まずはアパート一棟、買いなさい!

  1. 1500万円のアパートを一棟購入(利回り3%で満室時の年間家賃収入300万円)
  2. 次にもう一棟同じく1500万円のアパートを購入する
  3. 2000万円のアパートを一棟購入(利回り3%で満室時の年間家賃収入400万円)

 

  • さらに具体的にいうと、1500万円で利回り8%の物件であれば、6~7年で回収。
    購入にはできるだけ低金利で長期のローンを組んで、繰り上げ返済はほどほどにして資金を蓄えます。蓄えた資金を元手に1~2年後にまたローンを組んで1500万円の物件を購入。同じように資金を蓄え、1~2年後に2000万円の物件を購入します。
  • そうすれば10年後には、「無借金で年間1000万円の家賃収入と数千万円の実物資産」という目標をほぼ達成できます。これは理想的に進んだ場合ですが、決して非現実的な話ではありません。現に僕はそうやって、4年目には年間家賃収入5000万円、市場価格3億数千万円の実物資産を築きました。まだローンは残っていますが、これ以上物件を増やさないと決めれば、繰り上げ返済をしてあと9年でローンのない状態になれます。
  • 不動産投資は、手軽に始められる株式投資などと違い、事業ですから、あらかじめ長期の事業計画を描いてから始めるに越したことはありません。投資の目的地がどこにあるかによって、取るべき戦略は違ってきます。手持ち資金の少ない人が年間家賃収入1000万円を目指すなら、最初に都心の区分所有マンションを買うべきではないのです。さらなる資金を貯めるまでに、一棟アパートの比ではなく年月がかかってしまいます。
  • もしも「プラス毎月万円」でよければ、最初に1500万円(利回り8%)の一棟アパートを買うだけでいいですし、「プラス毎月3万円」を目指すのであればさらに2棟目を買い進めた時点で終わりにすればいいでしょう。「プラス毎月3万円」ならば利回り20%でなくてもいいと思います。利回りの高いものは「築古」「修繕費用」「空室」などそれだけのリスクがあります。1500万円で利回り8%の物件ではなくて、2000万円で利回り5%の物件を2棟買って、満室に近い経営をしていけばいいわけです。
  • なお、無借金状態まで10年というのは最速のイメージですから、これは20年後でもかまいません。そうなるとある程度繰り上げ返済もして、ローン残高というリスクを減らしつつ、時間的に余裕を持って物件を増やしていけばいいということになります。
  • 自分の目標が明確であれば、それを達成するために適切な戦略を描くことができますし、個々の物件をどういった戦術で経営していくかも自然と答えが出てくるでしょう。戦略や戦術が適切ならば、最初は小さい規模から始めても、徐々に拡大していけるでしょう。
  • あなたは10年後、もしくは20年後、どれくらいの収入を得ていたいですか? それを自分自身に問いかけてみることから始めてください。

狙うは地方か、都心の築古一棟アパート

  • それでは具体的に、「10年後に無借金で年間家賃収入1000万円」という目標を達成するために、どういう物件を買うべきなのかについて説明しましょう。
  • 狙いはズバリ、以下の2つのどちらかです。地方の一棟アパート、都心ならば築古の一棟アパート
  • いずれも購入価格1000万~2000万円の間で、利回りは5%以上、できれば20%
    くらいを目標としたいところです。
  • アパートで1000万~2000万円の物件というのは、不動産投資の世界ではかなり
    安価な部類です。それほど所得の多くない人であれば、このラインが現実的に買える物件だと思います。そうした安価な物件でも、2ページの例のように、3棟ないしは4棟、買い増していけば、年間家賃収入が1000万円くらいになります。また資産を分散して持つことは、それだけリスクも分散されることになります。
  • なぜ地方なのか、なぜ都心の築古なのかというと、これは単純に、その条件でなければ高利回りを得ることが難しいからです。利回りの高い物件というのは、言い換えればそれだけリスクの高い物件ということです。そのリスクをしっかり見極めて、努力によって克服できるのであれば、むしろリスクを取っていこうというのが、僕の提唱するやり方です。
  • まず地方の場合は都心のように人がどんどん集まってくるわけではないですから、入居付けに不安があります。半分以上も空室で売りに出されているような物件も多く、それでは買い手がつかず、必然的に安価で利回りも高くなるというわけです。
  • しかし空室率が高い地域であっても、満室経営を行っている人はいます。そのテクニック(初期費用全部ゼロ作戦)は、8ページで詳しく説明します。また、地方の場合は序章でも説明したように、のんびりした資産家の高齢大家さんが多いですから、競争相手が少ないということもプラス要素として挙げられます。
  • 逆に都心の築古物件の場合はどうかというと、地域としては賃貸需要が見込め
    立地がよければ入居付けの苦労はさほどのリスクではないと思います。
  • ただし、建物には「法定耐用年数」というものがあり、木造住宅の場合は2年と決まっています。もちろんその期間を過ぎているから住めない、建て替えなければならないといったことはありません。世の中には築30年や100年といった家もゴロゴロあります。

