コンサルを超える 問題解決と価値創造の全技法

  • マッキンゼーの特徴は、ファクトベース。 決められた形どおりにファクトを集め、新人でも、正しい分析とそこから導き出される答えを得ることができるよう、優れたプログラムを持っていて、それによって、原則として、一プロジェクト三カ月で答えを出す。
  • シニアマネージャーと複数の若手コンサルタントによるチームでおこない、人による質のばらつきも少ない。「ファクトベース、一プロジェクト三カ月、調査し、分析し、戦略を立てて終了」が、マッキンゼーの定番メニューである。
  • 問題は、本来、総合芸術である問題解決がただの分析にとどまりがちだということだ。新人だけでなくシニアマネージャークラスも、経営や実学の知識が乏しいために、分析に頼りがちになる。これでは近い将来、AIに負ける。

 

  • マッキンゼーは、最初に答えを言う。 解決までの遠く複雑な道のりについても、すべて種明かししてしまう。
  • これに対してボスコンは、最初から答えを示すのではなく、 相手が自分で気づくように上手に導く。なにしろ、三年かけていっしょにその道のりを歩くわけだから、時間はある。だから、 分析の結果の報告・提案も、相手が受け入れやすいような言い方をする。そうやって相手をその気にさせるのである。
  • 相手がその気にならなければ、決して実行されることはないのを熟知しているからだ。 実際、相手が、 どんどんやる気になっていくことによって、結果的に正しい方向に導くことができる。
  • ただし、クライアントは自分で気づいたと思っているわけなので、コンサルタントの切れ味に対し、不信感を持つこともある。また、人によっては、そのややまわりくどい謎解きのような言い回しに、「結論は何だ」といらつくこともあるだろう。

 

  • ファクトベースのマッキンゼー流と心理学重視のボスコン。導入する企業にとっては、三ヶ月で一割を取るか、三年で七割を取るかの選択とも言える。

 

  • マッキンゼーをはじめ、問題解決は、たいてい次の順に行われる。
  1. ステップ1 問題を定義する
  2. ステップ2 問題を構造化する
  3. ステップ 3優先度をつける
  4. ステップ4分析方法を設定する
  5. ステップ5 分析を実施する
  6. ステップ6 発見内容を統合する
  7. ステップ7 問題解決法を提言する
  • このうち、もっとも重要なのは、
    ステップ1 問題を定義する
    ステップ2 問題を構造化する
    という最初の二つのステップだ。
  • まり、結局、何が本質的な問題なのかをきっちりと見極める 「課題設定」であ。 これがうまくいくと、問題解決全体の五〇%はできたことになるとされる。
  • 当たり前のことのようだが、受験生メンタリティのままの人にとっては、案外、これが難しいようだ。提示された問題を解くことには慣れていないのである。
  • しかし、最初の課題設定が悪いと、その後、何をやってもピンボケで、問題の本質には迫れない。最初の五〇%はうまくいかなかったから、残りの五〇%でカバーしよう、というわけにはいかないのだ。 そのくらい大切なところなのである。

 

  • 「科学者は先入観を捨て、リアルな現象から、発見するものだ。それが科学的アプローチではないですか?」と。
  • しかし、それは正しくない。 虚心坦懐にものを見る、というのは聞こえはいいが、実際には、いろいろなものが見えすぎてしまって、何が本質だかわからなくなるのがオチだ。
  • そもそも科学者は、必ず仮説を持ったうえで、現象を観察するものだ。いったん、これが本質だ、と決め打ちして、その「色眼鏡」で現象を見てみる。
  • このとき、たまたま一発で、ぴったりはまることもあるにはあるが、たいていはそこに当てはまらないものが出てきてしまう。そこで、無理矢理現象をねじ曲げるのは政治家か官僚で(?)、科学者は、「仮説」を作り直す。そうやって、正しい仮説に近づいていくわけだ。 実際、科学者たちは、そのようにして、世紀の大発見をしてきた。

 

  • 「イシュー度」とは、問題の本質度
  • 「解の質」とは、ぼんやりとしたものにピントが合っていく(レゾリューション)度合い

 

 

  • 混乱している状況に入っていくことが問題解決ではないのだ。混乱を解決しようと思ったら、混乱していないスペースにものを振らなければならない。
  • そもそもいまの困った現象を引き起こしている原因に突き当たると、その現象そのものがなくなることも少なくない。

