新版 お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 知的人生設計のすすめ

  • 経済的独立にはいくら必要か
  • 人生はいちどしかないのだから、自分の思うがままに自由に生きたい。誰もがそう願っています。これが、人生設計におけるゴール(目標)です。ところで、「自由 Liberty」とはいったい何でしょう。それは、「なにものにも束縛されない状態」のことです。
  • このように考えると、自由に生きるためには一定の条件を満たさなければならないことがわかります。その条件とは資産、より端的にいえば、お金、です。
  • 「自由」を経済的な意味で定義するならば、「国家にも、会社にも、家族にも依存せず、自由に生きるのに十分な資産を持つこと」になります。これが「経済的独立 Financial Independence」です。
  • 経済的独立という考え方はロバート・キヨサキの『金持ち父さん貧乏父さん』によって広く知られることになりましたが、自由とお金の関係をはじめて日本人に教えたのは、投資家のR・ターガート・マーフィーとエリック・ガワーの『日本は金持ち。あなたは貧乏。なぜ?』でした。
  • 私はそれまで、自由とは主観的な問題だと素朴に思っていましたから、「お金がなければ自由もない No Money, No Freedom」という徹底したリアリズムはたいへんな衝撃でした。そこで、平凡なサラリーマンが経済的独立を達成して自由に生きるにはどうすればいいかを考えたのが『ゴミ投資家のための人生設計入門』(メディアワークス 1999年1月/現在は『世界にひとつしかない「黄金の人生設計」』として講談社 + d文庫に収録)です。

 

次々と現われるあやしいひとたち

  • 私は個人的な興味から海外の金融機関に口座開設し、さまざまな金融商品に投資してみたのですが、そのマニュアル本をつくるうちに、あやしげなひとたちが次々と現われるようになりました。
  • 「君はなんで、タックスヘイヴンの利用法を1600円の本に書いたりするんだ」と、ある紳士は私を怒鳴りつけました。彼はオフショアバンクの口座開設を、100万円ちかい手数料を取って請け負っていました。「本になどしないで、私と組んで富裕層向けのコンサルティングビジネスをすれば年収1億なんて簡単だよ」と誘ってくるひともいました。彼は税理士や会計士のネットワークを持っており、税金を払わない方法を知りたがっている金持ちをいくらでも紹介できる、というのです。
  • 「いいかい、贈与・相続税がタダになるなら、10%の手数料なんてみんな喜んで払うよ。相続財産が10億円なら手数料は1億円、100億円なら10億円の儲けだ。それを山分けするのでどうだい」
  • 要するに彼も、タックスヘイヴンを利用した(合法的な)節税術が1600円で書店で売られていることが都合が悪かったのです。その当時、オフショアバンクやアメリカのネット証券、香港やシンガポールの金融機関の情報はほとんど知られておらず、口座開設やその活用法をマニュアル化すると、本が書店で売れるだけでなく、読者葉書や掲示板(「海外投資を楽しむ会」のサイトに読者の掲示板を設置していました)への投稿などで大きな反響がありました。一部の専門家や富裕層だけが知っていた情報を公開することには「世の中を変えている」という実感があり、わくわくするほど面白かったのです。
  • これを「出版ビジネス」の醍醐味とするならば、「金融ビジネス」のひとたちの考えはニッチな情報を囲い込み、特定の顧客に高額で販売してボロ儲けする、というものでした。確かにこの方が短期的には高収益をあげられるかもしれませんが、何度話を聞いても私には興味が持てませんでした。
  • 私はやがて、世の中にはきわめて知性が高く、それと同時に「楽して金儲けしたい」「額に汗して働くなんて真っ平だ」と思っているひとがいるという事実に気づきました――それも、ものすごくたくさん。金融業の本質はマネーゲームですから、その特殊性がこうしたひとたちを惹きつけるのです。
  • 彼らは、徹夜して本をつくる私の仕事をまったく理解できませんでした。そして私も、彼らのビジネスのどこが楽しいのかわかりませんでした。しかしこのときの体験は、私にとって大きな財産になります。その後私は、『マネーロンダリング』(幻冬舎 2002年5月)で作家としてデビューすることになりますが、金融業界の周縁に棲息するあやしいひとたちは小説のなかの登場人物として活躍してくれることになったのです。
  • ベストセラー『金持ち父さん貧乏父さん』も例外ではありません。まだ読んでいないという方のために、その内容を要約してみましょう。金持ち父さんになりたければ、
  1. まずは収入を増やしなさい(著者はゼロックスの営業マンとして仕事をしながら、株式投資や不動産売買で資産を増やした)
  2. 次に支出を減らしなさい(金持ち父さん =著者の親友の父親は、大きなビジネスを手がけながらも、質素な生活をしていた)
  3. さらにリスクを取りなさい(著者は不動産不況の際に、銀行から借金をしてまで割安の不動産に投資した)
  4. サラリーマンを辞めて起業しなさい(著者は、サラリーマンのままでは金持ちになれないと説く)
  5. 税金を払うのをやめなさい(この本では、会社をつくって合法的に節税する方法が紹介されている)
  6. 家計のバランスシートをつくって自分の資産と負債を管理しなさい

