エッセンシャル思考

オーストラリアのホスピスで看護師をしていたブロニー・ウェアは、死を迎える患者たちが最後に後悔していることを聞き、記録し続けた。その結果、もっとも多かった答えは「他人の期待に合わせるのではなく自分に正直に生きる勇気が欲しかった」。

自分に正直に生きるというのは、単にわがままになることではない。不要なことを的確に見定め、排除していくことだ。そのためには、無意味な雑用を断るだけでなく、魅力的なチャンスを切り捨てることも必要になる。

やることを減らし人生をシンプルにして本当に重要なことだけに集中するのだ

ピータードラッカーはこう言っている。「できる人は『ノー』と言う。『これは自分の仕事ではない』と言えるのだ」

哲学者のウィリアム・ジェイムズは、「自由意志の最初の一歩は、自由意志を信じることだ」と述べた。エッセンシャル思考の最初の一歩は、「選ぶ」ことを選ぶことだ。自分自身の選択を取り戻したとき、初めてエッセンシャル思考は可能になる。

万物の大半はほとんど価値がなく、ほとんど成果を生まない。少数のものだけが非常に役立ち、大きな影響力を持つ。リチャード・コッチ(起業家・コンサルタント

世界最高の料理人と言われるフェラン・アドリアは、「より少なく、しかしより良く」の実践者だ。伝統的な料理から余分なものを削ぎ落とし、純粋な本質だけを使って、誰も想像しなかった料理をつくり上げる。

マイクロソフト社CTOのネイサン・ミアボルドはこう語った。「トップエンジニアの生産性は、平均的なエンジニアの10倍や100倍どころではない。1000倍、いや1万倍だ。」

多数の良いチャンスは、少数のものすごく良いチャンスに遠く及ばない。そのことを理解し、数かぎりないチャンスの中から「これだけは」というものを見つけなくてはならない。本当に重要なことにイエスと言うために、その他全てにノーというのだ。

エッセンシャル思考の人は、自らトレードオフを選びとる。誰かに決められる前に、自分で決める。経済学者のトーマス・ソイルはこう言った。「完璧な答えなど存在しない。あるのはトレードオフだけだ」

ピーター・ドラッカーは、かつて『ヴィジョナリーカンパニー』シリーズの著者ジム・コリンズにこうアドバイスしたと言われている。「偉大な企業をつくるか、偉大な思想を作るか、どちらかだ。両方は選べない」

アインシュタインも次のように語っている。「自分自身や自分の考え方を振り返ってみると、有用な知識を覚える能力よりも、空想する力の方が大きな位置を占めているようだ」

ハーバード・メディカルスクール教授のチャールズ・A・ツァイスラー。彼は睡眠不足を酒の飲み過ぎになぞらえ、1日の徹夜や1週間の4~5時間睡眠によって「血中アルコール濃度0.1%分に相当する機能低下」が起こると説明する。「酔っ払いを見ていつも酔っているなんてさすが働き者だ!と言う人はいないだろう。それなのに、睡眠を削っている人はなぜか働き者だと評価される」

TEDの人気スピーカー、デレク・シヴァーズ。・・・彼は自身のブログで「もっとわがままにノーを言おう」と主張している。中途半端なイエスをやめて、「絶対やりたい!」か「やらない」かの二択にしようと言うのだ。そのためのコツは基準をとことん厳しくすること。「やろうかな」程度のことなら却下する。「イエス」と言うのは、絶対やるしかないと確信したときだけだ。ある経営者は Twitter でこう言った。「絶対にイエスだと言い切れないなら、それはすなわちノーである」

引っ越し先を考えていた時には、「住めたらいいな」と思う程度の街をすべて除外した。やがてニューヨークを訪れたデレクは、この街しかないと即座に確信したそうだ。

絶対にイエスだと言い切れないなら、それはすなわちノーである。

アーロン・レヴィ「たとえばこう質問するんです、この人が創業メンバーだとしても違和感はないか?もしも答えがイエスなら、会社にぴったり合う候補者なのは確実だ。」

www.lifehacker.jp

www.youtube.com

思想家のラルフ・ワルド・エマーソンもこう述べている。「人と国を滅ぼすのは、作業としての仕事である。すなわち、自分の主目的を離れ、あちらこちらに手を出すことである。」

うまく依頼を断ることは、自分の時間を安売りしないというメッセージになる。これはプロフェッショナルの証だ。

有名グラフィックデザイナーのポール・ランドは、スティーブ・ジョブズの依頼にノーを言ったことがある。1985年に立ち上げたNeXT社のロゴを探していたジョブズは、数々の有名企業のロゴを手がけているランドに連絡をとり、「いくつか候補を出してほしい」と依頼した。けれどもランドは、いくつも候補など出さない、とジョブズに告げた。

「仕事はしますよ。それで気にならなければ、使わなくてもかまいません。候補がいくつも欲しいなら他を当たればいい。私は自分の知る限り最高の答えを一つだけ出します。使うかどうかの判断は、そちらでしてください」

