スタートアップ・バブル 愚かな投資家と幼稚な起業家

 人生という旅の半ばでふと気づくと、正しい道を見失い、暗い森の中にいた。ダンテ・アリギエーリ

オフィスを遊び場のようにするトレンドはグーグルが最初だが、今では感染症のようにIT業界に広がっている。ただ仕事をするだけじゃダメ、仕事は楽しくなくちゃ!

ベンチャー投資家にとって最大のリスクは、悪い馬に賭けることじゃない。よい馬に賭けるチャンスを逃すことなのだ。

起業家の多くも、投資家に負けないくらい未熟で経験不足だ。

スティーブ・ジョブズはよく「バカの爆発的増加」と呼ばれる現象について語っていた。つまり、初期の頃から会社にいる二流社員が昇進し、部署を統括するようになると、バカが社員を採用しなくちゃいけなくなる。バカはもちろん、バカを採りたがる。・・・ガイ・カワサキ「B級プレイヤーは、優越感を覚えたいからC級プレイヤーを雇う。そして、C級プレイヤーはD級プレイヤーを雇う」。

バカが問題なのは、自分がバカだと知らないこと。バカがオレって最高!と思ってしまうと、実に厄介な存在になる。まあ、見方次第ではけた外れに愉快な存在にもなれるのだが。精神科医はこれを、コーネル大学の2人の研究者にちなんで「ダニング=クルーガー効果」と呼んでいる。彼らの研究で明らかになったのは、無能な人間は自分の力不足を認識できず、自らの能力を大きく買いかぶり、本当に有能な他の人達の才能を理解できない、ということ。

ダニング=クルーガー効果 - Wikipedia

www.youtube.com

ドットコムバブルのピークにAOLが42億ドルでネットスケープを買収した時、世界中が正気を失ったような気がしたけれど、今やウーバーは民間からの出資で80億ドル以上を調達し、同社の評価額は600億ドルを超えている。・・・未だに利益を上げていないツイッターの評価額が160億ドルにのぼり、実際に車を売って利益を上げているフィアット・クライスラーとほぼ並んでいる。

前回のバブルと同じように、シリコンバレーのそれは頭のいい多くの人たちが、主張し続けている。「何もかも理にかなっているから、何の心配もいらない」「今回は別格だ。今回は、本物のビジネスをしている、本物の企業ばかりだからね」と。

「アンドリーセンホロウィッツから資金を得たら、会社の評価額が2倍にも3倍にもなる。どうしてかって?アンドリーセンホロウィッツだからさ」

ご存知のように、同社はa16zとも呼ばれている。Aと16文字とZ、というわけ。テクノロジーオタクは、こういうのが大好きだ。

言葉の暴力を振るうような上司を、これまで持ったことはない。・・・誰かに責められたり侮辱されたり、ここまで敵意を剥き出しに侮るような態度を取られたこともない。・・・心理学実験の被験者としては、興味の尽きない人物なのだ。

一つみんなが快く思わないのは、こういう企業がひどく脆いことだな。世間が思ってるよりずっと脆い。成功と失敗の差は、みんなが思うよりずっと小さいんだ。すべては、企業が自爆してしまう前に、脱出速度に達することが出来るかどうかにかかってる。

狂気のレベルがさらに引き上げられた模様だ。この3ヶ月間、私を生き地獄に放り込み、人生最悪の経験をさせたトロツキーが、そんなことあった?と言わんばかりの振る舞いをしている。

スタートアップ・バブル 愚かな投資家と幼稚な起業家

スタートアップ・バブル 愚かな投資家と幼稚な起業家

 

 

漫画201711

helck☆☆☆☆

10月の新刊ラッシュが一息ついたので、今月発売の11巻に向けて総復習。Web版と異なり、コミックス版では巻末でピウイが活躍しているので、ピウイファンはコミックスも買ったほうがいいです。現存のファンタジーものでは五本の指に入る出来で、1巻の笑:真面目=8:2比率を期待すると肩透かしを喰らいますが、伏線がしっかりと張られたプロット、シリアスパートもしっかりしているし、画力も高いので非常にオススメの作品です。

こちらは8巻の一コマ、アンちゃ~ん

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11巻出ましたね。次巻でラストなのかほぼ全編がシリアスムードであまり面白くありませんでしたが、せっかくなので最後まで付き合おうと思います。銀魂もそうなんですが、ギャップ狙いとはいえ、シリアスパートがちょっと重すぎでした。もう少し軽くていいと思います、テンポも悪くなるし。

本巻で唯一面白かったのは巻末のピウイを見つけ出せ!!コーナーでした。

Helck 11 (裏少年サンデーコミックス)

Helck 11 (裏少年サンデーコミックス)

 
Helck(1) (裏少年サンデーコミックス)

Helck(1) (裏少年サンデーコミックス)

 

ハルロック ☆☆☆☆

西餅先生のハイパーマニアック電子工作漫画、女性ギャグ漫画家さんの作品って柴田亜美さんとか中村光さんとかカレー沢薫さんとか、なんか頭のネジぶっ飛んだ感じの笑いが多くて好きです。西餅先生はデビューが犬神もっこすで、乗り切れませんでしたが独特な世界観だったのを覚えています。このままマニアックな職業(趣味)+変わった主人公で二ノ宮知子さん路線狙うのが支配戦略かな、と思ってみたり。某ブログで紹介されていて久しぶりに読み返しましたが、1巻のぬいぐるみのエピソードはやはり鉄板ですね、久しぶりに腹抱えて笑いました。

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ハルロック(1) (モーニングコミックス)

ハルロック(1) (モーニングコミックス)

 
ハルロック(2) (モーニングコミックス)

ハルロック(2) (モーニングコミックス)

 
ハルロック(4) (モーニングコミックス)

ハルロック(4) (モーニングコミックス)

 
ハルロック(3) (モーニングコミックス)

ハルロック(3) (モーニングコミックス)

 

クレムリンは名作だ。

銀河英雄伝説☆☆☆

第7次イゼルローンは同盟軍の鮮やかな勝利で呆気なく終わり、ヤンはめでたく退役。カストロプ動乱でジークが名を上げ、いよいよ作品でトップクラスのクズ野郎(アンドリュー・フォーク准将)による帝国領侵攻へ。いつの時代も、どこの組織にも絶対にいるよね、こういう奴(怒)と既視感がすさまじい。現実と違って、馬鹿がドンドン死んでくれるのはフィクションのいいところです。若干ネタバレですが、カストロプ動乱は帝国領侵攻時の同盟軍を暗示しているという意味で非常に示唆的です。

