フューチャー・オブ・エコノミックス―21世紀への展望

ボーモル


数学的手段を使ったために研究結果が現実離れしたものになったり、現実と無関係のものになることはない。自分の書いた論文が全て代数記号の配列で埋め尽くされていなければ価値のないものとして拒否されてしまうのではないか、という印象を持ったまま卒業してしまう。・・第一に有力な研究結果をもたらす可能性のあるほかの研究方法の導入を妨げていること、第二に数学以外の研究方法に優れた才能を持っている学生の能力を開花させるのを妨げていること、である。

森嶋通夫

ジョン・フォン・ノイマンは・・経験的事実という源泉からはるかに隔たり、また度外れた抽象化という近親交配にふけったために、数学の中身は退化する危険に瀕している。

一般均衡理論の学者たちの一部が・・互いにしのぎを削って知力と論理的能力とを証明することに憂き身をやつしており、現実の世界を見る必要があるとする人々を劣等生と決め付けるのである。科学的な退化の顕著なる症状 それがこの現象である。

経験的観察の土台の上にモデルを構築する腕を磨くという、危害に満ちた一軍の勇敢な人々が現れるとすれば、理論の歴史は、全く異なった方向に向かうであろう。最初に登場しなければならないのは、新しい経験的モデルそのものであって、モデルの公理化と数学的な精緻化とはその後の話である。

ターノフスキー

二次微分方程式体系で表され、体系の一次の部分は不安定であるが、二次の部分は一次の部分の不安定性を安定化させるような効果を持っている。このタイプのモデルについて・・特定の均衡点に収束するという意味での安定解は存在しないが、発散するとも言い切れないということである。・・定常点から離れようとする不安定な一時成分と、離れすぎると引き戻そうとする安定した二次成分との間の力のバランスで安定性が決まるということがわかりはじめている。・・継続的に循環する経済行動を生み出し、現実の動学的経済システムに近い種類の安定的な循環現象を説明することが出来ると考えられる。

ペンカベル

内的動機による研究・・研究をしたり論文を書いたりする動機が、未解決の問題を解決すること自体であったり、過去の経済学研究において難問とされた問題を解くという動機に過ぎなかったりして、現実の経済問題との結びつきは希薄な研究である。それとは対照的に外的動機による研究は、現実に観察される経済問題が直接の動機となっている研究である。

フランク・ハーン

限定された合理性に立脚した純粋理論の限界に多くの人々は気づいている。

宗教の衰退期にこそ正統派が勢力を拡大するのと同じである。・・経済主体が無限の将来に向かって効用を極大化しようとする行動の結果なのだとするならば、分権型経済システムはどのような相互作用と強調をもたらすのであろうか。・・この種の公理系理論モデルの考え方が今後衰退するであろうことは、・・明白である。

フューチャー・オブ・エコノミックス―21世紀への展望

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