マイホームの購入は基本的には後回しに

  • 「二兎を追う者は一兎をも得ず」ということわざがあるように、「10年後に無借金で年間家賃 賃収入1000万円」という状態を望むのであれば、マイホームの購入はあと回しにすべきだと僕は思います。
  • なぜなら、物件を買っていくためには融資が不可欠ですが、金融機関はたとえマイホームの住宅ローンであってもそれを負債としてカウントするため、融資を引く際の足かせとなってしまうからです。
  • 例えば貸家に住んで月に10万円払っている人と、持ち家でローンに月8万円(ボーナス払いなし)を払っている人では、持ち家の人のほうが可処分所得は月に2万円多いわけですが、それでも負債がない状態のほうがローンは引きやすいのです。金融機関が判断する評価基準は、単純に「負債を抱えているかどうか」です。
  • ただし既に家を持っていて、その返済がよほど早く進んでいるならば担保余力が出てくるので話は違います。また都心など路線価の高い場所にあり年々地価が上がって担保余力が増していくような家を買うのなら別です。そうでない場合は、これからマイホーム取得と不動産投資を同時に進めるのは、お勧めできません。金融機関からの融資枠には限りがあるわけですから、お金を生み出す投資に集中させるほうが得策です。
  • 基本的には、収益性のあるものに先にお金を回すべきですが、例外もあるので紹介しておきます。
  • 最近、銀行筋の方から「賃貸物件に居住していて収益物件の融資を希望する人は、金融機関でそれを審査する上の役職の人、特に年配の銀行員からの受けが悪い」と開きました。というのも、年配の銀行員の中には、マイホーム取得者を「持ち家のあるしっかりした人」と見る向きがあるので、たとえローンが残っていても自宅があるほうがプラスに働く場合もあるというのです。
  • では、収益物件とマイホーム、本当はどちらを優先すべきなのでしょう? 僕はやはり収益物件のほうだと思います。銀行でどんな人が融資の審査をするのかはわからないわけですし、自宅のローンがない状態のほうがリスクは少ないわけですから。それに、今300万円を持っている人がそれを頭金に3000万円のマイホームを買って、ローンを払いながら再び300万円を貯めるのはたいへんなことでしょう。
  • だからマイホームが欲しくても、先に不動産投資をしてお金を作る仕組みを作り上げからのほうがいいと思います。
  • 次に、その地方がいわゆる「車社会」である場合は、「全世帯分の駐車場を敷地内に確保できること」が僕の中の必須条件です。それさえ満たしていれば、駅からの距離はほとんど気にしません。地方の車社会というのは「車がなければ生活に支障をきたす」レベルで、大きな駐車場を備えたショッピングモールは大盛況だけれども駅前商店街は寂れる一方で、今や地方の中小都市はそんな状況のところが多いです。
  • 僕が小山市に購入した物件は、前オーナー時代はファミリー4世帯に対して6台分の駐車場しかなく、そのせいか15世帯しか埋まっていませんでした。僕が購入後、庭をつぶして駐車場を3台まで増やしたところ、たちまち空室が埋まっていきましたから、駐車場の需要というのは本当に大きいです。たとえ近隣に大きな駐車場があったとしても、それが将来にわたって駐車場であり続ける保証はありません。大きな土地はほかの用途でも使い勝手があるので開発される可能性が高いです。
  • 車社会だと、大人の人数分2台、3台と所有する家庭が多いですから、本当は世帯数と同数でも足りないくらいです。最低限として敷地内に全世帯分の駐車場が確保されていることは、地方で物件を買うなら絶対に譲れない条件ですし、どんなに魅力的な物件であっても、それを満たせないものは買うべきでないと思います。
  • 地方でもバスや電車などの交通機関がしっかり発達していて、必ずしも車社会でないところもありますから、そこはしっかり調査して、駐車場の有無が入居者付けに影響しない確信が持てれば買ってもいいと思います。

建物規模が大きすぎないほうがいい理由

  • さらに、これは都心に買うときも同じなのですが、建物のボリュームは大きすぎないほうがいいと思います。なぜならボリュームの大きい物件は、なにかあったときのインパクトが大きくて、またなにかと経費がかさむことが多いからです。「欅いっぱいのワインに、一滴の泥水を加えると、それは泥水である」という格言をご存じでしょうか。
  • 縁起でもない話ですが、仮に一部屋で自殺や殺人事件などがあった場合に、アパート全体が風評被害を受ける危険性があります。まるで一滴の泥水が梅全体に及ぶように、1世帯で起こった事件・事故が建物全体に影響を与えるのです。その場合、例えば全8世帯よりも全世帯の物件のほうが、被害総額も大きいということになります。
  • さらにいえば単身者向けの物件とファミリー向け物件の場合、専有面積が倍になるから家賃も倍取れるというものではなく、数割増しといったところです。ですから広めのファミリー物件で利回りが高いものというのはあまり出てきません。そしてリフォーム代は、単身者向けの物件と比べて数倍かかるイメージです。
  • なぜかというと、間取りが多いと壁面の施工面積が増え、またリフォームのなかで扉や引き戸といった建具というのが、かなりの費用を食うからです。部屋数が増えるとそれだけ建具の数も増えます。ワンルームや1Kであれば扉の1つ2つで済みますが、僕の小山市にある物件は3DKでなんと7枚もあります。扉ひとつを新調するのに2万5000円かかるとしたら、建具だけで3万円近くになるわけで、これは相当に厳しい出費です。
  • 税金の面でも、ボリュームの小さいものはそれだけ固定資産税などが安く済みます。
  • また売りたくなった場合にも、小ぶりな物件は現金で買える人が多いので売りやすいというメリットがあります。対して1億円を超えるような物件は、銀行の融資が渋くなっている現状ではお金持ちの人しか買えません。そうしたお金持ちがそうそう都合よく現れてくれるとは限りませんので、売りたくても売れなくて、結局は大幅な値下げをのむしかないという事態もありえます。
  • この本では300万円からの自己資金で買えるものを想定しているので、物件規模を大きくしすぎないという話はあまり関係がないかもしれません。仮に、いくらボリュームの割に安くてお得な物件があったとしても、初心者が1棟目に選ぶには、管理や修繕費用、出口戦略の面からたいへんなことのほうが多くなりますので、安易に手を出さないほうが無難でしょう。