 

  • すべてのお金持ち本は、原理的に、こうした一般原則に還元されてしまうのです。
  • 最初にお断りしておくなら、確実に金持ちになる方法など、この世にありません。もしそんなものがあれば、世界じゅうのひとが金持ちになっているはずです。百歩譲って、仮に確実に金持ちになる方法があるとしても、それが本に書いてあるわけはありません。他人に教える前に、著者自身がその方法で金持ちになるはずだからです。
  • では、金持ちが書いた お金持ち本”なら信頼できるのでしょうか?残念ながら、そうともいえません。なぜなら、そこに書かれているのは著者個人の体験でしかないからです。金持ちになるヒントを得ることは可能でしょうが、一般化はできません。
  • お金持ち本"には、読者を錯覚させるあるトリックが隠されています。それは、「成功したひとしか本を書かない」ということです。
  • たとえばロバート・キヨサキは、市況の回復を確信して、多額の借金をしてハワイの不動産を買い漁りました。しかし不動産の値下がりで苦境に陥り、め年には夫婦でホームレス生活を余儀なくされ、一時は古ぼけたトヨタを「家」にしていたといいます。見かねた友人が自分の家の地下室を貸してくれるまで3週間、ホームレス生活は続きました。その後、キヨサキの予想どおり不動産は大きく値上がりし、資産形成に成功するわけですが、不動産価格の下落がさらに続けば、借金を返済できずに破産していたかもしれません。その場合は、『金持ち父さん貧乏父さん』が書かれることは永久になかったはずです。
  • ロバート・キヨサキがハワイの不動産を買っていた80年代半ばに日本の不動産に多額の投資をしたひとがいるとすれば、90年代のバブル崩壊で間違いなく破産しています。さらにいえば、ハワイの不動産市況が回復し、キヨサキが投資に成功したのは、バブルの最盛期に大量のマネーが日本からハワイに流れ込んだためです。こうして金持ちになったキヨサキが、バブル崩壊で苦しむ日本人に成功譚を語るというのも、考えてみれば皮肉な話です。
    .
    本を読み終えるまで:2時間2分

 

  • 同様の状況は、大麻覚醒剤などのドラッグや上限金利を超えた融資など、現代の日本でも見られます。ヤクザのシノギは、常に法律のブラックゾーンやグレイゾーンの領域で行なわれるのです。違法とはいえないものの、社会的にはきわめて評価の低いビジネスがあります。風俗業や産業廃棄物処理業などがその典型で、こうした業種で成功して金持ちになったとしても世間一般の評価は低いままです。
  • ほとんどのひとは、たんにカネ儲けがしたいのではなく、それによって社会的な評価も上げたい(みんなからちやほやされたい)と思っています。一流大学を卒業したり、MBAを取得したひとは、〝汚れ仕事、で成功したいとは思いません。ここから、「社会的評価による歪み」が生まれます。優秀な人物が誰もやりたがらない仕事に本気で取り組めば、ほかの(社会的評価の高い)業種より成功する確率はずっと高くなるでしょう(私はそういう理由で風俗業を始めたひとを知っています)。