 本巻の馬鹿1:ゼークト

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本巻の馬鹿2:フォーク

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アオイホノオ☆☆☆

 引き続き風の戦士ダン回、井上紀良先生との画力の差を痛感しつつ(よりにもよって、笑)、もがき続けるホノオの青春が熱くて楽しい。原作のイメージと原稿の落差は、「当時俺が本当に書きたかったのはこれなんだよ!」という島本先生の熱い思いが詰まっていて最高に好き。

くまみこ☆☆☆

まちとナツの可愛さで突っ走ってきたけど、そろそろ変化も欲しい頃。新キャラもストーリーの構造的に出しにくく、なんとも難しい舵取り。ピュアネスは上手く使っていきたい。

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宇宙兄弟☆☆

こちらも長期連載で避けられないマンネリ化。面白いけど飽きるのは仕方ない。

ちはやふる☆☆

 40巻くらいで完結かな~、これといって印象に残るコマもなかったけど、おまけの原田先生だけ笑った。

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ちはやふる(36) (BE・LOVEコミックス)
 

雪花の虎☆☆

 久しぶりに続刊が出た。諏訪姫が美しい、そして歴史好きの「おっくん」はキャラがいい(本編関係ない)。

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雪花の虎(5) (ビッグコミックス)
 

かぐや様は告らせたい?☆☆☆

 以前、こんなの頭脳戦でもなんでもねーよと酷評したかぐや様ですが、完全にギャグ漫画として割り切ったのか、逆に少し面白くなっていました。6巻の双六回は王道のプロットですが、キャラがしっかりと活かされた面白いエピソードで、このレベルを維持してくれると嬉しいです。あと渚ちゃんの出てくる回はいいですね。もう少し様子見します。ミコちゃんはルックスいいんですが、あまり使い勝手のいいキャラには見えません。ToLOVEるの古手川さんみたいにするつもりかな?

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よしふみとからあげ☆☆☆

ハルロックでも書きましたが女性ギャグ漫画家の作品は発想がぶっ飛んでいて好きなんですよね。よしふみとからあげも打率5%くらいで大笑いするネタが出てきます。からあげがまるで可愛くないのがまたね(笑)

2巻のお色気コマ

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3巻のSWコマ

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6巻のザリー

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なんだ、この漫画w

よしふみとからあげ(1) (KCデラックス ヤングマガジン)

よしふみとからあげ(1) (KCデラックス ヤングマガジン)

 
よしふみとからあげ(6) (KCデラックス ヤングマガジン)

よしふみとからあげ(6) (KCデラックス ヤングマガジン)

 

アルスラーン戦記 ☆☆☆

 人気原作と人気漫画家のコラボも気づけば8巻、シンドゥラ内戦もほぼ終わり、次巻から新展開。トラが可愛いのなんのって。

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くーねるまるた☆☆☆

次の巻で第一部完結だそうな、ちょっとマンネリ感あったし妥当かな。 

紫陽花ゼリー美味しそう:

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喧嘩稼業☆☆☆

 おっさんが殴り合っているだけなのに面白い、木多さんまじで漫画センスの塊。

君に届け☆☆☆

買ったの忘れてた。今月(2017/11)の別マで本誌は最終回。30巻で最終?右往左往していた矢野ちんもようやくゴールにたどり着き、物語は大団円に。初期君に届けファンからすれば、作品中盤からはオールウェイズ消化試合の様相を呈していたかもしれませんが、深みがあってしっかりした作品になっているのでそんなに悪くないように思います。みんな主人公なんだぜってね。

君に届け 29 (マーガレットコミックス) 最新巻

君に届け 29 (マーガレットコミックス) 最新巻

 

過去の記事

 

 

サッカーマティクス 数学が解明する強豪チーム「勝利の方程式」

チーム全体が部分の総和を上回るという概念こそがサッカーを数学的なスポーツにする。野球のバッティングやピッチングの統計のように、チームの個々の要素を足し合わせていくだけでいいなら、チーム全体は部分の総和と完全に一致する。

大学の統計学の講座では、パスがくるかどうかはポアソン分布に従うというのが講師の最高の、そして唯一の、ジョークだ。

1898年、私が本書で用いているような形でポアソン分布を始めて応用したのは、ドイツを拠点に活動したポーランド人のラティスラウス・ポルトキーヴィッチだった。彼は2つのデータセットを調べた。一つ目は24年間に自殺した10歳未満の子供の数という恐ろしい統計だった。2つ目のデータセットは馬にたまたま蹴られるなどして死亡した兵士の数に関する統計だ。

どうやら、彼はそのわずか数年前にイングランドフットボールリーグが創立されたことを知らなかったようだ。もし知っていたら、ドイツの死亡統計など細かく調べなくても必要なデータがまるまる手に入っただろう。

彼が調査した280部隊の内、144部隊では全く死亡例がなかった。ところが2つの不運な部隊では、ある年に4人が死亡した。ポルトキーヴィッチがポアソン分布に当てはめることで、これらの部隊が必ずしも他の部隊よりも馬を手荒く扱ったわけではなく、その年にたまたま不運が重なっただけだったことを証明できた。

新しいデータを見せられた時、私が真っ先に行うのはポアソン分布との比較だ。

2015年、応用数学者のクリスチャン・トマセッティと医師のバート・ボーゲルシュタインは統計的理論を用いて、癌の症例の2/3が不運に由来することを証明した。肺がんと喫煙のように生活習慣と関連付けられるがんもあるが、そういう癌は全体の一部に過ぎない。より重要な要因は、人間の体内で必ず起こる細胞分裂に潜んでいる。細胞が分裂するたび、微小な確率で、癌の引き金となる遺伝子変異が発生する。クリスチャンとバートは体内で細胞分裂の速度が速い部分ほど癌になりやすいという事実から、癌は主にこのランダムな突然変異によって説明がつくと結論づけた。

Variation in cancer risk among tissues can be explained by the number of stem cell divisions | Science

BY CRISTIAN TOMASETTI, BERT VOGELSTEIN
SCIENCE02 JAN 2015 : 78-81

癌がランダムだとしたら、癌の原因の研究に巨額の費用をかけるべき理由は?不運という言葉の意味や結論をわかりやすく説明するため、彼らは自動車事故に例えた。自動車の運転時間が長ければ長いほど、事故の確率が高まる。運転の仕方も一つの要因ではあるが、ハンドルを握っている時間も重要なのだ、と。

サッカーの試合では、どの1分間をとっても一定の確率でゴールが生まれるのと同じように、細胞は分裂するたび、一定の確率で癌細胞へとランダムに突然変異する。そういう意味では、癌は不運と考えられる。無失点で試合を切り抜けられるサッカーチームがあるのと同じように、1回も癌にならずに生涯を終えられる人もいる。