都心の築古木造アパートはボロくても問題なし

  • 次に、都心の一棟アパートについてお話しします。都心で2000万円以下で買えるようなものは、おそらく築30~10年は経過した築古物件が多いと思います。そうした物件は法定耐用年数が過ぎているので融資が付きづらく、見た目や間取り、設備も古くさく、再生させるには大規模なリフォームが必要になるので安く売りに出されるわけです。これは、はっきり「ボロ物件」といってしまっていいでしょう。
  • しかし僕に言わせれば、ボロ物件だからこそ勝機があります。都心の物件の場合は、最寄り駅の大きさや駅からの距離といった立地の利便性が、たいていの難を吸収してくれます。そうした立地のいい場所に、安く物件を仕入れて、きれいにリフォームして貸し出せば、とんでもない優良物件に仕上がる可能性があるのです。
  • 基本的に内装はいくらボロくても問題ありません。リフォームでいくらでもきれいになります。そもそも木造アパートのいいところは、いくらでも修繕できてしまうところです。
  • 現在の日本のリフォーム技術は秀逸ですから、柱が腐っていても取り替えられますし、土台の部分の柱がダメになっていても隣に別の柱を立てて補強できます。

建て替え禁止の「再建築不可」でも大丈夫

  • 都心の築古物件で格安なものの中には、「再建築不可」という条件のついた物件があります。これは読んで字のごとく「建て替えることが法律で禁止されている物件」で、新築が建てられないために格安で売りに出されているわけです。
  • 再建築不可物件の中でもよくあるのが、今の建築基準法の「敷地が幅4m以上の道路に2m以上接していること」という決まりを満たしていない場合です。この法律というのは時代によって変わるので、昔に建てられた建物には今の法律に適合していないものがままあります。
  • そうした物件に対して、「今の法律に適合しないので建て替えてはダメですよ」と押された烙印が、「再建築不可」ということです。
  • ただしこれは、賃貸業を運営するうえで、収支面にはあまり影響のない話です。それに再建築は不可でも、リフォームすることは問題ありません。僕が聞いた話では「柱を一本でも残しさえすれば、新築同様に再生させてもリフォームと主張できた」そうです。実際、す。しかしリフォームであっても、固定資産稅は実態に基づいて新築扱いになるケースもあるそうで、おもしろい話ですね。
  • また、道路幅が狭くても2m以上の間口が取れるのなら、その敷地の一部分を道路として提供し、建物を少し引っ込めて建てること(セットバック)で、再建築が可能になる場合もあります。それ以外にも隣接地を購入して再建築を可能にするケースもあります。そうなると出口戦略も広がってきます。
  • ただし再建築不可物件の場合、金融機関の評価は非常に低くなり、融資が引きづらくなる点ではマイナスとなるでしょう。購入するために融資が受けられないだけでなく、担保価値も低いので、将来的に物件を買い増すときの共同担保としてあまり期待できないといのもマイナスです。
  • ですから第1章でも述べたように、戦略目的を決めておくことが大事なのです。最初に再建築不可物件を組み込んでしまうと、次の物件を買い増すステップになかなか移りづらいので、目的に沿って購入する順番を考えていく必要があるからです。
  • 1棟目は地方の物件を長期のローンで購入し、2棟目は都心の再建築不可物件を短期のローンで買い、高利回りを生かして5年後くらいに完済して次を狙うなど、組み立て方はいろいろあります。「再建築不可だから」と一律に尻込みせず、高利回りのメリットをうまく戦略に組み込んでいけば、目標の達成にいち早く近づけます。

任意売却物件のメリット、デメリット

  • 僕の場合、やはり競売は狙いません。それよりも「任意売却物件」の情報を仕入れておくようにします。
  • 任意売却物件というのは、競売になる前に売主が債権者の合意のもとに「任意」で物件を現金化する仕組みです。競売のように入札制ではないので、購入できる確実性が上がります。物件の調査にしても、カギを借りて室内に入ることができますし、レントロール(賃貸状況一覧表)を見ることができますので、その点でも安心です。
  • とはいえ通常の売買とは違って、売主と自分だけの相対取引ではなく、債権者との調整がかなり面倒で時間がかかるのはデメリットです。債権者に多かれ少なかれ、「泣いてもらう」、つまり不動産に抵当権を設定している債権者に、残りの借金を棒引きしてもらうわけですから、債権者全員が「イエス」と言ってくれる保証はありません。すんなり交渉が成立する場合もあれば、モメてこじれて、結局は競売に流れるものもあります。なお僕の小山市の物件は任意売却で買ったものですが、話をまとめるのに5ヵ月かかりました。
  • その間、ほかにいい物件が出てきても、じっと指をくわえて見ていなければならず、それはすごくストレスを感じました。