日本の社会の"秘密"

  • 私も含めほとんどのひとは、国家から役得を得られるような立場でもなければ、法を犯すつもりもなく、*汚れ仕事”に人生を賭ける覚悟もありません。利益をもたらす歪みがあったとしても、それを利用できるひとは限られています。考えてみればこれは当たり前で、誰にでも利用できるなら収益機会はたちまち失われてしまうはずです。
  • しかし、実はそのなかでひとつだけ、その気になれば誰でも利用できる歪みがあります。それが「社会制度的な歪み」です。そのための条件はただひとつ、自営業者(または中小企業の経営者)になって「個人」と「法人」のふたつの人格を使い分けることです。
  • なぜこのような不思議なことが起こるかというと、戦後の日本社会のさまざまな制度がサラリーマン(+公務員)を基準につくられてきたからです。その結果、サラリーマンでないひとたちを平等に扱うことができなくなり、そこから制度の歪みが生じたのです。
  • 地方都市の商店主や、地域に根差した中小企業の経営者たちは、特定郵便局や農協、医師会などと並ぶ重要な票田で、政治家の後援会の中核でもあります。彼らのために便宜を図ることが、自民党から公明党共産党に至るまで、すべての政治家にとって重要な関心事でした。そのため、収入や資産の多寡にかかわらず自営業者や中小企業はすべて、社会的弱者、として優遇されることになりました。
  • もちろん賢いひとたちは、こんなことは当然の常識として知っているでしょう。しかし私は、自分がサラリーマンだった頃は日本の社会制度に大きな歪みがあることにまったく気づきませんでした。これは私だけではなく、(サラリーマン・公務員である)読者の大半も同じではないでしょうか。サラリーマンを辞めて事業を始めれば、誰でも富を獲得できるわけではありません。しかし日本では、*お金持ち、と呼ばれるひとは成功した自営業者か中小企業の経営者で、大企業のサラリーマン社長になってもせいぜい東京の郊外に一戸建ての家が持てる程度です。
  • なぜこのようなことになるのか――それが私の素朴な疑問でした。そして、自営業者になってはじめて、そこに経済合理的な理由があることに気がついたのです。

 

