シェアリング・エコノミー

基本的に、タクシーはいつ乗っても同じ値段である。客が多い時間帯には、タクシー乗り場の列に早く並ぶことが出来た人や、偶然、空車を見つけられた人が優先的に乗ることが出来る。つまり、ランダムに客に割り振られていた。

しかし、ライドシェアサービスで需要に応じて乗車料金が変動する。これにより、例えば、緊急の用事がある人や病気や怪我で電車に乗れない人など、通常より高い料金を払ってでも乗りたいという人に車が割り当てられるようになる。・・・こうした需給のマッチングは、インターネットを通じて需要データがリアルタイムで入手できることから実現した。プラットフォーム運営企業は、常に料金を調整することで、タクシーよりも効率的な配車を実現している。 

 需要が多い時と少ない時の料金が同じという現行のタクシー料金システムは、サービスの分配効率を歪めている。駅や空港などのタクシー乗り場に行列ができているのは、早い者勝ちでサービスが分配されているためである。

 本書で取り上げたような企業が米国で輩出している背景には、良い商習慣を取り込み、柔軟に法制度を見直していく英米法系の伝統があると思われる。日本は、事前に合理的な法規制を設定して、演繹的に規制を課していく大陸法系の伝統があるが、技術革新が急速なビジネス分野のダイナミズムを日本経済の活力として取り込んでいくためにも、規制の見直しに関する的確な分析が必要であり、本書はその意味でも大いに有用である。