オイシイ物件の見分け方

  • 立地がよくて築浅で満室稼動している物件が、利回り20%で売りに出ていたりすれば、ものすごく「オイシイ」ですよね。でも現実的には、そういう物件に出合う確率は非常に低いものです。
  • この場合の高利回りの物件は、たいてい築古でボロいとか、地域の入居率が悪いといった理由で空室だらけだからこそ、安値で売りに出されているわけです。都心の築古で再建築不可の物件でも、もしも満室稼動していたら、それほど高利回りにはならないと思います。
  • オイシイ物件というのは、それほど手間や時間、お金をかけることなく、満室にできて高利回りにできるものを指します。しかし時間と労力と費用がかかっても、リフォーム費を含めて20%以上の利回りが見込めれば、これは投資のうまみがある物件だと思いますし、15%しか出なくてもほとんど手間もお金もかけてないのであればオイシイでしょう。
  • そうしたオイシイ物件を見分けるには、現地調査が大事です。なぜ入居者が付かないのか、入居者視点でしっかりと分析しましょう。
  • このとき「駅から徒歩20分で遠すぎる」「線路沿いでうるさい」「日当たりが悪い」など、大家側の努力ではどうにも克服できないマイナス面が主要因だとはっきりすれば、潔く諦めたほうがいいかもしれません。
  • そうではなくて、「単にボロい」「間取りや設備が古い」といったことであれば、これはリフォームでいくらでも克服が可能です。外壁をきれいに塗り直すだけで生まれ変わったようにきれいに見えますし、内装もいくらでもピカピカにできます。本当に新しさにこだわる入居者は新築や築浅で探すので難しいと思いますが、いくらでも手を加えられるのにやっていないことで損をしている物件というのは、かなりあると思います。
  • 風呂なしのアパートは敬遠されると思いますが、廊下などにデッドスペースがあれば共用のシャワーブースを設置するという手もあります。居室に十分な広さがあるのなら、冬居室に設置してもいいでしょう。最近の特に若い人はシャワーで済ませてしまう人も多いですし、外国人もターゲットになるのであれば、そもそも彼らは湯船につかる習慣がないので、それで十分に勝負になると思います。
  • あとは費用対効果の問題で、どのくらいの費用でどういうリフォームができるか概算でイメージして、それを含めた取得費用で利回りがどれくらい出るかで、きっちり判断すればいいわけです。
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「融資が引きやすい」という理由で買うのは危険

  • 物件を買うには、普通は金融機関から融資を受ける必要があります。ただ僕が勧めるような、利回りの高い地方の物件や都心の築古物件には、金融機関はあまりお金を貸したがりません。なぜなら資産性が低く、担保価値も低いからです。
  • ではどういう物件なら融資を引きやすいのかというと、当然、資産性の高い物件です。立地がよく、つまり土地の価値が高く、建物も鉄筋コンクリート(RC)や築浅といった価値の高いものが、金融機関には喜ばれます。
  • しかし、「融資が引きやすいから」という理由で物件を買うのは、非常に危険です。なぜなら銀行が貸したがる物件は、資産性は高いですが同時に利回りが低い傾向にあるからです。つまり、買ってもそれほど儲からないのです。
  • 自己資金300万円の人にはあまり現実味のある話ではありませんが、例えば都内の一等地に新築で1億円、利回り8%のマンションを、フルローンで買ったとしましょう。億円の物件の利回り8%は年間家賃収入でいうと800万円、月額で約8万円になります。十分に儲かると思うでしょう? ところが話はそう簡単ではありません。
  • まずローンの支払いです。30年の固定金利4%のローン(元利均等返済)を組んだとすると、それだけで月々約2万円の支払いです。そうなると、手残りは9万円です。
  • 資産価値が高いということは、それだけ固定資産税も高くなります。固定資産税は高いと満室家賃の1~2ヵ月分はかかります。さらに管理費として通常は家賃収入の5%を支払います。そのほか共用灯の電気代、給水ポンプの電気代、エレベーターがあればその電気代など、毎月2万~3万円の電気代が必要です。そのほかエレベーターのメンテナンス費、消防法に準じた消火設備や法定点検費用もかかりますので、そういったもろもろの経費を考えると、新築だからリフォームがないとしても、へたをすると満室で収支がプラスマイナス0にしかならないこともありえます。
  • 優遇金利で2・8%に下がったとしても、月々の支払額は1万円くらいありますので、月に7万円前後しか残らないということもあります。2部屋も空室が出たとしたら、たちまち赤字ということですよね。空室リスクに対応できる力が非常に弱いわけです。これでは資産性はあっても、リスクもある買い物だと思います。
  • 黒字化するには30年間ずっと満室にしていなければならないわけで、まだ新築のうちはいいかもしれませんが、3年もたつと赤字物件に転落するのは目に見えています。利回り8%はあくまで新築時のプレミアム家賃での話ですから、築古になっていくと家賃を下げ、一部屋退去があるたびに何十万円もかけてリフォームしなければならないわけです。
  • バブル景気以前のように、年々土地の価格が上がっていくのであればどこかのタイミングで換金して利益を得られるかもしれませんが、これからの時代はまず無理でしょう。
  • 立地はいいけれども低利回りの物件というのは、お金持ちが自己資金をたっぷり入れて買うか、本業で年収の高い人がある程度の持ち出しを覚悟しつつ資産価値を求めて買うのであればいいと思いますが、お金のない人がフルローンを組んで買うと、もう完全にアウト、利益を出すのは難しいです。

