ヤル気の科学―行動経済学が教える成功の秘訣

 イェール・ビジネススクールのケイド・マッシー教授は、セイラーがゴルフのルールを作りなおした直後にラウンドを回ったという。「リチャードは、ゴルフの採点方式を変えようと言うんです。パーを出したら1点、それ以外はどんなに叩いてもゼロ点。得点の一番高い人が勝ちです。この単純なルール変更で、私の楽しみは大きく向上しました。通常のスコア方式だと、私のようなゴルファーではひとつのホールで大叩きしたら、ラウンド全部がだめになるのが問題でした」。セイラーの方式で、軽度は失敗よりも成功に注力できるようになった。この話は、また、セイラーが絶えず心の働きについての知識を人々の幸福向上に使おうとしていることを示している。

脊椎動物はすべて、将来を双極的に割り引く傾向を生得的に持っているのかもしれない。でも、自分の分裂症的な自己を自覚して、将来の自由を制約する行動を意識的に取れるのは人間だけだ。

「男としては、相手と同時に絶頂に達したいところだ。でも、もしそこまで自分が我慢出来ないとわかっていたら、均衡点がどんどん手前に来て、性的な尚早化を招く可能性があるよね。」

研修生たちはザッポス社でのキャリアの極めて早い時期に、自分自身に対して自分がこの仕事に価値を置いていることをシグナリングするわけだ。拒否するには良すぎるアメも見たし、受け入れるにはひどすぎる鞭も見てきた。でもザッポス社の申し出の威力というのは、これが断れなくもない多額の申し出だ、ということだ。この申し出を断ることで、研修生たちは自分たちが将来の仕事をもっと重視していることを学ぶのだ。申し出を断る事で、雇い主に対しても良い感情を抱く。そしてその投資の選択を本当に実現させようとして、成功するよう一生懸命働くことで、心理的にも動機づけられることになる。

一億円出したら僕と寝てくれますか?
そりゃもう喜んで 一億円と言ったら大金ですもの。
一万円ならどう?
何よ、私が娼婦だとでも思ってるの?
その点はすでに決着済みですよ。今は単に値段でもめてるだけです。

人々が小確率事象をもっと重視しがちだからだ 特に何らかの理由でそれが注目すべきものになった場合は。1%の確率で100ドルもらえるなら期待値1ドルだが、数々の研究の被験者たちは、1ドルをそのままもらうよりは、期待値1ドルのくじ引き券をもらおうとして頑張る。この小確率事象の過大評価は、統計的には起こりにくい罰を避けるために人々がもっと頑張るように動機づけることもできる。

もし望む行動がリスク逓減行動とおもわれるなら、便益をアメとしてフレーミングする方がいい。でも望む行動がリスクを増やすと思われるなら、便益は鞭の現象としてフレーミングするほうが効果が高いはずだ。

文学では、厳罰を伴うコミットメント契約の仕様は悪と結びついている。ハリーポッターでは、セブルス・スネイプに闇の帝王ヴォルデモートに対する忠誠を証明スべく「破れぬ近い」を結べと要求するのは、ベラトリックス・レストレンジだ。これは、誓を破れば死んでしまうというものだ。これに対し、成人じみたダンブルドアは、時にはハリーに自分の指示に従うよう要求はするが、破れぬ誓いは決して要求しない。・・・善玉は腕をおるような罰則を要求しないのだ。

昔のボーイフレンドに電話しないというコミットメントをした女性は1ダース近いが、男性は女性をデートに誘うというコミットメントを1ダースしている。

ヤル気の科学―行動経済学が教える成功の秘訣

ヤル気の科学―行動経済学が教える成功の秘訣