  • 資産運用の初期においては、金融資産に投資するよりも、人的資本に投資した方が合理的です。なぜなら、他人はあなたのために働いてくれませんが、あなたはあなた自身のために真剣に働くだろうからです。
  • サラリーマンが金持ちになるのが難しい最大の理由は、税・社会保険料コストが大きいためです。年収1000万円のサラリーマンだと、実質税負担は250万円にもなります。こんな大金を毎年国に払っていたのでは、金持ちになれるわけがありません。
  • 誰もがキャリアを積んで、年収1000万円を超えるエリートサラリーマンになれるわけではありません。「自分に投資する」とよくいわれますが、その投資の大半は無駄になっているという現実もあります。サラリーマンとして出世したり、ビジネスを立ち上げて成功したり、そういう理想像だけを追い求めても成功の果実を手にできるひとは限られています。では、人的資本に投資しても思うような成果を挙げられない私たち凡人は、どうすればいいのでしょうか?
  • 実は、ここにもちゃんと解決策があります。それは、支出を減らすことです。当たり前のことですが、誰もが確実に資産運用に成功する方法があるはずはありません。さらには、必死になって努力したとしても、100人が100人とも出世レースに勝ち残ったり、ビジネスで成功できるわけでもありません。しかし、支出を減らすことは誰にでもできますし、それによって確実に家計の純利益は増大し、資産は大きくなっていきます。
  • 「金持ちはケチだ」とよくいわれますが、これは論理が逆で、「ケチだからこそ金持ちになれた」のです。確実に資産を増やす方法が目の前にあるにもかかわらずそれを実行しない人間が、資産形成に成功できるはずがありません。
  • 宝くじで大金を当てたひとの大半は、浪費癖によってけっきょく貧乏に戻ってしまうのです。
  • 日本企業の最大のコストは人件費です。日本は世界でもっとも人件費の高い国なので、社員数を減らせば人件費が圧縮され、利益は一気に拡大します。だからこそ、追い詰められた企業は人減らしに必死になります。
  • 同様に、日本の家計の場合、最大のコストは住居費です。親と同居していたり、安い社宅を利用していたり、ローンを払い終わった家に住んでいる場合は別ですが、たいていの人は、年収の20-25%を住宅ローンの支払いや家賃に充てています。年収500万円のサラリーマンの平均的な住居費は年100万~120万円程度でしょうから、これを減額することができればキャッシュフローは劇的に改善します。
  • パラサイト・シングルと名づけられた、親と同居する独身の男女がブランド物を買い漁り、贅沢に海外旅行を楽しむ姿を見れば、住居費をリストラする効果は明らかです。彼らは父親をパトロンに、母親を家政婦にして、世界でもっとも優雅な身分を満喫しています。
  • 不況で収入が減ってきたら、もっと安い家に引っ越せば問題は解決します。住宅ローンの負担が重くなってきた場合は厄介ですが、妙な見栄やプライドは捨てて、いったん持ち家を売却し、身の丈にあった賃貸に移ることを検討するべきかもしれません。赤字を続けていれば、確実に家計が破綻してしまいます。
  • この10年で住宅価格が半値になったということは、現金を持っているだけで、年利7%で運用できたのと同じです。商業物件は3分の1になりましたから、こちらはなんと年利2%相当です。そのうえ、衣類や電化製品をはじめとして、日用品の価格もずいぶん下がったので、生活も楽になっています。
  • それに対して、資産運用に大失敗したのは、株や不動産に投資したプロたちです。
  • 企業も機関投資家も、株や不動産で大損して不良債権の山を築きました。それをすべてバブル崩壊のせいにしていますが、現在問題になっているのは、それ以降の投資の失敗です。
  • 投資指南本の類はこうしたプロ、が書くことになっているので、素人が投資に成功し、専門家が失敗したとは口が裂けてもいえません。そこでみんな、素知らぬ顔をしているのです。

 

  • 日本では「公営ギャンブル」という摩訶不思議なものがあって、国や自治体が法外なテラ銭を取って賭博を開帳しています。最悪なのは宝くじで、購入代金の半分は、買った途端に国に持っていかれます。こんな割の悪いギャンブルは、世界的にも例を見ません。サッカーくじtotoも同様で、誰も買わなくなったのはサッカー人気が下火なのではなく、胴元が強欲すぎてゲームに魅力がないからです。このような公営宝くじは、「国家が愚か者に課した税金」と呼ばれています。
  • 競馬・競輪・競艇オートレース公営ギャンブルも、胴元の取り分が5%という悪質なゲームです。100万円を投じた瞬間に、まだ試合も始まっていないのに賭け金が75万円に減ってしまったのでは、最初から勝負は決まっています。八百長でもないかぎり、法外にテラ銭の高いゲームに継続的に賭け続けて勝てる人間などいないということは、数学的に証明されています。「競馬必勝法」はこの世に存在しないのです。
  • 日本で広く行なわれているギャンブルでもっとも胴元の取り分の少ないのはパチンコで、ゲームへの参加コストは3%前後といわれています。公営ギャンブルよりもはるかに良心的で、勝てる可能性はずっと高くなります。競馬で食べていける人はいませんが、パチンコやスロットで生活している人がけっこういるのはそのためです。

 