融資よりも高利回りを重視する

  • 物件を購入する動機が「銀行が貸してくれるから」では、自分が主体ではなくなります。融資が出るから確実に買えるという状況になったら、「こんなチャンスはめったにない」と思い込んでしまう気持ちはわかります。でも「10年後に年間1000万の家賃収入と数千万円の資産」を築くつもりであれば、それは決してハマってはいけない罠です。
  • 買う基準はあくまで利回りの高さであるべきです。そうなると選択肢は自動的に、融資を引きやすい資産性の高いものではなく、むしろ融資を引きにくい地方の物件や都内でも築古物件に限られます。
  • 融資が引きにくいから値段も下がり、必然的に高利回りになるともいえますが、そんな物件でも実は融資を引く方法があるというのが、不動産投資の肝です。融資について詳しくは次の章で解説しますが、地方物件や築古物件でも、手はあります。
  • 木造のほうがランニングコストも固定資産税も安いですから、へたをすると1億円の利回り8%の一棟マンションよりも1500万円の利回り20%の一棟アパートのほうが儲かるということは十分に考えられます。
  • 1500万円の一棟アパートを金利2.8%、3年のフルローン(元利均等返済)で購入した場合、月々のローンは約6万円。家賃収入は満室で年間300万円、月額25万円で
    すから、ローンの返済と固定資産税そのほかを引いても月々5万円くらいは残せる計算になります。資産価値は低くても、地方や築古物件にはそれだけの収益性があるのです。
  • 僕も実際に地方の物件で利回り20%近いものばかりで不動産経営を6年間やっていますが、返済をきっちり進めつつ、お金もどんどん貯まっていきます。部屋を埋める努力は都心に資産を持つ人よりも要求されますが、それは織り込み済みで買っていますし、実際に満室に近い経営ができています。
  • 特に最初の1棟目は資産形成のブースターとして重要ですから、銀行主体ではなくあくまで自分主体で、しっかり利益が取れる物件を買うようにしましょう。

日本政策金融公庫から借りる

  • 民間の金融機関では融資が難しいという場合に頼れるのが、日本政策金融公庫です。これは2008年10月に設立された財務省所管の特殊会社で、使途が事業であれば個人でも借りられます。賃貸不動産経営というのは立派な事業ですから、メガバンクのように不動産投資だからと渋られることは基本的にはありません。
  • 公庫は民業を圧迫せず、民間の金融機関では受け入れてもらえない案件のために融資を行うというのが原則ですから、収入が安定していないフリーランサーや、収入が低い人たち、自己資金が少ない人たちでも借りられる可能性があります。築古で再建築不可であろうと融資してくれますし、場所も関係なく、さらに固定の比較的低い金利で借りられるのがうれしいところです。
  • ただしデメリットもあります。まずひとつは、融資期間が短いことです。長くても10年、15年といった期間でしかローンを組むことができないので、たとえ金利が低くても月々の支払金額が多くなり、余剰資金をそれほど貯められません。もちろんローン残高は順調に減っていきますし、支払期間も短いため払う利息の総額も少ないのですが、それでも手元に資金が貯まりづらいというのは、物件を買い増していくにはマイナスかと思います。
  • また、物件への評価が厳しいのもデメリットです。例えば 2000万円の物件に対して、民間の金融機関がだいたい7割前後、1400万円程度の評価を出すとすれば、公庫の場合は5~6割、1000万~1200万円くらいのイメージです。こういうところで安全基準を厳しくしているといえそうです。だから公庫を利用するなら、自己資金を多く用意しておいたほうがいいでしょう。

「保証人枠」「新企業育成貸付」でより多くの融資を受ける

  • しかし、この公庫のいいところは「保証人枠」というものが使えることです。それは配偶者でもいいですし、あるいは本人と生計を別にする人的担保(保証人)を立てることができれば、職業や年収などの属性にもよりますが、より多くの融資を受けることが可能になります。共同担保に入れられる物件があれば、当然それも有効活用できます。
  • さらに公庫のメリットは、民間の金融機関では物件の購入価格までしか貸してくれませんが、公庫の場合はリフォーム費用や運転資金まで貸してくれることです。また、購入後に大規模修繕の必要性が出てきた場合にも、別途リフォームローンを組むことも可能です。
  • 借りるのにそれほどハードルは高くないですし、返済スケジュールの引き直しの相談にも乗ってもらいやすいですし、日本政策金融公庫はとても安心な借入先かと思います。
  • なおこの公庫にはいろいろな融資があって、僕が今まで説明してきたのは、「普通貸付」というものです。このほかに「新企業育成貸付」や「女性、若者/シニア起業家資金」というものがあり、これらを利用すると各7200万円まで融資を受けることができます。
  • ですから1棟目2棟目は個人で買って、きちんと満室で経営して、それから奥さん名義、または自分で会社を作って、「新企業育成貸付」「女性、若者/シニア起業家資金」で大きな物件を買ってもいいわけです(前者は平成9年3月3日まで、後者は平成9年3月3日までの取り扱いですが、こういった融資制度は呼称や期間などの条件を変えてまた用意されるものですので、知っておいて損はないです)。
  • 現に僕の大家仲間は、家族がアパートを経営する法人で普通貸付を限度額まで利用したあと、新規で会社を設立して新企業育成貸付から6000万円を借りて、新築アパートを2つ建てました。
  • このように、持たざる者に優しく、実に使い勝手があるのが日本政策金融公庫です。きちんと保証人を立てられたり、共同担保に入れられたりする物件(例えば実家など)があれば、融資は担保を差し出してからという公庫特有のルールを踏まえても、ぜひお勧めしたいと思います。

