奇想天外な科学実験ファイル

「どうして自分で自分をくすぐってもくすぐったくないのか」

ひとつ目の説は、くすぐるのは社会的行為であるため、自分以外の人間が触れないと反応が起こらないという「対人関係説」で、もう一つの説は、くすぐったいと感じるのは、予測不可能なことや驚きなどに対する反射作用であるという「反射説」だ。

もし対人関係説が正しいとすれば、機械にくすぐられても被験者は笑わないはずである。反対に、機械でくすぐられても被験者が笑うようなら、反射説が正しいことになる。
Harris Christenfeld 1999 Can a machine tickle? Psychonomic Bulletin & Review 6(3):504-10

 

実験の結果は、食事客の支払ったチップはウェイトレスが相手に触れなかったケースが最も少なく、肩に触れたケースではそれよりも18%、ほんの一瞬手のひらに触ったケースでは、実に37%も多かった。これはまさにスキンシップの報酬といえるだろう。

男性と女性が一緒に食事をしている場合、ウェイトレスは男性に触れたほうがたくさんチップを稼げるのだろうか?女性に触れたほうが良いのだろうか?答は女性だった。研究者たちは、女性であるウェイトレスが男性に触れると、連れの女性の反感を買うからだろうと推論した。しかしながら、全く接触しない場合に比べると、男性に触れた場合でも、より多くのチップを得ることが出来た。

非常に魅力的なウェイトレスが女性客に触れた場合で、チップの学が最低だった魅力的でないウェイターが誰にも触れなかった場合に比べて、平均41%も多くチップを受け取っていた。・・・何よりも重要な要素は、満月の晩もしくは晴天の日に働くことだった。
Cruso Wetzel 1984 The Midas Touch: The effects on Interpersonal Touchon Restaurant Tipping
Personality and social psychology bulletine 10(4):512-17

高級ワインと安物の違いも分からなければ、赤ワインと白ワインの区別もできないのだろうか?ブロシェの実験からはそう解釈されがちだが、一概にそうとはいえない。・・・ワイン好きで、フランス西部にあるアンペリデ・ワイナリーの創立者でもあるブロシェは、知覚的期待の力が証明されたと主張している。「被験者が実際に知覚するのは、それ以前に感じ取った感覚であり、それを撤回するのは容易ではない」
つまり、脳は味覚を個別の独立した刺激として捉えてはいないということだ。むしろ視覚,聴覚、嗅覚、触覚、味覚のすべての感覚から得た情報を考慮して、味合うという経験を構築している。矛盾するようだが、最も重視されるのは視覚で、ブロシェによれば、人間はその他の感覚よりも約20倍、視覚からの情報に左右されやすいという。
Brochet 2001 Chemical object representation in the field of consciousness Academie Amorim

 

非注意性盲目


のView the basketball videoを再生し、白いシャツを着た人のパス回数を数える。

 

興味深いのは、モーツァルトの音楽と幼児の能力向上との関係を証明した研究など、どこにもなかったことだ。最もこれに近いのは、またしても前出のラウシャーが1997年に行った実験で、ピアノを習うと未就学児の空間的推論能力が向上することを示していた。しかしもちろん、ピアノの演奏を覚えるのは、ただCDを聞くのとはわけが違う。
カリフォルニア大学アーバイン校の研究チームは、モーツァルトの音楽の影響が見られたのは、折りたたんだ紙に切込みを入れて開いた時の形を予想するなどの時空間的能力に対してであって、あらゆる分野の知能指数に影響をおよぼすわけでないことを明確にした。つまり無数の親たちが知らず知らずのうちに、子供をスクラップブック作りの名人に育てようとしていたわけだ。

音楽に成人の時空間的能力を一時的に高める効果があるからといって、子どもたちにクラシック音楽を聞かせれば知能が高まったり、学業成績が上がったりするわけではなく、時空間的能力ですら、長期的に見れば向上するとはいえない。

 

