ヨハン・シュトラウス―ワルツ王と落日のウィーン

ウィーンフィルは新年恒例のお楽しみになっているし、シュトラウスⅡ世はお気に入りの作曲家だが、人となりはまるで知らなかった。シュトラウスの伝記はなかなか珍しいのではないだろうか。それにしてもあの華麗で優美な音楽とはあまりに対照的なドロドロ人生(苦笑)。

ちなみに、シュトラウスとは、「駝鳥」という意味である。つまりはいささか滑稽な、また取って付けたような感のある苗字だろう。そのため、シュトラウスというドイツ風の苗字を名乗っても、この人物の出自があくまでユダヤ人であるという事実は、明らかだった。

この本のいいところは、シュトラウスの人生を通して国際政治・歴史を肌で感じることが出来る点にある。通常の伝記に比べて、こちらに力点が置かれている印象する覚える。コウモリのくだりは非常に勉強になった。逆に考えると、伝記物としては面白みに欠けるといえなくもない。

ワルツ「手に手をとって」は、当初ドイツ皇帝に献呈するつもりで作られたのである。・・・出版社は題名の変更を提案した。「皇帝円舞曲」という名前はどうだろうか。・・・彼はドイツ皇帝に捧げるのをやめ、楽譜の表紙にはハプスブルク帝国の紋章を印刷させた。人々は、・・・シュトラウス愛国心を讃えた。

ナチスは、ウィーンの住人を手懐けるため、シュトラウスがユダヤ人の血を引いているという事実を巧みに隠蔽し、彼の作品の演奏を公に認めた。

こんなエピソードがあったとは!

ヨハン・シュトラウス―ワルツ王と落日のウィーン (中公新書)

ヨハン・シュトラウス―ワルツ王と落日のウィーン (中公新書)