アマゾノミクス

 かつて「情報に基づく意思決定」という言葉がよく使われたが、今ではデータ量があまりに膨大すぎて、人生において何らかの意思決定をするとき、すべての情報に目を通すことはできない。われわれの抱える問題やニーズの解決に役立つデータを活用するには、ツールが必要だ。

われわれが自らの意思決定にまつわるトレードオフをこれまで以上に理解できるうように、データを収集、結合、分析することには合意してもいいだろう。

トレードオフを評価するには、人間の判断が欠かせない。

 

データの対称性の原則に基づけば、おカネを支払った顧客側にも通話記録を確認できるようにすべきである。

 

 精製された石油は、産業を支える機械の燃料になり、また現代経済を支えるほとんどの製品の製造で使われてきた。同じように生データ自体はあまり役に立たない。データに価値を付与するのは、データを統合、分析、比較、選別し、新たなデータ製品やサービスとして流通させるデータ精製会社である。石油が産業革命以後の社会を支えた装置の燃料となったように、精製されたデータはソーシャルデータ革命を支えるインフラの燃料となる。

 

ニューヨーク・タイムズ記者のチャールズ・デュヒッグは、ある若い女性が大手小売チェーンのターゲットで買い物したところ、その履歴をもとにターゲットのアルゴリズムがマタニティグッズの案内を自宅に送りつけた、という興味深いエピソードを書いている。女性の父親は激怒した。だがその数日後、女性は父親に妊娠している事実を打ち明けたと言う。ターゲットのアルゴリズムの判断が正しかったわけだ。

 

現在の法律や社会規範は、データが足りないという前提に基づいてつくられている。たとえば保険は、十分な情報がないために作られた。

生成されるデータ量が増えるに連れて、今後は個人レベルんでリスクを予測できるようになり、個人別に保険料を変えられるようになる。

目をつぶってデータなど存在しないと頑なに言い張るのも一つの選択肢だ。その一方、データが存在することを認め、それによってわれわれの生活をどう変えていくべきか考えるという選択肢もある。我々は情報という新たな資源を使って、どのような世界を創りたいのか。

 

個人データの金銭的価値は、あなたがそれに付与する感情的価値とはまったく違う。・・・何百万という人々のデータを統合し、分析することによって初めて、有益な相関性やパターンが見つかるのだ。そこから一人分の個人データがなくなったとしても、データ企業は残りのデータから同じ結論を導き出せるだろう。個人の方はサービスを享受する機会を完全に失う一方、データ企業の方は失うものは実質的にゼロだ。

 

データ・リテラシーを身につけるというのは、データ会社による推奨はあくまで確率論であり、あらゆる意思決定にはリスクとリターンのトレードオフがつきものだと理解することだ。膨大なデータがあり、不確実性はきわめて少ないと思われるときですら、それは変わらない。データ会社はあなたに変わって意思決定をするのではなく、誤りのリスクを排除し、あなたが膨大なデータの恩恵を享受できるようにするべきだ。

 

私がアマゾンにいた頃、顧客が商品を閲覧してから、実際に購入するまでのタイムラグに注目したことがある。・・・タイムラグがマイナスというケースだ。

結局アマゾンのコンピュータの内一部がアメリカ太平洋標準時に、他のものはグリニッジ標準時に設定されていたことが明らかになり、ようやく八時間のタイムラグはさまざまなクリックに異なる標準時が適用されていたために人為的に生じたものであることがわかった。

 

ユーザーが最も重視するのは、(レビュアーが実名を使用しているかどうかではなく)、レビュアーがレビュー対象の商品を実際に買ったか否かをアマゾンが示すことだとわかった。

 

 Netflixは、特定のカテゴリーの映画に対するユーザーの興味を示すもっと正直なシグナルは、視聴を中断するまでの時間であることに気づいた。つまり何を推奨するか決めるうえでは、作品の評価データより視聴データのほうが参考になる。これはリチャード・ニスベットが指摘した現象だ。人は自らの行動や意思決定の背後で、どのような認知プロセスが働いているかを分かっていないことが多い。つまり、われわれの自己認識や内省能力は限られている。

 

人間は主に自分の失敗や成功を基に学習し、それを自らのソーシャル・ネットワークに所属する人々の失敗や成功で補強する。専門家のアドバイスからも学習する。それとは対照的に、機械は自らの失敗から直接学ぶだけでなく、ネットワークにつながったすべてのマシンの失敗から学んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

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