 

問題解決は四段論法で

  • コンサルは、四つの問いを立てて、問題を解決していく。まず、WHAT? 何が問題なのか? という問いだ。次に、WHY? なぜ、それが問題なのか? という問い。ここで、いきなりHOW? いかに問題を取り除くか? にいくのではなく、WHY NOT YET? つまり、なぜまだそれができていないのか?を考える。そのうえで、HOW? それができるようになるためには、どうすればいいか?を問う。
  • なぜ、本来やるべきことができないのか? これこそが、問題の本質なのだ。そこが見えてくると、そこに対するHOWが答えになる。
  • 私がいろいろな企業で問題解決のお手伝いをさせていただくときも、この四つを解いてもらう。 その際に、一番の掘りどころが、やはりWHY NOT YET? の部分だ。
  • なぜ、いまそれができていないかに、その会社の固有の病気が出てくる。 それがないと、ありきたりのべき論、教科書的な回答が出てきてしまう。これが、 WHY NOH YET? の力だ。

 

  • 「はじめに」でも述べたように、コンサルが呼ばれるのは、問題があるからだ。 何の問題もない企業は、そもそもコンサルを雇おうなどとは考えない。したがって、問題解決がコンサルの仕事になるわけだが、じつは、企業は問題を解くだけでは元気にはならない。 病巣を摘出してとりあえず生き延びたというのでは、緊急避難でしかないからだ。 いかにこれまで以上に元気に活躍できるようになるかが、本質的な問題解決だ。
  • つまり、重要なのは、問題を成長機会に変えることである。
  • タイタニック号に突き刺さった氷山を生還の通路とする。みなが、 これが問題だと言っていることこそを取り込んで、そこから新たにできることを考えるのだ。
  • コンサルの全員がこの手法をとるわけではない。マッキンゼーではむしろ、 企業再生のプロとして、病気になった企業をなんとか持ち直させるまでを得意する人たちが主流派だ。
  • しかし、私は、問題を摘出するより、未来につながる新しい道を示すほうが健全だと思っている。だから、マッキンゼーの採用担当になったときには、問題解決型の人ではなく、機会創出型の人を採るようにした。

 

SO WHAT?と、空、雨、傘

  • われわれコンサルが使う「空、 雨傘」もすっかり有名になってしまったので、 ご存じの方も多いと思う。
  • いまの空を見ると曇り空である、という事実があったとする。
  • これは事実(ファクト)だ。しかし、「空」の観察結果を語ったところで、SO WHAT? 「だから何?」となる。ここに少し推論を加えて、「これから雨が降るかも」となると、予測になる。つまり、いまの現象からもう一段踏み込んだものが「雨」だ。それでもまだ、 SO WHAT? 「だから何?」に答えたことにはならない。
  • では、このような観察や予想を踏まえて、どのような行動を喚起すればいいのか。 これにはいくつかの選択肢がある。 「外に出るな」というのもそのひとつだろう。 「外に出るのだったら、傘を持て」もそのひとつ。 で、「空、雨、傘」である。
  • よくありがちなのは、さんざん分析して、「空は曇りである」といういわば当たり前の事実を述べるにとどまる報告書である。余計な推察を加えず、事実をそのまま伝えることが仕事だとされている官庁系や大会社にありがちだ。しかし、それだけでは何の行動にも結びつかない。 推論を加え、推論のあとにレコメンデーションがあってはじめて提案としての価値が生まれる。
  • 気象予報士であれば、「いまは曇り、午後は雨になるでしょう」と「予想」までが仕事だ。しかし、最近の気象予報士は、「今日は傘を忘れずに」というレコメンデーションまで忘れない。 しっかり、 「空、雨、傘」を実践しているのだ。
  • 実践に結びつけるためには、空や雨だけでなく、 「傘」まで言い切る必要がある。だからコンサルはつねに、SO WHAT?と尋ねる癖がついている。

 

  • まず仮説を立て、それに基づいてファクト(事実)を見ていきながら、ファクトに基づいて仮説をつくり直していく、という一連の作業は、最近シリコンバレーで流行のリーン・スタートアップに通じるところがある。
  • 最初から完璧なものをつくるのではなく、まずMVP(ミニマム・バイアブル・プロダクト=最低限役に立つ商品)を市場に出す。そしてマーケットの反応を見ながら、つくり直していく、という方法だ。