ウェイトレスの驚異的な記憶力

カリフォルニア大学デービス校の学部生を対象に同じテストを行った。その結果はウェイトレスの圧勝で、正解率はウェイトレスの平均90%に対して、学生は77%だった。・・・面白いことに、彼女たちは忙しい夜「流れに乗って」いる時ほど記憶力が上がると答えた。
なお、バーの客の記憶力はこれとは高対象だ。店が忙しい夜には、ウェイトレスの記憶力が上がるのとほぼ反比例して、客の記憶力が低下する。
Bernnet 1983 emembering Dink Orders: The Memory Skills of Cocktail Waitresses Human Learning 2:157-69

 頭から離れないシロクマ

部屋に座り、頭に浮かんだことをすべて話すのだ。

「今やったように、頭に浮かんだことをまた言葉にして下さい。でも一つ例外があります。今回はシロクマのことは考えないようにして下さい。」

「人々は通常以上に何かに夢中になっているのに気づくと警戒する。おそらくそのため必死に抑制努力を行うようになり、また新たなサイクルが始まる・・・。こうして最終的には病的レベルの強迫観念を持つようになる。」

 ネコの夢遊病

答を言うとノーだが、ある状況下でネコは夢遊病に似た行動をとる。 

モリソンは、脳幹の傷は夢に基づく全般的な行動を促すのではなく、攻撃や歩行など、特定の行動を取らせると結論づけた。

 ゴキブリ・レース

 1960年代後半、心理学者ロバート・ザイアンスは、ミシガン大学の研究室で長い時間を費やし、メスのゴキブリにレースをさせた。・・・ゴキブリは仲間に見られている時のほうが早く走るのかどうか確認したかったのだ。・・・その結果ザイアンスは、ゴキブリは他のゴキブリがいたほうが断然早く走ることを発見した。この事実だけなら、彼の研究はゴキブリ行動学の参考書にちらっと登場する程度だっただろうが、ザイアンスはこの発見にはより大きな意味があると主張した。・・・この実験で起こった現象は社会的促進であると指摘した。・・・他人の目は、非特異的な覚醒効果をもたらし、与えられた状況下で起こりうるあらゆる反応を活発にする可能性がある。・・・この成績向上効果があるのは、タスクが簡単なときだけだった。集中力を要するような複雑なタスクの場合、むしろ観客がいるほうが成績が下がった。・・・まだ研究されていないのは、ゴキブリが見ている時に人間のパフォーマンスが向上するかどうかだ。突然台所にこの小さな生き物が現れ、触覚を振っているのを発見した時の一部の人々の逃げ惑い方を見た限りでは、おそらく効果があるのではないだろうか。

Zajonc, E. B., A. Jeomhartmer & E.M. Herman(1969) Social Enhancement and Impairment of Performance in the Cockroach Journal of Personality and Social Psychology 13(2):83-92

ラッシー、助けを呼んできて!

ごく普通の犬の場合はどうだろう?緊急事態に同対応すべきか、判断できるのだろうか?・・・犬たちはしばらく飼い主の体を鼻で押したり、前足で引っ掻いたりしていたが、その後、この機に乗じて辺りを散策し始めたのだ。見知らぬ男性と接触したのは、トイプードル1匹だけだった。この犬はその男性に駆け寄ると、膝に飛び乗ったという。・・・きっとこのイヌは、「大変だ。飼い主様が死んじゃったから、誰か他の人に買ってもらわなきゃ」と判断したのだろう。

Macpherson, K., & W. A. Roberts(2006) Do Dogs seek help in an emergency? Journal of Comparative Psychology 120(2):113-19

恐怖と性的興奮の関係(吊り橋効果の元論文)

「興奮の誤帰属」によって恐怖が性的興奮を高めたと推論した。・・・何らかの強い勘定を換気させられる状況にいる時、私達は往々にして、この感情は周りの状況ではなく、一緒にいる人によってもたらされると勘違いするというのだ。・・・熱愛をシたい人は、この知識を活用するといいだろう。・・・ただし、デートの時の状況が彼女を怖がらせるのが望ましいのであって、間違ってもあなた自身が怖がられないように気をつけよう。

