ケトン体が人類を救う 糖質制限でなぜ健康になるのか

ケトン体というのは、先ほども少し触れましたが、ヒトが糖質を摂取しなかったときに、脂肪を分解して栄養にする代謝に代わって、そのときに出てくるものです。

肥満は脂肪が原因、・・・これこそが間違いであって、肥満は糖質過剰摂取で起こる。

 

妊婦のうちの12%が妊娠糖尿病と診断される。妊娠中には、耐糖能(血糖値を正常に保つための、グルコースブドウ糖)の処理能力)が下がるからだ。

ところが、耐糖能が下がっているのに、医師は「胎児にはブドウ糖が必要だ」と思っているから、糖質を60%、摂取させる。

妊娠初期の、卵黄嚢(らんおうのう)という栄養袋での造血の時期には、胎児は巨核で有核の赤血球であることがわかっています。これは、エネルギーとしてブドウ糖を必要としていないということを意味しています。

 

ケトン体(Ketone bodies)とは、脂肪酸ならびにアミノ酸代謝産物です。アセトン、アセト酢酸、βーヒドロキシ酪酸(ケトン基を持っていないが慣習的にケトン体に含まれる)のことを、まとめてケトン体と言います。ケトン体は、脂肪酸の分解により肝臓で作られ、血液中に出されます。

ケトン体は、心筋、骨格筋、腎臓など、様々な臓器で日常的にエネルギー源として利用されています。人体に日常的に存在しているもので、まったく毒性はありません。

血液中の総ケトン体の基準値は、26-122とされていますが、これは飽くまでも、現代人が日常的に「3食以上、糖質を摂取している」条件下の基準値です。

糖質を取らないでいると、ケトン体が血液中に上昇してきます。この値は結構高いので、食事の内容によって基準値が違ってもいいわけなのですが、日本ではまだそういう認識はされていないので、現状では異常値と思われてしまいます。

糖質を取らないで、脂肪を取ると、速やかにケトン体が上昇します。糖質と脂肪の両方を取ると、ケトン体は上昇しません。生理学的には、ただそれだけのことです。

 

ヒトには糖代謝ブドウ糖ーグリコーゲン)エンジンと、ケトン体代謝脂肪酸ーケトン体)エンジンの2つがあるのです。

糖質エンジンの方は、体内に貯蔵しているグリコーゲンは200-300gくらいですから、わずか1000kcalくらいしか持ち合わせがありません。ですから、体の外から補給しなければ、12時間くらいでなくなってしまいます。

それに比べて貯蔵脂肪は圧倒的にたくさんあります。体重60キロで、体脂肪率が20%の場合、12キログラムの脂肪がありますから、108,000kcalにもなります。このくらいの貯蔵量であれば、1日2000kcal消費しても、50日以上生活できることになります。

渡り鳥・・・蓄えた脂肪を燃やして飛んでいるのです。糖質エンジンは、じつは効率が悪くて、長く飛べるようなエンジンではありません。動物の体に蓄えられるエネルギー源は、実は脂肪である場合が多く、糖質は一時しのぎのエネルギーであって、補給を頻繁にしないとすぐに枯渇してしまいます。

卵生の動物は、卵の生育も孵化も、糖質がない条件で行われています。糖質エンジンがない場合が多いのです。

 

朝食のエネルギー論・・・脳の唯一のエネルギー源であるブドウ糖・・・私たちの身体が「ブドウ糖エンジンだけで動いている」かのように理解されている代表的な意見です。

  1. 脳はブドウ糖しか使えない。だから「ブドウ糖=糖質=炭水化物」を必ず取らないといけない。
  2. 人の体には、ブドウ糖を使うエンジンと、脂肪を分解してケトン体にして、これをエネルギーにするケトン体エンジンの2つが存在する。ブドウ糖が枯渇した状態で脂肪酸が燃焼するとき、肝臓ではケトン体という物質ができる。・・・飢餓などの特殊なときにのみ、ケトン体エンジンを使うことができる。
  3. 飢餓ではなくても、日常的にもケトン体エンジンは働いている。・・・脂肪が分解されて代謝される限り、エネルギーは産生される。その主な臓器は、心臓や骨格筋である。また寝ている間などは主にケトン体エンジンが動いている。今までは、脳はブドウ糖しか使えない。だから毎日ブドウ糖が必要と言っている人が多くいたが、実際は、脳はケトン体が大好きで、むしろケトン体のほうがエネルギー源としてふさわしいくらいである。

