数学的思考を除いたすべての思考は、隠喩的なのです。数学を除外したことで、フロストはデカルト的方法論と現代の実証主義的科学者による科学の濫用を拒んだのだ。
彼は物理学者ヴェルナー・ハイゼンベルクが立てた原理を次のように要約している。「あるものがどこにあるのかを正確に述べようとすればするほど、それがどれほど早く動いているかを見分ける精度は落ちるのです」。フロストは「物質の周辺では、空間は曲がっているようなものだ」というアインシュタインの言葉をとても気に入っていた。
1963年、フロストが逝去したまさにその歳に、オールダス・ハクスリーは実証主義科学に対してフロストが抱いていた積年の意義と同じ内容を、完璧な形で述べている。
科学全体にとっての究極の目標は、一元論的体系を作り出すことであり、その体系内では 象徴的な次元において、そして眼に見えないし、手で触れることもかなわない微細な構造を持った、推定上の構成要素という条件下においては 世界の莫大なる多様性がなにか統一的なものに還元され、無限に連続している大多数の様々な種類の独自の出来事が、単一の合理的秩序に整理され、単純化されてしまうのだ。
フロストの中では、唯物論も唯心論も、狂信的な精神である、絶対主義を信じる姿勢に帰結する。一元論においては、精神と物質が切り離されて、決して相容れることのない矛盾にされてしまうのだ。彼は2つの一元論(モニズム)を、あらゆるものをたった一つの要素で語ろうとする偏執狂(モノマニア)」であるとして批判した。
- 作者: ピーター・J.スタンリス,Peter J. Stanlis,藤本雅樹,坂本季詩雄,福本宰之,橋本安央,森井祐介
- 出版社/メーカー: 晃洋書房
- 発売日: 2012/02
- メディア: 単行本
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