フリーエージェント社会の到来

労働省統計局は、フリーエージェントの人口を把握していないばかりか、フリーエージェントという働き方の本質を理解していないということがわかってきた。確かに、労働省は臨時社員やフリーランスなどについて統計をとっている。しかしその統計は、フリーエージェントのすべてをカバーしているとはいえそうにない。

政府は、リンゴとオレンジを選り分け、それぞれのかごに投げ入れて几帳面に数を数えることは得意かもしれない。それはそれで意義のあることだ。しかし、多くのアメリカ人がいわばパパイヤになってしまった今の時代に、その作業の意義はだいぶ薄らいでしまったように見える。アメリカ政府のフルーツ勘定係は、赤みがかかったパパイヤをリンゴとして数え、オレンジ色がかったパパイヤをオレンジとして数えている。全く数えないよりはマシだとしても、性格な数字にはほど遠いと言わざるをえない。

私達の労働倫理?一番いい時間に一番いい場所で働くこと、そして自分が得意な仕事をすることね。スポーツジムみたいなものなのよ。ちょっとストレッチをやって、エアロビクスをいっぱいやって、ほんの少しだけ筋肉のクールダウンをする。これに比べれば、古い労働倫理は、延々と腕立て伏せをやり続けるようなものだった。 ナンシーハルバーン

就職情報サイト、ボールト・ドット・コムの99年の調査によると、従業員が会社を辞める主な理由の一つは、仕事が退屈だというものだった。・・仕事を好きになるための条件は、自主性が認められること、難しい課題に挑戦できること、仕事を通じて何かを学べることだという。・・・従業員の流出を防ぐ最良の方法は、給料を増やすことでも各種手当を充実させることでもなく、柔軟な勤務スケジュールを認めたり、長期間のリフレッシュ休暇を与えたり、学ぶ機会を提供することだ。要するに、従業員管理の最善の方法は、金をつかませるのではなく、フリーエージェントのように扱うことなのである。

ウォール・ストリート・ジャーナル紙コラムニストのスー・シェレンバーガーが言う「明日のためにという罠」いますぐに楽しみと満足を得るのではなく、「将来に快適な生活が待っていると信じて、未来のご褒美のために生きる」という態度に陥っていないという点だ。多くのフリーエージェントにとって、仕事は「明日のため」のものというより、それ自体がご褒美なのである。

どういう仕事をするかは自分で決める。一番やりがいがあって、わくわくするような仕事をすることにしている。そこにときどき「ギャラがいいから、まあいいか」という仕事が入るという感じね。ダイアン・ジェイコブ

同時に6つのクライアントを相手に仕事をしているより、どこか一つの企業に努めている方が安全だと言うわけ?クライアントをたくさん持っていれば、一社から切られてもローンは返済できる。でも、アップルに勤めていてクビになったら、路頭にさまようことになるのよ。

目覚まし時計が鳴って、毎朝、ドキッとして目を覚ます。朝はいつも慌ただしかった。スーツを着て、ネクタイを締め、ラッシュアワーの交通渋滞に飲み込まれてオフィスに向かう。蛍光灯に照らされた換気の悪いビルに入り、他の人の吐き出した毒ガスを吸い込む。やりたくないこともしなくてはならない。強いストレスのもとで、頭のおかしい連中のために働くこともある。周りを見回して、この暮らしが後10年、20年、30年続くのだと思った。こんなことをして、なんの見返りがあるのだろう?

社会学者のクリスティナ・ニパートエングによれば仕事の世界には二種類の人間が生息しているという。セグメンターとインテグレーターだ。セグメンターは、家庭と仕事の間にはっきりした揺るぎない境界線を引く。インテグレーターはその反対。境界線、仮にそんなものがあったとして、は、曖昧で、しょっちゅう動く。・・セグメンターとインテグレーターを見分けるには、その人のスケジュール帳とキーホルダーを見るのが一番だということだった。

学校での義務教育という制度は、歴史的に見て例外であるだけでなく、現代社会における例外でもあるのだ。しかし、オーガニゼーション・マンを養成するためには理想的なシステムだった。学校教育は、未来の工場労働者や中間管理職に、仕事で必要な基本技術や知識を授けてくれた。・・・子どもたちは学校で、ルールを守り、命令に従い、権威を尊重することを学び、それを拒んだ場合には罰が待っていることを学んだ。オールドエコノミーでは、そういう訓練が求められていたのだ。・・・社会学者のマーシャル・マクルーハンは、学校は「子供を放り込んで加工する均質化装置」であると書いている。全国共通の学力テスト、一律のカリキュラム、均質化された子供の集団(同年齢の人間だけが押し込められた部屋で1日を過ごすことなど、学校以外ではまずあり得ない)。学校は、工場の業務処理の方法を一種の信仰にまで引き上げたのだ。

「学校に通うというのは、12年間の懲役刑で人生を始めるようなものだ。そこで学ぶのは、実話悪い習慣だけだ。私は学校で教師をしていて、賞まで貰った。だからよくわかる。」これは、元教師のジョン・テーラーガットの言葉だ(1991年にニューヨーク州の年間最優秀教師賞を受賞)。現在は在宅教育という新しい潮流の旗振り役になっている。・・・善意の大人たちは、遊び、学び、自分で何かを発見していくという自由を子供から奪ってきた。これでは、主体的に学ぶことも、楽しく学ぶことも出来ない。・・・子供でも大人でも、学校や職場、過程で自由を奪われ、賞罰のシステムを押し付けられると、やる気を失い、学習や仕事に喜びを感じなくなるという。

大半の管理職は前時代の遺物になる。・・・管理職の主な役割は、部下を監視すること、そして上から下へ情報を伝達すること。このいずれの役割も時代遅れになる。・・・こうしたお目付け役は、自由と自立を大切にするフリーエージェントフリーエージェント志向の従業員にとって不愉快な存在だ。

中間管理職は「人間メッセージ交換機」大手長距離電話会社MCIのCEOウィリアム・マクゴワン

岡本太郎「自分は迷ったら、必ず危ない方の道を行く。だってそのほうが面白いじゃないか。」

フリーエージェント社会の到来 新装版---組織に雇われない新しい働き方

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フリーエージェント社会の到来―「雇われない生き方」は何を変えるか

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