応用数学者にとって難しいのは、目の前の問題に対して適切なモデルを選択することだ。シーズン中のボール数を予測するだけなら、たいていはランダム性だけで十分だ。しかし、フォーメーション、動き、スキルについて理解したいなら、構造を理解する必要が出てくる。

いくらグアルディオラが天才だとはいえ彼がシャビ、イニエスタ、ペドロ、メッシに相手チームの選手が双対ボロノイ図の境界線上に位置するようなドロネー三角形分割を作ろうと指示したとは思えない。

自然淘汰が魚同士の相互作用の仕方を形成したのと同じように、プロの選手は数千時間の練習を通じてピッチ上での動きを習得するのだ。かつてアヤックスバルセロナの監督を務めたリヌス・ミケルスは壁パスやシュートの練習を繰り返すだけではメッシがシャビとペトロへのパスで見せたような技術を養うことはできない、と訴えた。大事なのはむしろ、どういう状況でワンツーをすればより効果的かを体得できる練習プランを監督が組み立てることなのだという。

ホルガー・バトシュトゥバーは、一対一のディフェンスを偉大な芸術と呼ぶ。彼によると大事なのはすぐさま相手にプレッシャーをかけ、ぴったりとつき、スペースを与えないことだ。と同時に、早く飛び込みすぎないことも重要だという。経験豊富なアタッカーにはかえってチャンスを与えてしまうからだ。むしろディフェンダーはゴール方向から遠ざかるルートをアタッカーに見せるべきなのだという。一流のディフェンダーは相手の選択肢を狭め、アタッカーが無理して動いたところでボールを奪う。

カリフォルニア大学バークレー校のセリーナ・パン

セリーナらが提案するこの守備アルゴリズムでは。アタッカーの動けるスペースを狭めることが何より大事だ。バルセロナの攻撃の秘訣はなるべく広いゾーンを確保することだが、裏を返せば、効果的な守備の秘訣はそのゾーンを狭めることだ。

セリーナらは続けて、このゾーン最小化アルゴリズムディフェンダー側の必勝であるという数学的証明を与えた。アタッカーの方が目標ライン上の点、この場合ペナルティエリアの枠、に最初から近いのでもない限り、ディフェンダーは必ずアタッカーを捕まえられる。だからこそ、クリスティアーノ・ロナウドネイマールルイス・スアレスなどのフォワードの方がバトシュトゥバーなどのディフェンダーよりもずっと崇拝されるわけだ。もちろんディフェンダーは十分に偉大な芸術家だがディフェンダーを振り切るフォワードは不可能を可能にしているといえる。

Pursuit, evasion and defense in the plane - IEEE Conference Publication

セリーナは自身のモデルを構築するにあたり、雌ライオンによる集団的な狩りの研究にヒントを得た。

 全体的に見ると極値理論が使えると言える程度には過去の実際のデータとの一致が見られる。しかし、メッシの50得点は理論から導き出される曲線よりも上にあることがわかる。理論上の曲線はデータヒストグラムのかなり下側にある。実際網掛け部分は全体の面積の73分の1、すなわち1.37パーセントに過ぎない。つまり、このモデルに従うとすれば、メッシのようなパフォーマンスは73年に一度しか見られないことになる。アルゼンチンの平均寿命が75歳なので、メッシの記録はまさしく一生に一度の奇跡といえるのだ。

 得点の難しさは国や男女の試合によって異なが、どのリーグにも同様の統計的な規則性が見られる。極値理論を用いれば、選手たちが記録を更新する確率を予測できる。そして、大きな出来事に関しては、それがどれだけ特別な出来事なのかを測定できるのだ。

 ボルトは数学的モデルを凌駕しただけでなく、非現実的なくらい楽観的なモデルさえ上回ったということになる。彼は世界記録だけでなく、100メートル走のタイムを正確に予測する人間の能力まで破ってしまった。彼の記録したタイムを見ていると、何を手がかりに次のタイムを予測すればいいのかさえ、もはやわからなくなってくる。

 ただちに統計モデルが全く無効になるわけではないが、過去について分かっている範囲内で最善の予測をするのが統計的モデルの役割なのだと認識しておく必要がある。未来がどういう出来事。用意して待っているのか、それを正確に知ることは残念ながら不可能なのだ。

サッカーの場合チーム的な要素が野球よりも統計をずっと複雑にしている。あるディフェンダーがボール奪取率の統計でトップに立っているのは、監督にその役割を与えられたからなのか、チームメイトがボールを奪われてばかりいるからなのか、それともポジションが悪くて最初に相手のパスをインターセプトできていないということなのか。あるフォワードが多数のシュートを打っているとしても、シュートを打たずにパスを出していた方がチームにとっては良かったかもしれない。難しいのは個人とチームを切り離すことだ。

2014年、デンマークのクラブFCミッティランが、ベッティングサイトマッチブックやスポーツモデリングサービス、スマートウォッチのオーナーであるマシュー・ベナムによって買収された。べナムは数学的モデルを用いた結果の予測を専門にしており、選手やチームの巨大なパフォーマンスデータベースを構築してきた。ベッティングの分野で、彼は自身の統計的手法を用いて財を築いた。

ミッティランのスポーツディレクターのクラウス・スタインラインは、オーナーが数学的モデルの専門家であることのメリットをすぐさま悟った。以前はスカウトが一人でしかもコーチ兼任でした。でも今は数字をガリガリと処理し、我々にふさわしいターゲットを提案してくれるチームがロンドンにいるんですよ、と彼はガーディアン誌の記者ショーン・イングラルに語った。

2015年夏、この科学的アプローチはついに功を奏した。ミッティランが史上初めてデンマークリーグ優勝を果たしたのだ。ミッティランはもしかすると科学がクラブの戦術へときちんと統合される未来のサッカーを体現しているのかもしれない。

確かに数学や科学は役に立つ。科学的な道具を使えば、パターンを明らかにし、ランダム性を手なずけられる。数学的モデルを適用するたび、世界の成り立ちがより鮮明に理解できるようになる。しかし、数学者や科学者は、その限界も自覚するべきだと思う。サッカーであれ人生であれ、論理で説明のつかない物事は必ずある。たが、心配はご無用。むしろ、それは喜ぶべきことだ。


【ほぼキャプ翼】イブラヒモビッチの25メートル超ロングオーバーヘッド動画

勝ち点2の方が筋は通っているとしても、勝利にインセンティブを与えることはできない。

長い目で見れば負ける試合は増えるが勝つ試合も増え、全体的な獲得点も増える。勝ち点3の制度によって、期待される勝ち点のパイが大きくなり、より攻撃的なサッカーが繰り広げられるようになるのだ。