Dutton, D. G., & A. P.Aron(1974) Some Evidence for Heightened sexual attraction under conditions of high anxiety Journal of Personality and social psychology 30(4):510-17

高嶺の花

手に入りにくい女性ほど魅力的という説は、全くの間違いで、警告された客のほうが、再び彼女を尋ねる確率がずっと低かったのだ。・・・恋人紹介所で行った実験から、売春婦とその客だけでなく、あらゆる恋愛関係にこの結果が当てはまることが裏付けられた。

Walster, E., G. Walster, J. Piliavin, & L. Schmidt(1973) Playing hard to get; understanding an elusive phenomenon Journal of personality and social psychology 26(1):113-21

 誘いを断る女性、受け入れる男性

 クラークの教えお9人がキャンパスを歩きまわり、面識のない魅力的な異性を見つけたら声をかけ、冒頭のように相手を誘った。・・・結果は驚くほどのものではなかった。女性は1人も誘いに乗らず、実験者の男性を追い払うこともしばしばだった。一方、男性は75%が喜んで応じ、なぜ夜まで待たなければならないのか尋ねた男性もたくさんいたという。また、断った男性は大抵結婚しているのでと言って謝った。こうして遂に男性は簡単に落とせることが証明された。・・・「今夜、部屋に来ない?」と誘った場合も結果はほぼ同じで男性の69%が同意したが、女性で同意したのは6%だけだった。しかしもう少し当り障りのない、「今夜、一緒に出かけない?」という誘いの場合は、男女とも半数が同意した。・・・声をかけさえすれば、魅力的な女性の2人に1人は会ってくれることを知っていたら、独身時代、あんなに苦労しなかったのに、とクラークは冗談を飛ばした。・・・もしあなたが平均的な男性の場合、キャンパスで突然魅力的な女性が近づいてきて、一緒に寝ないかと誘われたら、「喜んで」と応えるよりも「誰がこの実験をしているの?」と聞いたほうがいいだろう。

Clark, R. D. & Hatfield(1989) Gender differences in receptivity to sexual offers Journal of psychology & human sexuality 2(1):39-55

 

「対人距離が近くなると、排尿開始が遅れ、排尿継続時間が短くなる」ことが証明された。

Middlemist, R. D., E.S. Knowles, & C. F. Matter(1976) Personal space invasion in the lavatory: suggestive evidence for arousal, Journal of personality and social psychology 33:541-46

 

 フェスティンガーの研究から、信仰の弾力性に関する不気味な教訓が得られる。どんな事実や祥子、論理をもってしても、考えを変えない人と議論したことはないだろうか?ドロシーマーティンと信者たちのケースから、そのような場合は努力しても無駄だということが分かる。信念は否定されても、簡単に生き残れるからだ。その上、信念は否定された結果、更に強くなることもある。フェスティンガーは、多くの宗教が広まったのは、否定がきっかけだった可能性があることを暗に示唆している。

Festinger, L, H. W. Richen, & S.Schachter(1956). When prophecy fails: a scialand psychological study of a modern group that predicted the destruction of the world. NewYork: Harper Torchbooks.

世界はハチの羽音ともに終わる

 核戦争が起こったら、ゴキブリだけが生き残るという話はよく耳にする。しかし、この発想はどこから来ているのだろう?・・・人間なら1000ラド被爆すれば死に至るが、同じ量をゴキブリに晒すと、無精子症になった。つまり、仮にゴキブリが核爆弾から生き延びたとしても、大して繁殖は出来ないのだ。ゴキブリたちは1万ラドで気絶し、4万ラドで死亡した。これらの被曝量は人間の致死量を遥かに超えているが、ゴキブリが確実に終末後の地球を支配するには不十分だ。・・・ハブロブラコンという寄生蜂の一種・・・なんとこのハチを確実に殺すには18万ラドの放射線が必要だった。

Wharton, D.R.A., & M. L. Wharton(1959). The effect of radiation on the longevity of the cockroach, Oeriplaneta americana, as affected by dose, age, sex and food intake. Radiaion Research 11:600-15

歴史を変えた!?奇想天外な科学実験ファイル

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