円程度の会社が多く、購入には数千万円から数億円規模の資金が必要となります。しかし、事業引継ぎ支援センターは、公共サービスであることから、なかには夫婦とアルバイトで回しているような売上高数千万円程度の会社など、数百万円で買える会社や「無料でもいいから引き継いで欲しい」という会社などまであります。
  • また、最近始まったウェブサービスで、実際の「会社売買のマッチング」がネット上で行われる「TRANBI」というサイトもあります。年商数百万円くらいの事業の売買もされていることから、まずはこのサイトから情報を取ってみるのも一手かもしれません。
  • いかがでしょうか。こうして見てみると、個人で会社を買収するという選択肢が、ぐっと身近に、かつ現実味を帯びてきたように感じられるのではないでしょうか。

www.tranbi.com

 

プライベートバンカー 完結版 節税攻防都市

  • タックスヘイブンがいかに日本で利用されているか。それを示す数字もある。 パナマ文書の電子ファイルを国別で検索すると、日本国内で三百三十八ヵ所の住所(一部は重複、あるいは詳細な住所が不明)が現れる。タックスヘイブンにあるペーパーカンパニーの取締役や株主(一部は企業)の、日本における住居地である。
  • これを都道府県別に見ると、東京都に住所を置く者(企業を含む)がその半数の百六十九を占める。前述の都営住宅や中層マンションの住人ももちろん含まれている。続いて大阪府内が二十四、神奈川県二十二、愛知県が二十一、千葉県が二十、埼玉県十七、兵庫県が十六。それ以外は一ケタだが、北海道、青森から鹿児島、沖縄にまで点在している。
  • 総合すると、タックスヘイブンを活用している個人や企業は三十三都道府県にも広がっていた。言い換えれば、日本のたいていのところに、ペーパーカンパニーの持ち主や株主が存在しているのだ。

 

  • 二十三区別に分けてみる。 港区が五十三と突出しているのは、六本木や赤坂、青山、台場などにニューマネー長者や若い事業家が住み、タックスヘイブンを活用しているからだろう。次いで渋谷区が十六、 世田谷区の十一、千代田区の九と続
    く。二十三区内では墨田区葛飾区以外、すべてタックスヘイブン活用者が住んでいた。

 

高校生のためのゲームで考える人工知能

科学者というと、なんだか宇宙や自然について、きちっと正しい知識を持っている人というイメージかもしれません。実はそれは科学者の一面です。むしろ重要なのは、ボーアが述べたように、実験や試行のなかでたくさんの失敗をおかして、「これはうまくいかない」ということを自分で確認していることなのですね。なにしろ自分で失敗した経験がありますから、次からはその失敗を自覚して避けることもできます。

人工知能をつくる場合にもボーアの精神で取り組む必要があります。つまり、試行錯誤を恐れず、失敗上等の気持ちで実験をすることです。これから先は、本物の知能をもっているといえる人工知能をつくるために、その答えを求めて試行錯誤の旅に出たいと思います。できたら、ひょんなことからこの本を手にしてくださったあなたも、一緒にこの旅を楽しんでくれたら嬉しいです。 合い言葉は、「分からないことを楽しもう!」としておきましょうか。さあ、前置きはこのくらいにして、進んでいくことにしましょう。