  • 地価が大きく下がっていれば、家を売ってもなお借金が残り、身動きがとれなくなります。
  • 会社をリストラされて返済が滞ると、金融機関が不動産を処分してしまいます。こうなると、あとは自己破産するしかありません。ローン完済後に手にする不動産は、こうした多くのリスクに対して支払われる報酬(プレミアム)です。しかし、8年も先の不動産にはたしてそれだけの価値があるのか、いったい誰にわかるでしょうか? マンションの場合、所有者の利害が対立して建替えができなければ、無価値の廃墟になっている可能性すらあります。
  • そのうえ、含み損が生じていては家を買い替えることができません。これでは、家の広さに合わせて家族形態を決めるという本末転倒なことになってしまいます。もともと住宅ローンでの持ち家の購入は、買い替えを前提とした資産運用法なので、現在のようなデフレ経済では無理が生じるのは当然なのです。
  • 不動産は、保有しているだけでコスト(固定資産税)がかかる特殊な資産です。売買時には、不動産業者に支払う手数料(3%)のほか、不動産取得税や登録免許税、登記費用などもかかります。地価の大幅な上昇を前提にしなければ、不動産投資は、もともと割に合わないものだったのです。
  • 将来のインフレと地価の上昇を予想するなら、持ち家も合理的な選択のひとつでしょう。しかしそれでも、不動産の購入を検討するのは、実際に地価が反転するのを待ってからでも遅くはありません。
  • ここ数年で大量供給されたマンションはいずれ中古物件として市場に放出され、不動産価格や賃料を押し下げるのは間違いないでしょう。なにも、わざわざ好んで損をする道を選ぶことはありません。
  • 一方、賃貸はこうしたリスクから完全に解放されています。生活水準や家族構成に合わせて、住む家を替えていけばいいからです。田舎に住むことも、海外に居住してみることも自由です。
  • 30年後に、賃貸と持ち家のどちらが得かは、現時点では誰にもわかりません。したがって、家を買うか買わないかは経済的な選択ではなく、「自由」に対する考え方の違いといってもいいでしょう。
  • 持ち家を購入することで仮に何らかの報酬が得られるとしても、それは自由を放棄した代償かもしれないのです(図1のケース3)。
  • ――いま読み返してみても、不動産投資についての2年前の説明にとくに付け加えるところはありません。とはいえこの理屈は、私が資産運用について書いたなかでもっとも理解してもらえないもののひとつです。再度繰り返しますが、私はマイホームを否定しているわけではありません。マイホーム(不動産)に資産としての特権的な優位性があるわけではない、という当たり前のことを述べているだけです。不動産については『臆病者のための億万長者入門』(文春新書)のなかで別の角度から論じているので、興味のある方は参考にしてください。

 

  • 生命保険も、不動産(マイホーム)と並んできわめて強い感情的なバイアスがかかっている金融商品です。
  • 生命保険は、原著で述べているように、その本質は「不幸な出来事が起きたときに当せん金が支払われる宝くじ」ですが、保険会社は,家族への愛情の証、と宣伝しています。これは、不幸の宝くじ』としての特徴が、「自分が死んだときに家族を守る」という純愛の物語に適しているからです。
  • その結果、保険はたんなる金融商品であるにもかかわらず、巧みなマーケティングによって特別の地位を確保するのに成功しました。こうして多くの日本人が、必要以上の保険に加入してお金を無駄にしているのです。
  • 住居費と並ぶ人生の大きなコストに、生命保険があります。仮に20歳から8歳までの1年間、月額3万円の保険料を払い続ければ総額約1500万円の支出になり、ワンルームマンション1軒買うのと同じです。しかし多くの人が、この無駄な出費に気づいていません。保険というのは、宝くじの一種と考えることができます。
  • 住宅ローンを組んだひとも、その際に強制的に死亡保険に加入させられるので、それ以上の保障は不要です。本人が死亡するとローンの残債が保険金で相殺されるので、遺族の生活費は持ち家の売却で賄うことができるからです。
  • 保険は損をする可能性が高い商品ですから、最低限の保障さえ確保できれば、それ以上は無駄です。日本人のほとんどは何らかの保険に加入していますが、大半は意味のない保険料を払っているだけです。有り体にいってしまうならば、生命保険とは、扶養家族の多い低所得者向けの金融商品なのです。

