SUPER BOSS (スーパーボス)【後半】

 オラクルで身につくスキルで特に重要なのは、チャンスです。オラクルの素晴らしいところを一つ挙げるなら、新しい責任を社員に次々と投げてくることに尽きます。

スーパーボスが常にチャンスを探すのは、部下の潜在能力を広く見ているからだ。普通のボスなら、より責任が大きな仕事をするには決まった年齢や経験が必要だというふうに、恣意的な制限を設ける。部下は向上心が旺盛でも狭い役割に押し込められてしまう。スーパーボスならこんなことがない。自分が雇った人は何でもできるようにならなければならない、そしてキャリアを通じて早く成長し新しい能力を開発し続ける必要があると固く信じているからだ。・・・自分も気づいていなかった潜在能力を、尊敬する人に認められた時のことは記憶に残りやすいスーパーボスはそんな機会を常に探している。・・・「私達の能力について、こちらが自覚しているよりも多くのことを彼は知っていた。そこから生まれる自身とモチベーションは、他人には想像も及ばないほど強い。期待を裏切ってはいけないと感じるのだ。」

スタン・リー「芸術家を雇ったら、仕事を任せないといけない」・・・ スーパーボスは完全に権限を異常し、普通の上司がためらうほどの徹底ぶりで権威を手放し監視を辞めるので、部下は次の高みに速く行くよう常に促される。・・・「ブリンカーは私達に大きな裁量をくれました。失敗する権限さえ確保されていました」・・・「ジョージ・ルーカスの行動で特に良かったのは、私達だけにしてくれたことです。言うなれば、でかけて、作って、出来たものを持って帰るまでの資金をくれたんです」・・・ヨルマ・パヌラ「指揮者にはそれぞれの解決策があるので、探さなければならない。道のりは長くなるが、それだけの価値はある。泳げるようになりたければ、勇気を出してみずに飛び込まなければいけない。本当に溺れそうにならないかぎり、私から手は差し伸べない。」

マイケル・マイルズ「失敗を全くしないのは、何もしていない人間だけです。だから行動を起こせという時には、ミスも許容しなければならないのです」。また、スーパーボスは部下が何かを知らなくても許容する。ただしその答えを速く見つけるのは部下本人の仕事だ。

 関与型権限委譲・・・スーパーボスは口出しせずに監督・統制する巧みなスキルを持っているという。最初に絶対的なビジョンを示してゴールを明確にしたら、後は一歩下がってなりゆきを見守るのだ。順調に進めば、状況にしっかり注意を払いつつそのまま続けさせる。思ったようにことが運ばなければ、迷わず介入して方向修正する。・・・ローン・マイケルズは必要だと思えば積極的に関わり、思わなければあまり関わろうとしなかった。「出演してもシーンについて彼から何も言ってこない週があって、そういう時はそのまま進められました。そうかと思えば、彼が強い興味を示して考えをたくさん出してくる週もありました。」

大きな自意識のパラドックス・・・世の中には、部下のことを差し置いて手柄を独り占めにする上司が大勢いる。反対に、自分は裏方で構わないという考えの、非常に大人しい上司もいる。スーパーボスは、そのどちらもでもない。・・・有能な若手にスポットライトを譲るようなタイプではないと思ってしまうが、それがスーパーボスの実態だ。

・・・今やっていることはチームのメンバーにすっかり任せて、自分は次のプロジェクトや課題にすぐ移るようにしているスーパーボスもいる。

普通のボスと違って、スーパーボスは大きな自信があるので他人を常に支配する必要が無い。同じく自意識の強い人間が近くにいいるのを楽しめるし、若手を育てて強い自意識を持たせてやろうとさえする。・・・ビル・ウォルシュは『部下を必ず成功させてやるのもマネジャーの仕事の内だ。』とよく言っていたという。ラリー・エリソンも同じで、退社してCEOになるような社員がいつでも揃っているからオラクルの継承プランは安泰だと言う。

スーパーボスは自分の知恵を部下がありがたがってばかりいるのを良しとしない。質問し、知識を探し、向上に努め、積極的にキャリアを次の段階に進めることを期待するのだ。多くの上司は、従順であれ、波風を立てるな、上司と同じことをしろ、そうすれば昇進させる、という暗黙のルールを設定しているが、従順な部下などスーパーボスは必要としない。反対に、咎めてもくじけず、反撃する勇気のある部下を高く評価する。ジェイ・シャイアットのもとで働くライターとアーティストは、率直に批判されても個人攻撃ではなく仕事の評価を受けているのだと理解して耐えなければならなかった。ゴードン・ムーアロバート・ノイスについて・・・個人は関係なくてあくまでもビジネスだったので、指摘を受けるつもりがある部下は成功の見込みがありました。

許可を求めるような部下は「木になったまま枯れた」ぶどうのようなもの・・・「水をかけてくれないと育ちません」という態度の社員と、「木からなんとか水分を吸って育ち続ける」社員とが存在した。オラクルでうまくやれる見込があるのは、後者だった。

 逸材は必ず頭角を現すものですから、私が提供できないほどいいチャンスに巡りあった部下が離れるのは、やむを得ません。それが、本当に優秀な人材を雇う代償なんです。

 ネットフリックスのCEO、リード・ヘイスティングスが2009年に発表した有名な「企業文化のプレゼンテーション」には、次のスローガンがあった。「ネットフリックスは一生勤める会社である必要はない。だから、我が社で提供できない大きな仕事に向けて辞めていく従業員を祝福しなくてはならない」。リンクトインCEOのリード・ホフマンは、2014年の著書『アライアンス』で、終身雇用というモデルは不安定化とネットワーク化が進む現代には合わず、実際に「世界中で大なり小なり問題が起きている」と指摘している。

 こう考えてみよう。まずまずの人材ばかりが何十年も居座っている組織がいいだろうか?それとも、才能の磁石という評判を聞きつけた世界最高レベルの人材が集まり、やめた後もネットワークにとどまり上司と組織の評判をさらに広めてくれる部下がいる会社が良いだろうか?答えは明らかだ。

SUPER BOSS (スーパーボス)

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