 

  • グーグルでは90%以上失敗しないと、ちゃんとリスクをとったことにはならない、とされる。なぜなら、失敗するというのは、いろいろな可能性にチャレンジしている、ということだからだ。
  • ラインを止めても、クビにならないどころか、ボスからありがとうと感謝される。これがアンドン方式の本質である。 そうすることで、現場は、失敗を隠さず、それを貴重な学習機会にしていく。これこそ、考える現場を基軸としたトヨタ流の進化の神髄なのである。
  • 学習するためには、失敗を認める勇気、いったんは行けると思ったものを壊す勇気が必要なのだ。だからこそ、グーグルは、トヨタ同様、失敗を祝うのである。

 

  • 負け犬だからといって、本当に即座に捨てるべきかどうかは、よく考えた方がいい。もっと言うと、採算が取れているなら、投資をやめることで利益は増える。そこを見ずに早すぎる諦めという過ちをおかさないよう気をつけた方がいい。

 

マッキンゼーの問題解決10則

  1. 「問題」とされていることが、本質的な問題とは限らない
    問題解決のスタートである課題設定において重要なのは、当事者が問題だと思っていることの多くは、本質的な問題ではないということだ。なぜなら、もし、当事者が問題だとわかっているのなら、すでに解けているはずだから。
  2. 大きな視野 (Big Picture) でとらえ直す
    当事者がそもそもなぜそういう状況に陥っているのか、なぜほかに選択肢がないと思っているのか。それを、いったん引いて、全体像の中でとらえ直す。すると、問題だ、問題だ、と言っていることの多くが、表面的な現象にすぎないことがわかってくる。
  3. 仮説から始める
    ビッグデータ分析のように、やみくもにファクトを集めて分析しようとしても、真の答えは見えてこない。 まず、仮説から始める。 ファクトがそれに合わなければ、仮説をつくり直す。 その繰り返しによって、本質に迫っていく。
  4. 漏れなくダブりなく(MECE) 問題を構造化する
    問題を、漏れなくダブりなく構造化する。 このときのポイントは、全体を見たうえでここが大事だと思っている以外のところに見落としがないか、チェックすることだ。というのも、見えていない部分に問題が隠されていることが多いからである。 その意味でも、MECEのうち、ダブりはあってもいいが、 漏れはあってはならない。
  5. カギとなる変数 (Key Driver) にフォーカスする
    チョークポイント、すなわち、首を絞めているポイントを探す。
  6. できるだけ簡素(シンプル) 化する
    状況をできるだけシンプルに公式化しようと試みることだ。 何が変数で何が定数かを見極めて、公式化する。
  7. 正しい答えはひとつではない
    自然科学とは異なり、問題解決においては、正しい答えはいくつもある。山に登るのにいくつもルートがあるのと同様だ。速いと思っていたルートが、結構険しかったりすることもある。いずれにしても答えは幾通りもあるから、ひとつだけで考えないことが大事だ。
  8. 壊して、再構築する
    仮説が一発でうまくいくことはほとんどない。 崩しては再構築を繰り返すのが普通。 自己否定したり、膨らましたり、ひねったりしていく。
  9. ときに答えがふっと湧いてくる瞬間を大切にする
    ⑥を繰り返しているうちに、ふと何か啓示のように、答えが湧いてくる瞬間というのはたしかにある。 それも、行き詰まっている最中、というより、そこから離れているとき。 お風呂の中で気づいたアルキメデスのようにとらわれすぎると見えてこないものが、そこからちょっと視点を移したときに見えてくるのだ。 その瞬間を大切にする。ただし、そうした瞬間が訪れるのにも幾つかの条件がある。 ひとつはそこまで考え抜いているということだ。そうでなければ出てこない。すぐ気晴らしをしたがる人がいるが、それではダメ。 もっと苦しまないと出てこない。
    「暁のソリューション」というフレーズがマッキンゼー内で流行っていたことがあった。 一晩中考えに考え、悩んだ末、夜が明ける頃に答えが見えてくるというわけだ。 ただし、 暁になると頭がぼんやりするので、答えが見えた気になっただけで、結局、 錯覚だったりするわけだが(笑)。いずれにしろ、 ワーク・ライフ・バランス的に考えると、昨今では流行らないだろう。
  10. 問題がないことが最大の問題
    問題がないことが最大の問題である。 当社は問題ないとか、当部は問題ありません、などと言う人がいるが、それは相当深刻な問題だ。