 

  • 世の中には生命保険を資産運用の一種と信じ込んでいる人がいますが、これは完全な誤解です。終身保険にしろ、個人年金にしろ、資産運用系の保険商品は、宝くじ(保険)部分のコストがかかっているだけ、ほかの資産運用手段よりパフォーマンスが落ちるからです。日本の保険会社はバブル期に実現不可能な高利回りを約束して保険の勧誘をしていましたが、その多くが経営破綻して年金支給額は大幅に減額されてしまいました。
  • 最近は、死亡保障や医療保障に個人年金を加えた総合型の保険が大々的に宣伝されていますが、この手の商品を販売する大手生保は経費率が高く、格安生保と比べて商品に競争力がありません。それをごまかすためにわざと商品を複雑にしているので、検討するだけ時間の無駄です。
  • 現在、もっとも保険料が安いのは、全労済(こくみん共済)、日本生協連(CO・OP共済)、全国生協連(生命共済)などの共済系の生命保険でしょう。これらは毎月1 000円程度の定額掛金制で、加入年齢が上がっても掛金(保険料)が変わりません。それに対して一般の保険商品は、加入年齢に応じて保険料が上昇します。
  • これから新たに保険に加入する場合でも、共済系3社でほとんどのニーズに対応可能です。これらはもともと保険料が安いうえに、決算後の利益を割戻金として保険加入者に還元しているので、割高なうえに契約者配当もない国内大手生保の商品と比較するとコストは半分程度まで下がります。
  • ある経済週刊誌が保険特集をしたときに、大手生保の役員が匿名で共済系の保険に入っていることを告白していましたが、自社の商品に詳しいほど加入する気にならないのも当然です。
  • 経済紙誌は生命保険会社が広告の有力クライアントなので、圧倒的な価格競争力を持つ共済系保険についてはほとんど触れません。そのため認知度がいまひとつ上がらないようなので、ここで紹介しておきます(最近では掛金の安いネット生保も増えてきたので、共済と比較してみてもいいでしょう)。

保険金はできるだけ受け取りにくくする

  • 1カ月の生活費が30万円とすれば、100万円の貯金があれば3カ月は無収入でも生きていくことができます。このようなひとにとっても、もっとも経済合理的な医療保険とは、入院後3カ月たってから無制限に保険金が支払われる商品です。これなら長期入院で貯金が底をついても収入が途絶えることはありません。
  • 3カ月以上の長期入院をする確率はきわめて低いので、ほとんどの場合保険料は払い損になるでしょうが、その分保険料は安くすみます。これで万が一、のときの心配がなくなるのだから、これこそが保険に期待される役割でしょう。
  • ところが日本の医療保険は入院直後(場合によっては初日)から保険金の支給が始まり、8日程度で支給が終わってしまうものもあります。本来必要とされる商品とはまったく逆なのです。

 

  • 世間一般の通念に反して、「子どものいる家庭はマイホームをあきらめるべきだ」という結論が導かれます。住宅ローンを組む際に、それまで蓄えたキャッシュを頭金として吐き出さなくてはなりません。現金がない状態で子どもに多額の教育費がかかるようになると、資金繰りがつかず、家計は簡単に破綻してしまうからです。
  • 一般に、サラリーマンの生涯年収は3億~4億円といわれています。生涯年収を3億円として、このうちの2割 = 6000万円は税金と年金・健康保険などの社会保険料で天引きされ、手取りは2億4000万円。ここから住宅関連支出(7000万円)と各種保険料(1000万円)を引くと1億6000万円。そのうえ子ども2人を育てると4000万円の教育費がかかり、残りは1億2000万円です(図3)。老後の資金として3000万円程度の貯蓄が必要だとすると、実質可処分所得は、残金の9000万円をサラリーマン人生40年で割った年200万円程度にしかなりません。子どもが増えれば、盆暮れに家族で帰省しただけで家計の余裕はなくなり、赤提灯で一杯やる小遣いにも窮するようになります。こうして、見えない「貧困化」が徐々に進行していきます。

