人間の統合的理解の行方

「経済学」という独自の分野が形成されるとともに、いわば、その中に閉じた人間研究が作られていったのである。・・・「人は完全情報化で完全に合理的に振る舞う意思決定者である。」という仮定である。

我々仮定のもとではこの話は整合性があるので、これはこれでいいのですよ。

自然科学は、基本的に還元主義的であり、遺伝子のレベルまで落とし込んで、基本となる一般法則を見出そうとする。人文社会系諸学は個別性や歴史性を重んじ、一般法則では解決がつかない部分を重要視する。

物理学と生物学は、現象のレベルやスケールが異なるので、全く同じ概念で両者が説明できるということはないが、相互に矛盾はない。

人文社会系諸学は、個別性や歴史性を重要視し、さらにそこに「価値」の問題までもが絡んでくるので、自然科学のように統一的な基盤を作るのは難しい。

文理融合ができるとしたらそれは、互いに、他方の研究成果を自分の研究分野の中にどのように取り込めるのか、その利用の仕方がわかった時ではないだろうか?

UP 2012 Sep N479 長谷川眞理子