 

血管にプラークが出来て、狭窄(きょうさく)を起こしていた。そこでその場所を調べたら、コレステロールがたくさんへばりついていた。結構を悪くする、この動脈硬化の原因は、コレステロールに違いない!これを退治すれば、動脈硬化は治るし、予防できる!

ところが、コレステロールは、じつは細胞膜の補修や脂肪の代謝や神経の製作をしながら血管の修理もやっている、宅配便+便利屋さんだったのです。

コレステロール同様に、ケトン対そのものには何の毒性もありませんし、強い酸でもありません。

コレステロール悪玉説が崩れつつあります。

コレステロールというのは、体内の主要成分であって、とくに脳は、水分を除けば脂肪が40%を占め、さらにその30%がコレステロールでできています。

前進の三分の一のコレステロールが脳に存在しているそうですから、脳にとってどんなに重要な物質かがわかるでしょう。

医者に行くと、コレステロール220以上で異常だといってコレステロール降下薬を飲まされる。すると、まずいことに鬱になるんですね。・・・JR中央線で自殺したヒトを調べたんです。その結果、9割が55-65歳で、ほとんどが男だった。それが見事に全員、コレステロール降下薬を飲んでいたという・・・順天堂大学奥村康特任教授

コレステロール降下薬の年間売上は三千ー四千億円ともいわれている。その七割は女性が飲まされている。女性は閉経後に必ずコレステロール上がるからです。・・・捨ててしまうようお勧めします。

1990年頃から、それまで血管に血栓などを作ると考えられていたコレステロールが、実は損傷した血管を修復していることがわかり、コレステロールを善玉(HDL)と悪玉(LDL)の2種類に分けて評価するようになりました。

しかし、最近ではこの区別もおかしいと言われており、LDLが多くても死亡率に変化はなく、逆にLDLが低すぎると死亡率が上がる、ということも分かっています。

東海大学名誉教授の大櫛陽一先生によれば、細胞にコレステロールを運ぶのがLDLで、古くなった細胞からコレステロールを肝臓に戻す役割をしているのがHDLで、その両方が必要だとしています。

莫大な利益を生む構造があるため、コレステロール悪玉説の否定は大きく遅れてしまったのでした。

 

推奨の食事バランスに根拠はない。・・・3大栄養素の最適な栄養摂取比率を決めるエビデンスは乏しいのが現状ですが、日本人の食習慣こそがエビデンスだと私は思います。(宇都宮一典)

 

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米や小麦が人類を飢えから救ったことは間違いなく、人口の爆発的増加にも大いに役立ってきました。寒さや暑さに生身の体でたたかい、移動手段も徒歩しかなかった時代には、それらの穀物もそれほど悪さをしませんでした。生きるためのギリギリの食料だったからです。

日本で糖尿病が多い県は、東京や大坂ではなくて、徳島県香川県福島県青森県です。どちらかと言えば、農業が盛んで、交通機関は車が頼りの、静かな田園地帯のイメージです。

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  • がん細胞は、嫌気性解糖系(酸素を使わないでエネルギーを産生する)が亢進していて、ミトコンドリアを使う酸素を使ったエネルギー代謝ミトコンドリアの酸化的リン酸化)は使いません。・・・1つのグルコースブドウ糖)から、嫌気性解糖系では2分子のATPしか賛成されませんが、酸素を使う酸化的リン酸化では、36分子のATPを産生できます。従って、ミトコンドリアで酸素を使って効率的にエネルギー産生をするほうが、細胞の増殖にもメリットがあると考えられるのに、なぜ、がん細胞は酸化的リン酸化によるエネルギー産生を使わないのか、長い間謎になっています。
  • がん細胞には、ブドウ糖が不可欠ですが、ケトン体は利用できません。
  • 嫌気性代謝ブドウ糖の存在が、がん細胞の生命線になっているのですから、がん細胞がブドウ糖を利用できなくすれば、正常細胞にダメージを与えずに、がん細胞だけを死滅させることができると考えられます。
ケトン体が人類を救う 糖質制限でなぜ健康になるのか (光文社新書)

