バッタを倒しにアフリカへ

すべての酒を没収された(後に、賄賂をもらえなかった腹いせだったと知る)・・・深い絶望の淵に追いやられ、アフリカを救ってやるぞという意気込みは過去のものとなった。・・・一連の没収劇を観戦していた研究所のスタッフたちは「コイツは一体何しに来たんだ?」と完全に呆れ顔だ。

 毎月たくさんのバッタの論文が発表されてそのリストが送られてくるが、タイトルを見ただけで私はうんざりしてしまう。バッタの筋肉を動かす神経がどうのこうのとか、そんな研究を続けてバッタ問題を解決できるわけがない。誰もバッタ問題を解決しようなんてはじめから思ってなんかいやしない。現場と実験室との間には大きな溝があり、求められていることと実際にやられていることには大きな食い違いがある。

 驚愕のモハメッド率の高さだった。研究所内だけではない。出会う人がことごとくモハメッドだった。

バッタとイナゴは相変異(孤独相のバッタが混み合うと群生相に変身すること)を示すか示さないかで区別されている。相変異を示すものがバッタ、示さないものがイナゴと呼ばれる。

 研究対象の生物に季節性がある場合、データを取りまくる「稼ぎ時」と論文を書きまくる「オフシーズン」とに分かれている。(ソフトサイエンスの人ならではの意見だなー)

 有史以来、自意識過剰は一体何人を無収入送りにしてきたのだろう。私もまんまと一杯食わされた。

バッタの被害が出た時、日本政府は数億円も援助してくれるのに、なぜ日本の若い研究者には支援しないのか?何も数億円を支援しろと言っているわけじゃなくて、その十分の一だけでもコータローの研究費に回ったら、どれだけ進展するのか。コータローの価値を分かってないのか?

辛いときこそ自分よりも恵まれていない人を見て、自分がいかに恵まれているかに感謝するんだ。嫉妬は人を狂わす。お前は無収入になっても何も心配する必要はない。

売名行為は研究者の掟に反するものだった。研究者が研究以外のことをしていると、遊んでいるとみなされ、不真面目の烙印を押される。大論文を出していない実力不足の私が大声で騒いだら、ネット上のみんなは喜んでくれるけど、学会関係者たちからは煙たがられるに決まっている。

市場には定価という概念がないため、言い値で売買が行われる。

 西アフリカ地域の防除費用は、普段なら3億円程度だが、大発生してから対応した場合は570億円に跳ね上がる。

夢を語るのは恥ずかしいけど、夢を周りに打ち明けると、思わぬ形で助けてもらえたりして流れがいい方向に向かっていく気がする。夢を叶える最大の秘訣は、夢を語ることだったのかなと、今気づく。

 

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)