 ジミー・ヒルが提案した勝ち点3はしごく筋が通っている。勝ち点2の場合、両チームの奪い合う勝ち点のパイが固定されている。弱小チームは妥協する方が常に得策だ。その結果強豪チームがアドバンテージを生かし、弱小チームが守りに徹するという退屈な推移的序列構造が出来上がる。一方、勝ち点3では弱小チームにも大きなインセンティブがあるため、理論上、より攻撃的なサッカーが展開されるというわけだ。

引き分け数の上位5シーズンはいずれも勝ち点3への変更前で、下位4シーズンはいずれも変更後だ。このデータは統計的検定を適用するのに十分であり、勝ち点の変更が攻撃的サッカーを促進したという結論を十分に裏付けている。

勝ち点2の場合、弱い方のチームは常に守るべきだとわかる。あなたのチームの方が負ける確率が高ければ、守備に徹する方が常に得策なのだ。ここでもやはり、強豪チームの攻め、弱小チームの守りという厳格な序列が出来上がる。ところが、勝ち点3になると結果が異なる。あなたのチームの負ける確率が勝つ確率の2倍未満なら攻撃するべきだ。一方、相手チームの勝つ確率があなたのチームの2倍以上なら守るべきだ。勝ち点3の場合、弱い方のチームが攻撃的サッカーを採用すべき状況が広がるわけだ。

画期的なのは彼がサイバネティックスの考え方を指導に取り入れた方法だ。

 彼はサッカーチームを数学的システムとして考案した最初の指導者として行っていい。サッカー戦術の歴史の著者ジョナサン・ウィルソンは、ロバノフスキーにとって、サッカーとは11の要素からなるサブシステム2つが一連の制約を受けながら定義された領域内を動き回るゲームだったと記している。ロバノフスキーにとって、サッカーの驚くべき性質とは、サブシステムの有効性がサブシステムを構成する要素の有効性の総和を上回るという点だった。彼はチームのパフォーマンスが時としてその部分の総和を上回ることにいち早く気付いたわけだ。

 部分の総和が全体を上回るチームは、全員がチームに貢献すると不釣り合いに強くなるが、裏をかえせば、部分部分が崩壊し始めると不釣り合いに弱くなってしまうとも言える。選手の貢献が高まるとチームが一気に強くなるということは、その貢献がなくなると一気に弱くなるということでもある。選手の貢献がある程度まで下落すると、機能不全のチームのために頑張っても誰も得をしなくなる。監督の指示通りに動けば選手の利益になるなら、選手のやる気を鼓舞するのは簡単だが、そうでない場合には難しくなる。

 超線形性とそのパラドックスを理解しているオランダ人は、先日のマデリン・ビークマンだけではない。

 ルイ・ファン・ハールは、監督の仕事とはチームの規律と自己の規律、個人の責任と集団の責任を教えをこむことであり、それができて初めて、全体が部分の総和を超えるものになると述べている。

ゴールの発生地点のモデルを作成するのは簡単だ。ピッチをいくつかのゾーンに分割し、各ゾーンからシュートが決まる確率を調べればいい。例えばゴールエリア、ペナルティエリアペナルティエリア外を3つのゾーンとして定義し、各ゾーンからのシュート数とゴール数を計測することができる。

 試しに過去のシーズンのシュート数とゴール数を調べてみると、先ほどの3つのゾーンからシュートが決まる確率はそれぞれ31.2%、12.4%、3.4%だ。3つ目の数値には驚かされた。この数値を見る前はストライカーがペナルティエリア付近まで来るために立ち上がり、シュートしろと叫んでいたが、そんなことはもうやめる。成功率3.4%には興ざめだ。平均するとペナルティエリア外から打たれたシュートは、約30分に1本しか決まらない計算になる。フォワードがあと数メートルだけでも前進できれば、ゴール率は3倍に増えるのだ。

サッカーマティクス 数学が解明する強豪チーム「勝利の方程式」

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鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。

 対象が異性であろうが、鳥類であろうが、情景の念は知識欲を喚起する。異性を研究しすぎたものは、ストーカーの汚名のもとに逮捕されるが、鳥への興味は学問に至った。

おそらく、一般に名前が知られている鳥類学者は、ジェームズ・ボンドぐらいであろう。英国秘密情報部勤務に同姓同名がいるが、彼の名は実在の鳥類学者から命名されたのだ。

実利の小さい学問の存在理由は、人類の知的好奇心である。

実際に分析したのは器用で寛容な共同研究者だが、のび太の手柄は僕の手柄だ。共同研究とは、苦手な作業を他人に押し付けることである。

光に魅せられた蛾が耳孔に飛び込んだのだ。世界はこんなに広いのに、なぜその軌道を選んだ。・・・いずれ鼓膜を突破し脳に侵入され、私はモスマンに成り果てる。ミュータントモスが腹を食い破り人類を恐怖のどん底に叩き込む。不吉な未来に怯えながら夜明けを待つ。長く戦いすぎて蛾と友情が芽生えてしうかと不安になった頃、朝日の中に迎えの船が現れた。・・・耳栓と鳴き声のどちらをとるべきか、それが問題だ。

湿度の高い中でウキウキしているのは、カタツムリの研究者だけである。

寝る前に別働隊とミーティングしながらクールダウンする。・・・妻が子供連れてっちゃって裁判中でさ・・・あっ俺もバツイチ・・・そうか、俺もだよ・・・色々考えると眠れなくて、もう三日も寝てないよ・・・。調査隊の抱える闇は、夜闇より深い。

ホンダ、ハーレー、モト・グッツィ、バイクのロゴにはしばしば鳥の翼がはためいている。これは、バイク業界から鳥類学への熱いラブコールである。

私の知る限り、動物は足が多いほど不快性が増し、少ないほど美しい。ムカデは100本、蜘蛛は8本、ゴキブリは6本、ドブネズミは4本、鳥類と美の女神アフロディーテは2本。

私は骨格標本を集めている。変態だからではない。鳥類学者だからだ。・・・骨格系ほど機能美を具現化している部位はない。鳥の代々の特徴である飛翔を支えるのは翼だが、その翼を支えるのは骨格である。・・・日本の研究機関に収蔵される鳥類の標本は、そのほとんどが仮剥製なのだ。仮剥製とは、剥製と同じく羽毛をまとった標本・・・羽毛の美しさはたしかに鳥の特徴だが、内面の美しさが大切だと道徳の教科書に書いてある。これは由々しき事態だ。