そしてランドは「これしかない」という答えを出し、ジョブズを感動させた。一度はノーと言われて苛立ったジョブズだが、後にランドについてこう語っている。

「彼は私が知る中で最高にプロフェッショナルな人間だ。プロとしてクライアントとの関係のあり方を徹底的に考え抜いている」

エッセンシャル思考の人はみんなにいい顔をしようとはしない。時には相手の機嫌を損ねても、きちんと上手にノーを言う。長期的に見れば、好印象よりも敬意の方が大切だと知っているのだ。

ポール・ランドに学ぶ驚きの4原則 - 99designs Blog

ハイドリック・アンド・ストラグルズ社のトム・フリールCEOの言葉を引用しよう。「われわれに必要なのは、もっとゆっくりイエスを言い、もっと素早くノーを言うことだ」

自分の失敗を認めたとき、初めて失敗は過去のものになる。失敗した事実を否定する人は、けっしてそこから抜け出せない。失敗を認めるのは恥ずかしいことではない。失敗を認めるということは、自分が以前よりも賢くなったことを意味するのだから。

編集・・・「僕の仕事は、できるだけ読者にラクをさせることです。その本から得られる情報やメッセージを、間違えようがないほど明確にするんです。」

もちろん編集にはトレードオフがつきものだ。すべてのキャラクターやエピソードを残したいと思う気持ちに反して、編集者はこう問いかける。「このキャラクターやエピソードは本当に作品を良くするだろうか?」

本の著者や映画の脚本家は自分が書いたものに強い愛着がある。自分が長い時間をかけて必死で書き上げたものを、少しでも削るのは心が痛む。それでも、削らなければ本質は見えてこない・作家のスティーブン・キングもこう述べている。「大好きなものを殺すんだ・書き手のちっぽけなエゴに満ちた胸がはりさけたとしても、大好きなものを殺すんだ」

決断(decision)という言葉の語源は、ラテン語で「切る」「殺す」という意味だ。余分な選択肢を断ち切れば、すんなりと決断できる。かなり魅力的な選択肢だとしても、混乱のもとになるものはすべて取り除いた方がいい。魅力的なものを捨てるのはつらいけれど、あとになってみればその方が良かったと実感するはずだ。

スティーブン・キング「書くことは人の仕事だが、編集は神の仕事だ」

 

アラン・D・ウィリアムズ

Alan D. Williams, 72, Editor Of Thrillers and of Literature - The New York Times

編集者が著者にたずねるべき基本的質問が2つある。『言いたいことを言えているか?』と『言いたい事を最大限明確かつ簡潔に言えているか?』

仕事や生き方でも、自分の本質的な目標を明確にしておけば、それに合わせて行動を修正できる。自分の行動はきちんと本質的目標に向かっているだろうか、と振り返って見てほしい。

もしも間違った方向に進んでいたら、正しく編集し直せばいい。

計画錯誤(プランニング・ファラシー)とは、ダニエル・カーネマンが1979年に提唱した言葉で、作業にかかる時間は短く見積もりすぎる傾向のことを言う。以前やったことのある仕事でも、なぜか実際より短く見積もってしまうのだ。

 

 ヘンリー・B・アイリング「人や組織の成長を長年見守ってきましたが、大きな進歩を望むなら、日々何度も繰り返す小さな行動にこそ着目すべきです。小さな改善を地道に繰り返すことが、大きな変化につながるのです」

ヘンリー・アイリング - Wikipedia

 しくみをつくるためのわずかな努力のおかげで、その後は全てがスムーズにまわっている。

「完璧をめざすよりまず終わらせろ」という言葉がある。シリコンバレーでよく耳にする言葉だが、これは別に品質を無視しろという意味ではない。瑣末なことに気を取られず、本質をやり遂げろという意味だ。・・・実用最小限の進歩

ジョン・ラセター「映画を完成させるわけじゃない。解放(release)するんだ」

ジョン・ラセター - Wikipedia

重要なことをやり遂げるために、日頃からの習慣にする。正しい習慣を続けていれば、偉大な結果は自然とついてくるのだ。

習慣の力の著者チャールズ・デュヒッグ「脳の活動はどんどん少なくなり、ほぼ停止しているような状態になります。・・・これは実に都合がいい。なぜなら脳の活動をそっくり別のことに使えるからです」

フロー体験の研究で知られるミハイ・チクセントミハイ・・・「創造的な人は、自分に合った生活リズムを早い時期に見つけます」「睡眠、食事、仕事のリズムを守り、それを乱すような誘惑に負けません。心地よい服を身に着け、気の合う仲間とだけ付き合い、余計な行動には手を出しません。もちろん、そうしたやり方はまわりの人間に好まれないでしょう。ですが、自分の行動パターンを遵守すれば、余計な物事に注意を奪われずにすみます。本当に重要なことに全力で集中できるのです」

www.ted.com

 

エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする

エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする