「プレゼン」力 ~未来を変える「伝える」技術~

 会議からの帰りに空港までタクシーに乗ったら、ドライバーからまず「コマーシャルか、プライベートか」って聞かれたんです。「えっ、何のこと?」と思っていたら「コマーシャルジェットで帰るのか、プライベートジェットで帰るのか」と。それは「コマーシャルに決まっているじゃない」って言いましたが、おそらく半分ぐらいの方が自家用飛行機で・・・。半分以上ですね。ああ、そうですか。

確かアインシュタインが言っていたんですよね。「6歳の子供に説明できなければ、理解したとはいえない」って。・・・やはり科学者ですから「研究をどう進めるか」「どう実験するか」というトレーニングはよくするのですが、「どう伝えるか」という練習は、実はあまりしません。

「スライドにないことは、しゃべらない」。また、逆に「しゃべらないことは描かない」。

これも紙芝居のテクニックと同じなのですが、スライドの一枚一枚に「つながりをつくる」ことも重要です。

ポインターはピタッと止めて、使うのは必要最小限にするべきだ。

「あなたはが話す時間は1時間かもしれないけれども、500人いたら500時間を使っているんだ」・・・「もしその1時間、ダメなプレゼンテーションをしたら、あなたはその500時間を無駄にしたことになる。それなら、それぞれの職場で仕事をする法が、どれだけ人類のために役に立つか」

その人達が、専門家ではないから、難しいことを言ってもわかるわけがない。わかるわけがないから、じゃあ簡単なことを話そうと。これは違うと思います。専門家ではなくとも、きちんと話せば、ものすごく高度なことも理解できるはずです。理解できないのは、説明の仕方が悪いから。だから「伝わらなかったら、お前がバカなんだ」、そう思って準備をしています。

いちばん大切なことは、「はっきりしたビジョンを持つ」ということです。「ビジョン&ハードワーク」、VWと教えてもらいました。(ロバート・マーレー所長から教えられた言葉)私たち日本人の多くは、ハードワーク=一生懸命働くことは得意です。しかし、ビジョンを持つことを結構苦手にしています。「良い論文を書きたいから」とか「たくさんの研究費を得たいから」とか「いい職につきたいから」といった目先の目的でハードワークをしますが、それはおそらくビジョンではない。ビジョンとは、長期目標です。「研究して何を達成したいのか」。長期目標をはっきりさせ、その目標に向けてハードワークする。そのことの重要性を教えられたのです。

プレゼンでは、こちらのメッセージが伝わらなければ、意味がありません。伝わらないと絶対だめですから。

 take home message、メッセージを正しく伝えるという点です。・・・全員に自分の伝えたいメッセージを持って帰ってほしい

「いい格好」をしない・・・自分の弱いところを正直に話す。そして飾らないということです。・・・しゃべりや話し方がとても滑らかで上手であるとか、それが本質ではない。・・・やはり、メッセージが何であるか。そのメッセージを、どういう自分の実体験を用いて伝えているのか。そして、ユーモアを忘れない。

「計画とリスク管理主義」よりも、「どんどんやって、体で覚える」。そのほうが大事なんじゃないかっていうことを言いたかったんです。それがナウイストということなのですが。・・・研究の場面でも完璧な計画を立て用とすると、計画だけで終わってしまって結局何も出来ないことになってしまいます。ですから、いかに早く始めて、それで結果をまず見るか。私たちの場合は実験ですが、その結果を見て、また次の実験をする。そのほうが、回り道のように見えて早いのです。・・・失敗しても、結局それは情報のひとつとして残るわけだし、しかも「仮説」と違って、これは「事実」だから。それは勉強になりますよ。・・・「いや、どこか教科書に書いてないと安心できません」とか。・・・そういうことを考えている間に、まずやってみる、トライしてみる。トライ&エラーが重要ですよね。

ハーバード大学ケネディスクールにマーシャル・ガンツ・・・プレゼンを構成する重要な3つの要素、 self us nowについて語ってます。・・・まず「自分」について、なぜ「自分」の話をみんなが聞かなくてはいけないのかを話します。次に、その話されている内容が、なぜ「みんな=われわれ」と関係があるのかというところに持っていきます。そして最終的には、なぜ「今」行動に移さなくてはいけないかという3つの要素で構成されています。