ケトン体が人類を救う 糖質制限でなぜ健康になるのか (光文社新書)

 
  •  実は、日本人の被験者を対象にした糖質制限食vsカロリー制限食のランダム化比較試験は初。その結果、試験開始6カ月後に糖質制限食群でのみ、HbA1cが有意に改善したのである。しかも、改善幅はカロリー制限食群よりも大きかった。中性脂肪値も糖質制限食群でのみ、有意に改善している。
  • 昨年、米国糖尿病学会は従来の懐疑的な態度から一転、糖質制限食を食事療法の一つとして認めた。糖質=主食制限による高タンパク・高脂質食が、腎機能や脂質代謝の悪化につながるのではという懸念が払拭されたためだ。

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  • 2013年に糖質制限食を糖尿病治療食として無条件で第一選択肢の1つに採用したADAの勧告を紹介(Diabetes Care 2013Nov;36(11):3821-3842)。前回改訂(2008年)より5年が経過し、「糖質制限食に関する様々なエビデンスが蓄積され、全面的に糖質制限食が認められるようになった」と説明した。
  • 山田氏は、ADAの勧告改定につながったシステマティックレビュー(Diabetes Care. 2012 Feb;35(2):434-45. doi: 10.2337/dc11-2216)を解説した。糖質制限食に関する3件の前後比較研究と8件のRCTを分析したもので、前後比較では血糖、脂質ともに全ての文献で改善。RCTでは8件中7件で糖質制限食の方が優れていたという。
  • 山田氏は、ランダム比較試DIRECTを紹介。322人の肥満患者を3つの食事療法で割り付けたところ、糖質制限食群で減量、脂質、HbA1c(糖尿病患者に限定)が最も改善した(N Engl J Med. 2008 Jul 17;359(3):229-41)。その効果は4年間の観察期間を経て計6年維持されたという(N Engl J Med. 2012 Oct 4;367(14):1373-4. doi: 10.1056/NEJMc1204792)。

  • eGFRと尿中アルブミンクレアチニン比を検討した同試験のサブ解析についても言及(Diabetes Care. 2013 Aug;36(8):2225-32. doi: 10.2337/dc12-1846)。CKDステージ3の患者においても糖質制限食でGFRが改善したと説明し、「糖質制限は腎臓が悪くなるという仮説が存在していたが、逆にGFRを改善している。腎症の悪化の可能性はまだ可能性にすぎない」との見解

  • 2006年に発表されたメタ解析(Arch Intern Med. 2006 Feb 13;166(3):285-93.)を紹介した。同解析では、低炭水化物食により6カ月まで有意な体重減少が認められたものの、1年で有意差が消失し、血中LDL-C上昇が確認されている。
  • 「動物性のたんぱく質を多く摂ることが、死亡率を増やすという報告がある中で、低炭水化物食を導入するのであればタンパク質と脂質の質を考えて、有用性と危険性をしっかりと患者さんに説明した上でやってほしい」

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  • 糖尿病医療の権威である日本糖尿病学会が作成した『糖尿病診療ガイドライン2016』に、北里大学北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟医師は失望した。診療ガイドラインは、研究によって導かれたエビデンス(科学的根拠)に基づき作成するものだ。最新の研究結果を反映して更新されるにもかかわらず、2012年に山田医師が「糖質制限」の有効性を確認した試験の論文が盛り込まれなかったのである。

  • 学会は長年、食事療法として摂取エネルギー(カロリー)の量を減らす「カロリー制限」を推奨してきた。カロリーを制限しないで糖質のみ減らす糖質制限の食事法は、カロリー制限を否定するものと忌み嫌う学会幹部が少なくない。

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