日本の土壌は酸性であるため、いかに硬い骨とはいえ自然下に放置されたままではいずれ分解されてしまう。

体にTシャツの刻印を刻んだままの水着姿はあまりに貧相で、ひと夏のアバンチュールは夢のまた夢である。ユニクロしまむらも庶民の味方ならば、着たままでむらなく日焼けが出来るUVスルーシャツを作るべきだ。

 

ちっちっ、白いのは尿だよ。糞はその横の黒い部分だぜ。ハニー。

理系はデリカシーないから嫌い。
毛虫を見るような目で蔑まれ、彼女は去っていくかもしれない。しかし、そんな彼女もいつかきっと感謝するはずだ。君のおかげで同じ間違いを繰り返すことなく、次の彼氏の前で不正確な発言をして恥をかかずに済んだことを。

 

2014年、ラートの本家とも言えるネズミの回し車に関する論文が発表された。野外に回し車を設置し、野生動物が遊びに来るかどうかを確かめてみたという遊び心満点の研究だ。その結果、野生のネズミがやってきてひとしきり回していくことがわかった。…カエルやナメクジも遊びに来ていた。

rspb.royalsocietypublishing.org

一般に前に進む行為には無駄がつきまとう。鳥は翼を羽ばたかせて進む。羽ばたきとは翼を上げては下ろす行為だが、前進に寄与するのは翼を下ろすときのみだ。持ち上げは次に下ろすための準備でしかない

動物が歩行するときは前に出した足を地につけ後方に蹴って進む。足を出す間は宙に浮いているため推進力は得られない。クロールもバタフライも一連の動作のうち半分は準備である。実に無駄、無駄無駄無駄、時間を止めて説教したくなるくらい無駄だ。

一方で回転運動はエレガントだ。前進のための行為がそのまま予備動作を兼ねており、無駄がない。このため途切れることなく滑らかに前進でき、数ある運動パターンの中でも極めて効率良い運動、すなわち運動オブ運動なのである。

しかしあくまで想像どまりで、野生動物で見られる回転運動はガチャピンのバク転ぐらいしかない。回転という画期的運動が、野生動物では未採用ようなのだ。

最後の希望をかけて鳥の飛翔に注目して探したが、やはり誰も回っていない。ブーメラン型の翼形を持つアマツバメはもしやクルクルしていないかと期待したが、買い被りであった。唯一見つけたのは、モズが電線に止まり、尾を無駄にクルクル回す姿だけである。鳥類原理主義者として無念極まりない。

鳥類は視覚に頼る動物である。同じく多くの昼行性動物が視界に頼る。食物の発見でも捕食者の警戒でも、視界は重要な役割を果たす。しかし回っていると景色が動き続けて視界が安定しない。これでは獲物も捕食者も到底発見できない。いかに運動効率がよくとも、命の危機は採用を見送る大きな根拠となる。彼らは回らなくて当然なのだ。人間が回転を利用できたのは、自分ではなく道具を転がしたからなのである。

とはいえ、本当に回転運動は野生動物に採用されていないのだろうか。例外のない法則はあるのだろうか。もしかしたら、どこかでひっそりとコロコロしているかもしれない。私は野生の回転を求めて旅に出ることにした。時に岩の割れ目に挟まったダンゴムシに失望し、時にこたつで丸くなる猫を叱咤激励する。しかし回転は見つからない。エレキングの角でもグミラのドリルでもいいから回ってくれ。いっそ怪獣が上陸して明日の会議中止になれ。そんなことを考えながら遊歩道を歩いていた秋のある日、ついにその時が来た。

岩上の一匹のオカヤドカリと目が合う。私に驚いたのか殻の中に体を引っ込める。すると、支えを失った彼は大岩の側面を転がりながら私の視界から消えていくではないか。ネズミの穴を目指すおにぎりほどの猛スピードである。
ついに見つけた。これこそが野生の回転だ!効率の良い回転で日常にない速度を稼ぎ、一気に敵の視界から逃げ去って命の危機を回避する。実に天晴、日本晴れ。私のド旅もようやく終わりだ。ありがとうオカヤドカリ!動物が陸上に進出して約四億年、回転運動はきちんと開発されていたのである!

コロコロコロ…ガチャン!
ぬっ?な何だ、その岩にぶつかって割れた殻は。何だ、その殻を見捨てて逃げていく弱々しい甲殻類は!
後先考えぬ回転により視界から消えたオカヤドカリは、勢い余って岩にぶつかり割れたのだ。仮にも彼らは天然記念物…私は歩いていただけだよな。私が割ったわけじゃないよな。そもそも割れたのは彼らの仮宿であって彼ら本体でもないしな。そうだよな。…私は悪くないよな。

回転運動は絶望的に視界を失う制御不能の無謀運転にすぎない。野生の回転が進化しなかった理由を目の当たりにし、私の旅は秋風と共に終わりを告げた。

小さな感傷に浸る私の視界の端で何かがくるくる回転する。イマサラ何だ?それは回りながら宙を舞い落ちてくるカエデの種だった。

回転により落下時間が延長され風でより遠くまで散布される効果がある。まさか植物で採用されていたとは恐れ入った。動物にとって視界を失うデメリットは大きすぎる。しかし、視覚のない植物には関係ない。

 

 だいたいNASAが悪い。月とか火星とか行っている暇があったら、まずは早々にほんやくコンニャクの開発だろう。サーズデイに発表があるといえばサタデーなんだねと相槌を打たれ、バードの研究をしているといえばそれはどんな昆虫かと聞き返される私の会話力をなめるな。どう考えても悪いのは私ではなく日本の教育制度とNASAのせいなので恥じ入ることはない。腹をくくって国際会議に潜入することにしよう。

 国際会議とはいえレベルはピンキリである。欧米教育の賜物か、彼らはどんな内容でもキラキラと発表する。だが、よく聞くとツッコミどころ満載の発表も少なくない。

 慣れぬ仕事には労力がかかるが、断るのにはさらに大きなエネルギーを要する。気の弱い私にそんなことできるはずもない。なぁに、元々特定のテーマを探求するために研究を始めたわけではない。舌先三寸と八方美人を駆使して私は受け身の達人になることに決めた。

 世の中は積極性至上主義がまかり通る。将来の夢を描けない小学生は肩身の狭い思いをするが、受動性に後ろめたさを感じる必要はない。これを処世術に上手く生きていくのも一つの見識である。