13分間で、ワンポイントだけ伝えるというのが、たぶん「消費できる」いいバランスなのでしょう。聞く側にとっても、とても「食べやすい」サイズなのだろうと思うのです。・・・学生は、先生のレクチャーの1時間の間、脳がほとんど動いていないことがわかりました。

「間」・・・人は、スピーチの途中に不意に入る沈黙に引き込まれる・・・伝える側と受ける側、両者の感情の共有です。この共感が、プレゼンテーションをスムーズにさせるのです。

私たちのやっているのは分子生物学とか、細胞生物学と言われる分野ですが、教科書も分厚いんです。優秀な学生さんはそれを、本当に最初から最後まで全部読んでいて、知識はすごいんです。でも私は、大嫌いなんです。枕にはぴったりですが、全部読もうと思ったら何年もかかってしまって、そうしている間に人は歳を取ってしまう。だから私は教科書を読まずに、ともかく実験をやりました。しかし、実験をやっていくうちにどうしてもわからないことが出てきます。そこで初めて、教科書の本当に必要なところだけを読んで、あとは全部無視して、今までやってきました。・・・知識がありすぎると、リスクばかり考えてしまうんですね。知識があると「こんな実験成功するわけない」とか「昔、同じような実験をやって失敗した人がいる」とか、そういう否定的なことばかり刷り込まれてしまって、チャレンジできなくなってしまうんです。私の場合、そうしたことを知らないから、何も怖いことがないんです。・・・MITにもロバート・ランガーって言う先生がいて、彼の面白い発明があるのですが、彼に何でそんなことをやったのかって聞いたら、「いや、出来ないっていう論文がたくさんあったけど、読まなかった」って。・・・結局、出来ない理由がいっぱいあると、だんだんリスクを取れなくなっちゃって。でも、世の中すごいスピードで変わっているから・・・。

 

やはり日本の教育といいますか、受験戦争といいますか、ともかくいい大学に入って、それでその人の価値が決まるというような考えが支配していますね。だから、いかに大学受験に合格するか、そこに教育の重きが置かれていて、正解を教えるわけですよね。先生の役割はいかに手際よく、いかに効率よく生徒に答えを教えるか。これは、テストでいい点を取るのには非常にいいと思います。科学技術でも、すでに出来上がっている技術を広めるとか、出来た技術を少し改善するとか、そういうことには日本の教育は非常に向いていると思うんです。でも、他の人がやらないようなことにトライする。出来ないと思っていることにトライする、教科書に書いてあることを否定する。こうしたことは「そういうことをしたらだめだ」と指導されていますよね。「バツを付けられて、テストに通らないから大学には入れないぞ」と、日本人は刷り込まれていると思うんですよね。・・・僕は、人間はもっとクリエイティブなことをやって、単純な作業をロボットとか、人工知能にやらせればいいと思っているんです。さっきおっしゃった、答えを出すとか、同じことを繰り返すのは、ロボットとか機械のほうが上手なんで・・・。「権威を疑って自分の頭で考える」ような人じゃないと、ロボット社会が現実になった時、人間としての存在意義が問われるというのはあって・・・。

「何やってもいいんだ」・・・「もう何をしてもいい。ただし、その分野で、世界一を目指せ」と言われました。その分野は非常に狭い分野かもしれないけれど、同じことをやっている人が必ず誰かいるから、その中で世界一を目指さなければいけないということをすごく思いました。

日本語で「お利口さん」って言う言葉があると思うんですが、「いわれたとおりに、きちっとやる」っていうのが、普通は、若い人たちへのアドバイスです。でも、皆に言われたとおりやっていたりしたら、ノーベル賞なんか取れない。だから勇気をもって、どんどん20歳、30歳、40歳まで無茶をやれって言う。

何にもトライせず、平凡なそれなりに幸せな人生よりも、どんどん海外に行ったり、いろんなチャレンジをしたりしてほしい。その結果、痛い目に遭うかもしれないですけども、トライしなくても、痛い目にあうときは遭いますから。・・・どちらもリスクがあって、やってもやらなくても後悔することはきっとあると思います。それだったら、やって後悔するほうがいいかなというふうに考えることのほうが多いです。・・・リスクを取って失敗したときのほうが、覚えますよね。・・・なにもしないほうが、本当に安全でリスクが少ないかと言われれば、決してそうじゃないと思っています。 

「プレゼン」力 ~未来を変える「伝える」技術~

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