中田ヤスタカが語る「全業界に言える、理想的なプロに必要な力」

  • プロデュースの場合は、作ってみて「ボツにする」のは基本的にNGなので、新しい技を開発する場所が僕には必要なんですよね。「地均し」ではないけれど、ソロやCapsuleで実験したものを「自分の技」にしてから、プロデュースの場で使うって感じです。きゃりーに関しては、初期のCapsuleでやっていたことをもう一回やってみることもありました。
  • 曲を作るときは、自分のことしか考えていない。できなかった技ができるようになったり、新しい発想が生まれると嬉しい。その技って、最初はまぐれだったり、ミラクルみたいなものなんですけれど、練習していくうちにいつでも使える技になる。楽しいです。
  • 僕の曲をまだ一曲も聞いたことがない人ってすごくたくさんいるのと同じで、人間が不老不死にならない限りは、いつも何かが新しい。だからあんまり気にしなくていいと思っています。
  • リスナーの知識量とか年齢で持つ感受性って誰も矯正できないし、不可侵。だから、「今の時代の人はこういうのを求めてる」という、よくわからない他者を想像して作るのってあんまり意味がないと思います。わからないことは作れない。
  • ――普段はあまり音楽を聴かないと聞きました。>そうですね。今の音楽を聴くと、「自分だったらこうするな」と考えるので、純粋に楽しめなくて。聴くのは、古楽とかオーケストラ以前のすごく古いものとか、民族音楽とか。自分が一生作らなさそうな音楽だと何も考えずに聴けますね。

  • ――じゃあ、どこでインプットをしているんですか?>遊んでいるうちに……。フェスやイベントに出ると、他のDJたちもいる。そういった現場体験で充分なので、音に関しては家に帰ってから聴き直そうとは思いません。

    ――なぜでしょう?>「音源」として聴くとギャップがあるからです。実際の音を参考にするよりも、現場の雰囲気や熱量で感じたイメージだけを吸収したほうがずっと良い。だから「音源」ではなくて、現場の「記憶」が大事かな。

  • 僕は、ハマれるものをいつも探していてるんです。ネット上でも実店舗でもいいんですけど。だから、僕の知らない趣味を全力で勧めてるYouTuberは面白いなと。
  • ――かなり長いキャリアですけれど、幼いときから音楽家になると思っていたのですか?>夢っていうか……「なる」って確信していたから、「プロになったら何しよう?」ってずっと考えていましたね。

  • 誰に頼まれなくてもとりあえず作れる。しかもそれが仕事になることもある。だから音楽は自分に向いているなと思います。
  • 僕、記事でよく見る「今回はこういうのに挑戦しました」という表現あまり好きじゃないんです。挑戦は誰でもできるし、僕がリスナーなら「挑戦」ではなくてアーティストからの「提案」を楽しみたい。本来は、突き抜けた「技」とか「パフォーマンス」に対価が支払われるのがプロだと思うんです。 でも「挑戦」が求められるってことは、音楽自体ではなく、ミュージシャンのいろんな面を見たいという欲求が強いのかもしれませんね。ミュージシャン自身も、自分のスキルじゃなくて「人間としての人気」に頼りすぎている部分はある気がしていて。かっこいい人が何かに挑戦して奮闘する姿は美しいので、わかるんですけれど。
  • 僕的にお勧めしたいプロは「プレゼンがうまくて、自分のやりたいことをやってる人」ですね(笑)。全業界に言えることだと思うんですけど。ちなみに僕は「思っていたものとは違ったけど、良かった」と後になって言われることが多いです(笑)。

  • 例えば、作曲コンペがあったとしたら、僕の曲は選ばれない気がします。最終まで残って「これはいいけど、選ばないでおこう」みたいな感じ。「常にギリギリ選ばれない」音楽が、僕は好きだし作りたいんだと思います。みんなが「1位」と評価するものって、自分が飛び抜けて好きなわけじゃないものだったりするから。

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