任意売却物件のメリット、デメリット

  • 僕の場合、やはり競売は狙いません。それよりも「任意売却物件」の情報を仕入れておくようにします。
  • 任意売却物件というのは、競売になる前に売主が債権者の合意のもとに「任意」で物件を現金化する仕組みです。競売のように入札制ではないので、購入できる確実性が上がります。物件の調査にしても、カギを借りて室内に入ることができますし、レントロール(賃貸状況一覧表)を見ることができますので、その点でも安心です。
  • とはいえ通常の売買とは違って、売主と自分だけの相対取引ではなく、債権者との調整がかなり面倒で時間がかかるのはデメリットです。債権者に多かれ少なかれ、「泣いてもらう」、つまり不動産に抵当権を設定している債権者に、残りの借金を棒引きしてもらうわけですから、債権者全員が「イエス」と言ってくれる保証はありません。すんなり交渉が成立する場合もあれば、モメてこじれて、結局は競売に流れるものもあります。なお僕 僕の小山市の物件は任意売却で買ったものですが、話をまとめるのに5ヵ月かかりました。その間、ほかにいい物件が出てきても、じっと指をくわえて見ていなければならず、それはすごくストレスを感じました。

日本政策金融公庫の利用シミュレーション

  • 日本政策金融公庫の普通貸付の融資上限は4800万円です。理論上は1500万円の
    万物件を3棟買うことができます。ここではそのシミュレーションを行ってみましょう。
  • 自己資金300万円という人が、1棟目として1500万円のアパートを購入するとします。諸費用として100万円ほどかかりました。総取得費用は1600万円です。家賃収入は年間で300万円、利回りは20%とします。自己資金は300万円ですから、1300万円(=1600万1300万)の融資を受ける必要がありますね。
  • 公庫の担保評価額が、仮に売買価格の5%であるとします。すると825万円(=1500万×5%)が融資可能額で、購入するには475万円が足りません。そこで父親を保証人に立てて、足りない475万円は保証人枠を利用することにしました。
  • 借入期間は審査の結果10年間となり、金利は固定で2.5%(平成28年1月5日現在の
    水準)です。そうすると、返済は月々約2万円(元利均等返済)。そのほかの出費として、管理料が家賃の5%として約1万3000円。以下はだいたいの金額設定です。
  • 共用部分の電気代などが2000円、固定資産税など税金が月割計算で1万円、
    火災保険が月割計算で5000円、合計して、月々の支出は約5万円となります。
  • 月の家賃収入が5万円ですから、月々10万円がキャッシュフローとして生まれます。8割の入居率では月額家賃収入は20万円ですから、月に約5万円のキャッシュフローです。入居率5割でははっきり赤字ですから、必死で入居付けしないといけませんね。
  • 満室経営であれば、月々1万円貯まっていくわけで、本業のほうもがんばって、さらに生活費も倹約すれば、1~2年後には再び300万円を貯めることができるでしょう。
  • そうしたら同じように、また1500万円程度の物件を見つけて公庫に融資を打診し、足りない分は返済が進んだ物件の担保余力を共同担保としたり、また保証人枠を使ったりして、1500万円の融資を3回繰り返すことも可能ということです。
  • そうすれば10年後には、退去時のリフォーム費用などを考えなければ、満室経営で月に2万円のキャッシュフロー(1棟目のキャッシュフローは月に8万円、2棟目と3棟目はそれぞれ0万円)があるわけですから、繰り上げ返済をしてあと1、2棟を増やせば「無借金で年間家賃収入1000万円」になるのはすぐそこです。

購入予算を算出するときの注意点

  • 物件の購入予算は、慎重に決める必要があります。なんとなく「表面利回り5%あればいいな」程度の意識では、買ったあとに悔やむことになりかねません。
  • まず、物件を購入する際の諸経費は必ずかかりますので、これは最初から計算に入れておきましょう。火災保険も、通常はローンの期間分、一括で払うことになるので、数十万円のまとまった出費になります。あとで詳しく解説しますが、こうした保険料も含めていくと購入価格の6~7%程度はかかります。諸経費を考慮すると表面利回りから1%くらいは収益性が下がることになります。
  • 1000万~2000万円程度の物件では、購入時に既に満室ということはあまりないと思います。リフォームして建物や居室の魅力をアップさせて入居者を引き寄せなければなりませんから、その費用も忘れてはなりません。特に築古物件は、何百万円もかけて大規模なリフォームが必要な場合があります。それなりにきれいな部屋の場合にも、温水洗浄機能付き便座など設備面を充実させる必要があるでしょう。
  • リフォーム費用は、ある程度は正確にイメージしたいところです。200万円で済むと思っていたけれどフタを開けてみたら400万円かかった……といったことはよくあります。下見に同行した仲介業者に「これはいくらで直りますか?」と聞いたり、できれば自分でリフォーム業者を手配して見積もりをもらっておいたりするといいでしょう。見積もりだけならタダですから。シロアリが心配であれば、その調査も頼んでおくこと。調査だけなら無料の場合もありますし、駆除や補修が必要ならそれも予算に加えます。
  • 以上の要件を購入価格に乗せて利回りを計算し直します。ここからローンの金利を引いてイールドギャップを計算します。前述したように僕の基準は2%以上。それが確保できる金額を、購入にかけられる最大の金額と決めればいいでしょう。
  • さらに細かくいえば、購入後には管理会社への管理料、共用部分の光熱費、固定資産税や都市計画税などもかかってきます。管理料の相場は家賃収入の5%で、光熱費や税金は仲介業者を通じて売主に確認しておきます。また退去時にはリフォームが発生しますし、将来の大規模修繕のためにも家賃の5%程度は毎月修繕積立金をプールしておきたいところです。それらも勘案していくと、その物件の実質の利回りが見えてきます。そこからローンの返済額を引いて初めて、キャッシュフローがいくらになるのかがわかるのです。
  • たとえ2%が確保できても、そのキャッシュフローが事業計画に適しているかどうかは、将来の金利上昇や空室リスク、家賃下落などを考えつつ、慎重に判断していきましょう。
  • その物件をいくらまでなら買えるか予算を決めたら、 いよいよ値引き交渉開始で
    です。基本は、その物件の弱点をすべて洗い出して、相手にも同じ認識を持ってもらうことですが、それには順番があります。