 

  • 厚労省は、「将来世代でも厚生年金は2.1倍もらえる」と主張しています。それを信じれば、厚生年金も得になって「年金問題」は消失してしまいます。
  • トリックは、厚生年金の保険料の半額が会社負担になっていることにあります。厚労省はそれを利用して、サラリーマン個人が負担する半額の保険料を基準にすることで、厚生年金の利回りを2倍にかさあげしているのです。
  • 厚労省のこの詐術は、当の政府によって暴露されています。内閣府が会社負担分を加えた総保険料で厚生年金の利回りを試算していますが、それによれば(2014年時点で)6歳以下のサラリーマンでマイナスになっています。厚生年金は、男性に限れば現役世代のほぼ全員が払い損なのです。
  • 日本では消費税を3%上げるのにも大騒ぎしていますが、厚労省にとって都合のいいことに、年金保険料の料率改定に国会の議決は必要ありません。これは払った保険料がいずれ本人に返ってくるとされているからですが、現実には、サラリーマンが納めた保険料の半分は国民年金の赤字の穴埋めに流用され、消えていくのです。

 

  • 国営医療保険は大きく、自営業者が加入する国民健康保険(国保)、大手企業や業界団体が設立した組合健康保険(組合健保)、健保組合を独自で持てない中小企業のための全国健康保険協会(協会けんぽ)の3つに分かれます。
  • 国保は自営業者などが加入するもので、申告所得に応じて保険料を支払い、医療費の7割が公費負担(本人3割負担)です。組合健保(+ 協会けんぽ)は保険料の半額が会社負担で、給与(標準報酬月額)に対して決められた料率の保険料を支払います。
  • 97年6月以前は、サラリーマンの加入する組合健保は、自営業者の国保より保険料が高いものの、保険金の給付も恵まれていました。国保の加入者が3割負担なのに対して、組合健保は本人が1割、家族が2割負担で、そのうえ世帯主の保険料で扶養家族全員の保険がカバーできたからです。
  • ところが97年の健康保険法改正で組合健保の医療費負担が本人2割、家族3割になり、さらに2003年4月の改正で本人・家族ともに一律3割負担になるに及んで、国保と組合健保の給付面での違いはなくなってしまいました(扶養家族の保険料免除は維持)。
  • なぜこのように、サラリーマンの加入する組合健保だけが一方的に改悪されていくのでしょうか。これも、年金制度と構図は同じです。
  • 組合健保の保険料率は、法定上限以下であれば各組合が自由に決めていいことになっており、企業の負担割合を3%以上にすることも可能です。こうして高度成長期に大手企業が競って健保組合を設立し、利益を従業員に還元してきました。
  • 企業や業界団体にとって、健保組合設立の最大のメリットは組合員から集めた保険料を自ら運用できることでした。かつては保険金を支払っても毎年かなりの額の資金が余ったので、それを原資に保養所をつくったり、スポーツ施設の会員権を取得したり、社員旅行を企画したりできたのです。無論、全国の健保組合には旧厚生省のOBが指定席のように天下りました。しかし、幸福な時代は長くは続きません。
  • 企業が運営するとはいえ組合健保も公的保険の一部ですから、組合員の医療費を負担するほかに、公的医療保険の一部、とりわけ高齢者の医療費を分担する義務を負っています。日本の医療費は高齢化によって急速に膨らんでいますが、自営業者の加入する国保の保険料を大幅に引き上げることは政治的に困難です。そこで厚労省が目をつけたのが潤沢な資金のある大企業の健保組合で、次々と法律を改正して後期高齢者支援金、前期高齢者納付金として収奪できるようにしたのです。
  • その結果、健保組合のなかには支援金・納付金が組合員の医療費を超えるところが出てきました。国民医療費のうち約3割(3兆円)が高齢者の医療費で、そのうちの7割(9兆円)は健保組合からの拠出で賄われています。これでは、いったい誰のために組合を運営しているのかわかりません。
  • 健保組合の負担があまりに重くなったことで、厚労省は老人医療費に対する公費をこれまでの3割から5割に引き上げました。しかしこれからも高齢者は増え続けるのですからこの程度の改革は焼け石に水で、制度が危機に陥るたびにサラリーマンにツケが回る構図は今後も変わらないでしょう(もちろん、こうした仕組みは介護保険も同じです)。これが、私たちが暮らす日本という社会の現実なのです。