 

  • マッキンゼーの得意技は、危機感で相手を追い詰めることだ。
  • 一方、ボスコンは、「あなたは本当はこういうことがやりたかったんでしょう」と使命感に火をつける。
  • 最後にアクションに結びつかないものには何の意味もない。

 

  • 学習優位というのは、先程述べたトライ・アンド・ラーンに近い。失敗するかもしれないが、とにかく試してみた。そのような思考からどれだけ多くを学び、どれだけ深められるかが勝負の分かれ道となる。そして、そのような学習能力こそが、優位性につながる、という発想だ。
  • 学習能力のある個人や企業も、同じところに踏みとどまっていては、だんだん学習効果が頭打ちになり、学習能力そのものまで劣化してしまう。成長し続けるためには、新しい分野で新たな学習を始動し続ける必要がある。 しかも、誰にとってもアンファミリア (未踏の地であればあるほど、先に行ってファミリアになった者が勝つのだ。
  • そのためには継続的な学習ではなく、 「脱学習」が求められる。といっても、何も学習しない、ということではない。 それでは単に「トライ・アンド・エラー」を繰り返す 「懲りないやつ」になってしまう。
  • 同じところで踏みとどまって学習するのではなく、学習の場所を 「ずらし」 ていく。 この「ずらし」こそが、ここでもキーワードなのである。学習の場をずらせば、また新しい学習曲線を描き始めることができる。 このように、次から次へ新しいものを獲得していく能力こそが、次世代成長を実現するための学習能力なのである。
  • そして、このようにして、新しいものにつねにチャレンジしていくことが、 非線形の時代のいま、もっとも求められる優位性なのだ。

 

  • 変身資産とあるように、自分を変える力がないと、人はどうしても同じところに定着してしまいがちだが、将来を考えれば、労働市場の流動化は確実に起こる。その時、重要になってくるのが、ノマドの生き方となるはずだからだ。
  • 自分が次に何をしたいかを考えて、自分の次の人生をつくるということ、投資をするということだ。
  • 自分を型にはめずに、あえて宙ぶらりんにしておく。その場に貢献しつつ、自分もその場から吸収しつつ、次の展開を考える。
  • 自分の軸を持ちながら、相手の優れたところを新たに取り込んで、ハイブリッドに生み落とす。そうした力がある限り、新しい場所に行っても常に価値を生み出すことができる。
  • 見てから跳ぶのではなく、跳ぶことによって見えてくる、新しいことが発見できる。実存主義の概念で言えば「投企」だ。私達人間は、常に現実の中に飛び込んで、事故の可能性を追求し続ける存在なのだ。
  • 自分の軸を持ちながら新しい経験をすることによって、さらなる高みにつながる。弁証法で言うところのアウフヘーベンする。LEAPすることこそが、非連続な時代における自己生成を駆動するのである。

 

  • インプット時間の規定:仕事に対して使える時間を規定してしまうこと。予め自分の時間をギリギリまで使わないですむように計画するのがポイントだ。
  • 次に重要なのが、処理すべきタスクの優先順位決め。仕事を来た順番に行うのではなく、インパクトがあって、かつ自分らしい能力が生かせるものを優先させる。横軸に業務のインパクト、縦軸にスキルの独自性をとる。フォーカスすべきは北東すなわち右上だ。切るべきところは、明らかに左下ボックスである。

  • 独自性があるからといって、自前だけで全部やり切らないで、他力を活用することも大切だ。
  • レバレッジをかけるためには、業務の標準化が必須だ。

 

  • 五年に一回来る非連続のときはマッキンゼー。それを組織の力に落とし込むときはボスコン
  • 長期を見るときにはマッキンゼー、短期に実践する際にはボスコン

 

  • 新しいことを行うためには、一度ゼロベースに立ち返ることが重要だ。これは、企業だけではなく、個人にも当てはまる。自分をもう一回、ゼロベースにして、新しいものに対してチャレンジできる状況にしておくことが大切だ。
  • 自分だけが本当に生み出せる価値は何かということにこだわり続ける必要がある。
  • 重要なのは考え続けることだ。

 

  • 青春とは心の若さである。
  • 信念と希望にあふれ、勇気に満ちて日に新たな活動を続けるかぎり
  • 青春は永遠にその人のものである