購入時の諸費用はこれだけかかる

ここで物件を購入するときの諸費用について、詳しく解説しておきましょう。諸費用の内訳としては、以下7種類があります。
  1. 仲介手数料:これは取引価格により法律で決まっています。不動産売買における仲介手数料を求めるには、以下の簡易計算式を知っておくと便利です。400万円超であれば、「売買価格の3%+6万円」という簡易計算式が使えます。1500万円で
    購入した場合の手数料は、51万円(+別途消費税)です。ただし個人間や業者が自社所有の物件を売っている場合には、手数料はかかりません。
  2. 登録免許税:不動産の所有権の移転登記をする際に納める税金です。細かい計算方法は省きますが、1500万円の物件であればだいたい10万~20万円くらいでしょう。
  3. 不動産取得税:不動産を買うと必ず納める税金です。これも細かい計算方法は省きますが、1500万円の物件であれば、十数万円でしょう。
  4. 印紙税:売買契約書に貼る印紙の代金です。1000万円超5000万円以下の売買の場合、1万5000円(印紙税の軽減措置適用期間中につき)です。
  5. ローン手数料:ローンで購入すると、事務手数料や保証料などさまざまな名目で銀行に手数料を支払います。だいたい十数万円でしょう。
  6. 司法書士報酬:移転登記やローンの抵当権の設定登記は、司法書士にやってもらうことになります。金で買えれば自分で行うこともできますし、安くやってくれる司法書士を探して節約することもできますが、ローンを組んだ場合はたいてい銀行側が用意する司法書士に任せることになります。だいたい6万~8万円くらいになると思います。
  7. 固定資産税および都市計画税の精算金:1月1日の所有者(売主)がその年の分を支払います。よって、年度の途中で売買した場合は日割りでそれを精算することになります。その物件の税額と、何月に売買したかによって決まります。また、これは交渉の過程で、「固定資産税および都市計画税の精算金をまけてもらえませんか?」と頼んでみると、相手も日割り精算が面倒なのか、意外とOKしてくれたりします。
  • すべての諸費用を合算すると物件購入価格の6~7%というのが一般的なところでしょう。登録免許税や不動産取得税は固定資産税課税標準額に一定の数値をかけて算出するものなので、ケースバイケースで調べるようにしてください。物件ごとに幅が出ますから、固定資産税課税標準額を仲介業者に教えてもらって、早めに正確に把握できるようにしたほうがいいでしょう。

大家さんが入ったほうがいい保険

  • 賃貸物件に住んでいる人は、入居時に火災保険もしくは住宅総合保険への加入が条件となっているかと思います。でも賃貸物件オーナーも同様の保険に入っていることは、あまり知られていないかもしれません。
  • 人居者の保険には、自分の家財に対してと、大家およびほかの入居者の家財への賠償が含まれています。例えば風呂の水を出しっ放しにして階下の部屋を水浸しにしたり、火事を出して隣の部屋も燃えてしまったりしたときに、その損害分まで補償してくれるわけです。
  • そうすると、「大家はそこに住んでないし、入居者が全員それに入っていれば問題ないじゃないか?」と思う人もいるでしょう。それはそれで確かに間違いではありませんが、では大家が入る保険というのはどういうものでしょう?
  • 大家が入る保険は、入居者が入る保険とはやや性格が異なり、建物そのものにかける保険です。火災保険の場合には、火災のほか、落雷、風災、雪災などによって建物が損害を受けたときに、その補修費用が出ます。さらに住宅総合保険の場合は上記に加えて、建物外部からの物体の落下、衝突(車の当て逃げなど)、水濡れ (消火放水による水濡れも対象)、盗難による毀損、汚損(ガラスを割られるなど)、水災(床上浸水や土砂崩れなど)といった損害賠償にも対応しています。
  • またオプションで、施設賠償責任(階段が壊れて転落したり、水道管が破裂して入居者の部屋が水浸しになったり、施設の問題に起因する事故を補償)、休業家賃補償(火事で焼けたりしたときに、再び入居者が付くまでの家賃を補償)といった特約も付けられます。さらに地震保険も付ければ、一通りのリスクには対応できると思います。