 研究者にも色々なタイプがいる。一つのテーマをコツコツと掘り下げる土星人タイプ、最先端のテーマをバリバリこなす金星人タイプ、あれこれつまみ食いする火星人タイプだ。典型的な火星人タイプの私は受動性を発揮しながら研鑽を重ね、楽しく研究を続けていた。

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。

 

 

イーロン・マスク 未来を創る男

 インターネットとか財務とか法務に詳しい賢い人間が多すぎると思うんだ。そういうことも、イノベーションがじゃんじゃん生まれてこない理由なんじゃないかな

ドットコムバブル崩壊後、2002年にグーグルが一気に力をつけるが、これは例外中の例外だった。グーグルの出現以降、2007年にアップルがiPhoneを発売するまでは、IT業界は次々と企業が生まれては消えるゴミ捨て場状態だった。

ジェフ・ハマーバッカーは「同世代の賢そうな連中はみな、どうしたら広告をクリックしてもらえるしか考えていない。本当にろくでもない」

社会的に意味のある世界観

マスクのお気に入りはコスプレパーティーだ。騎士の出で立ちで現れ、ダース・ベイダーを相手に剣代わりのパラソルを手に決闘するパフォーマンスを披露したこともある。

SF作家ダグラス・アダムスの銀河ヒッチハイクガイドを読んで、あるSF的な言葉に大いに感銘を受けた・・・「本の中で『本当に難しいのは、何を問えばいいのかを見つけることだ』とアダムスは指摘している。つまり問いが見つかりさえすれば、答えを出すのは比較的簡単なんだ。そして、質問したいことをしっかりと理解するには、人間の意識の範囲と規模を広げることが大切だという結論に達した」

ティーン・エイジャーのマスクがたどり着いたのは、論理的すぎるほどの使命だった。「唯一、人生において意味のあることといえば、啓蒙による人類全体の底上げに努力することだ」

銀河ヒッチハイク・ガイド (河出文庫)

銀河ヒッチハイク・ガイド (河出文庫)

 

勉強以外は、キンバル(弟)と新聞を読む時間が多かった。会ってみたい人を探すのが目的だった。新聞で面白そうな人を見つけては、いきなり電話して「ランチをご一緒したい」と申し出るのだ。

食事を取らなくても済む方法があれば、もっと仕事ができる。いちいち食卓につかなくても栄養を摂取できる方法があればいいんだけど・・・あの歳であれだけの労働感や強い思いを持つのは普通ではないですよね。そんな話、聞いたことがなかったですから。

何かに熱中し始めると、誰よりも深くのめり込んでいく。そこがマスクらしさの源泉なのだ。

コンピュータゲームは大好きだけど、自分で素晴らしいゲームを開発できたとして、それが世界にどれほどの影響力を持つのか冷静に考えてみた。まあ、大したことはないだろうと。心の底から好きなことではあっても、生涯の職業として人生を賭けることはできないと判断したんだ。・・・インターネット、宇宙、再生可能エネルギーの3つの分野こそ、今後、大きな変化を遂げる分野であり、自分が影響力を発揮できる市場だと見ていたのだ。この3分野で夢を追いかけよう。

私は投資家ではない。未来に必要な技術、有益な技術を実現したいだけなんだ。

彼が得た最大の収穫は、「銀行には金があるが、無能な連中ばかり」ということだった。

銀行ときたら、どこも横並びで前例主義。みんなが崖から飛び降りたら、多分慌てて飛び込むような、そういう連中だ。たとえ、そこに金塊が大量に積んであっても、誰も触らなければ自分も触らない。そういう発想なんだろうね。

同じマクラーレンのオーナーのひとりが、オラクルの共同創業者で億万長者でもあるラリーエリソンだ。ある日、マスクがエリソンにメールを送った。出し抜けに、暇つぶしにレース場で自動車レースでもしませんかとの誘いだったという。同じく大金持ちでスピード狂のジムクラークがマスクの誘いに乗り、すぐに近所のフェラーリのディーラーに駆けつけ、マスクに対抗できそうな車をその場で買っていったという話もある。

伝説の名車…アクセルを一気に踏み込み車線を変えたところ、車はスピンして道路の縁石に衝突、そのはずみで宙に浮きあがった。窓ガラスは粉々になり、タイヤも破裂。…何が笑っちゃうってさぁ、俺、保険に入ってないんだよね。

2000年3月、異常な浪費合戦を繰り広げてきたX.comとコンフィニティが我に返り、むしろ手を結んだほうがいいのではないかと気づく。

ダンス中にマスクがジャスティンを引き寄せ、この夫婦のボスは僕だ、と告げたのである。…彼はいつも私の至らない点について何か言ってくる。そのたびにちょっとぉ、私はあなたの妻よ。部下じゃないのよと言い返す。すると、君が部下なら、とっくにクビだよと何度言われたことか。

順当に考えれば次は太陽光だが、商売になるのかわからないと言うんです。と思ったら、今度は宇宙の話が始まって。最初スペース、スペースと連呼するから、オフィスのスペースのことかと思ったんですよ。不動産業でもやるのかと思いました。

例えば会議でどうしてこれを選んだ?と聞かれて、これが一般的ですからなんて答えたら、二度とそんなこと言うんじゃねえって、その場で会議室からつまみ出されますよ。そうやってボコボコにしますけど、すぐにクビにしないのであれば、信頼できる社員かどうかを試してるんですよ。自分と同じくらい型破りな人間か知りたいんです。

携帯電話を取り出し、こういうのをやっているんだと言いながら、ファルコン1とロードスターの写真を見せる。だがライリーは、彼がプロジェクトの一員として何らかの作業に関わっただけで、まさか両方の会社を持っている経営者だとは思わなかった。

マスクと出会ったあと、彼女は実家に電話し、ロケットや自動車を作っている面白い男性と知り合ったと伝えた。当時英国の重大組織犯罪局の幹部を努めていた父親は、いつもの癖で、さっそく男の素性をコンピュータで調べてみた。国際的なプレイボーイで既婚、五人の子持ちと表示された。

突然彼が帰らないでくれ。結婚してほしいって言うんです。あまりに唐突なので吹き出しちゃったんですよ。そうしたら、違う、真剣なんだ。申し訳ない、指輪も持ってきてないのにと。それであなたさえ良ければ、握手でいいわよと答えたんです。そこで握手しました。

多分母はノイローゼになったと思います。でも私はいつも恋愛に心をときめかせていたかったし、そんなにおかしなことだとは思いませんでした。

たしか彼は僕と一緒になるということは、苦難の道を選んだことになると言ったんです。そのときはどういう意味なのかわかりませんでしたが、今はよくわかります。本当に苦難の道ですよ。異常っていうほうが正しいかな…。