 

  • かつては法人登記にあたって、銀行に資本金相当額を預け、出資金払込証明書を発行してもらう必要がありました。ところが実際に銀行に依頼すると、取引がないことを理由に証明書の発行を断られることが多く、これがマイクロ法人設立の障害になってきました(オウム真理教のダミー会社の口座が某都銀に集中し、問題になったからだといいます)。
  • しかし会社法の改正によってこの手続きは簡略化され、現在は定款に記載された資本金が代表者の口座に振り込まれたことを通帳のコピーで証明できるようになり、払込証明書は代表者が自分で作成すればよいことになりました。なお法人設立後は、大手銀行でも会社謄本さえあれば簡単に法人口座を開設してくれます。
  • 自分で会社を登記する場合の費用は、登録免許税(5万円)、定款認証料(5万円)に印鑑一式(2万~3万円)などの諸費用を加えて万円程度です。このうち定款認証料は、公証役場で定款に間違いがないことを認証してもらう費用です。こんなことは登記を受け付ける法務局でやればいいのですが、公証人は裁判官・検事や法務事務官の再就職先なので、強制的に彼らにお金を払うようにできているのです。ハンコひとつで5万円ですから、ボロい商売です(なお、以前は定款の認証に4万円の印紙が必要とされていましたが、これは電子公証を使えば不要です)。
  • 登記が終わると、税務署と都道府県税事務所に税金関係の書類を提出しなくてはなりませんが、これもわざわざお金を払って税理士に相談する必要はありません。書き方がわからなければ、税務署で聞けば親切に教えてくれます。
  • 法人を設立すると、労働基準監督署(労災)や公共職業安定所(雇用保険)、社会保険事務所(年金・健康保険)にも登録することになっています。厚生労働省は未加入の事業者に対し、租税情報などを活用して厚生年金・協会けんぽへの加入を促すとしていますが、現実には、マイクロ法人を含む小規模企業の大半は国民年金国民健康保険を利用しています。

 

  • 経済が成長し、パイが大きくなっている時代には、制度に大きな歪みがあっても問題は起きませんでした。再分配が特定の人たちに偏ってもなお、国民全体が豊かさを実感できるだけの余裕があったからです。
  • ところが10年以上に及ぶ長い不況で、これまでの大盤振舞いのシステムは崩壊してしまいました。それでも多額の借金をしてなんとかここまで維持してきましたが、それももはや限界です。こうして、国家による再分配の柱である公共事業の大幅縮小が誰の目にも明らかになりました。今後は建設業を中心に、膨大な補助金でなんとか生きながらえている産業が次々と破綻していくでしょう。
  • しかしそれだからといって、国家が再分配をやめることはありません。そんなことになれば政府・公務員の存在価値がなくなるばかりか、国家そのものが不要になってしまいます。
  • 現実には、不況になれば、国家の役割は強化されます。 弱者保護のためにさらなる再分配が必要になるからです。

 

  • 自営業者が「法人成り」すると、税・社会保険料のコストを大きく節約することが可能になります。そればかりか、取締役1人の会社でも、立派な事業者として、公的金融機関から低利の事業資金を借りることができます。
  • 世の中には、年利0.4%の資金で事業を行なっている経営者がいます。その対極には、商工ローンから高利の資金を借りて返済に苦しんでいる人もいます。ここでもまた、同じことが問われています。あなたは、どちら側に立つのでしょうか?