入居者が原因ではない事故や災害が起こる場合も

  • 入居者が原因の火事の場合は入居者の保険で対応できるのですが、放火やもらい火の場合は、大家が保険に入っていないとアウトです。もし入居者が部屋に故意に火を付けたとしたら、これも入居者の保険は使えません。それ以外にも前述のように、入居者が原因でない事故や災害は多いですから、それらから建物を守るために、やはり保険には入ったほうがいいわけです。保険はそもそも自分の財産を守るものですから、他人の保険を当てにしてはいけないと思います。
  • でも実際、保険に入っていない大家さんもいます。僕の知人の一棟マンションオーナーは、「RCは燃えないから大丈夫」と豪語して、保険に加入していません。でも軀体は燃えなくても内装は燃えますから、それが放火やもらい火だとしたら自腹を切ることになるののですが……。
  • 融資を受けて購入した場合は、基本的に融資期間内の保険には加入しますから、あまり関係のない話かもしれません。この保険金額は、規模や構造によって変わってきますし、長期間分を一括で払うことになって割り引かれるので一概には言えないのですが、1500万円くらいの物件なら、年間に直すと2万円くらいでしょう。火災保険ではなく住宅総合保険に入るとまた保険料は上がって、年間で2万5000円くらい。さらに地震保険にも入ると4万円くらいかと思います(地震保険は最長で5年間しか入れません。5年ごとに更新することになります)。
  • 築古物件の場合は、なにがあるかわかりませんから、火災保険ではなく住宅総合保険に入って、さらに地震保険にも入ったほうがいいでしょう。保険料は高くなりますが、リスクを考えたらそれは購入予算に含めておくべきです。
  • 物件購入の際には、保険料としてさらに10万円前後は払わなければならないということを覚えておいてください。

常に費用対効果を意識する

  • リフォームは自分の好きにやれるといっても、そこは経営ですから、常に「費用対効果」を意識しなくてはなりません。
  • 基本的な考え方として、リフォームは「マイナスを消す」ことが第一です。例えば洗面化粧台がないという理由で、住みたい対象から外れることもあります。洗濯機置き場も今は室内にあるのが当たり前ですね。トイレも和式だと受けが悪いでしょう。そういう直せる範囲のマイナス要素は直しておくべきですし、そこは予算をケチるべきではありません。
  • 特に外壁塗装というのは、長くやっていないと建物の第一印象が陰気で薄汚れて見えますが、やれば簡単に、びっくりするほどきれいになります。加えて防水機能の回復もありますので、非常に費用対効果が高い投資です。建物の大きさや使う塗料にもよりますが、一棟全面で3万~100万円もあればできるでしょう。全面でなく、見えないところ(特に隣との隙間があまりなく目につかないところ)は塗らずに正面だけでもいいでしょう。外壁の修繕(ひび割れや目地の補修)も兼ねるので一石三鳥です。
  • そうやって基本性能を確保したうえで、アピールポイントとなる補強をしていけばいいと思います。テレビ付きインターホン、温水洗浄機能付き便座、ビルトインコンロ付きのシステムキッチン、センサー付きのダウンライトなどで、魅力を付加していきましょう。


自己満足の罠にはくれぐれもご注意を!

  • ここで重要なのがバランス感覚です。例えば洗面化粧台は、ホームセンターに行けばシャワー付きの新品が取り付け工事費込みで5万~6万円で売られています。家賃が5万~6万円の部屋ならばそんな商品で十分だと思います。それなのにオシャレな陶器のボウルを使った3万~30万円もする、一流ホテルにあるような洗面化粧台を入れた大家さんがいます。安物でもきれいな新品であれば問題ないですから、費用対効果の高いリフォームを心がけるべきで、そのためには入居者のニーズを常に意識しておく必要があります。
  • 入居者ニーズは、ターゲットとなる入居者の層と、エリアによっても変わってきます。都心の単身者向けでは和室は人気がないかもしれませんが、地方のファミリー向け物件では はかえって和室のほうが好まれたりします。そのエリアの競合物件を見てみれば傾向がつかめますので、そのうえでなにかひとつ「+B」を加えて差別化を図ればいいでしょう。
  • また、かつて景気のいい時は、賃料は高くてもデラックスな設備の整った部屋に人気がありましたが、今の時代はそうではないですよね。またフローリングでないとダメだといわれた時期もありましたが、今は畳でも、和の雰囲気を生かしたオシャレな和室に仕上げれば、若い人もけっこう喜んでくれます。
  • 先日、僕の茨城県坂東市にある物件の管理会社さんから聞いた話では、この不況のせいか「安い部屋から決まっていく」そうです。「退去した人は、お金がないからみんな実家に戻っていく」とも。そんな時代だからこそ、アピールするポイントはピカピカのフローリングであったり、何十万円もする洗面化粧台ではないと思います。
  • 予算の目安として、僕の場合、大がかりなリフォームでは賃料の6ヵ月を上限にするように心がけています。ほかの大家さんでは、広さ(m)×2万円という人もいます。「賃料の5ヵ月分」や「平方メートル当たり5万円」というのは参考として、予算を決めたらそれを遵守して「ブレない」というのは、経営にとって大事なことです。
  • リフォームはやりがいがありますし、奥が深いです。いったんやり始めると、「あそこも、ここも」と気になるところが出てきてキリがなく、しっかり予算を決めておかないと底なし沼にハマります。経営者としては、常に「それが入居付けや家賃にどう反映して、最終的に採算がとれるのか?」ということを忘れないようにしましょう。
  • ただし、予算をかけずにおざなりでいいというわけでは、決してありません。努力によってリフォーム費用を抑え、最大限の費用対効果を発揮することが第一です。