ファルコンウィングドアだ。スーパーカーでおなじみの跳ね上げ式のガルウィングドアである。ただし、厳密には従来のガルウィングとは違う。ガルウィングは、上方にドアが跳ね上がるため、天井に当たることもある。だが、ファルコンウィングは、上方に跳ね上がる仕組みは同じだが、ドア自体が中央でヒンジで折れ曲がるようになっている。だから、狭いスペースでも楽に開くことができる。

テスラはいわゆる年式という考え方を取り入れていない。マスクが車をモノではなくライフスタイルと捉えている証拠だ。だから2014年式の在庫一掃セールをやって、次の新型を作るというような発想がない。常に最高のモデルSを作り、それを顧客が手にするのである。1年かけて新機能を開発しておき、翌年のニューモデルで大放出するような商法はしない。いい機能が開発できたら、もったいぶらずにすぐに製品に反映する。…テスラの究極のゴールは、一度買ったらサービスセンターに持ってこなくてもいいようにすることだ。

ピーターティール「彼の成功は、微々たる改善の繰り返しに甘んじている我々への批判と見ることもできるのではないでしょうか。」

太陽光、自動車、宇宙と、いずれの業界も、未だに既存勢力を守ろうとする規制と煩雑な手続きにまみれている。こうした業界の関係者から見れば、ひたすら純粋に技術を追い求めるマスクは、あまり関わりたくない人間だし、仮に市場に入ってきても目障りな存在か大ボラ吹きと映ることだろう。既存勢力は、政界とのパイプを駆使して、マスクの企業の足を引っ張ることに躍起になっていた。とにかくこういうことは得意な連中なのだ。

ピーターティール「一番驚いたのは、野心あふれる優秀な人材を見つけ出しては入社させてしまう彼の才能です。宇宙産業でトップレベルの頭脳集団が彼のもとで働いている。テスラも同じです。本当に機械工学の才能があって車づくりに興味があるなら、絶対テスラに行くべきです。これまでにない面白いことができる場所は、全米でもあの会社しかないのですから。スペースXもテスラも、有能な人材の実力を極限まで引き出し、素晴らしい成果を上げるというビジョンを掲げています。」

ジョブズと同じで、イーロンも三流、四流の人間が苦手なんです。ただ、ジョブズより人間性は上だし、ビル・ゲイツよりも洗練されていますよ。

マスクのプロジェクトには、様々なテクノロジー企業が投資しているが、実は、どこよりも多額の資金を投じているのがグーグルだ。…ラリーペイジ…どうして大したこともしていない会社に自分の時間を捧げているんですかね。…資産を彼に託すつもりはありませんよ。でも、複数の惑星感に広がった社会に道を開いてくれるような気がします。…素晴らしいアイデアはいつもクレイジーです。クレイジーじゃなくなったらつまらない証拠…よく知らないことに対する人間の洞察力なんて、大したことがないんだなと悟りました。イーロンがよく言うことですが、何ごとも原点に立ち返って取り組まなければいけないんです。…何が可能で、どこが面白いのか判断するのには、工学や物理学の分野でそれなりの知識が必要ですが、イーロンはそこが傑出しています。…スペースXもテスラもリスクの大きなビジネスだと思いますが、イーロンはそんなことを気にせずに実現します。身を削ることも厭わない。だからこそ成功の可能性も高いのだと思います。彼が会社を始めた頃、成功確率は90%だと言っていました。他人がクレイジーだと思うようなことでも、本当に情熱を持って取り組めば成功できる好例です。 

イーロン・マスク 未来を創る男

イーロン・マスク 未来を創る男

 

 

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Being Geek ―ギークであり続けるためのキャリア戦略

  • 最近、何か失敗をしたか? 
  • 自分に異議を唱える人が身近にいるか?
  • この1週間の間に何か学んだことはあるか?それについて説明できるか?

1つでも答えがノーになるものがあったら、それは危険な兆候である。惰性で生きているということかもしれない。その状況はたしかに心地良いだろう。だが、そういうほどほどの満足に甘んじている間にも、技術は急激に進歩していく。身につけたことはあっという間に時代遅れになってしまうのだ。成長には、まず失敗を恐れない気持ちが大切だ。

私の仕事に対して責任を追うのはマネージャだが、私のキャリアに対して責任を負うのは私自身である。・・・自分自身に関して、遠い将来を見越した決定を下せるのは自分だけだ。他に誰もそれが出来る人はいない。その決定を下すのに十分な情報を持っているのは自分自身だけだからだ。

自分が成長しているかどうかを判断する基準として最も便利なのは知識だろう。個々で言う知識とは、単なる事実の記憶ではない。ただのデータとは違うということだ。その場の状況に応じ、自分ならではの方法で活かすことの出来るデータを知識と呼ぶのだ、そういう知識は必ず新しい発見を生む。頭のなかでなにか新しいものが生まれるのだ。・・・何かを創造したという経験は、生涯の財産となるだろう。

愚かな上司は、自分が全能であるかのような錯覚に陥っている。自分には、どんな問題も苦もなく解決できると信じているのだ。そうなってしまうのは、長年、道の問題、解決の困難な問題に直面しないせいだ。過去の経験を当てはめることのできない未知の問題に目を向けさせるのは部下の仕事だろう。 

上司が一時的にどれほど不可解な人物になってしまったとしても、その人が上司である事を忘れないということだ。自分よりも豊かな経験を持っていて、それを教えることの出来る人物ということである。ただ、教えてもらえるまでには少し待つ必要がある。

まずはCEOが正気なのかどうかを確かめる必要がある。・・・CEOがエンジニアたちの前に立ち、鉛を金に変えてくれと命じたのだとしたらどうだろう。その場合は迷うことはない。ニヤリと笑ってうなずき、履歴書の書き方でも考えればいい。

いつもまったく同じパターンでミーティングを繰り返す、と言うのは退屈なことかもしれない。だが、この退屈な時間をもつことがじつは重要なのだ。システムの開発は創造力を要する仕事だが、創造力を発揮するためには、物事を自由に考える時間をもつことがどうしても必要になる。・・・退屈な会議は、動き出す前の深呼吸のようなものと言ってもいいだろう。

ギークというのは、基本的にシステム思考をする人間である。この世界は非常に複雑だけれども、物事の動きは全てフローチャートでアワラスことが出来る。・・・限られた数の入力から、常に限られた数の出力が生じる。そんな風に世界を見ているのだ。

ゲームは知性の遊びと言えるが、面白いゲームには、必ず同様の特徴がある。

  1. 発見
  2. 最適化と繰り返し
  3. 達成

勝つということに関するパラドックス・・・勝つ方法がわかってしまうと面白みがなくなってしまうのだ。スリルがあるのは、アドレナリンが出るのは、見つけるまでの間である。わからなかったことが分かるようになるというのが面白いのだ。つまり、ギークの興味をいつまでもひきつけておこうとすれば、勝たせてはいけないということになる。

人間は大きく「ごく自然に歩み寄れる人」「努力すれば歩み寄れる人」「困った人」の3種類に分けられる。・・・困った人とは、何をどう工夫しても、上手くコミュニケーションできる関係になることがない。・・・一人の人間のために会社が文化を変えることは、ほぼありえない。むしろ、困った人を拒絶することで、会社は文化を守ろうとする。

ただひたすらコーディンだけをしていたい、人とはあまりかかわらず、自分の殻に閉じこもっていたい。それがエンジニアのステレオタイプだろう。そういう人が多いのは事実だ。コーディングの仕事は非常に重要である。ただ、エンジニアといえども、それだけをしていればいいのではない。

 ナードが好きなのは、物事の中に法則を見つけだすことです。法則を見つけ出し、それを利用して成果があげられるものが好きなのです。ゲームはそういうものの一つに過ぎません。

ユーモアは知的なパズルです。手元にある材料を使って、できるだけ短い時間にできるだけ面白いことを言うというパズルなのです。それ自体は面白いことではなく、ほんの些細なことである場合が多いでしょう。ナードは常に、人の言葉に耳を傾け、少しでもユーモアの材料になりそうなことを見つけると、頭をフル回転させます。そして、自分がこれまでに見たこと、聞いたことの中から、それと組み合わせられる材料を探します。そうやって、できるだけ早く、面白いことを言おうとするのです。

 ADD(注意欠陥障害)・・・ナード一人の場合はどうやって見ているでしょうか。きっと、3つくらいの番組を同時に見ているはずです。・・・そんなに次々にコンテキストを切り替えていたら、集中できないだろうと思うかもしれません。その考えは一部、正しいといえます。マルチタスクが必ずしも効率的とは限りません。ナードは複数のことを同時にするため、一つ一つについては詳しく分かっていないことがあるのです。幅広く色々なことを知っているけれど、ひとつひとつのことについてはさほど深くは知りません。ナードはそれで満足しています。詳しいことはいざとなればインターネットで調べればわかると思っているからです。

 ナードは、常に、飽くことなく新たな情報を求めています。そして、何か気分が高揚することを求めています。ナードの脳では、すごいスピードでその情報の評価が行われます。重要な情報か、そうでないかが瞬時に判定されるのです。この場合、重要というのは、ナードのその時の関心事に関係が深い、ということを意味します。

 他人は、時間と労力をかければ完全に理解できるシステムなどではありません。すべてをシステムと捉えるナードが他人と接することを苦手とするのは当然でしょう。

食事と運動をプロジェクト化することです。

あなた自身がナードのプロジェクトであるとき、あなたへの関心の向け方は大変なものでしょう。きっとそれであなたも嬉しい気持ちになるに違いありません。でも、その状態はいずれ終わります。いったんシステムの動きをすべて理解したと思うと、それでプロジェクトは終了してしまうのです。その後は、次の関心の対象を探し始めるのです。気分を高揚させてくれる材料を新たに探すわけです。・・・あなたがその、不可思議で理解しがたい一面を次々に見せ続ければ、ナードの関心を引き続けることが出来ると思います。

 ITの業界では、MBAを持ったハーバード出の若者がどこからともなくやってきて、いきなりマネージャになるということはまずない。・・・エンジニアたちが知識も技術もないアイビーリーガーの言うことなど聞かないからだ。

  • 現状に何も問題がないからと言って、それが成功につながるとは限らない。苦しまなければ、何も生まれない。
  • 人は葛藤から学ぶ。
Being Geek ―ギークであり続けるためのキャリア戦略

Being Geek ―ギークであり続けるためのキャリア戦略

 

 

バッタを倒しにアフリカへ

すべての酒を没収された(後に、賄賂をもらえなかった腹いせだったと知る)・・・深い絶望の淵に追いやられ、アフリカを救ってやるぞという意気込みは過去のものとなった。・・・一連の没収劇を観戦していた研究所のスタッフたちは「コイツは一体何しに来たんだ?」と完全に呆れ顔だ。

 毎月たくさんのバッタの論文が発表されてそのリストが送られてくるが、タイトルを見ただけで私はうんざりしてしまう。バッタの筋肉を動かす神経がどうのこうのとか、そんな研究を続けてバッタ問題を解決できるわけがない。誰もバッタ問題を解決しようなんてはじめから思ってなんかいやしない。現場と実験室との間には大きな溝があり、求められていることと実際にやられていることには大きな食い違いがある。

 驚愕のモハメッド率の高さだった。研究所内だけではない。出会う人がことごとくモハメッドだった。

バッタとイナゴは相変異(孤独相のバッタが混み合うと群生相に変身すること)を示すか示さないかで区別されている。相変異を示すものがバッタ、示さないものがイナゴと呼ばれる。

 研究対象の生物に季節性がある場合、データを取りまくる「稼ぎ時」と論文を書きまくる「オフシーズン」とに分かれている。(ソフトサイエンスの人ならではの意見だなー)

 有史以来、自意識過剰は一体何人を無収入送りにしてきたのだろう。私もまんまと一杯食わされた。

バッタの被害が出た時、日本政府は数億円も援助してくれるのに、なぜ日本の若い研究者には支援しないのか?何も数億円を支援しろと言っているわけじゃなくて、その十分の一だけでもコータローの研究費に回ったら、どれだけ進展するのか。コータローの価値を分かってないのか?

辛いときこそ自分よりも恵まれていない人を見て、自分がいかに恵まれているかに感謝するんだ。嫉妬は人を狂わす。お前は無収入になっても何も心配する必要はない。

売名行為は研究者の掟に反するものだった。研究者が研究以外のことをしていると、遊んでいるとみなされ、不真面目の烙印を押される。大論文を出していない実力不足の私が大声で騒いだら、ネット上のみんなは喜んでくれるけど、学会関係者たちからは煙たがられるに決まっている。

市場には定価という概念がないため、言い値で売買が行われる。

 西アフリカ地域の防除費用は、普段なら3億円程度だが、大発生してから対応した場合は570億円に跳ね上がる。

夢を語るのは恥ずかしいけど、夢を周りに打ち明けると、思わぬ形で助けてもらえたりして流れがいい方向に向かっていく気がする。夢を叶える最大の秘訣は、夢を語ることだったのかなと、今気づく。

 

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)

バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)